ロキ・ファミリアのたった一人の眷属   作:抹茶オレンジ

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【前回のあらすじ】
ハーフエルフに心をしばき回されたロキ。
【ヘファイストス・ファミリア】の北支店で子供の装備を整えようと決意したが、まさかの永久現役社長と邂逅。
はたしてロキの運命は……。

3/23 タイトルだけ変更 内容に変わりはありません。
3/27 一部加筆修正。内容に変わりありません。


馴れ初めだけは言いたくない

 【ヘファイストス・ファミリア】北支店でその主神ヘファイストスとロキは黙って顔を向き合わせていた。

 

 このヘファイストスとは顔見知り程度の仲だ。

 まだドチビ、ヘスティアが貧困に喘いでいた時、天界からの腐れ縁いわゆるお情けで彼女が養っていた。そんなじゃが丸おっぱいをからかいに行ったときに、何度かあったことがある程度だ。

 別にだからと言ってお互い苦手意識だったり嫌悪感があったりするわけでも、まさか人見知りしている訳でもない。

 

 ただ何と言うかロキは会いたくなかった。ドチビが子供を作ったと自慢してきて終いには「君はどうなんだい?」とイライラする顔で尋ねられ、半泣きで「うっさいわボケぇ!」とオラリオから飛び出してしまった自分だ。正直、そのドチビの神友である彼女とは、一応は持っているプライドのようなものもあってあまり見かけたくない顔に入る。

 

 ヘファイストスの方も何か信じられないような顔でこちらを見て、今度はベルの方へと視線を向けた。

 彼の容姿や目の色をぶつぶつと言い、そしてまたロキを見る。気持ちのいいものではなかったが、かと言って抗議の意思を示す言葉が出ない。なぜなら言葉を出したら会話をする、会話をすると話題が出来る、出来てしまえばベルと自分の『馴れ初め』を聞かれる。

 ドチビの所を何故か通いつめていたら出会っちゃいましたぁ、なんてこと、口が裂けても言いたくなかったのだ。

 

「……」

「……」

 

 沈黙が両者を包む。横にいるベルが二柱の神の顔をうかがうも、口を開いていいものか躊躇しているのがロキの視界の端で見て取れた。

 握られていた腕の力が今では随分と緩んでいる。

 あんまり子供を不安にさせるのはなあ、と彼女も覚悟を決めて、切り出した。

 

「自分、何年ぶりやっけ」

「……」

 

 なんか言えや! ロキは内心突っ込みを入れたがヘファイストスは未だこちらを驚く目で見るばかり。

 別にうちに子供いたってええやろ、そう毒づくものの顔はあえて笑みを浮かべる。

 

「ヘファイストス、うちに何か用あるん? 無いんやったら、うちも帰りたいんやけど」

「……いいえ、その、ちょっと驚いただけ」

「ほぉ、そうか、じゃあな」

 

 もう良いだろう。そう思って久方ぶりの再会に別れを告げて、ベルに握られた腕を逆に引っ張ってここから離れようとする。

 

 その歩みもヘファイストスに肩を捕まれるまでだったが。

 

「放してくれへん?」

「そんなこと言わないで、ちょっと中で話せない?」

「無理、用事あるから、悪いな」

 

 単語を区切って、背を向け足を進める。が、進まない。

 逃げ足の速さでは定評のある自分だったが、こうも掴まれてはやはり同じように鍛冶仕事で力も定評のあるのだろう彼女から逃れるのは難しかった。

 ベルはいよいよそんな様子に混乱しているようで、かといって神相手に手出しも出来ずおろおろとするばかり。

 心の中で盛大に溜息を吐くとロキは足の力を緩めて、顔をヘファイストスに向ける。

 

「……分かった、分かったから放せや」

「逃げない?」

「話の内容による」

 

 ヘファイストスは溜息一つ「分かったわよ、変なことは聞かないから」と頷いた。

 その言葉にいよいよロキも覚悟を決め、ベルの方に顔を向ける。

 

「悪いけど、ベルたんは先に帰っといて?」

「で、でも神様を一人でなんて……」

 

