不死姫の物語   作:炎海

4 / 7
どうもおはこんばんにちは炎海です。

海風でねぇと思ったら丙でやって件……。
……なぜ丙にしたしこのアホは……。

そういえば主人公の入ってた牢って構造上あり得ない場所に作られてるんですよね、他のステージはちゃんとうまく繋がるのにそこだけ不自然。なんでなんでしょうねぇ。
また、主人公の時代も気になりますよね、ドーナルは主人公より後の時代の人物らしいんですが……。

それはともかく本編開始!


第3話

 目の前に座り込んでいる騎士、おそらくは自分の閉じ込められていた牢に死体を投げ入れたであろう人物。再び会いたかったその者を前にして、少女はとっさに声を出すことができなかった。喉が干からびて出せなかったのではない、少女は騎士の状態を見て、何も言うことができなかったのだ。騎士は、腹に傷を、それもかなりの深手を負っていたのだ。

 少女が戸惑っていると、騎士が語りかけてきた。優しそうな男の声であった。

 

「君は……。そうか、無事に抜け出せたのか」

 

 ゆっくりと、もう長くはないのか、騎士は辛そうに声を出した。

 

「やっぱり、私に鍵をくれた人だよね。どうして私を?」

 

 そうたずねる少女に、騎士は何かを取り出しながら答えた。

 

「見ればわかるが、私はもう長くはない。君に……頼みたいことがあるんだ」

「助けてもらった恩人に言うのはなんだけど、自分ではできないの?こんなところにいるのなら、あなたも不死なんでしょう?」

 

 その言葉に、騎士は自嘲気味に笑って答えた。

 

「言ったろう……、私はもう長くはないと。それはこの体のことだけじゃない、私はもう……不死としても限界なんだ。次に死に、蘇れば私は亡者となってしまうだろう……。その前に、君に聞いてほしい願いがあるんだ。その願いとは……、私の果たせなかった使命を、君に託したかったんだ」

 

「使命?」

「そう、我が家に伝わる不死の使命に関するものだ」

 

 不死に代々伝えられる使命があったのか。不死をただの呪われ人としか思ってなかった少女は少しおどいた。

 

「それは、どんなものなの?助けてもらった恩人だし、聞くだけなら……」

 

「ありがとう。『不死とは、使命の証である。その印現れし者は、不死院から古い王達の地にいたり、目覚ましの鐘を鳴らし不死の使命をしれ』。これが……、我が家に伝わる不死の使命の言い伝えだ……」

 

「その鐘を鳴らせば、不死の使命とやらがわかるの?」

 

 騎士は頷きながら、緑色の瓶と鍵束を渡した。

 

「これは不死院の鍵束だ……、これでほとんどの鍵を開けられるだろう。もう一つはエスト瓶……、篝火の火を持ち運べるものだ。篝火の火が強けれ強いほど持ち運べる量の多くなる。我々不死の秘宝だ」

 

「そんな大事なもの、もらってもいいの?」

「いいさ、どの道私にはもう使えないからね」

「なら」

 

 少女はそう言って、エスト瓶と不死院の鍵を受け取った。

 

「最後に……、私のやり残した使命を……継いでくれるか?」

 

 少女は少し考え込むと答えた。

 

「そこへ行くには?」

「不死院を出れば……、すぐにわかるさ」

「そう、でも期待はしないで、あなたにやり遂げられなかったこと、私にできるとは……」

 

 そう言う少女の不安を和らげるように、騎士は重ねて言う。

 

「いや、いいんだ。……ああ……、これでようやく、希望をもって死ねるよ……」

 

 ただの人間の死が肉体の死なら、不死の死とは精神の死、すなわち亡者となることだろう。

 

「もし……、もしあなたが死んで、それでも生きていたら、また……」

「いや、会わない方がいい。私が蘇った時、正気でいることは無いだろう。亡者となった後、君を襲いたくはない。私を見つけても、近づいてはいけないよ」

 

「でも……」

「行きなさい、君は自由だ。さあ、……早く」

 

 少女は少し俯いて、そして最後に言った。

 

「さようなら、騎士(ナイト)様。あなたのこと……、忘れないよ」

「ああ、さらばだお姫様(プリンセス)。君の旅路に、炎の導きのあらんことを」

 

 そして少女は立ち去った。振り返らず……まっすぐに前を目指して……。

 

