不死姫の物語   作:炎海

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どうもおはこんばんにちは炎海です。

当初の予定だと半分くらいの量だったのにどうしてこうなった。\(^o^)/
いやあ、いとクソおかしいこともあるもんですよね。気がついたら次回に入れる内容を取り込んでいたんですから。オマケに多機能モードの仕様変更まで重なるとは、あれ個人的には前の方が良かったのに……。

結局海風でなかった悲しみを背負いつつ、それでは本編開始!



第4話

 カラスに掴まれてどれだけだったか。デーモンとの戦いや、外に出た時のショックもあり少しウトウトとしていた少女は、カラスのの突然の鳴き声に目を覚ました。

 

 「何……?どうかしたの?」

 

 少し前は足下の高さに怯えていたのに、今は慣れたどころか居眠りまで始めるとは、我ながら見事な順応性だな。と、少女は半ば呆れていると、向こうの景色、今までは山ばかりであったそこに街のようなものがあるのが見えた。

 どうやらカラスはその街……、ではなくその更に上の建物のあたりに向かっているらしい。そのままだんだん建物の下の広場のような場所へ近づいていき……。

 

 「へ?ーーぶっ!」

 

 いきなり放り出され、少女は顔面から盛大に落下……、もとい着地した。

 

 「……痛ったぁ!ちょっと、いきなり離さないでよ!」

 

 顔面で着陸した痛みに悶えながらカラスに文句を言いつつ、少女は辺りを見回しつつ状況を確認し始めた。

 少女がいるところは、村の集会場程度の広さの場所で、その真ん中にはおそらく篝火であろうものが、すでに点火されていた。その奥を見やると、まるで遺跡のような廃墟があった。その荒れようは不死院以上で、僅かな壁しか残っていない。上を見上げると、先ほども見えた建物があり、そこから橋が伸びて崖を挟んだ向こう側の街に続いていた。

 そうやって少女が見回していると、気だるそうな男の声が男の声が聞こえてきた。

 

 「へぇ、新しいヤツが来るのは久しぶりだな」

 

 青いチェーンメイルをきた、死人のような目をした男だ。

 

 「あなたは?」

 

 少女は男に尋ねるが、男はどうでもよさそうに少女に語りかける。

 

 「どうせあれだろ?不死の使命がどうとか。呪われた時点でおしまいだってのにご苦労なことだよ。不死院でじっとしていれば楽だったものを……」

 

 男のその声には嘲りと、後悔の念が込められていた。

 

 「あなたも、不死の使命を?」

 

 少女の問いに、男は鼻を鳴らして答えた。

 

 「ふん、不死の使命ねぇ。あんた、それを知りたいのか?」

 

 少女はこくりと頷く。

 

 「不死の使命がなんなのかは知らないが、その方法なら知っているさ」

 「目覚ましの鐘を鳴らせばいいんでしょ?そのくらいなら」

 

 知っている。そう言おうとした少女を遮って男は言った。

 

 「じゃあその鐘が二つあるってのは?んでその場所は?」

 「それは……」

 

 少女は黙り込む。場所はおろかこの周辺のことも少女はまだ知らないのだ。そして、鐘が二つあることも。

 

 「どういうこと?詳しく教えて」

 

 「知りたがりは好きじゃないがまあいい、どうせ暇なんだ。さっきも言った通り鐘は2つある。1つはここより上、あそこに建物があるだろう」

 

 そう言って、男は先ほど見えた建物を指差す。

 

 「あそこが不死教区っていって、名前の通り教会がある。そこの一番上に鐘があるのさ」

 「じゃあ、この上に登れば」

 

 そう言う少女に、男は笑いながらかぶりを振る。

 

 「ところがどっこいそう上手くはいかないんだよ。昔はリフトがあったらしいんだが、今は壊れてて動かねえ。だからほら、そこに階段があるだろう」

 

 そう言って、男は少し離れたところにある階段を指す。

 

 「そこから水道橋の中を伝って向こうに見える城下不死街に行き、そこから不死教区へ続く橋を通っていかなきゃならねえ。だがその城下不死街も問題でな、元々が不死の街だったせいか亡者で溢れかえってる。今じゃあまともな奴なんぞほとんどいない、亡霊街(ゴーストタウン)ならぬ亡者街ってわけだ、ハハハハハ……」

 

 枯れた笑い声を上げながら男は話を続ける。

 

 「もう1つの鐘は?」

 「ああ、ここの更に下、水没した小ロンド遺跡を経由した先にある『病み村』って言う所の奥だ。まあそっちの道も塞がれているから、行くには不死街の最下層、下水道を通っていくしかねえ。もともと病み村は不死街を追われた奴らの集まった場所だから、不死街からも続いているのさ」

