このスバラシイ神機使いに祝福を!   作:トメィト

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原作の流れを阻害する内容が書かれています。
今更ですが、ご注意ください。


この強敵と激闘を!

 

 

 

 

 

 

 

 「嫌ー!回復魔法だけは嫌よ!私の存在意義を奪わないでよ!私が居るんだからいいじゃない!うぁああああん!!」

 

 

 例の如くギルドの酒場で、アクアの泣き声が響き渡る。本当になんなんだろうなぁー。また厄介ごとかなー。

 

 

 「みんなおはよう。で、そこで泣いているアクア………今度は何をやらかして泣いてるの?多額の借金でも抱えた?」

 

 

 とりあえず、この元女神が泣いている事はわりと頻繁にあるのでスルーしつつ、状況を把握しているであろう他の三人に話を伺う。

 

 

 「あぁ、仁慈か。おはよう。それがなぁ……」

 

 

 「カズマがアクアから回復魔法を教わろうとしたんですよ。で、そのときにカズマのえげつない口撃が火を噴いたようで……」

 

 

 「メンタル面も脆弱なアクアは泣き出した、と」

 

 

 でもなんかリアクションがおかしい気がするんだよなぁ。何時ものアクアならこう、机に突っ伏すんじゃなくて、カズマにすがり付いて泣き叫ぶ感じだと思うんだけど。

 そんな疑念を抱きつつアクアのほうを見てみると、

 

 

 「…………」

 

 

 こちらをじっと観察していた。涙も浮かべていない瞳で。

 

 

 

 「…………」

 

 

 嘘泣きかよ………。女神が泣き落としとは、字面だけ見ればこれ以上ないほど効果がありそうなのにその女神がアクアだと分かった瞬間有用性が消えているように感じるな。これも常日頃の行いという奴なのか。

 

 

 割と初めからだけど、ここ最近はさらにアクアを女神と思えなくなった気がする。もうそこらへんに居るダメ人間でしょこの人……。親近感が沸くといえば聞こえはいいかもしれないけど、言い換えれば神としての威厳がないとも言えるからなぁ。

 嘘泣きに気付いたらしいカズマも自身の拳をかなりの力で握り締め、眉間に皺を寄せまくっていた。

 

 

 「緊急、緊急!全冒険者の皆様は直ちに武装して、戦闘態勢で町の正門に集まってください」

 

 

 しかし、そんな空気の中、ギルド職員がこの前のような放送を使わず肉声でこんなことを口にした。キャベツはこの前収穫したことと、切羽詰ったような様子からこれはキャベツのように想定されていなかった事態だと予想し、ギルド職員の言うとおり、武装してこの町(そういえばこの町の名前知らない)の正門に集まった。

 

 

 外に出てみると、空は分厚い雲に覆われ、所々雷が落ちていた。先程の空気とは一転して今にもラスボスが出てきそうな雰囲気である。

 

 

 「あ、あれは……!」

 

 

 正門に集まった冒険者の誰かがそう言った。

 皆が彼と同じ場所に視線を移すと、落雷をバックに、首無しの馬に乗って佇んでいる同じく首無しの騎士が居た。首から上は自分の左腕に抱えている。………ああいう妖怪が居たよな西洋に。なんだっけ………。

 

 

 「なになに?」

 

 

 「何だアイツ。無茶苦茶強そうだぞ!」

 

 

 

 確かに。

 今まで戦ってきた奴らとは一戦を画す雰囲気を纏っている。アレは強者が発する雰囲気だ。

 

 

 「俺はつい先日、この辺りの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが………毎日毎日毎日毎日ッ!お、俺の城に!毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んで来る、頭のおかしい大馬鹿は誰だぁああああああ!!!」

 

 

 うん?なんだろう。すごく心当たりのあることをいわれた気がする。

 再び落ちた雷とタイミングを共にナポレオンみたいなポーズを取る自称魔王軍幹部の者。はたから見ても分かる。激おこぷんぷん丸である。

 

 

 「アレはデュラハンか!?」

 

 

 あぁ、そうだ。デュラハンだデュラハン。思い出した。

 というか、あのデュラハン、さっき爆裂魔法って言ったよな?そうだよな?

 

 

 「爆裂魔法?」「爆裂魔法を使えるっていったら……」「爆裂魔法って言ったら……」

 

 

 周囲に居た冒険者の視線が一斉にめぐみんへと殺到する。彼女は自分に向けられた視線を横にずらした。

 すると、たまたまそこに居た魔法職の人が目に見えてうろたえていた。普通だったらかわいそうに、と思うのかもしれないが今の俺にそんな余裕はない。

 だって、思いっきり片棒担いでいるんだもの。毎日毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込む頭のおかしい奴を毎日欠かさず運送していたもの。

 

 

 めぐみんに向けられていた視線をキラーパスされた魔法職の人はもうパニックだった。さすがにいたたまれないと思ったのか彼女は震えながらも前に出る。これ、俺も言ったほうがいいかな。

 

 

 

 「お前が……」

 

 

 デュラハンが目の前まで来ためぐみんに………あらん限りの文句を口にした!

