艦娘の咆哮 ~戦場に咲き誇る桜の風~   作:陣龍

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総数25話目にしてようやく三回目の戦闘描写に入れそうな艦これ×鋼鉄小説が有るそうですよ奥様


…ハイ、自分のです(白目)今回も大石艦隊の編成と『桜風』に追加された新兵装の話になります。主武装自体は一切変化していませんけどね。


第二三話  硫黄島沖大演習午後の部 ~開戦~

「さーて!休憩時間を挟みましていよいよ開幕致しますのは駆逐艦『桜風』VS我が大石艦隊精鋭艦娘24隻による大決戦だあぁぁぁ!!!実況は午前の部に引き続きましてこの大石!そして解説にはこのお三方!」

 

「午前に引き続き深山満理奈です。午後からもよろしくお願いします」

 

「深山艦隊所属の青葉型重巡洋艦一番艦の青葉です!」

 

「・・・大石艦隊所属、駆逐艦娘の叢雲よ」

 

 

 

 

 

時は休憩時間から少し過ぎた午後一三時。正午を過ぎた頃から空は雲量1か2程度の見事な快晴。そして海は荒れる事も無く穏やか。こんな日は釣り糸を垂らして日がな一日のんびりと過ごしたくなるものだが、今から行われるのは妖精さん印の演習弾が用いられた、爆音が轟き渡る実戦さながらの戦闘演習である。『のんびり』など出来ようはずがない。加古辺りは普通に寝られそうでは有るが。

 

 

「それでは午前中と同じく双方の戦力紹介となりますが、先ずは朝方と同じく我が大石艦隊からの説明に入ります。じゃあ叢雲、頼むわ」

 

「・・・はいはい。全く、本っ当に子供っぽいんだから・・・」

 

そう口では愚痴りながらも、よく見ると嬉しそうに口元が僅かににやけている叢雲が、指揮棒を持って大石艦隊側のそれぞれの艦娘の装備や連度の紹介に入る。

 

 

「編成は『連合艦隊水上打撃部隊』の二部隊に属する、第一艦隊の旗艦、戦艦『長門』。旗下に戦艦『陸奥』航空戦艦『扶桑』『山城』。軽空母『飛鷹』『隼鷹』。続いて第二艦隊旗艦、戦艦『霧島』。軽巡洋艦『神通』。駆逐艦『雪風』『島風』。重雷装巡洋艦『大井』『北上』」

 

それぞれの艦名が叢雲から読み上げられるに従って、この放送室に取り付けられたスクリーンに、画面分割されながら次々とそれぞれの艦艇のカラー映像が映りだす。この大石艦隊所属の『日本初の超弩級戦艦』扶桑型戦艦はいわゆる『IF改装』と呼ばれる改二にまで改造が施されており、以下神通、霧島、隼鷹、大井、北上にも同様に改二改造が施されている艦艇の姿が満天下に映し出される。常識的に考えれば『戦艦棲姫の群れとでも戦うつもりか』と言われても仕方がない重量編成である。

 

 

「そして支援艦隊として、前衛支援任務には第三艦艇から、旗艦、戦艦『金剛』『榛名』。駆逐艦『夕立』『綾波』。正規空母『赤城』『加賀』。艦隊決戦支援任務には第四艦隊より、旗艦、正規空母『飛龍』『蒼龍』。駆逐艦『時雨』『Верный』。重巡洋艦『羽黒』『妙高』。尚兵装は、戦艦娘は『試製41cm三連装砲』『試製35.6cm三連装砲』空母娘の艦載機は『彗星一二型甲』と『流星』で統一している様に、大石艦隊の持ちうる全てのレア、ホロ装備よ」

 

そして止めとなる支援艦隊編成である。海軍庁からの指示とは言え、これほどまでに整えられた戦力は、普通は特殊戦闘海域・・・通称『イベント』と、そこかしこの提督による渾名が付けられた、深海棲艦の中でも一等脅威である『姫』や『鬼』クラスの戦力が定期的に多数出現する戦場に投入する物である。間違っても演習に投入する様な代物ではない。

 

 

「・・・以上が、今回の硫黄島沖大演習午後の部に、我が大石艦隊が投入する戦力よ。・・・深山提督、本当に演習相手は駆逐艦『桜風』一隻だけなのかしら?」

 

「『桜風』一隻では不足、と言わんばかりな、ずいぶんな言いようね」

 

