あと、適当に書きなぐっただんまち編が意外と好評でした。
さっさとこのすば編書けとか言われるかと思ったけど……続きとかまったく考えてなかったんだけど、まぁいいよネ!(投げやり)
どうやらこの世界マジでキャベツと一戦交えるつもりらしい。
アクア曰く。この世界のキャベツは味が濃縮してきて収穫の時期になると、食われてたまるかと言わんばかりに町や草原を疾走し、最終的には人知れない秘境のようなところでひっそりと息を引き取るらしい。
まぁ、言いたいことは割と沢山ある。
何でキャベツが飛ぶのかとか、何処から声を出しているのかとか、そもそも呼吸する器官があるのかとか色々ある。
けれど、俺が一番言いたいのは………このキャベツ、どれもコレも地味に強いことだ。
キャベツ一つにつき一万エリス(要するに一万円)分出すらしい。キャベツを捕まえるって何だ。斬ったりしたらダメなのだろうか……。
念のため、神機は使わずに素手で相手することにするが、先程も言ったとおりこのキャベツ……地味に強い。
アバドン張りに的が小さいにも関わらず、その早い速度から成される体当たりの威力は割りと洒落にならない。
今俺がキャベツを蹴り返したり、地面に叩きつけている横で、何人かの冒険者がキャベツ君に吹っ飛ばされたー!しているのを目撃している。ガッツでどうにかなるレベルではない。
カズマなんて遠い目をして帰っていいかなと呟いていたりする。
頑張れ。一体につき一万エリスはなかなか高いぞ。お得だお得。
というか、他人に意識を向けてる場合じゃない。この数を捕まえるとなるとさすがに骨が折れる。
次々とやってくるキャベツをオラオララッシュで迎撃しつつ、流れが途切れた隙に近くに居るキャベツたちを拾い上げて、キャベツ収容所へシュートする。
それを数分くらいやると、俺を倒すことは得策ではないと考えたのか、今度は俺が居る場所を避け始めた。ついにキャベツにすら避けられるようになったか……。
若干ショックを受けて、がっくりと肩を落とす。その後、顔を上げると、俺の視界にキャベツの群れに突っ込んでいくダクネスの姿を捉えた。
彼女は手に持った両手剣をキャベツの集団に対して振るうが、なんということでしょう。一回もあたらないではありませんか。……自己申告で聞かされていた不器用という言葉は間違っているわけではないらしい。むしろ、アレは不器用というレベルで片付けていいのだろうか。
そんな中、ある冒険者が自分よりも大きい冒険者の下敷きになり動けない事態が発生した。
キャベツたちはそれをチャンスと捉えたのか、その冒険者に殺到する。いち早くそのことに気付いたダクネスは、剣を捨てて、自身の体を通してその冒険者達を庇った。キャベツは遠慮することなく次々とダクネスの体に体当たりしていく。
鎧が取れ、服が切裂かれてもなお力強く立ち、後ろの冒険者を守る様はまさしく騎士の鏡だろう。実際、周りに居る冒険者達もダクネスを尊敬しつつ心配した目で見ている。
けれど……俺が注目しているのはそこじゃない。……赤みを増した頬である。
視線を周囲に居る冒険者、特に男に向けて、頬を染め上げ息を荒げて悦んでいるダクネスの姿を見た。
ここまでして、痛みを求める姿は尊敬に値するな。俺はしないけど。
「我が必殺の爆裂魔法を前にして、何者も抗うこと叶わず」
やべぇ……変な奴二号が始動しやがった……。
嫌な予感がした俺は神機を持って行動を開始。キャベツの大群に体当たりされて悦んでいるダクネスのそばに近寄り、彼女に向かってくるキャベツを神機で両断しながら話しかける。
「ここはいったん自分が受け持ちますから、後ろの2人を連れて逃げてください!」
「何を言う!仲間を庇うのはクルセイダーである私の務め!仁慈の方こそ、後ろの2人を連れて逃げてくれ!」
「今背後で爆裂娘が魔法を使おうとしてます!思いっきり俺たちを巻き込む気です!今のアイツは大量の敵を焼くだけのことしか頭になくて俺たちのことはまったく考えてません。このままだとキャベツと一緒にBBQにされます!」
「なに!?………それほどまでの威力なのか……」
「あぁ、もう!ホントダメだコイツ!!」
「光に覆われし漆黒よ、夜を纏いし爆炎よ――――――」
ダクネスの駄目さ加減に思わず罵倒する。それを受けてさらに悦ぶダクネスに呆れると、後方からめぐみんの詠唱が聞こえてきた。
なんで毎回毎回、詠唱内容が違うんですかね………。