 

 

 「お前が毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んでくる大馬鹿者か!俺がぁ↑魔王軍の幹部と知って喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてくるがいい!その気がないなら町で震えているがいい!!ねぇ、なんでこんな陰湿な嫌がらせするの?お前の所為であの城半壊して、完全に野晒しなんだけど!?雨風も防げないんですけど!?どうせ雑魚しか居ない町だと放置しておれば、調子に乗って毎日ポンポンポンポン撃ちこんできやがってッ!頭おかしいんじゃないか!?貴様ァ!」

 

 

 正論だった。アイツが魔王軍の奴ということを除けばもう速攻で土下座して壊した城を直すレベルのものだった。

 でも、相手は極論で言うと人類の敵だし、冒険者としてはこの行動が正しくも感じるような感じないような……。

 これは謝罪するべきかしないべきか、迷うな。

 

 

 「………っ、我が名はめぐみん!アークウィザードにして、爆裂魔法を操るものッ!!」

 

 

 

 めぐみんが自身を振るい立たせる意味も込めて何時もの名乗りを上げる。それに大したデュラハンは、

 

 

 「めぐみんってなんだ。馬鹿にしているのか!?」

 

 

 「ち、違うわいっ!」

 

 

 デュラハンでも思うのか。そのこと。

 

 

 「我は紅魔族のものにしてこの町随一の魔法使い。爆裂魔法を毎日撃ち続けていたのは、魔王軍幹部である貴方をこの町におびき出すための作戦……こうしてまんまとこの町に1人で来たことが、運のつきです」

 

 

 え、何それ初耳。

 

 

 「……いつの間に作戦になったんだ?」

 

 

 「というかさらっとこの町随一の魔法使いとか言ってたな」

 

 

 「毎日めぐみんのこと運送してきたけど、作戦だなんて初耳だったな」

 

 

 『仁慈(お前)の所為かッ!?』

 

 

 はい、ごめんなさい。まさかこうなるとは思ってなかったんです。

 

 

 「しー。今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろに沢山の冒険者がいるから強気なのよ。今いいところだからこのまま見守るのよ」

 

 

 アクアの言葉に納得したのかカズマとダクネスは黙って視線を戻す。

 

 

 「フン、まぁいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいかけにこの地に来たわけではない。しばらくはあの城に滞在することになると思うが、これからは爆裂魔法を使うな。いいな」

 

 

 あら、意外と紳士的だぞあのデュラハン。というか、あの人何気に俺がこの世界に来てから会った中で一番完璧な性格をしているのではなかろうか。おしい。人間だったら速攻で友達になるレベルなのにっ。

 

 

 

 「無理です。紅魔族は一日に一回爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」

 

 

 それお前だけだろ。

 

 

 「お、おい!聞いたことないぞ、そんな話!適当な嘘を吐くなよ!?………どうやっても爆裂魔法を撃つことを止める気はないと?」

 

 

 「(コクリ)」

 

 

 頷くな頷くな。

 別にあの城じゃなくてもそこらへんに的はいっぱいあるだろ。

 

 

 「俺は魔に身を堕とした身ではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない……だが……」

 

 

 「ふん。余裕ぶっていられるのも今のうちです!……先生!お願いします!!」

 

 

 おい。いい感じで話が終わりそうだったのに、何でこうややこしい事態にするの。今回は片棒を担いでるからあんまり強くいえないけどさ。もっとこう、あるじゃん?他にも対応ってモノが。後、そんだけ火に油を注いでおきながら丸投げかよ。

 

 

 「おい……」

 

 

 「え?もう、しょうがないわね」

 

 

 カズマは呆れているが、何故かアクアはやる気満々らしく、デュラハンとめぐみんの元へ駆けて行く。

 

 

 「あ、すいません。アクアじゃなくて仁慈のほうです!」

 

 

 おぉっとここで、めぐみんからのチェンジコール。アクアは道半ばで呆然としています。というか、名指しされたんだけど……行かなきゃダメだろうか。

 

 

 「この騒動の片棒ガッツリ担いでんだから、おとなしく行け」

 

 

 「ですよねー」

 

 

 仕方がないので、小走りでめぐみんとデュラハンの元へと向かう。

 そうして目の前まで来た俺をデュラハンは面白そうな目で見た。

 

 

 「ほう、狂戦士とは……これは珍しいものを見た。その職業はその名の通り戦いに狂ったモノ達が率先してなる職業……それになるとは相当外れた奴のようだが、俺は仮にも魔王軍の幹部の1人。こんな町にいる低レベルn」

 

 

 「隙あり」

 

 

 

 「え?ぬぅおおおお!?」

 

 

 