 まごつくベルに、「あ、そうや」と言って胸元に手を入れてヴァリス硬貨を手渡す。

 

「これでなんか食べてきてええから」

「か、神様これどうやって入れてたんですか……?」

「これはな服の内側が財布みたいな感じでなぁ……見たい?」

「い、いいです!?」

 

 えっちやなぁ、とワザとらしく体をくねらせてベルをからかう。

 こんな程度で赤くなる初心な子供を微笑ましく笑みを浮かべて、肩に手を回して耳元で囁いた。

 

「うちは大丈夫やから、な?」

「……分かりました」

 

 頷く子供の背を叩いて「またなー」と手を振って見送る。

 人垣の中に消えるのを見て、名残惜しそうに一頻りその先を見つめると面倒くさそうに後ろを振り返った。

 何か、面白そうな顔を浮かべた、()()()()()()()()()が目に映った。

 

 あぁ、面倒くさいことになるぞこれ。ロキは心の中でうんざりと肩を落とした。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 ベルはヴァリス硬貨を懐に入れて、一端バベルに戻って何時もダンジョンへ向かう際に上る階段を背に、メインストリートの何処に行こうか悩んでいた。

 神様の言う通り何処かで食べて帰るか、それとも買って帰るか。

 雑踏賑わうオラリオのメインストリートを遠目から眺めながらぼうっとそんな考えを巡らせて、結局何か買って帰ろうと決めた。

 神様が帰ってくるのが何時になるのか、外で食べて帰ってくるかは分からないけれど、予想に反してすぐ帰ってきて、おまけに何も召し上がられていなかったときに、何かご用意できないと駄目だろうと思って。

 

 決断を決めると、今度は別の悩みがベルの中に生まれた。いや正確に言えばこれはどちらかと言うと先に居た住人で、頭の中で何も考えることが無いと分かるやいなや、彼の頭の中で一気に花開いた。

 

 ───【ヘファイストス・ファミリア】

 

(確か、()()()()()()が言ってたっけ……)

 

 もう居なくなった祖父。大好きだったおじいちゃん。ハーレムは男のロマンと豪語し、自分にオラリオに行けと言って背中を押してくれた人。

 ベルは目を細めて、過去を思い返してそれに浸ろうとした。そのせいで注意散漫だったのだろうか、どんと背中に誰かがぶつかる。

 

「あ、すみません」

「いえ、こちらこそ」

 

 声は意外に低い所からだった。慌てて顔を下に向けるとフードを被った人物がそこに居た。なんだか大きなバックパックも背負っている。

 こんな夜更けにバベルの入り口の方から出てくるということは子供ではなく小人(パルゥム)の冒険者だろうかとベルは推測した。声からして女性だということははっきりと分かる。

 小人(パルゥム)は急いでいたようで「では失礼しますね」と言って去っていく。頭を下げて彼女を見送った。

 

(優しい人でよかったなあ)

 

 喧嘩を売られていたら、気の弱い自分ではどうしようもなかっただろう。

 それも女の子だ。祖父が大事にしろ大事にしろと言って憚らなかった存在、たとえ気に勝っても手は出せない。

 

(そうだ、早くどこかで何か買ってこないと)

 

 よくよく考えれば今は八時、夜更けのため食料店も閉まっているかもしれないが、どこか飲食する場所だったら持ち帰りぐらいならあるかもしれない。

 ベルはそう思って馴染みのある店が立ち並ぶ北のメインストリートに戻ろうと足を動かそうとして、

 

「───あの」

 

 ぴたりと止まって振り返ると、バベルの階段の上で、ウエイトレスの服を着た女性がこちらに微笑んでいた。

 

「こんばんは、冒険者さん?」

 

 彼女の背後に控えるバベルの入り口は薄暗くなっていて、まるで何かが大きく口を開けたような暗闇だった。

 

 

 

 

 ***

 

 

「さあどうぞベルさん、ここで会ったのもなにかの縁ですから」

「し、シルさん手を放して!?」

 

 西のメインストリートに面する中でも最も大きい酒場『豊穣の女主人』女将ミア・グランドの振舞う絶品の料理と、美しい店員が売りの店。サービスもよく、とうぜん値段も張る。そんなことを知らないベルだって騒がしい喧騒と店の様子を見れば、なんとなくではあるものの、この店の大体の雰囲気は理解できた。

