渓流暮らしの泡狐竜   作:狐火(宇迦之御魂)

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探し募らせ

....帰って来ないニャ。

あ、ココアだニャ。

 

最近影が薄いとか言われるけど知らんニャ。

取り敢えず僕の事は置いといて、ミツさんが帰って来ないのニャ。

今、渓流を村の皆で捜索中ニャ。

 

もう、ミツさんが帰って来なくなって3日目ニャ。

とある人...というか竜?まあ、助っ人を呼んだから今日に来てくれると思うニャ。

伝書鳩が道中死んでなかったらニャ。

 

ミツさん....何処いったのニャ....

皆帰りを待ってるのニャ。

 

レイスside

 

精神的に死にそう。

うん、死にそう。ミツさんとはあの屑共の所為であの後会えなかったし。

あれからミツさんは来てないし、禁断症状がヤヴァイ。

 

「という訳で渓流行くぞ砂糖!」

 

「砂糖だけど砂糖じゃないニャ!」

 

「うっせぇ!俺は行くぞ!?行くからな!」

 

「先行ってるニャ、準備遅いニャ。」

 

「え、ちょま、俺も行くっての!」

 

スタコラスタコラってあの調味料、置いて行きやがった.....

一週間マタタビやらねぇ。

取り敢えず行くか。

 

狩人移動中.............

 

ミツさん居ないな。

え?なんで解るのかって?

ミツさんの匂いがしない。足音がしない。

以上ですが何か?キメェって?褒めるなよ。

 

「レイスさん!村にミツさん行ってないかニャ!?」

 

「あ、ココア君久しぶりだな。ミツさんは来てないけど、どうした?渓流にも居ない様だが。」

 

「それが、前のバザールから帰って来てないのニャ!」

 

なん....だと?

 

「どういう事だ!?」

 

「今、渓流中を探してるニャ。何か、心当たりあるかニャ?」

 

「いや、全く。取り敢えず、俺も探す!」

 

クッソ、何で戻って無いんだ!

あの後、村に居た商隊は全て戻った筈。

あぁ、もう!こんな時にシュガーは何処に居るんだ!

 

タツタside

 

姉御が、戻ってこないゼヨ....

我が、我があんな事を言わなければ姉御も考えずに済んだ筈ゼヨ....

 

「タツター久しぶりニャ。騒がしいけど何かあったかニャ?」

 

「シュガー.....それが、姉御が....戻って来てないゼヨ.....」

 

「!?....どう言う事ニャ。」

 

「あのバザールから帰る途中、姉御が竜車から降りて....それから戻ってきてないゼヨ....」

 

「姉さんが何も言わずに消えるニャんて....」

 

「.....でも、一ヶ所だけ居場所に心当たりがあるゼヨ。」

 

「ニャ!?なんでそれを早く言わないニャ!」

 

「もうすぐ来る筈の助っ人が居なきゃ、行ける場所じゃないゼヨ。」

 

「助っ人?誰ニャそれ。」

 

「もうすぐ見える筈......来たゼヨ。」

 

そう言った視線の先には、空に浮かぶ紅い点があった。

 

「助っ人って....お前かいニャ。」

 

「陽炎、母君の失踪と聞き参上仕った。」

 

現れたのは、紅い東洋風の姿で飛竜刀『楓』を背負った青年だった。

この青年は、陽炎という名であり。

村のアイルーと同じくミツに救われた1人でもある。

 

嘗て、ミツが原生林から渓流までの移動の際通過した孤島で、親がハンターに討伐された卵をミツが育てた。

その卵に宿っていた陽炎も、アイルーと同じくミツに絶対的な恩義を感じていた。一度、村に訪れていた為にアイルーが襲われる事はない。

 

「タツタ殿、状況を教えて頂きたい。」

 

「姉御が失踪して、現在捜索中ゼヨ。ここまで探しても居ないなら、恐らく...渓流にはもう居ないゼヨ。」

 

「それは.....心当たりは?」

 

「恐らく.....原生林ゼヨ....」

 

「シュガー!ミツさん居なくなったって聞いたか!?」

 

「何奴!」

 

「うおっ!?」

 

アイルーは襲われない。

しかし、ハンターが襲われないとは言っていない。

 

「おーい、陽炎そんなのでも一応雇い主だからやめるニャ。」

 

「む、そうであったか。申し訳ないドグサレハンターが。」

 

「謝る気無いだろテメェ。」

 

「そんな事は無い、母君の為にさっさと這いずり回れ畜生め。」

 