 「追われた?不死街を……?」

 「そうだ、病み村ってのは文字通り疫病で隔離されたやつらの住んでいたとこだ。いや、不死は死なねえから今も住んでいるか?ま、もっともあいつらは既に亡者だろうから生きているか死んでいるのかもわからないが。おまけに奥にはデーモンの住むイザリスと繋がってるときた、俺なら入るのも御免こうむるね」

 

 デーモン、その言葉に少女は息を呑んだ。あんな化け物がまだいるのかと。

 

 「イザリス?」

 「ああ、どっかの誰かがヘマやらかしたとかで炎に沈んだ、地下の古い国らしい。その周辺にはデーモンどもが住み着いていて、たまにこの辺にも現れるらしい」

 

 デーモンが、あの怪物が一体だけでなく他にも存在する。その事に戦慄しながら、少女は男に礼をつげた。

 

 「ありがとう。参考になったわ」

 「参考になった、ねえ……。あんた、本当に行くのか?」

 「ええ、他にやる事も無いもの」

 「やることがないならじっとしてりゃあいいもんを。なら行きな、どうせすぐにわかる。……………無駄なんだよ」

 

 それっきり、男は顔を俯けてしまった。

 

 

 

 

 行くとは言ったものの、用意をしなければすぐに死ぬだろう。少女は篝火の前で持ち物を広げて点検をしていた。

 エスト瓶、古い指輪、棍棒、木の板の盾、錆び付いた亡者の盾。直剣の柄や鍵束は除外する。どうせここでは使い道がないからだ。

 それと、近くの死体から黒いソウルのようなものを見つけた。少女にはよく分からないが、どうも違うらしい。そうやって必要なものとそうでないものを選り分けていると、ずっと黙っていた男が話しかけてきた。

 

 「あんたその顔、まるで亡者みたいじゃないか」

 「悪い?私も好きでこんな身体してるんじゃないよ」

 

 自分の老人のような身体を少し……、本当に少しだけ気にしていた少女は、その言葉に少しだけムッとして答えた。

 

 「ハハッ、まあいっそ正気も失っちまった方が楽かもしれないがな」

 「そうだね、こんな干からびた身体ならあとは心だけかもね」

 

 そう少女が答えると、男は眉をひそめて言った。

 

 「あんた、もしかしてその身体になってる理由を知らねえのか?」

 「え?干からびてるだけでしょう?」

 「あんた、本当になんにも知らないんだな」

 「まあ、ずっと閉じ込められていたからね」

 

 そう少女が答えると、男は「仕方ねえな」と言いながら話をし始めた。

 

 「その身体は人間性を失って亡者に近づいてるから起こるものだ」

 「人間性?これのこと?」

 

 そう言って少女は、先程見つけた黒いソウルのようなものを掲げる。

 

 「それだよ、そいつが人間性さ。あんたが砕けば勝手に体の中へ入ってくる」

 「え?砕いたけど何も起こらないよ?」

 

 そう言う少女に男はかぶりを振る。

 

 「それだけじゃダメだ。もとに戻るにはそいつを篝火に捧げる必要があるんだ。やり方は篝火と一緒さ」

 

 そう言われ、少女はその通りにやってみる。するとーー。

 体の中に暖かいものが入り込んでくるような感覚とともに、自分の身体が老人のような身体からかつての少女の身体を取り戻した。もっとも全てではない、拷問によって変色した髪は白いままで、肌も昔より少し白くなっていた。

 少女は立ち上がると自分の身体を見回す。やはり、老人のような身体よりこちらの方が嬉しいのは確かだ。

 その様子を見ていた男が再び喋りだす。

 

 「まあ、死に続ければ人間性は血とともに落ちて、またあの身体に逆戻りするんだがな」

 「ねえ、この人間性ってどうすれば手に入るの?」

 

 そうたずねる少女に、男は顔をしかめて答えた。

 

 「そうだな、死体から探すのが基本だが、他には聖職者みたく他の奴らと馴れ合うか、一番手っ取り早いのは他の不死を殺して奪うことだな。人を殺して奪うのがもしかしたら一番『人間らしい』のかもしれないがな」

 「へえ、そうなんだ」

 「おっと、俺を殺して奪おうなんざ思うなよ、安直な考えを後悔することになるぞ」

 「しないわよ。必要が無ければだけど」

 

 流石に正気の人間殺して奪うのは後味が悪い。何より自分ではこの男には勝てないだろう。そう思っていると、ふと男の言った単語が気になった。

 

  「聖職者ねえ……」

 

