感染して体が化物になっても自我は消えませんでした   作:影絵師

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呉越同舟

 

 腹の痛みがなくなったラピンはベッドで上半身を起こし、部屋を見渡す。S.T.A.R.S.のクリス、ジル、バリー、レベッカ、そしてすぐ横に自分と同じ化物のカーミラが立っている。ウェスカーの姿が見えないけど、勤めていたアンブレラがやってきたことを知ったS.T.A.R.S.のところには来ないか。

 そう考えるラピン。そんなことは置いといてクリスとジルの質問に答えた。

 

「ええ……アンブレラの研究員だったの。今はクビにされているかもしれないけど」

「その製薬会社は何をやっているんだ? 化物に変えてしまうT-ウイルスを研究してまで」

「その化物が目当てなの」

 

 クリスに返したその言葉を聞いたジルはラピンにたずねた。

 

「化物が目当て……どういう意味なの?」

「洋館を彷徨う怪物を見てきたでしょ。腐った素早い犬とデカイ鮫とさっきのトカゲ人間、それらとカーミラは兵器として使えそうよね? 私は偶然なっちゃったけど」

「兵器……まさか!?」

 

 大声を上げるジルと同じように驚くクリスとバリーにカーミラが頷き、口を開こうとした時だった。

 

「アンブレラは生物兵器を産み出し、それらを売っています。」

 

 これから言おうとする内容をレベッカが言ったことに驚いたが、責める気はないと目で伝える彼女にカーミラは感謝した。養成所でレベッカさんとビリーさんに出会った時は殺すか、殺されるかと考えていた。飼い主である研究員を食らって奪ったとはいえ自我と理性があっても、無数の蝙蝠で出来ている私たちは人間のように接してくれないと思っていた。

 案の定戦った。彼らが放ってきた弾丸を分離して避けたり、私たちの一部を二人に襲わせたりした。だけど、しばらくしてレベッカさんが攻撃を止めて私たちに話しかけてくれた。私たちの話を聞いてくれた。彼女曰く、犯罪者よりはマシだと。その犯罪者さんも私たちの話を聞いてくれる優しい人だった。そんな二人と行動していた時に私たちはアンブレラ社の裏の顔を話しました。

 ……こうやって私たちが思っていても、クリスさんとジルさんとバリーさんは驚きと怒りの二つを表していますけど。

 彼女が思っている通り、クリスはラピンに怒鳴っている。

 

「生物兵器だと……? なぜそんなものを!!」 

「性能のいいB.O.W.が高く売れるからね。薬の方でも結構儲かるけど、アンブレラの偉い人が欲張りだから」

「そんな化物をお前たちが作ったんだ!! 多くの人間を犠牲にして!!」

「……それには言い返せないね。最初は人のためいい薬を作ろうと入社したはずだったのに、作ってきたB.O.W.の性能が気になって他人を実験台にしてきたマッドサイエンティストにしか見えないからね、私は。今はうさぎ人間だけど」

 

 ラピンがそう言い終えた瞬間、バリーが銃を取り出して彼女に向ける。その行動にクリスとレベッカとカーミラが驚き、ジルが止めようとする。

 

「バリー! 何をしているの!?」

「ジル、もうこいつらと一緒にいる必要はなくなった。こいつらが研究をしていなければ俺たちは地獄を見ずに済んだはずだ」

「確かにアンブレラは許されないことをしてきたわ。でも、この洋館を知る彼女を殺したら私たちが生きて帰れなくなるわよ!」

「仲間が死んだのはこいつらのせいだ! 俺の家族―」

 

 そう叫んで引き金を引こうとするバリー。そんな彼に撃ち殺されそうなラピンはすぐ動くことができないうえ、武器を取り上げられている。まさに絶体絶命だ。

 しかし、部屋にいる誰かがバリーの腕を掴んで彼女を救った。クリスだ。クリスがバリーに首を横に振り、こう言った。

 

「確かにアンブレラとこいつらのせいで俺たちは地獄を見た、仲間も死んだ……だから俺たちは生きて帰るべきだ。そのためにはこの二人の協力が必要なんだ。どうか納得してほしい」

「クリス、お前は何を―」

「こいつらに怒りをぶつけたいならここから抜け出してからだ。今は生きることを考えるんだ」

 

 そして、ラピンとカーミラを見て鋭く言う。

 

「お前たちも協力するんだ。後で罪を償ってもらうがな」

「……もちろん、こんなところに置き去りなんて嫌だからね」

「私たちも協力します。それで許されるとは思いませんが」

 

 そう答える二人。彼女をしばらく睨んだバリーはようやく銃を下ろした。納得している様子ではないが、二人を殺すつもりはなさそうだ。それを見たラピンはベッドから降り、全員に言った。

 

「みんなはここでバイオハザードが起こったって知ってるけど、研究室らしいところは見つけた?」

「いや、そんなものはこの洋館にはなかったが……知っているのか?」

「もちろん、ここの研究員だったからね」

 

 クリスにそう返し、部屋から出るラピン。S.T.A.R.S.とカーミラは戦闘に備えて彼女について行く。彼らたちが倒したハンターとゾンビが廊下に転がっているのを見て、自分とカーミラもこうなっていたはずと考えるラピン。

 どうして私を生かしているのだろう? 人間らしいところがあったから? 自我と理性が残っていたから? ウイルスがまた体にあるのに、いつか自分を抑えられなくなるのに……理解できない。

 そうしているうちに玄関ホールに来た一行。そこの二階へ上がる階段の裏に移動し、そこにある扉の前で立ち止まる。ジルがラピンにたずねた。

 

「この先に研究室が……?」  

「室じゃなくて所だけど、ここからまっすぐよ。洋館の屋上に繋がるエレベーターもそこにある」

「屋上にブラッドが来てくれるなら助かるかもしれないわ」

「一つ聞くけど、ウェスカーはどうしているの?」

 

 ラピンの言葉を聞いたクリスは答える。

 

「寄宿舎で会ってから姿が見えなくなった。このまま、行っていいのかは……」

「あの男のことだ。死んでいるとは考えられねえ」

 

 

 

 


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