 

 

 

 少女は篝火の前で休んでいた。鉄球に吹き飛ばされ傷が大きかったのもあるが、この不死院から出る方法を考えていたのだ。

 三階から確認できたのだが、やはりデーモンのいた場所はエントランスであった。つまり、デーモンをどうにかすれば出られるのである。逆を言えばデーモンをどうしなければどうしようもないのである。

 地面に、これまで調べた情報を元に、不死院の見取り図を描く。自分のいた牢、中庭、エントランスと順に描いていく。すると構造から、先ほど鉄球にはねられた階段からエントランスの上、デーモンを見下ろせる場所に続いているのに気付いた。

 

「あいつの頭上……、頭……、そこを狙えば……」

 

 危険な賭けである。そもそも頭といえども攻撃が通るとは限らないし、殺しきれるとも限らないのだ。

 

「でも、それ以外に策はない、上から物を投げ続ける……?ダメ、あいつは飛べる。叩き潰されるのがおちか……」

 

 そう考えると少女は、いま自分の持っているものを確認する。棍棒、板切れ同然の盾、古い指輪、満タンのエスト瓶に不死院の鍵束。そこに上階を確認しに行った時亡者から奪った金属製の錆び付いた盾と、扱いかたなどろくに知らない弓が加わる。騎士の持っていた祝福の施された剣を使うことも考えたが、信仰の薄い自分では扱え無いだろうと考え断念した。亡者の盾……、も使わないでおく。あんな攻撃を受ければ、少女の体ではひとたまりもないだろう。それなら、少しでも身を軽くして避けた方がいい。そう考えて少女は棍棒と板切れの盾を身につけて立ち上がった。

 木でできた棍棒と板切れの盾、格好は裸同然のボロ切れ。そんな姿で人外の化け物と戦うなど、正気の沙汰では無い。自分もそろそろ亡者に近づいてるのかもしれない。少女はそう己のこれから行おうとすることの愚かさに苦笑しながら、上階に向かって歩き出した。

 

 目的の場所にたむろする亡者共を片付け、少女は下の様子を伺う。デーモンはまだこちらに気づいていない。棍棒を握る手に汗がにじむ。

 

「大丈夫……、やれる。落ち着いて……確実に……」

 

 そうやって心を鎮めると、少女は棍棒を構えて縁に近づく。デーモンが下へやってくる。

 

(まだだ……、まだ。)

 

 1歩、2歩、だんだんと少女の足元までやってきて……。

 

(いま…………っ‼︎)

 

「やあああああ‼︎」

 

 棍棒を振り上げ、足元を蹴る。落下の勢いを乗せつつ全力をこめ、デーモンの頭めがけて叩きつける。

 肉と硬いものが潰れるような感覚と共に棍棒がめり込む。

 

「やった!これなら………なっ‼︎」

 

 その感触に確かな手応えを感じたがしかし、デーモンは倒れず、頭に乗った少女を引き剥がそうと暴れる。

 

「そう簡単にはいかないか……。よっと。」

 

 めり込んだ棍棒を引き抜き、潰されないよう飛び降りて距離をとる。

 

「初撃で倒せなかったけど……、これなら効いてる」

 

 デーモンはまだ倒れない。しかし明らかに先ほどより弱っている。いまの一撃がそれなりに効いたのだろう。だが油断はできない。いくら弱っていても、少女を数発で殺せることには変わりはない。

 襲いかかる大槌を避け、その腹に棍棒を叩き込む、何度も潰されたからか、どう避ければ良いかがだんだんわかってくる。しかし、腹に打ち込んでもあまり答えた様子はない。

 

「ダメ……。もっと弱い場所を狙わないと。」

 

 腕、足、様々な部位に打撃を加える。しかしさほど答えた様子は見られない。そうこうしてるうちに、デーモンの大槌が少女の体を捉える。素人に毛が生えた程度の技量、やはり限界があったのだ。

 

「ぎゃっ……‼︎」

 

 横から打ち据えられ、床を転がる少女にもう一撃、デーモンが大槌を振りかざし攻撃をくわえる。

 

「ぐう……。はあ……げほっ……!!」

 

 二撃目はかろうじて避けたが、受けた傷は深い。少女は傷を治そうと、騎士からもらったエスト瓶の中身を飲む。喉が焼けるような感覚とともに体中が熱をおびる。同時に体中から痛みが引き始める。