「気に障ったのなら謝るわ。・・・でも、隻数にして24対1。私達側の艦娘の連度はそう低くは無い。想像出来ないわよ、私たちが負ける光景が」

 

「心配しなくても、暫くしたら嫌でも分かるわ。・・・あの娘の、駆逐艦『桜風』の非常識っぷりが」

 

 

髪を掻き揚げながらそう言った深山提督の表情は、何処か悪戯を仕掛けた子供の様な表情であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『非常識』って、少し酷いと思います、深山提督」

 

「いやぁ、この摩耶様が思うに、提督の言っている事は当然だと思うぞ『桜風』」

 

「鈴谷もそう思うよー。大体『桜風』は女の子としての常識を知らなさ過ぎ!前鈴谷の持ってたファッション誌のビキニ見て『これ下着ですか?』なんて真面目な顔して言うとかねー。あの時チョーウケたから!」

 

「お、面白そうな話だな。鈴谷、その話詳しく・・・」

 

『そろそろ深山提督と重巡青葉による駆逐艦『桜風』の解説が始まりますので、観客の皆さまはお席に着くよう願いますー』

 

「ちぇ、タイミングの悪い・・・」

 

「あーじゃあ終わった後で話そうかー」

 

「・・・だって、あれどう見ても下着ですよ・・・」

 

 

『解せぬ』と言わんばかりの表情の『桜風』を他所に、駆逐艦『桜風』の艦橋では予定通り粛々と硫黄島沖大演習午後の部が続けられていく。今回は本来乗り込むはずだった対超兵器部隊が、午前中の演習で想定外のオーバーヒートを起こしたために急遽中止になったのに加えて、本人が強く志願した事も有って、観戦武官の形式で重巡洋艦娘の摩耶と、航空巡洋艦娘の鈴谷が『桜風』に乗り込んでいる。因みに『ビキニを下着と勘違い』したように、『桜風』の常識や知識は色々と様々な物が抜けていたり混ざり合っていたりして滅茶苦茶である。

 

スマートフォンやタブレットを説明書を読まなくともすぐさま使いこなし、パソコンのメモリ増設やプロも投げ出す複雑なプログラミング等だって鼻歌交じりに完璧に出来る癖に、日本の誇る新幹線を見て『蒸気機関車じゃない弾丸列車だ!』と目を輝かせて言いだしたり、ファッション誌を見ても何でそれが可愛いのかが全然分からずに疑問符を浮かべまくったり、秋雲に変な服を着させられそうになったりしている等、日常生活には問題無いが色々とチグハグな『桜風』で有る為、深山提督を含む艦隊のお姉さん艦娘は日々『桜風』を気にかけている。・・・変な事を吹き込まれたら、素直な『桜風』が本当に実行しそうで有る為である。

 

 

 

「ねえ『桜風』。青葉がさっきから荒ぶってるけど、なにか聞かれた?」

 

「え、青葉さんにですか?んーと・・・特に何も。普通に性能や艦載機の話をしただけです。・・・青葉さん、無理して無いですよね・・・?」

 

「いやぁ、アイツは正直あんな事でへこたれたりする様な奴じゃないぜ?むしろ『桜風』が気にし過ぎる方が、アイツへこむぞ?」

 

「だねー。だから『桜風』はあんま気にしないで何時も通りにするべき!・・・これから大事な演習だよ?ほらほら、元気出す!」

 

「・・・分かりました。『桜風』、頑張ります」

 

 

・・・何というか、まるで『悪い事をして自分一人で反省している子供』見たいだねー。ねぇ摩耶っち

 

・・・摩耶っち言うな。その表現には同意するけどさ

 

 

神妙な顔で目を閉じて深呼吸をした後、改めて駆逐艦『桜風』の妖精さんと共に再度自艦の状況把握を始めた『桜風』に気付かれない様に、摩耶と鈴谷は小声でそんな事を話す。金剛の様に外にグイグイ出てくるタイプではないが、別に引き籠りでも無い『桜風』は艦隊の皆と早期に打ち解けていたが、この所々で常識に疎い部分と今回垣間見えた妙に幼い、若しくは未成熟な精神性は、先述した様に鈴谷達を心配させるには十分であり、その為一部の艦娘には深山提督から秘かに『桜風』を守る様に指示を受けていた。『武力』に関しては『桜風』が抵抗するから兎も角としても、『桜風』が一人で居た時に詐術による誘拐等をされでもしたらたまったものでは無い。