酷い言い様である。

似た様な名前と種族名だというのに、同族嫌悪と言う奴だろうか。

恐らく二人とも認めないだろうが。

 

「キレるよ?レイスさんキレちゃうよ?」

 

「タツタ殿、準備を頼み申す。原生林まで飛びます故。」

 

「無視すんなよ、それと何?飛ぶ?脳味噌中二病なの?馬鹿なの?死ぬの?」

 

「こんがり肉にしてやろうかギルドの犬め。」

 

「テメェの血でその真っ赤な姿、紅く染めてやるよ。」

 

「「上等だ、やってやる!」」

 

「黙るニャ、お前ら2人纏めて挽肉になって今日の夕飯になりたいかニャ?」

 

「陽炎、数日分の食料と武器はあるゼヨ。原生林まで急ぐゼヨ!」

 

「俺は?ねぇ俺は?」

 

「レイス、数日出掛けるニャ。その間頑張れニャ。」

 

「取り敢えず、我とシュガー、ホールとココアの構成で行くゼヨ。」

 

「了解した、それでは元に戻るので離れてもらいたい。」

 

その言葉でアイルーは全員離れた、アイルーは。

 

「テメェの指図は受けん。」

 

「ちょっ!レイス何やってるニャ!早く離れないと冗談抜きで挽肉ニャ!」

 

「くたばれハンター!」

 

そして陽炎にプチッ......とはいかず。

竜に戻った陽炎に潰されるギリギリで助かっていた。

 

「.......え?」

 

「チッ、死ねばよかった物を!」

 

「お前ら醜い争い繰り広げんニャ。陽炎、さっさと行くニャ。」

 

「全員、乗りましたね?」

 

「大丈夫、出発するゼヨ。」

 

「それでは、陽炎!出る!」

 

アイルーを乗せたリオレウスもとい、陽炎が飛び立ち原生林に飛んでいく。

そして取り残されたレイスは......

 

「彼奴ら置いて行きやがったァアアアア!ふっざけんな!」

 

尚、レイスはこの後ロアルドロスを阿修羅の如き気迫で調教して原生林まで到達しました。

 

陽炎side

 

ハンターなどに出会した所為で気分が悪い。

我は、リオレウスの陽炎だ。

母君に育てられた恩はこの命を持って必ず返す。

 

先日、孤島の巣で休んでいる時に手紙が届いた。

内容としては、母君が帰ってこない為捜索の救援に来て欲しいという物だ。

母君の村のアイルー、そして我を含めて、母君の過去は一切知らなかった。

 

過去形なのは、今現在タツタ殿に件の話を聞いているからだ。

人間は、誠に気に入らん。我の血の繋がった両親も人に殺されたという。

母君がその犯人に会って、殺した理由が『丁度いい金になりそうだったから』などと巫山戯た事を抜かしよった。

 

その者らは既に、我が土に還したがな。

我の事は良い、だが何よりも!

原生林には母君を殺そうとした連中が居る。

 

母君が殺される訳には行かぬ、早く見つけなくては.....

一晩飛んでいるがそろそろだろうか。

 

「陽炎、あと少しで原生林ゼヨ。」

 

「一週間分の荷物にしては近い物だ。」

 

「水気が多いな。」

 

「キツイなら言うニャ。」

 

「大丈夫だ、問題無い。早く母君を探さなくてはな。」

 

「陽炎、自分たちは地上で探すから空から見渡してくれニャ。」

 

「了解。それでは地上は頼み申した。」

 

 

 

 

何処に居る.....とにかく母君の無事を祈るしか.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~………~~~~……

 

 

 

 

 

 

 

………今、何か.....行くか。

 

あの紫の尾は.....母君の尾が見えた!

早く向かわなくてはな!

 

「陽....炎?」

 

「そうです母君!村の者が探して居ます。帰りましょう。」

 

「勝手に消えて御免って伝えておいて貰って良いかな?」

 

「何故です?帰れば問題無いと思いますが。というより、何故隠れて居るんですか?」

 

陽炎の言葉通り、ミツの姿は木に阻まれてよく見えなかった。

 

「これは.....気にし無いで良いからね。」

 

「?取り敢えず帰りましょうか。」

 

陽炎が人型になり木々の隙間を抜けていく。

 

「来ないでくれ陽炎!」

 

「何を言って.......何があったんですか!」

 

ミツの姿は、身体中を斬られ出血し所々に打撃の跡があり酷い損傷を受けてた.........


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