 

「これで、少しはもつかな……」

 

 残りはあと四つ、全部で五つ。それをすべて使えば死ぬ。不死である以上たとえ死んだとしてもまた蘇ることはできる、しかし……。

 

「ここに来るまでにも何度も死んだ……。あとどれだけ正気でいられるか……」

 

 自分の目的はここで終わりではない。いずれは亡者となり、不死院で見た者たちと同じように狂い果てるだろう。でも……。

 

「それは今じゃない。こんなところで死んでられるか!!」

 

 そう叫び、少女はデーモンに向かって走る。狙うは頭、方法は。

 

(あいつは大槌を振り下ろすとき、ここまで頭がさがる。そこをねらえれば)

 

 それは攻撃の中に飛び込むということだ、タイミングを間違えれば挽き肉になる。それでも少女はその手段を選んだ。それ以外に策が見つからないから。

 

(早く……、早くやれ。)

 

 そして……、

 

(来た‼︎)

 

 デーモンが大槌をふりかざした。

 

「おおおおおおっ……‼︎」

 

 距離をとらず、そのまま間合いを詰める。振り下ろされる瞬間、斜め前に跳び、振り返りざまに棍棒を叩き込む。

 

「だあっ……‼︎」

 

 肉を潰す感触、そのまま間髪をいれず二撃、三撃と叩き込む。そして……。

 

「このままーー、死ねぇぇぇ‼︎」

 

 全力を込めた打撃を、デーモンの頭目掛けてぶち込む。先ほどよりも深い感覚、そして……。

 重い音をたて、デーモンの巨体が地に倒れ伏す。そのまま立ち上がることはなく、デーモンはその動きを止めた。

 

「はぁ……、ぜぇ……、はぁ……、やっと……倒……した……の?」

 

 念のためにもう数発頭に叩き込み距離をとる。だが、起き上がる気配も、動き出す気配もない。

 

「死んでる……。ははっ、やった……やったんだ……。」

 

 そう思った瞬間、緊張がとけてどっと疲労が押し寄せてきた。そのまま手足を放り出し、仰向けになって倒れこむ。あの怪物を倒し、未だに自分が生きていることが信じられなかった。

 そのまま息を整えていると、デーモンの近くに何かが落ちているのに気がついた。体を起こしておそるおそる近づくいて見ると、それは大きな鍵であった。使われる鍵穴も相当な大きさであろうそれ、少女は目の前を見上げる。そして、試しにそれを外へと続くであろう扉に使ってみる。すると、重い音とともに何かのはずれるような音がした。試しに扉を押してみると、扉は大きな音をたてて開き、その向こうには外の光景が広がっていた。

 肌寒い風と、少し積もった雪。遠くに目を向けると、険しい山脈が雲間から漏れた光で美しく照らされて広がっていた。

 

「外……。外に、出たんだ……。これで……本当に……自由」

 

 願い続けた自由、あの日理不尽に奪われ、地獄の中で憧れ続けたもの。

 近くの雪をつかみ、手の中に包み込む。冷たい感触、久しく味わうことのなかったものである。

 雪の冷たさを、風の冷たさを、空の高さを楽しみながら、少女は歩いた。やっと自由になれた、次は何をしよう?向こうに見える山の森へ行くのもいい。街を探して人と触れ合うのもいい。

 ふと、あの騎士の願いを思い出す。「ここより北の地へ向かい、目覚ましの鐘を鳴らしてくれ」、まずはそれを成そう。だが、すぐに向かう必要はないだろう。そうだ、故郷の村へ帰ろう、父や母、兄や弟、祖母たちにまた会いたい。隣のおじさんはどうしてるかな?村長はまた腰を痛めてないかな、同い年のあの子は、気になっていたあの少年は。

 そんな考えを巡らせながら少女は歩いた。歩みはステップになり、鼻歌も歌い始めた。そして不死院の前の坂をのぼりきり…………崖の前で立ち止まった。

 

「………………………あ」

 

 ーーそうだ、自分は不死、呪われた者だ。

 

「…………………ああ」

 

 ーー街に出て人と触れ合う?不死狩りの騎士に捕まれば、またあの地獄へ逆戻りだ。

 

「……………あああ」

 

 ーー村に戻る?村の者は全員知っている、自分が不死であることを。

 

