渓流暮らしの泡狐竜   作:狐火(宇迦之御魂)

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ミツさんの周りには苦労人が多い。

ふむ、我から始まるのは初めてではなかろうか。

まあいい、陽炎だ。

詳しい事はキャラ紹介の回を見てくれ。(メメタァ

 

そして今の我は......

 

「テメェ、無視すんな。」

 

「貴様が喧嘩を売ってきたのだろう、状況把握も出来ない馬鹿なのか?」

 

レイスと同じ竜車に乗っていた。

経緯としては、いつも通り商隊の護衛をしていると。

タツタ殿がコイツを乗せて、クエストの行き先まで送る事になった。

胸糞悪い。というか種族名がコイツと似てるのが余計に胸糞悪い。

 

「....はぁ、もういいっつの。」

 

「............」

 

如何しろと.....

 

「そういえば......貴様、母君に不埒な行いをする割には直接手を出そうとはしないな。」

 

「唐突になんだ.....まあ、そりゃ道徳心だとか御近所の目があるからな。」

 

「人というのは面倒だな。」

 

「お前らもな。」

 

.........道徳心か、お前にだけは語られたくないと思うぞ?

 

「まあ、そんなのもあるけど。何よりも命の恩人に手を出そうなんざ出来るわけねえだろ。」

 

「なら不埒な行いをやめろ。」

 

「無理だな、断言する。」

 

「貴様......」

 

「でもさ、何よりも怖いんだよ。」

 

「怖い?生物としてそれは欠陥品だろう。」

 

「割とグサって来るからやめてくれ.......ちょっと聴いてくれないか?元々さ、俺は此処に住んでなかったんだわ。」

 

「如何でも良い。」

 

「てめっ、人が真面目な話してんのに…まあいい、じゃあ独り言として聞き流してくれよ。ちょっとモヤモヤするんだ。」

 

如何でもいいと言って居ろうに....

しかし、暇なのも事実だ。少し聞いてやらん事もない。

 

「俺は元々ユクモからそこそこ離れた小さな村に住んでたんだ。

なんのトラブルも無く。ただ普通に、平和に暮らしてた。

 

そしてある日唐突に、その暮らしが終わった。

近隣を荒らしてた盗賊が村に襲い掛かって男は殺され子供は捕まり。

女は盗賊に犯されと、本当に酷いものだった。

人の敵は同じ人、そんな感じだったよ。

その時、俺の親父は俺と母さんを守ろうとしてたけど。

盗賊が1人増えて隣から刺されて倒れて。

残った俺と母さんになんとかできるわけも無く、母さんは犯されて俺は奴隷商人に売られた。

その時の母さんがトラウマで、あの時を彷彿とさせるんだよ。

まだ4歳になったばっかだったから、親父と母さんの顔も忘れた。

忘れ出した頃にはその記憶が消えるのが怖くて怖くて、何日も泣いたよ。

.....まあ、奴隷商人に引き渡された後は売り物として色々拷問も受けて。

それで、競りに掛けられて買われるのをずっと待ってた。

それで俺が競り落とされた時、ずっと『買われた後は死ぬまで働くんだ。』って教え込まれたから絶望しかなかった。

その競り落とした人は女性でさ、今思うと珍しいなとか思ってる。

でも当時は余裕もある訳が無いから嫌だ嫌だと逃げ出そうとして。

逃げれる訳無いのにな。だけどさ、まず暴力が降りかかると思ったらその人。

頭を撫でてくれて。優しい声で『もう大丈夫だから、もう怖い事は無いからね。』って。

それから一ヶ月くらい各地を転々として、最後にユクモ村に着いたら。

あの竜人族の村長に預けられてこれからここで暮らすんだって言われた時はそりゃあ泣いたよ。

また大事な人を無くすんじゃないか、会え無いんじゃないかって。

宥められて、納得いかなかったけど。

ユクモ村に住んで、あの人から離れてずっと育ててくれた村長に礼をしたいからハンターとして村に貢献して。

 

できる事ならもう一度両親に逢いたいけど死んだ者は戻ら無い。

だから、一度でいいからあの人に直接会って礼をしたい。」

 

こいつも、苦労していたのだな。

少し、見直した。

 

「話聞いてたかは知らんが、ありがとな。スッキリしたぜ。」

 

「そうか、それは良かったな。」

 

それにしても、人は何処まで争いたがるのか。

 

「というか、あの人顔ずっと狐面で隠してたからわから無いんだよな......」

 

「おい待て、それ見つけられるのか?」

 

「声は覚えてるし服装も東洋風だったのは覚えてるけど。そういや、女性の割には胸ぺったんこだったな。絶壁とかいう次元じゃなくてあるのかってくらいで。」

 

なんと絶望的な.....声が似てる者など幾らでも居るだろうに。

それに東洋風という条件を追加しても相当数居るぞ....

あと、胸に関しては恩人に言うことじゃないだろう。

 

「でもあの声どっかで聞いた気がするんだよな.....まさか忘れかけてるか?」

 

「永久的な発見の確率0%乙!」

 

「この野郎!やっぱ腹立つ!一回切り裂いてやるからそこにいろ!」

 

「だが、断る。」

 

「お前らうるさいゼヨ!叩き下ろされたいゼヨか!?」

 

.........我は悪くないぞ。

元はと言えば竜車に乗ってきたコイツが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、クエスト現地着いたゼヨー」

 

「悪かったな、感謝する。」

 

「...........死ぬなよ。」

 

「少なくとも死ぬのは、全ての恩を返して。お前を1発殴ってからだな。」

 

一々感に触る奴め。

そういえば、奴の探している者の声を何処かで聞いたと言ったな。

.....東洋風....女性の割にぺったんこ過ぎる絶壁?

 

おい待て、人物像が一致してるぞ。

おい、嘘だろう。まさかとは思うが......聞いてみるとするか。

 

「さて、戻るゼヨ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ない、無いとは思うが。

聞いていいのかこれは?

......ええい、ヤケだ!

 

「母君、昔奴隷市場で奴隷を買った事はありますか?」

 

「なんだい唐突に?まあ、一応あるよ。」

 

........これは、まさか本当に......

 

「というか、普段来てるじゃないか。」

 

「まさか.......レイスの奴ですか?」

 

「うん、そうだよ。大体ね、僕だって無関係のハンターを助けたりしないよ?」

 

「ゑ!?」

 

「ゑってなんだいゑって!僕は別に誰でも助けたりする訳じゃないよ........多分。」

 

あれ、自信無かったよな。

最後に多分って付いたよな。

 

「というか、なんで奴隷市場になんて居たんですか。」

 

「え、いやその.....それは......」

 

「何か言えない理由でも?」

 

「....ずっと1人で各地を転々として寂しかったからだよ文句あるかい!?」

 

「いや別に文句は無いですけど。何でユクモに置いていったんですか?」

 

「ん、それは単純に子供だったし各地を回るよりも何処かで人の元に帰す方が良いしね。」

 

「は、はあ。」

 

「僕達は人型になろうとモンスターなのは変わらない、それを忘れるんじゃ無いよ?」

 

「母君......いい事言ったつもりなんでしょうが油揚げ食べてたら意味無いです。」

 

「美味しいんだから僕は悪く無いぞ。油揚げうんまぃ.......」


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