そんなことを思っていると、俺たちが居る場所を中心に赤い色の魔方陣が形成された。この段階までくると、爆裂魔法発動まで秒読みだ。
俺は一向に引く気がないダクネスを放置して、彼女に庇われていた冒険者2人を掴んで脱出した。
「お、おいあの人はどうするんだよ!」
「引く気がまったく感じられないので放置です」
「あの人は俺たちの恩人なんだぞ!?見捨てられるか!」
冒険者の1人がそう言った瞬間、
「エクスプロージョン!」
ダクネスが居た場所を中心にして、膨大な熱と爆音が響き渡り、この世界に来てから見慣れてしまった、天も燃やし尽くしそうな火柱が立った。
そして例の如く衝撃に巻き込まれる俺。
爆風に逆らわずある程度流された後、影響が弱くなった場所で体勢を立て直して着地する。この動きにも慣れたものである。
「……今から、貴方も焼かれに行きますか?アレに」
「…………思えば、兄ちゃんはしっかりと忠告してもんな。それであの場にあの人が残ったんだ。自己責任だよな。うん」
分かってくれたようで何より。
さてと………とりあえず、自分の欲望を優先して勝手に魔法を発動した馬鹿を説教しに行くとしますかね。
――――――――――――――――――――――
「おぉ……」
何だコレ無駄に美味いぞ。
ムツミちゃんの料理に匹敵するレベルのおいしさだ……。
と考えつつむしゃむしゃ食べているのは先程一戦交えたキャベツたちで作られた野菜炒めである。
キャベツと他の野菜が少しだけ入っているだけなのにとってもおいしいということはよほどキャベツそのものが美味いということになる。何だろう。動くようになって味も進化したのだろうか。
むしゃむしゃしていると、アクアやめぐみん、ダクネスがお互いの健闘を称えあっていた。まぁ、どれもコレもいまいち同意しにくい内容だった。
「貴女さすがクルセイダーね。あの鉄壁の守りにはさすがのキャベツたちも攻めあぐねていたわ」
味方を爆炎の中に引きずりこもうとしてましたけどね。
「アクアの花鳥風月も見事なものでした。冒険者達の士気を高めつつ、キャベツの鮮度まで保つとは……」
「まぁねー。みんなを癒すアークプリーストとしては当たり前よねー」
俺の思ってた癒しと違うんだけど。
「それ、大事か?」
「何言ってるの。アークプリーストの魔法の水は、とっても清いのよ」
「「へー」」
とてもどうでもいい情報をもらった。
「めぐみんの魔法もすさまじかったぞ。キャベツの群れを一撃で吹き飛ばしていたじゃないか」
「ふふん、紅魔の血の力思い知りましたか」
「あぁ、あんな火力の直撃喰らったことはない」
味方から攻撃されたことに違和感を覚えようぜ。
このままだと本気で誤射姫コースだぞ。めぐみん。
「直撃させんなよ……」
「「はぁ……」」
カズマと溜息のタイミングが重なる。
めぐみんの奴、あれだけ説教したのにかけらも反省してない……。やはり誤射姫と同じく修正不可能なのだろうか。
「あ、そういえばカズマもなかなかのものだったわよ」
アクアの言葉で一気にカズマに注目が集まる。
そうなのだ。この男、習得した盗賊スキルと潜伏スキルの両方を使って何ちゃってアサシンをやっていたらしく、ちゃっかり結構な数のキャベツを集めていた。
このことからアクアから華麗なるキャベツ泥棒の称号が送られていた。実にいらない称号である。
「やかましいわ!………そういえば、仁慈もおかしかったよな」
「ん?何かおかしかった?」
「いや、だってお前。物凄い数のキャベツが四方八方から来たのに全部捌ききったじゃねーか。一瞬日向かと思っちゃったぜ」
仁慈は極東にて最強とか言っちゃうの?極東最強は問答無用でユウさんだと思うけどね。
「そういえばそんな動きもしてましたね。おかげでキャベツにも避けられる始末です」
「私、キャベツに逃げられる奴は初めてみたわ……」
アクアに呆れられるとか屈辱の極み過ぎる……。
あまりのショックに机に突っ伏す。
俺がそんなことしている間に、ダクネスが正式にカズマパーティーに加入してしまった。
頑張れカズマ。お前の苦労はさらに加速するだろうけど、超頑張れ。
仁慈「あのさ、せめて味方に被害が及ばないようにしてくれないかな?」
めぐみん「仁慈ならアレくらいどうってことないでしょう?」
仁慈「俺以外にも人居たでしょうが!」
めぐみん「わかりました。今度は仁慈かダクネス以外が居たときには使わないよう努力します」
仁慈「俺もその項目から外せよ」