感染して体が化物になっても自我は消えませんでした   作:影絵師

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人の心を持つ感染者

 リチャードの特攻で倒されたヨーンを残して部屋を出るラピン。毒にやられていたリチャードがいた通路に戻ると、レベッカとバリーが来ていた。ラピンはレベッカにたずねられた。

 

「リチャードは!? ラピンが来ていた部屋に行ったはずなの!」

 

 その質問にラピンは何も言わず、彼が持っていたグレネードランチャーに挟まれていた紙を渡す。それに書かれている内容を読んだレベッカとバリーは顔を曇らせる。レベッカは泣きそうだ。

 それを見たラピンが謝った。

 

「ごめんなさい……私がヘマをしなかったら」

「いや、お前は悪くない。化物がいる館にいれば誰か死んでもおかしくない」

 

 バリーがそう言ってくれるが、あの蛇をちゃんと殺していれば彼は死ななかったはずだった。バリーにグレネードランチャーを譲ろうとして、彼は受け取った。

 

「ジルに持たせる。クリスにもリチャードのことを言わないとな」

 

 表情が暗いレベッカを連れてジルを探しにいくバリー。残されたラピンは部屋で見つけた不気味な仮面を見る。これはどこで使うんだろう?

 そう思いながら襲ってくるゾンビを斬りながら玄関ホールまで戻る。ふと、クリスが調べに行った墓場のことを思い出し、そこに行く。並べられている墓標の中に緑色の矢尻がはめられているのがあり、地下に行けるようになっている。階段を下っていき、棺桶が鎖で吊るされている地下室に来た。

 その棺桶から血が滴っている。中にあの赤いのがいるのだろう。入り口の近くに四つの石像があり、一つを除いて仮面を付けられている。やはりここか。大蛇がいた部屋で拾った仮面を最後の石像につけた。

 棺桶が落ち、蓋が外れた。中にクリムゾン・ヘッドが眠っている。ラピンがゆっくりと近づく。

 その時、入り口から物音が聞こえ、振り向くと鉄格子で塞がれている。そして、棺桶の中からうめき声が……

 クリムゾン・ヘッドが立ち上がり、白くなりかけている瞳をこちらに向けている。走り出して、ラピンに爪を振った。後ろに下がって避けた彼女は両手に剣を持ち、クリムゾン・ヘッドの胴体を連続で斬りつける。血が彼女に飛び散って、服と白い毛皮が赤く染まる。

 それでも死なずにラピンを掴み、噛み付こうとするクリムゾン・ヘッドの口に短剣を突き刺した。ようやく絶命して硬い床に倒れる。そいつが眠っていた棺桶に近づくラピンはアンブレラのマークを模した石と鉄製のオブジェを見つけた。

 それを見たラピンは自分がしてきたことを思い出す。アンブレラ社に入ったのはあらゆる生物にかかる病気を治す薬を作ろうと思った。だけど、入社してすぐにこの洋館に隠されている研究所でいろいろな生物兵器を作れと命じられた。最初は嫌だったし反対したけど、脅されていやいや実験した。

 数週間後、自分から新しい生物兵器を作るようになった、疑問を持たずに。結局、私もあのサングラス野郎と同じクズだ。そして、今みたいに化物になってもこの姿に満足して人間に戻ろうとは考えられない。

 でも、自分を助けてくれたリチャードが死んだのはショックだった。泣きそうになった。彼はついさっきあったばかりなのに。

 

「……リチャードが死んだことは悲しいのに、この会社で働いたことや実験したことには一度も罪悪感が感じない。それとこれとは別ってわけね……」

 

 そう冷たくに笑って手にし、鉄格子が開かれたことで地上に出る。すると、そこにはクリスがいた。彼の顔を見て何も言えずにいると、クリスが口を開く。

 

「リチャードのことは聞いた……あの世から応援してくれるなんてな」

「クリス、私は……」

「お前があいつを殺したわけじゃない。それより、お前が持っているオブジェと同じ形のくぼみが中庭らしいところへ繋がるところにあったな。その先を調べてくれないか? 俺は万が一のために弾薬と医療品を集める」

 