 正直な話、少女はあまり聖職者が好きではない。嫌い……というわけではない。少女のいた村の教会には、敬虔な白教の修道女がいた。その修道女には優しくしてもらったため、一概に嫌いとは言えないのだ。だが、好きかと言われればそうではない。修道女はそうでも神父はクズと言っていい人物だったのだ。外見だけは良く取り繕って、見た目には完璧な人物であった。しかし、その内側は真っ黒で、引き取った孤児の子供達と肉体関係を強要していたらしい。

 拷問施設に来た聖職者はもっと最悪で、一部では気に入った不死を「救済する」の名目で金で買い、飽きたら捨てるということを繰り返していたらしい。

 そんなクソのような話を思い出した少女に、男はどうかしたのかと問いかけるが、少女はなんでもないとかぶりを振った。

 

 「篝火に人間性を捧げれば、生身に戻れる他にも火を大きくすることができる。そうすればエスト瓶に入れて持ち運べる量も増えるのさ。もっとも、亡者のままじゃあそれすらもできなくなるがな」

 「へえ、そんなことが。教えてくれてありがとう」

 

 そう少女は礼を言うが、男はなんでもなさそうに首を振る。

 

 「さっきも言ったが暇なんだ。それと、知りたがりが好きなわけじゃない。教えてやるのは気が乗った時だけさ」

 「そう、じゃあ気が乗った時に期待してるね」

 

 そう言うと、少女は持ち物の点検に戻って行った。

 

 

 

 結論から言うと足りない、当然である。そのため、少女は奥にある廃墟を探索していた。火薬の詰まった壺や投げナイフなどを拾っていると、大きな壺が並んでいる場所に、男が1人佇んでいるのを見つけた。

 できる限りの情報がほしかった少女は、その男に声をかけることにした。

 

 「ねえ、あなた……」

 「おや?どなたか存じませんがこのような地で1人、何か事情がおありでしょう。お互い、あまり関わらない方がいいでしょう」

 

 いきなり話を遮られ、少女は内心で毒づく。この上から目線の物言い、自分が正しいと信じて疑わないような説教。間違いない、聖職者だ。

 面倒だとは思ったが、今は1つでも情報が欲しい。少女は再び話しかけ、強引に話を進めようとした。

 

 「ねえ、あなたもこの地にーー」

 「あまり関わらない方がよろしいと申し上げたのに、仕方ありませんね。これも何かの縁でしょう、これをお受け取りください。いえいいのです、遠慮せずに」

 

 男はまた少女の話を遮ると、一枚の銅貨を手渡した。少女は少しイラつきながらそれを見る。少女の住んでいた村ではあまり見ない意匠のそれは、村からほとんど出たことのない少女は知らないが、白教の盛んな国『ソルロンド』のものであった。

 

 「私はソルロンドのペトルスと申します。今は人を待っているのですが、どうでしょう?その間でよろしければあなたに白教の奇跡をお教えしましょう。もちろん身につくかどうかはあなたの誠意次第ですが」

 

 白教、主神ロイドを崇める宗教の1つである。そして奇跡とは魔術と似た、信仰によって発現するソウルの業のことである。

 ペトルスの言う誠意とはそのままの意味ではあるまい。そう思うと少女は返答を返す。

 

 「遠慮しておくわ、奇跡を起こせるほど自分が信心深いとは思わないもの」

 「そうですが、それは残念です」

 

 男ーーペトルスは表情では残念そうにそう言った。だが、その目は何を考えているのかわからず不気味なものであった。

 

 「ところで、あなたはどうしてここに?」

 

 やっと本題に入れる。少女はそう思いながらペトルスに尋ねた。

 ペトルスは「ふむ……」と何かを考える仕草をしながら答えた。

 

 「先程も申し上げましたが私は人を待っているのです。待ち人は、私の主人のお嬢様とそのお付きの方々です。若くして不死の使命を背負いこの地にいらっしゃる。私はそのお目付役といった所ですかね」

 「不死の使命?」

 

 騎士の言葉「不死の使命を知れ」と、ペトルスの言う「不死の使命」が同じかはわからない。しかし少女にはそれが気になった。

 

 「それはどんなものなの?」

 「簡単に言うことは難しいでしょうね。なにせ重要な使命ですから。ですが……そうですね、誠意を見せていただければ……」

 

 やはりか、少女は心の中で舌打ちをする。この男がまともに教えなどしないとは思っていた。しかし……。

 

 「誠意ねえ……。あいにくだけど、価値がありそうなのはこの銅貨くらいよ?」

 

 無一文どころかロクな着るものすらない少女には払えるものなどない。強いて言うならこの銅貨か、あるいは身体を売るくらいだろう、しかし……。

 