 

 シルと名乗った女性に手を引かれて、ベルは今まさに半ば強引にその店へと連れ込まれようとしていた。

 一応主神から預かっていた金銭があるとはいえ、無駄遣いするつもりのない彼は首を振って、放してほしいと懇願する。

 

「大丈夫です、味は保障します」

 

そういうことじゃないんだけどなあ、微笑むシルにベルは顔を少しだけ引くつかせた。

結局彼の抵抗むなしく妙に力の強いシルに引かれて、店へと連行されていった。

 

「ただいま戻りました」

 

シルの声に反応したのか一人の猫人(キャットピープル)が走り寄ってきた。

 

「やっと帰ってきたニャ!!」

「ごめんね、アーニャ」

 

 シル、と呼ばれた店員は手を合わせてぷんぷんと怒る猫人(キャットピープル)の店員──こちらはアーニャと呼ばれた──に謝ると、後ろを振り返る。

 

「それでベルさん、ここが私のお勤めしているお店なんです」

「そ、そうなんですか」

「ニャニャ!? シルが男連れてきたニャ!?」

 

 違うよアーニャ、そう言ってシルは否定する。

 

 ベルの方はと言えば、いよいよ混乱が最高潮だった。

 あの後バベルでお互いの自己紹介を交わした後、言葉巧み、それでいて強引にこの酒場へと連れてこられていた。そのせいで頭がまだ状況を把握できていない。

 言ってしまえば軽い誘拐まがいの後放っておかれた兎の様相を見せていた。

 

「まったく、いきニャり出て行ったかと思えば男連れてくるニャンて、おミャア実はなかなかふてぇ奴だニャ?」

「だから違うよ?」

「あ、あの僕はどうしたら?」

 

 ぬふふ、と笑う猫人(キャットピープル)と否定しつつ微笑むシルにベルが尋ねる。

 

「ベルさん、折角ですからどうぞ食べていってください」

「折角って僕そんな」

「ニャ? まさか白髪頭はシルを弄ぶだけ弄んで後は知らん振りするのニャ?」

「し、白髪頭? い、いえですから僕は強引に……」

「酷いっベルさん!」

「シルさんまで!?」

 

 身をよじりわざとらしい声を上げるシルのせいで、ベルに酒場中の冒険者達の、それも男衆の視線が突き刺さる。

 うっ、っと喉を詰まらせて、彼らに背を向けて自分にだけべっと舌を出すシルに、彼はとうとう観念した。

 

「分かり、ました……」

「一名様ご来店です!」

「いらっしゃいませニャー!」

 

 酷い、これが神様が言っていた詐欺とか言うものだろうか。

『ええか、ベルたんは素直でええ子やけど世の中はそんなんばっかちゃうからな?』と何時も優しく自分を助けてくれる神様が、このときばかりは何時もより恋しく感じた。

 

(神様ごめんなさい……ご飯買って帰れなさそうです)

 

心の中で懺悔して、ベルは案内されたカウンターへと腰を下ろした。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

「どうですか? ベルさん」

「美味しいです、とっても」

 

 不承不承ながら食べた料理は、美味しかった。

 自分の主神が事前に用意してくれていたりする料理にも匹敵するかもしれない。

 値段の方はやはりこの味だけあって、駆け出しの彼からすればちょっと、いやかなり高額ではあるが、なんというかそこらへんの了見は抑えているようで悪戯に高額なものは出されなかった。これが最後の良心と言う奴だろうか。

 

「良かったです、喜んでいただけて」

 

 シルの微笑みにベルは苦笑いを浮かべる。騙されては駄目だ、これは迷宮奥深くに潜む獰猛なモンスターが浮かべる猟奇的な笑みに違いない。

 首をぶんぶん振って意識を戻して、また惹き込まれる前に話を変えようと疑問に思っていたことを口に出す。

 

「そう言えば、シルさんはどうしてバベルに居たんですか?」

「夜のバベルを訪れるのってなんだかワクワクしませんか?」

 

