おぅ....なんでこんな事になったし.....
おっと、私は渓流に住んでる普通のタマミツネの椿だ。
昨日、寝て目が覚めたら目の前に女の人とその他色々。
ワケガワカラナイヨ。
「君どうしたんだい?村の前で寝てたけど。」
「いや、私は普通に寝床で寝てたぞ。」
まさか夢遊病になったのか!?
.....あれ、ちょっと待てよ?
私はタマミツネの姿で寝てた筈、そして今もタマミツネの姿だ。
なのになんで驚かないんだ?
「あ、僕達は人型をとってるだけのモンスターだから安心してね。まさか、この辺りに同種が居たとはね。」
「なん.....だと?」
同種?
え、てことはこの人、タマミツネ?
それに周りの人もモンスター?
擬人化薬出回り過ぎィ!
「ミツさんこんにちはー」
「あぁ、レイス君ごめんね今ちょっと立て込んでるんだ。」
「そうですか?なら帰りますよ。」
「あぁ!いいよ折角来たんだから、僕の家に居てくれるかな?鍵は開いてるから。」
「ありとうございます。ところで、そこのタマミツネは?」
「村の前で眠ってたから、村に運び込んだんだ。」
蚊帳の外なんですけど私....擬人化薬あったっけか、ここ狭い。
あ、あったあった。
「ふう、それにしても此処赤兜が居た割には荒れて無いな。」
「なんだ、ドキドキノコ持ってたのか。というか赤兜?あんな奴来て無いぞ?」
「は?いやいや、何言ってんの。赤兜とアオアシラの群れが荒し回ってたでしょ。それにドキドキノコ単体で人になれる訳無いじゃん。」
「ま、まあまあ落ち着いて?レイス君も....えと.....」
「私は椿よ。」「椿ちゃんも、それと此処には本当に赤兜なんて居ないよ?それ以前に此処のタマミツネは僕だけだし....」
なに.....?
という事は、別次元か?
私がいきなりモンハンの世界に来た訳だし無い事も無いか.....
「....私がなんで村の前に居たかは解った。」
「そうかい、でも、如何するんだい。少なくとも近くには巣を作って無いだろう?」
「あ、確かに.....どうしよう。」
「.......もし良かったら僕の家に来るかい?」
「え.......?」
「ぁ、ああ、ごめんね?そりゃ見ず知らずの男と一緒なのは嫌だよね。」
ん!?ちょっと待ってくれ、家に来るか?
ありがたい、できる事なら行きたいが。
その後だ、え.......?男?
「ミツさん、自分が男として認識され無いなんて事分かり切ってるじゃ無いですか。」
「レイス君!いい加減君も認識を改めてくれ無いかな!?」
え、この人が?男?
普通にそこら辺の女性よりよっぽど綺麗なこの人が?
「....椿だったか、信じられんだろうが本当に男だ。」
「信じられ無いってどうゆう事かな?ちょっと色々聴きたいんだけど?」
あ、この反応冗談抜きで男だ......くそっ!
こんな美貌を持ってるのに男なんて詐欺だ!
産まれる性別間違ってるよコレ.....
「ところで、ミツさんの家に厄介になるか?女性なら普通に居るから頼んで来てやるぞ。」
「あ.....いや、うん。厄介になります.....」
「レイス君っ!後で油揚げしっかり奢ってもらうからね!?......じゃあ、椿ちゃんとレイス君付いてきてね。」
あー凄い女として負けた感がする。
こう、なんというかあざとさが無い自然な可愛さ的な物が、挙動一つ一つに込められてやがる.....
これで男とか.....うわもう色々泣きそう。嗚呼、無情。
「上がって自由にしてていいからね?ちょっと、お菓子が切れてたから準備してくるよ。」
「了解です。」
おぅ、この玄関からして溢れ出る女子力よ。
これが世間で言う所の男の娘か。
女子のプライドへし折るためにやってんのかコレは。
「なあ、椿よ。なんで村の前で眠ってたんだ?」
「嗚呼、多分私この次元の奴じゃないんだわ。」
「?つまりどうゆう事だ?」
「此処とよく似た世界のモンスターって事だ。それがなんの因果かこの次元に来たって事だ。」
「なるほどな、にしてもそっちの次元は赤兜が出たんだろ?大変だったろうな。」
「いや?別にハンターが居たりしたけど私が鎮めたよ。」
「はっ!?ミツさんならやりかねんが嘘だろ?」
「そんな驚く事でも無いだろ。」
「いやいや、二つ名なんて国家が動く超危険生物だぞ?」
嘘だろ....こっちの次元はそんなにモンスター強いの?
私の次元って、平和だったんだな.....
「2人共待たせてごめんね、これ。お茶とお菓子。」
「あ、ありがとうございます。」
お母さん的オーラがしてきた.....
「それにしても、美味いな本当に。」
「美味い.....」
「本当かい?自信が無いから、そう言ってくれると有難いよ。」
「ミツさん、冗談キツイです。」
いや、美味い。
これはもう確実に女のプライド折りに来てるね。
大福とかよく作れるな......