 

 

「・・・ん、あれ?なぁ『桜風』、以前の兵装とちょっと変わってないか?」

 

「んぉ?ああ、本当だねー・・・。『桜風』ー、なんで艦載機の欄が有るか、あとあのヘリコプターは一体何なのか、ちょっちお姉さんに教えてくんないかなー?」

 

そう『桜風』に呼びかける摩耶と鈴谷の目線の先には、現在目が誰にでも分かる位に輝かせた青葉が敏腕ニュースキャスターの様に分かり易く説明していたが、その青葉の指揮棒が指し示す映像には『カ号観測機』とは似ても似つかない、現在日向に搭載しているAS332(スーパーピューマ)よりも無骨に見えるヘリコプターが映っていた。因みにAS332(スーパーピューマ)、そして『桜風』の開発で新たに追加された『SH-60J シーホーク』に関する話だが、今回の演習後に緊急に実戦形式で運用した際運用が固定翼機とは比べ物にならない程に操縦難易度が高い為に、見事に20機近くを海の藻屑がスクラップにしてしまった日向が泣きながら始末書兼報告書を書いている姿が目撃されている。まあ僅かA4版紙3ページ程度で済まされた辺り、大体こうなる事は予想されていたようだが。

 

 

「あれ・・ですか?アレは『AH-64D アパッチLB(Apache Longbow)』です。攻撃ヘリですね。ちょっと前に一人で開発したら出来たので今回投入させて頂く事になりました」

 

「攻撃・・・ヘリ?」

 

「何て言うか、本当に『桜風』って色々ととんでもないよねー。あ、因みに性能ってどんなもん?」

 

「時速800㎞、航続力280㎞、夜間、悪天候でも戦闘可能。今の武装は『30mm航空機関砲』と『空対艦ミサイル』の二つです。片方を外せば『航空魚雷Ⅲ』を搭載出来ますが、今回は艦隊決戦なので止めました」

 

「・・・足が短いのは兎も角として・・・あんなナリで零戦や烈風よりも早いのかよ・・・」

 

「あ、ヘリコプターなのでちゃんと空中で静止状態になれたり横滑りもちゃんと出来ますので、安心して下さい」

 

「へー、面白そうだねー。うーん・・・鈴谷にも搭載出来るかな?でも慣れるまでに結構時間かかっちゃいそうだし・・・うーん、悩むー」

 

 

『桜風』が開発した兵装の天外魔境っぷりを知っている深山艦隊の艦娘勢の反応はおおよそこのような物に終始しているが、放送でこの映像を見た各所の提督と艦娘の反応は、午前の部で想像の埒外に有った巨砲を見た時以上だった。午前の部に出て来た兵装は、色々とぶっ飛んでいたが基本的に『第二次世界大戦頃の技術で()()()()()兵装』である。実際に作れるかどうかは兎も角とするが。

 

だが『AH-64D アパッチLB(Apache Longbow)』が開発され、運用が開始されたのは『1996年』である。ついでに言えば『桜風』が搭載して居る『RAM』も解説された為、この午後の部の演習結果と合わせて深山提督の元には文字通り書類山脈を生み出すまでに大量に、他鎮守府からの開発方法の問い合わせや勘違いしての技術支援要請、更にはとある極少数の提督から駆逐艦『桜風』の脅迫交じりの転属要請書が、硫黄島沖大演習終了後より一月近くの間押し寄せて来た。その為に暫くの間深山提督はその書類や要請の()()に専念させられる羽目に合うのだった。

 

 

『あ、そうそう。摩耶さんに鈴谷さん。これ渡しておきますねー』『お、主計科妖精準備良いなー』『それに・・・なんか輝いてない?』『久しぶりに手料理を多数の人に振る舞えて嬉しかったんだとせ』『あー、確かに。この艦がこれだけ賑やかになったのって自沈処分される前からだから・・・一月以上か?』『正確には52日だな。あの時は廃艦か記念艦かで殴り合いになってたからなぁ』『殆ど二か月じゃねーか』

 