 はぐらかされた。ベルにも分かる対応。詮索して欲しくないことなんだろうということはなんとなく分かった。

 

「じゃあ、次は私の番ですね。ベルさんはどこのファミリアに所属されているんですか?」

「えっと……」

 

 何時の間に交代制になったのだろうか。疑問が沸くが目下それより処理しなければなら無いことがある。

 

 シルの言葉にベルは口ごもった。何故かと言えば彼の主神より口止めされているから、と言うのが一番大きい。

 どうしかは知らないけれど自分の神様はご自身の名前を隠したがる。強いて言えば、絡まれたり面倒ごとになったら出せ、といわれている程度で、今のところ必要に差し迫られて言うしかなかったエイナ以外、ベルの所属ファミリア、もとい神の名前を知るものは少ない。

 

 たしかにエイナに告げた時の反応を見れば、ベルがあずかり知らない所でもしかしたら何か凄いことをしていたのかもしれない程度には考えてはいたが、酒場でギルドの再演は正直勘弁したかった。

 

 その反応をどう思ったのか、シルは小首をかしげる。

 まるで小動物のような可愛さに、ベルも思わず彼女にならと口を滑らしかかったが、口をぎゅっと結んで耐えた。

 

「教えて、下さらないんですか?」

「す、すみません……神様から言うなって言われてて」

「……なら、仕方ありませんね」

 

 ごめんなさいベルさん、と謝る彼女にベルはなんだか居た堪れない気持ちになった。

 外面にだまされてはいけないと誓ったのはついさっきのことなのに、長い間教え込まれた女性に対しての優しさだとかが、ここにきて、その誓いの土台を思いっきり揺らしてくる。

 

 早くお暇しないと罪悪感に押しつぶされそうになる、そう思って急いで残りを食べ切って、口元を拭い席を立つ。

 勘定をしようと、懐から財布を───

 

「……あれ?」

 

 ぱたぱたと体を探って見るも、無い、無い……無い!?

 

(お、落としちゃった!?)

 

 記憶を手繰ってもバベルに居たときに取り出したぐらいで、後は出した覚えは無い。

 だとするとバベルにあるのだろうか。

 いや、流石にもう誰かが持っていってしまっただろう、と言うことぐらいは短いながらもオラリオで生活している以上理解している。

 青くなった顔をシルに向けた。

 

「し、シルさん……」

「どうしました、ベルさん?」

 

 未だ他の客のところに行かず佇む彼女に、事情を告げる。

 すると彼女は顔を伏せた。

 

「……それは、大変なことをしてしまいましたね、ベルさん」

「ご、ごめんなさい……」

 

 恐縮するベルに、だが顔を上げたシルはパッと笑みを浮かべる。

 

「大丈夫ですよ、ベルさん。お誘いしたのは私なんですから、ここは私がお支払いします」

「で、でもっ」

「その代わり」

 

 ずいっと顔を近づけるシルに、思わず状況を忘れてベルは顔を赤くする。

 

「今度また来てくださいね? お代はその時纏めて払っていただければ結構ですから」

 

 まるで女神のように微笑むシルに、かといって何か代案を出せる訳でもないベルは申し訳なさを一杯に頭を下げて、了承した。

 

「わ。分かりました……」

「絶対、絶対ですよ?」

「はい、必ず」

 

 頭をもう一度下げて、店を後にしようと足を動かす。

 絶対に、来ないと駄目だ。でもその前に神様に謝って───

 

「ベルさん」

 

 その声に振り返った。

 

「今度も、()()()で来てくれますか?」

「え、えっと、……はい」

「よろしくお願いします、ベルさん」

 

 何か気圧されるようなものを感じて少したじろぐも、情けをかけられてそれを恩を感じている自分に拒否権は無い。しっかりと頷いた。

 

「では、またのご来店楽しみにしていますね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オラリオに朝がやってくる、ちゅんちゅんと小鳥がさえずり、ほんの数刻だけ僅かに静かになったオラリオが再び俄かに活気づく。

 ふらふらと歩く黄昏色の髪の幽鬼が一人、そんな街の喧騒を背に自分のホームのドアに手をかけた。

 

「ただいまぁ……」

 

 ゆらゆらと揺れながら、階段を上がる。ソファーで寝るなんてことはしない。堅いし、ベルたん居ないし。

 

(……あ、でもベルたん早起きやったよな?)