 なんか1人で長々と語っているので、その隙に体勢を低くして左腕に持っている頭の視界に入らないようにしつつ、素早く背後に回りこむ。そして、そのまま馬に乗っているデュラハンを蹴り飛ばす。

 落馬したデュラハンは困惑していて、未だに行動を起こさないために俺は左腕にあった頭を地面に叩きつけて埋めると、無防備な体をマウントポジションから殴りつける。

 

 

 「連打連打連打連打」

 

 

 

 いつ死ぬか分からないけど、とりあえず死ぬまで殴り飛ばせばいいかな。

 

 

 

 

          

 

 

           ――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺も最近になって鬼畜とか言われ始めたけどさ、アイツのほうがよっぽど鬼畜なんじゃないかな。

 マウントポジションを取ってひたすら首のない西洋鎧を殴りつける仁慈を見ながらそんな事を考える。

 

 

 「えっ、ちょ、待て!待て!き、貴様ぁ!もう少し正々堂々と戦えんのか!?」

 

 

 「何言ってんだ。戦いっていうのは何でもありでしょう?油断しているほうが悪い」

 

 

 「そうだが、そうなんだが!いいのかこの絵面!」

 

 

 「形式に囚われてはいけません。争いとはもっと醜いものなのです」

 

 

 「その割には満面の笑みを浮かべおってッ!ええい、調子に乗るなッ!」

 

 

 

 コントのようなやり取りをしていたデュラハンと仁慈だったが、デュラハンが乗っていた同じく首のない馬が仁慈を蹴り飛ばそうとする。

 それに気付いたらしい仁慈は、いち早くデュラハンの体から飛び退き、馬の攻撃を回避した。その隙にデュラハンは自身の頭を抱えて体勢を立て直していた。

 

 

 「何なんだお前!?え?この町駆け出しの冒険者達が集まるところじゃないの!?ま、まさか……名だたる冒険者の1人が、たまたま滞在していたというのか!?」

 

 

 「いや、つい最近冒険者になったばっかりだけど。レベルもまだ5ぐらいだし」

 

 

 「レベル5!?えぇい、初めに気付くべきだったわ!頭のおかしい奴の仲間はおかしい奴だと!!」

 

 

 「失礼な、頭取れてる奴に言われたくないね」

 

 

 

 お互いに言葉を交わしながらも俺には決して見えないレベルの戦闘を繰り替えす2人。

 その様子に他の冒険者を初め、仁慈を呼んだめぐみんすら唖然としている。というか、アイツだけやっぱりおかしいよな。

 デュラハンの大きな剣と、仁慈の変わった武器が激突して火花を散らす。しばらく拮抗していたが、やがて仁慈のほうが弾かれた。

 

 

 「力強いな……」

 

 

 「フン、レベル差というやつだ。………むしろ、ここまでのレベル差があるにも関わらずここまで堂々と戦えるほうが異常なのだ………貴様、一体何者だ?」

 

 

 

 「樫原仁慈。職業はさっき言ったように狂戦士やってます。よろしく」

 

 

 

 「そういうことじゃない!だが、名乗られたからには元騎士として名乗り返しておこう。俺は魔王の幹部の1人、デュラハンのベルディアだ。………元々は爆裂魔法を使う頭のおかしい奴に忠告するために来たんだが……思いもよらない収穫だったな。ここで貴様との決着をつけるにはおしい。また後日、俺の城に来るがいい。そこで決着をつけようぞ」

 

 

 

 仁慈が吹き飛ばされ、一定の距離が出来たデュラハンは仁慈にそう語りかけた後に、地面から吹き出した闇に飲まれて消えていった。

 

 

 仁慈は少しの間戦闘態勢を解かずに、ベルディアが消えたところを注視し続けていたが、本当に帰ったと判断したらしく武器を肩に担いで帰って来た。

 

 

 

 「強かった(小並感)」

 

 

 「他にもっと言うことあっただろ……」

 

 

 魔王の幹部と激闘を繰り広げておいて感想はそれかよ。あまりにも緊張感がない仁慈に思わず呆れるが、他の冒険者達はそうではないらしく、仁慈を取り囲んでお祭り騒ぎだった。

 

 

 

 「頼んでおいてなんですが、仁慈はやっぱりおかしいですね」

 

 

 「なによ!アンデット相手だったら私もあのくらい出来るんだから!」

 

 

 「本当に仁慈は強いんだな………あの力で殴ったりしてくれないものだろうか……」

 

 

 「はぁ……なんかどっと疲れたわ……」

 

 

 とりあえず、仁慈も改めてまともじゃないということが今回のことで分かった。俺のパーティーに普通の奴は居ないのか。

 そんな事を考えていると仁慈が小声で「お前が言うなパンツ泥棒」と言った。それはもう言うなよ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

                緊急クエスト

 

 

           デュラハンの撃退  クエストクリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まともな戦いが出来てベルディアさんは満足そうです。
ただし、所々神機に食われた剣を直すのに苦労した模様。

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