感染して体が化物になっても自我は消えませんでした   作:影絵師

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Resident Evil
初対面


 7月 24日

 

 バイオハザードの影響で人間じゃなくなってから約二ヶ月が過ぎた。人間の時の体型を保ちながら長い耳や白い毛皮、跳ぶのに適した足などのうさぎの性質を持つ怪物に生まれ変わった私は今日まで生き延びてきた。食料庫にあった野菜や少しの肉、うさぎのようにあんなものまで食べたり、襲ってくるゾンビを殺したりした。

 変異してからエッチなことをしたくなってきたけど、今では落ち着いてこれからどうしようか考えている。この洋館をさまようゾンビや化物みたいに自我や理性がなかったらフラフラしていたと思うけど、どういうわけが私はそれらを失わなかった。アンブレラ社がこれを知ったら大喜びかもしれない。

 それはある意味よかったかもしれないし、よくなかったかもしれない。だって怪物みたいに何も考えられずに済んだかもしれないんだよ。いつ奴らに殺されるのかって怯えるのは辛いよ……

 そんな時だった。聴力が発達した私の耳にある音が聞こえた。何かが高速に回転する音、エンジンのような音の二種類でヘリコプターだとわかった。どうやらそれでこの近くに何者かが来ている。しかし、一体誰なの? この洋館の周りにはあの化け犬がうじゃうじゃいるんだよ。まさか知らずにここに来たっていうわけ?

 一応確認しに行ってみるか。ウイルスに感染してから自室と食料庫を行き来しているだけで、別の部屋とかにも行ってないでこうして日記を書き続けているけど、これももうすぐ終わりそうだ。読み返すとうさぎ人間になる前から続いているね。なってからいろいろとやばいのが書いてるけど。

 そんなことだから私の日記はこの日で終わる。

 

―人間だった化けウサギのラピン

 

 

 

 

 

 

 今にも切れそうな灯りに照らされる机で日記を書く一人の女性。いや、人間の体型をしているが、それは人間ではない。

 鉛筆を握っているその手は白い毛皮に覆われており、全身と頭も同じ感じだ。頭の横にあるはずの耳がなく、人間と変わらない白いミディアムヘアーから二つの長い耳が伸びている。それはうさぎを人間の形にしたようなものだ。日記の最後を書き終え、椅子から立って背伸びするうさぎ人間。

 毛皮に覆われているため、服どころか下着を着てなくても子供が見てはいけない部分は分厚い毛に隠されているが、胸の大きさ、くびれ、腰周りを見て肉体的な魅力を持っている。顔つきもうさぎの特徴が少しある程度で、メガネをかけている。

 

「これで日記は終わりっと。あとは誰がどんな用でこのお化け屋敷に来るのかを見てみよっか」

 

 人間だった時と変わらずはっきりと言葉を言う。私物で散らかっている部屋から出ようとした時、自分の格好を扉のそばに置いてある鏡で見た。

 何も着ておらず、胸と股が丸見えの全裸だ。ただし毛皮に覆われているため、毎日この格好で過ごしていた。しかし、さっき聞こえたヘリコプターが使えるということは生きた人間が来ているかもしれない。もしも見られたらいろんな意味で問題になりそう。

 タンスを開けて着ていく服を選ぶが、ほとんど虫に食われていて穴だらけだった。どうにか無事だった物を取り出し、黒いブラジャーとパンティをつけてからタンスからの物を身につけていき、再び鏡の前に立つ。

 白シャツの上にベストを着ていて首元に黒いネクタイを巻きつけている。黒い長ズボンを履いているが、尻に穴を開けて丸いしっぽを出している。今の格好を見たうさぎは頷き、それで落ちそうになったメガネを抑える。アンブレラ社に入社した時、お祝いにもらった懐中時計の蓋を開き、今は夜であることを知る。

 支度を終え、部屋から出るうさぎ―ラピン。廊下に出てあの腐ったやつがいないのを確認すると、玄関ホールへ向かう。その間に何発かの銃声が聞こえたから人間だと確信すると同時に警戒する。私の姿を見て発砲するのはありえそうね。

 廊下の角で曲がろうとした時に立ち止まった。運悪くゾンビがいた。そいつはラピンに気づくと手を伸ばしてゆっくりと近づいてくる。腐ってるくせに新鮮な物を食べようとするのね。普通の人間が素手でこいつを倒すのは絶対無理だ。普通の人間なら……

 ゾンビに掴まれる前に一歩後ろに下がり、その場から足を離してゾンビに向かって飛び蹴りを食らわせるラピン。うさぎのキックを食らったゾンビは後方の壁に激突してもまだ動こうとする。ラピンはもう一発の蹴りを顔面に食らわせ、トドメを刺した。足の裏にべっとりとついた肉を床で拭き取り、移動を始める。もうすぐ玄関ホールだ。ここに来たのは一体どんな人物なんだろう?