 「いえ、そうですね……あなたの持つソウルを少々」

 

 そう言われ、少女は意外に思ったがすぐに納得がいった。こんな荒れ果てた場所では、硬貨などより余程価値があるのだろう。

 少女はペトルスに提示された量のソウルを渡す。不死院のデーモンを倒したことで余裕はあったし、情報はなるべく欲しかったのだ。

 

 「確かにあなたの誠意、受け取りましたよ。ええ、お教えしましょう。白教に伝わる不死の使命とは『注ぎ火の秘儀』を手に入れることです。その力を得ることで我々は英雄となれるのです。

 

 「注ぎ火の秘儀?」

 「ええ、その力はここの地下墓地の奥にあると言われています」

 「そう、教えてくれてありがとう」

 

 正直な話、少女はペトルスをあまり信じていない。先程の話も自分を罠にかけて殺し、奪い取った方が早いのだ。細い身体の小娘程度、力でねじ伏せればどうとでもなる。話が真実かどうかは、彼の待ち人が到着すればわかるだろう。それまでは予定通り不死教区を目指すこととした。

 少女はペトルスに別れを告げると、探索へ戻って行った。

 

 

 

 ある程度探索を終え、少女は篝火の前まで戻ってきた。あの後一応地下墓地まで行ったが、すぐに引き返してきた。死者の骸骨が魔術によって動くもの、スケルトンに出会ったのである。

 地上の方の墓地に踏み入って直ぐに襲われ、無数の切り傷を負いながら這々の体で帰ってきたのだが、意外にも収穫は良かったのである。

 板切れよりは頑丈そうな円形の木盾と遠見鏡である。

 遠見鏡は名前の通り遠くを見ることのできる筒状のもので、今後多くの状況で役に立つだろう。全身を切り刻まれながら得たものとしては上出来だろう。

 そしてある程度持ち物を整理した少女は、自分の今の状態に気付いた。

 

 ーーそう、身体の汚れ、もっと言えば体臭だ。

 

 こんな状況で何を言っとるかという話であるが、割と切実な問題である。

 臭いのだ、凄く。ここに来る前はそんな余裕などなかったのだが、落ち着いて辺りを見回す余裕ができると、それが次第に気になり始めた。

 幸いなことにここには水浴びなどのできる場所があった。水もあまり汚れておらず、身体を洗うには適した場所であったのだ。

 洗っている間に襲われることも考えたが、どうせわずかな持ち物以外にはこの身体と幾らかのソウルのみである。例え襲われたとしても裸と下着同然のぼろきれでは大した違いもないだろう。そう考えると、少女はその場所へ向かって行った。

 

 祭壇のある場所には太ももの上あたりまでつかれるだけの水が溜まっていた。

 少女は念のため棍棒を近くに置くと、着ているものを脱ぎ始める。衣擦れの音と共に、少女の何も身につけていない裸身が露わとなった。水に足を入れると、ひんやりとした感覚が足を包み込む。

 

 「ん……」

 

 緊張が緩んでいることもあってか、少女にはその感覚がとても心地よく感じた。

 右手で水をすくい、肩と胸にかける。久しく感じていなかった気持ちよさに少女はため息を漏らした。

 その心地よさを堪能すると、少女は手で身体を擦り、少しずつ汚れを落とし始める。二の腕を洗い、胸、わき腹、太ももと汚れを落とす。あらかた汚れを洗い落とすと、匂いはほとんどとれ、肌もある程度白さを取り戻していた。

 水面に映る自分の姿を見て、少女は悲しそうに自分の髪に触れた。肌と同じ白い髪は、少女にとって悪夢の象徴であった。これらは全て拷問と、長きにわたる牢獄での生活で変わり果てたものだ。

 何より、捕らえられる前の少女の髪は母親によく似ていた。その僅かな家族との繋がりすらも奪われたことが、少女には何より悲しかった。

 そうやって上の空だったことが何よりの原因だったのだろう。金属の擦れる音に気付いて少女が振り返るとーー。

 

 

入り口の所に、全身鎧の男が1人立っていた。




戦闘回はないと言った。だが切り刻まれないとは言ってないぞ。(なんか渋い声で)

今回準備回だったわけですが、ほとんどが会話と説明回になってましたねこれ。挙句オリキャラ登場、収集つけられるのかなこれ………。

水浴びシーンどうでしょう、なにぶん語彙が乏しいのでうまく表現できてるか自信がないですが、満足していただければ幸いです。

インベントリどうしようかな……袋にしたら槍とか明らかしまえないし……、やっぱソウル化して体内かなぁ。

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