そんな事が起こったりこれから起こる事を知る由も無い二隻の重巡洋艦娘に、駆逐艦『桜風』の妖精さんがわらわら集まってきて人間・・・否、妖精ピラミッド?を作り上げて、とある物を渡す。この妖精さんたちの一部の奇行は、初めて乗艦した艦娘の殆どが目撃しているが、基本的に『二等身の饅頭顔』である妖精さんのやる事ならば大概の事は微笑ましく映る為に、皆スルーしている。

 

 

「えっと・・・これ、マイク?」

 

「・・・エチケット袋?なんでこんなモノ渡すんだよ?」

 

『骨伝導マイクです。戦闘中は通常の通信や応答ではマトモに通じませんので』『エチケット袋は万が一の為です』『使われない事を切に願っています』『・・・ぶっちゃけ処理したくないですからね』『探せば需要あると思うが』『いる訳ないだろそんな特殊性癖者』『まあそんな訳なんで、取り敢えずマイクは装着してエチケット袋は持ってご着席下さい』

 

 

こんなの要らないよ、と言いたくなる鈴谷と摩耶では有ったが、実際に前に見た『桜風』の戦闘映像では、艦艇内部の人間がシェイクされて居そうなまでに激しい艦艇運動を繰り広げていたのを思い出した両名は、取り敢えずその忠告をそのまま受け取って、今回特別に艦橋の艦長席後方部分に設置された特別席に着席する。曰く、この特別席は『例え天地がひっくり返っても床から絶対離れません!』との事だそうだ。

 

 

「んじゃ『桜風』-。演習ガンバー!」

 

「応援しか出来ないけど、この摩耶様が着いてるからな!」

 

「有難う御座います。絶対勝ちますので、見ていて下さい」

 

 

鈴谷と摩耶の応援に、振り返って笑顔でそう答える『桜風』。

 

 

 

『艦長、今回の演習の戦い方はどうしますか?対深海棲艦戦の様にセーブしますか?』

 

「副長。そうね・・・、今回の演習での消費資源は自衛軍持ちとの事。だから、今回はいっその事全力でやろうか」

 

『了解です。つまりは制限なしの()()()()()ですね』

 

「だね。結構前の戦闘から間が開いたから、感覚をしっかりと思い出していこうか」

 

 

そう語り合う『桜風』と妖精さん。以前『桜風』の戦闘で消費した弾薬や燃料、鋼材の量数を聞いた事のある鈴谷は、自らの艦隊が使う物では無いとはいえ、確実に目を点にさせるであろう自衛軍の役人方に対して少しばかり同情心を抱く。とは言え別に資源節約の為に出撃中止命令が下ったりする事は無い為、『昔』と比べて本当に『今』は豊かになったなぁ。そんな気持ちを鈴谷は抱いていた。まあ出撃制限が無いのは、『昔』のままなら兎も角『艦娘』となった今では人件費や維持費、運用費が格段に、と言うより一発レッドカードからの出場停止なレベルで抑え込まれて居る為でもあるのだが。

 

 

そんな鈴谷の思いや、この演習に関わっていたり視聴している人間や艦娘の思いは兎も角、刻一刻と演習開始までの時間は迫り行き・・・

 

「・・・さあ、開戦(OPEN WAR)よ」

 

 

駆逐艦『桜風』VS大石艦隊精鋭24隻とでの大乱戦(殲滅戦)が始まった。

 

 

 

 

・・・あれ・・・?気のせい・・・かな?

 

・・・ん・・・『桜風』・・・?

 

 

演習開始の号砲が響き渡ると同時に、『桜風』の雰囲気が突如切り替わった事を感じ取った鈴谷と摩耶。『ヴィルベルヴィント』戦では通信を切られていたが為に伝わらなかった、『桜風』の戦闘中の様子に深山艦隊の艦娘全てが戦慄するのは、もう間もなくの話であった。




…しかし、自分が言うのも何ですけど、この小説は一体どこを経由して終着駅に到達するのだろうか…

一応終着駅と『仲本 穂乃果』の死亡状況だけは決まっているんですがそれ以外は大体白紙。別名自由度が豊富と言う事でもある(唯の言い訳)


因みに今回登場した『AH-64D アパッチLB』に関してですが、PS2版(脳内記憶から拠出)とPSP版の設定を混ぜています。両方同じWSG2世界だから良いですよね(震え声)

尚実際PS2版だと航空機の対艦攻撃手段は爆弾しか無かったから何気に航空機搭載型対艦ミサイルが使えるPSP版がちょっとうらやましかったりします。

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