 

 

 

「ウェスカー? ウェスカー! どこだ!」

 

 広い玄関ホールでそこに待機していた隊長の名を呼ぶ緑色の防弾チョッキの男性。そのそばにはオレンジ色の防弾チョッキの男性と、帽子をかぶった女性がウェスカーを探している。

 彼らは特殊作戦部隊S.T.A.R.S.のアルファチームに所属するクリス・レッドフィールド、ジル・バレンタイン、バリー・バートンだ。この付近で起こっている猟奇事件を捜査に向かった同部隊のブラヴォーチームが行方不明になり、クリスたちが捜索に来た。

 だが、墜落したヘリとパイロットの遺体を発見。その後、腐った犬に襲われ、隊員の一人が死亡、ヘリで待機していた隊員は恐れをなして仲間を置いたままヘリで飛び去ってしまった。残された隊員たちは古びた洋館を発見してそこに逃げ込んだ。

 しかし、それだけでは終わらなかった。一発の銃声が玄関ホールに届く。クリスとジル、バリーが銃声のした方角の部屋へ向かうと、そこには腐っていて明らかに死んでいるはずの人間―ゾンビと、それに食い殺されたブラヴォーチームのひとりの遺体があった。見たこともない怪物に驚きながらも、どうにか排除したクリスたちは玄関ホールにいるウェスカーに報告しようとするが、彼の姿はなかった。ホールを探し回ったが、いない。

 

「わけがわからないわね」

「同感だな」

 

 ジルがため息を付きながら言い、バリーもそう言う。クリスもそうだと頷き、ある提案をした。

 

「とにかく手分けして捜そう。バリーは食堂に戻って調べてくれ。俺とジルは反対の部屋から」

「ええ、わかったわ。まずは一階ね」

「そうだ、ジル。キーピックだ。お前が持っていたほうがいいだろう。何かあったらこのホールに―」

 

 バリーが言っている間にどこかから扉が開く音が聞こえ、三人は銃を構える。またゾンビかもしれない。周囲を見回して音の正体を探し始める。そしてクリスが見つけ、引き金を引こうとする。

 しかし、ゾンビとは違う見たことのない姿を目にして指を止める。ジルとバリーもそれに銃口を向けるが、すぐに発砲しなかった。

 真新しいとは言えないが、ゾンビの物よりはマシな服装を着ている。だが、着ているのは人間じゃない。白い毛皮に長い耳、そして赤い瞳がうさぎだと思わせる。クリスたちが知る小さい体ではなく、女性の体型をしている。そいつはゾンビと違ってすぐに近寄らず、その場で立ち止まって両手を上げている。

 

「何なんだ? お前は」

 

 銃を下ろさないまま、うさぎ人間に問うクリス。こいつが言葉をわかるのは知らないが、銃を向けられたことで両手を上げたということは人間の常識を知っているようだ。

 一方、訪問者を確認しに来たうさぎは彼らの格好に書かれているのを見てS.T.A.R.S.の隊員だとわかった。だが、どうして彼らがここに来たのかを知りたい。質問に答えようとするが、アンブレラ社の研究員って言ったら面倒なことになりそう……あ、でも今の私は研究員でもないし、人間でもないや。

 だからこう答えた。

 

 

 

「普通のうさぎのラピンよ」

 

 その答えを聞いた三人は無言で銃を構え続けたが、ようやく下ろした。バリーが苦笑いしてこう言う。その後にジルも口を開く。

 

「俺たちは不思議の国に来たみたいだな」

「私たちがアリスってことかしら?」  

 

to be continue

 




 どうしてクリスとジル、それにバリーが一緒にいるかと言うと、それぞれのイベントを書いてみたいからです(オリ主のラピン視点ですが)
 もし、これが初代ではなくてBSAAの時に会ったら瞬殺されていますね;
 

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