「ミツさん笑え無い逸話作りまくってるんですから自信持ちましょうよ?」
「逸話?」
「お?聞きたいか?ミツさんの逸話、笑え無いレベルのを量産してるからな。」
「レイス君、恥ずかしいからやめてくれ無いかな?」
「それがよ、ずっと前ユクモ村に」
「う〜!」
可愛い(確信
「ユクモ村に凄い腕前の料理人と料理評論家が来てさ。
イベントみたいになってたんだよ。
それでなんやかんやあって、村長の家でもてなした時に、丁度ミツさんが村に居たから今みたいに菓子を作って貰ったらさ。
評論家が料理人の作った物よりよっぽど美味いとか言って、案の定料理人がキレてさ。
決闘みたいな事したんだわ。
ちなみに結果は勿論ミツさん勝利で。
逆ギレした料理人宥めてさ『料理は自分を大きく見せる為の物じゃ無い、相手を喜ばせる物だよ。君の料理は本当に美味しいんだからもっと活かしなよ。』って、その料理人がその時自己顕示欲の塊見たいのだったのが今は孤児とかに料理を振舞うようになったんだから。なんつーか凄いとしか言えねーわ。」
なにそれお母さん。絶対、学校に来たらクラスメートがお前の母ちゃん凄いよな!とかなんとかですっごい話の中心になる感じのアレだろ。
というか、スペックが私の知ってるお母さんじゃない。
「うぅ、思い出したく無い事を......」
全国のぶりっ子は見習うべきではなかろうか。
「まあ、凄いのは骨の髄まで染み込んで解った。大福美味い。」
「まだ色々話があるから凄い。この家の備品も大抵ミツさんの手作りなんだぜ?」
棚とかまで作るとか....一家に1人かよ。
ミツさん1人で家の事は全て何とかなりそう。
この家事スキルEXのお母さんである。
「さてと、俺はそろそろ帰ります。」
「うん、気をつけるんだよ?」
「伊達にハンターやってませんって。」
「それもそうだね、それじゃあ。」
夫婦だろうか?
日もどっぷりと暮れた7時頃。
さて、飯はどうしようか。
寝床を用意してくれただけでもありがたいが。
もう若干料理してる音も聞こえるから断り辛いし....善意に甘えるかぁ。
「ご飯、遠慮しなくていいからね?」
「あ、何から何まですいません。」
今日の夕食はコロッケにご飯、表でアイルー達の栽培してる産地直送どころか産地直行の野菜のサラダ。
多過ぎなくて良い。
あと、コロッケのソースどうやって作ったし。
「.....どうしたの?あ、この掛けてる物が無い方が良いかな。それだったら用意するけど。」
「あ、そういうのじゃなくてどう作ったのかなと。」
「やっぱり女の子はレシピとか気にする物なのかな?あとこれは玉ねぎとかと熱帯イチゴを発酵させた物だよ。」
「発酵.....よく作れたな。」
「色々材料があるからね。」
ソースとかよく作れるな.....お母さん以外何を当てはめろと。
帰れたら作ってみようかな。
飯は普通に美味しかった、美味し過ぎた。
ザ・お母さんとでも言う様な味だった。
「部屋は一応二つあるから、そっちを自由に使ってね。」
久しぶりに布団で寝るな......
「それじゃあ、僕はもう寝るけど何かあったらすぐ教えてね。」
「ありがとうございます。」
「気にし無いで良いよ、御休み。」
......何か色々あって疲れたな。もう寝よう。その内戻れると思うし。
「ふぁ.....ぁあああ~」
.....あれ?
元の住処に戻ってる。
夢だった...のか?
.....いや、違うね。
夕食の時に貰ったレシピの紙があった。
それと、空になった擬人薬のビン。
あそこに、行けるのなら、もう一度行きたいかな。
「椿ちゃん、起きてるかい?」
コンコンと、ノックの音が廊下に響き渡る。
「椿ちゃん、入るよ?」
キィーと音を立て開いた扉の先には、蛻の殻となった布団が冷えて敷かれていた。
しかし、少し荒れた布団が、そこに椿という異世界の来訪者が居たという事を示していた。
「.....元の世界に戻れたのかな?椿か.....突然に現れて直ぐに消える。椿ちゃん、きっと君を表す花を選ぶとしたら椿よりも桜が似合うよ.....」
誰かに対してか、独り言かは窺い知れぬ物だが。
一時の訪問者が戻れた事に、寂しさか喜びか。
隠と陽、似て似付かぬ感情を持ちながら。
2つの世界、そのまた別次元の出来事で起きた世界の交わりは終わりを告げた。
あと.....少しだ....
あと、今回出てきたソース。
正確にはお好み焼きソースのレシピです。
コロッケにも合うので書いときました。
イチゴや野菜使うと家庭で作れますよ。
デーツを入れると美味しいです。