 

 農村生活で鍛え上げられたらしい、そこらへんの鶏より早く起きる彼の健康生活に、ロキも影響を受けたのと朝の寝顔見たさで頑張ってはいたが、やはり本職には付け焼刃では勝てないのか今のところ全敗中だ。

 今は何時だろう、こってりと根掘り葉掘り聞かれて開放されたのが6時ぐらいだった気がする。

 

(多分、もうダンジョン行ったんやろな)

 

 寂しいが、仕方ない。疲労が極限にまで達しているので唯でさえ細い目が限界まで閉じられていた。

 

(でも、なんとか、なんとか『馴れ初め』とかは隠し通したし……)

 

 これで面倒なことになるのは避けられただろう。主に自分が。

 ぎぃっと二階の寝室のドアを開ける。

 

「……あれ、ベルたん?」

「あ、か、神様」

 

 偶々寝室に居たのか、丁度髪を梳いていた子供と会う。

 その幸運に目に光が宿り、覚束ない足取りで抱きついた。

 なんだか気まずそうだが、そんなのどうでも良かった。

 

「え、ええ!?」

()()、してきたから……お休みぃ」

「と、取引?」

 

 

 神様、大丈夫ですか!? と言う子供の言葉を眠り歌にロキは意識をベルの胸に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 50階層。モンスターの生み出されない深層の安全階層であり、所属ファミリアがそこで休息(レスト)を取っている中、喧騒から少し離れた位置で立っていたリュー・リオンは、続く51階層への道を見つめていた。

 これで何度目かとなる深層への攻略、一応でも【ヘスティア・ファミリア】に所属する身として足を引っ張らないように、気を緩めないつもりで視線を鋭くさせようとした。

 

 そのとき後ろから来た足音に、リューははっとして顔ををそちらに向ける。

 

「リヴェリア様……」

「楽にしろ、リュー」

 

リヴェリア・リヨス・アールブ、【ヘスティア・ファミリア】の副団長であり、エルフの自分が敬愛すべき王族(ハイエルフ)である彼女に思わずかけられた言葉に反して、身を強張らせた。

 そんな様子をどう思ったのかリヴェリアは大きく嘆息する。

 

「私の前でそう畏まる必要は無い」

「しかし……」

 

 口ごもるリューにリヴェリアは嘆きつつも、彼女が自分の所属するファミリアに対して抱いている()()()()()()()()()と、それを遥かに凌駕する自分を尊ぼうとする胸中を理解はしているので、それ以上は何も言わないとばかりに話を変えた。

 

「それでだが、編成が決まった。お前はアイズと組め」

「『剣姫』ですか」

 

 ああ、とリヴェリアは頷いた。

 

「良い機会だ、何も無理に『友人』として付き合おうとしなくてもいい。ただ『仲間』として振舞えるように努力してみろ」

「……」

 

 すっとリューは敬愛すべき王族(ハイエルフ)の背後から聞こえる笑い声に目を向けた。

 小人、アマゾネス、エルフ、ヒューマン、ドワーフ。これから潜るメンバーを彼女は一瞥して、リヴェリアへと視線を戻す。

 

「出来うる限り、努力します」

「そう肩肘を張らなくてもいいのだがな……」

 

 リューは軽く頭を下げて、リヴェリアの横を抜ける。

 すこし駆け足で会話に加わりに言った彼女を、ハイエルフは微笑みながら見送った。

 

【ヘスティア・ファミリア】と【ヘファイストス・ファミリア】の合同遠征、俗に『大遠征』と呼ばれるダンジョン最前線の『冒険』は、今まさに佳境を迎えようとしている。

 




次回の話はもう大分書きあがっているので一週間以内にはお披露目できるかなと考えてます。

それと、誤字報告ありがとうございます。顔から火が出るくらい恥ずかしい思いで修正させていただきました。重ねて御礼申し上げます。

誤字脱字、アドバイス等あると嬉しいです。

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