 ーー忘れたか?優しかったおじさんのあの時の目を。逃げた自分を追ってきた村の人達の目を。

 

「うあぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 そうだ、自分は不死だ。忌み嫌われた者、疎まれた者。いつ発狂するかも知れぬ化け物だ。だからこうされた、隔離された、故郷を追われた石を投げられた踏みにじられた牢に繋がれた。

 

 

 

 

 

 だからこうやって、崖の上に閉じ込められた。

 自分は人々にとって、害悪だから。

 

 

 

 

 

 不死院が建てられていたのは、四方を崖に囲まれた場所であった。そう、誰も入れないし降りられない。飛竜か何かでもいれば別だろう。しかし、ここにはそんなものはいはしない。そして何より、人々から自分が拒否されていること、その徹底した証を見せつけられた少女は膝をつき、崩れ落ちた。

 不死の身体であれば、降りられるかもしれない。エスト瓶もある、傷ついてもすぐに治るだろう。だが、今の少女にはそんな気力など何処にもなかった。

 あれだけ苦しみ、それを耐え抜いて見たもの、それがこれだ。亡者であれば、いっそどれほど楽だったろう。今まで拒絶してきたそれが、今では狂おしいほどなりたかった。

 少女はその場に蹲ると、膝を抱えて顔を埋めた。不死院の中に戻る気は無かった。いや、気力も無かったと言うべきか。心折れた少女にはもう、自らの足で歩く力すら無かった。

 

 

 

 

 

 

 鳥の鳴き声が聞こえる。カラスのような声だ、わずらわしい。聞こえないように耳を塞ぐ。

 頭上に何かが落ちてきた。振り払うと、それは黒い羽であった。

 そうしてる間に声がどんどん大きくなる。右に、左に、前に。どんどんとうるさくなる声に少女は苛立ち、とうとう声を上げて怒鳴る。

 

「うるさいな!静かにしてよもう!」

 

 そう言いながら立ち上がって後ろを向くと……。

 

 

 

 なんかクソでっかいカラスがいた。

 

 

 

「……………………………………………………………は?え、ちょっとやめ…………きゃあ‼︎」

 

 大ガラスは少女の身体を掴むと、そのまま彼女を抱えて大空へ飛び立ってしまった。

 

「ちょ、ちょっと待ってやめて!おーろーしーてー、降ろせぇ!」

 

 少女は暴れるが、そんなもん屁でもねえ、とでもいうかのようにカラスは少女を平然と掴む。

 少女は棍棒をつかもうとして下を見て、後悔した。

 

「ひぃ………。や、やっぱさっきの無し降ろさないでおとさないでぇ!」

 

 眼下には切り立った崖や山、川などが見えた。何よりそれらが遥か遠くに見えたことだ。飛んでいたのだ、カラスにぶら下げられて空中を……。生まれて初めての飛行体験に少女は大人しくなり(むしろ心は余計に動転したが)、少し思考する余裕が出来た。

 

「そういえばおばあちゃんが巡礼がナントカって……」

 

 ーーだが、選ばれた不死のみは不死院を出て、古き神々の住まう地への巡礼を許される。

 

「古き神々の住まう地……、ロードラン。そうだ!」

 

 騎士の願いを思い出す。自分は人々から忌み嫌われた存在だ……けど。

 

「あの人は……、私を必要としてくれた」

 

 正気であれば誰でも良かったのだろう。けれども、居場所も生きる理由すら失った少女にとって、それは唯一の生きる希望だった。

 

「ロードラン……、神々の住まう地。やり遂げられるかはわからないけど!」

 

 どんなものが待ち構えているかはわからない。それに、そもそもカラスがそこへ連れていく保証はない。だが、やれることはやってみよう。少女はそう心に決め、自分をぶら下げるカラスに身体を委ねた。




カラス「うだうだしてたんで無理やりお持ち帰りしました」

駄文アンド台詞改変、大丈夫かなぁこれ……。
童貞コミュ症野郎に何が辛いって会話考えんのが一番辛いんよ、不自然になってないかなぁ……。

さて、不死院編が終了し、これからはロードラン巡礼編開幕です。次々に襲いかかる障害に少女は打ち勝てるのか……。

次回、『神々の住まう地、ロードラン』

海風が手に入らない絶望と戦いながらレディーファイ!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。