 ラピンの頭を撫でてから洋館へ戻るクリス。少し心地よく感じたラピンは彼に言われた通りに洋館の東側から中庭に行ける扉をオブジェを使って開ける。

 研究員であったラピンは記憶を便りに林の中を歩いて中庭へ向かおうとする。その時、灯りがついている小屋に気づく。だけど、こんなところに人なんている? S.T.A.R.S.の生き残りなの? 気になって先にそちらに行く。その途中でバリーからもらったウインドクレストを使ったからくりを解いてマグナムリボルバーを手にいれた。

 小屋の前まで来たラピン。ここに来るまで鎖の音や悲しそうな声が聞こえてきた。この小屋に何かがいる……

 双剣を構え、小屋に入る。暖炉の中でまだ新しい薪が燃えているのを見て、何者かがここに住んでいたらしい。だけど今は誰もいないようだ。武器をしまい、小屋を探索し始める。奥にクランクがあるのを見つけ、手にして立ち去ろうとした時に何かの写真を見つけた。

 家族の写真だ。親と子供が写っている。その裏に何かが書かれているのに気づく。

 

 

 

19

 

お父さん 一つ くっつけた 

お母さん 二つ くっつけた

 

中身はやぱりかたく ヌルヌル

白くてかたかた

 

ホントのお母さ 見つからない

 

お父 んわからない

また お母さ 今日見つけた

 

お母さ をくつけたら

お母 ん動かなくなた

 母さんは悲鳴を上げていた

 

なぜ? 

私は一緒に居たかただけ

 

 

 

お母さん 

どこ?

 

会いたい

 

 

 

「かわいそうに……私が言えることじゃないけどね」

 

 随分前に書かれていたと思うそれを読んだラピンはそうつぶやく。その続きがまだあるのに気づき、目を通したラピンは一瞬寒気を感じた。

 つい最近書いてあったらしく、真新しい赤いインクでこう書いてあった。

 

 

 

ウサギがお父さんを殺した

せっかく見つけたのに

 

殺してやる

 

 

 

「なんなの、これ」

 

 横から迫ってくる何かに気づかず、食らってしまうラピン。壁に強くぶつかった彼女は鎖や手錠で拘束されている化物が近寄るのを見たあと気を失ってしまう。

 リサ・トレヴァー。洋館の設計をした担当した建築家であるジョージ・トレヴァーとその妻のジェシカ・トレヴァーの娘である。彼女の家族はアンブレラ社に狂わされた。ジョージは洋館の仕掛けを知り尽くしていることから口封じに拘束され、脱出するも衰弱死してクリムゾン・ヘッドとなる。ジェシカはウイルスの実験台にされて死亡する。

 そして、娘のリサも母親と同じように実験台にされ、怪物になってしまう。その後、様々な理由で処分されたが死亡せず、林の中の小屋で生活していた。

 彼女は父と母が死んだことを知らずに両親を探し続けていた。女性研究員の顔を母親のものだと思い、それを引き剥がして自分に貼り付けていた。それを母に返すために。

 それから数十年後の今、墓の下にあった棺桶で赤くなった父を見つけた。母を探すつもりだったが、それでも嬉しく思った。一緒に母を探そうとした。

 しかし、それはできなくなった。目の前で失神しているこの兎が殺したからだ。よくもお父さんを。

 リサはラピンの足を引っ張り、部屋の中心に引きずる。そして彼女の上に乗り、首元に手を伸ばす。ラピンの首を掴んだ手に力が入る。息苦しくなって、目を開いたラピンは自分の首を絞めている手を掴んで離そうとする。

 だが、人外のラピンでもリサの力にはかなわなかった。酸素が脳に届かず、意識がまだ飛びそうになる。その前に首の骨が折れてしまうかもしれない。ラピンは足を屈伸して、リサの腹を蹴り当てる。大きく深呼吸して離れたところに転がっている彼女を一瞥したあと、落ちていたメガネを拾い上げて小屋から出て離れる。

 

「……あれが例の化物? ある意味あれも私に似たものかしら」

 

 小屋を振り向くラピン。首がまだ痛むが、あいつから逃げないと。中庭へ走っていく。

 

to be continue 


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