着物+革ジャン+ブーツ   作:スネーク

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6話

 銀髪の男達3人が爆弾を持って出て行ったあと、チャイナ服の少女が銀髪の男をかっ飛ばすのを土方は見た。慌てて下を見ると、落ちていった男は爆弾を上空へブン投げた。人通りの多い道路で起爆させないようにとの配慮なのだろうか。つまりあの3人は攘夷志士ではない(・・・・・・・・)?しかし桂たちと逃げていった際の親しげな様子から全くの無関係ではないはず……ていうか桂たちは?

 爆弾が上空で爆発するのを隊士達と見ながら考えているときになってようやく桂たちのことを思い出した土方は隣の沖田に声をかけ、大至急部屋に戻った。しかし、当然部屋はもぬけの殻であった。斬った浪士達の死体すらない。下は封鎖しているため、逃げるのなら最上階だろう。そう考え今度は隊士達も引き連れ最上階へ行くと遠くへ見慣れない小型の船が飛んで行った後だった。江戸の町を飛んでいる船は数え切れないほど多い。その中で小型の船一隻を見つけるなど不可能に近い。つまり、また逃がしてしまった。

 ただでさえ市民の真選組に対する感情がよくない中でこの失態である。今度は始末書では済まないかもしれないと考え、イラつき始めた土方は胸ポケットからタバコを取り出す。火をつけようとしたところで沖田が下をじっと見つめているのに気づく。視線から推測すると通りの反対側のビルだろう。なんだと思い、自分も見てみるとそのビルから裏路地へ飛び降りる、着物に革ジャンの女が見えた。そんな奇妙な容姿をした人物などこの世に1人しかいない。両儀式だ。飛び降りた時の様子を見るに、何かの道具を使った様子もない。彼女はこのホテルの屋上から道路を挟んだ隣のビルの屋上に自分の身一つで飛び移り、さらにそのビルの屋上から下の路地まで身一つで飛び降りたことになる。ただでさえ人間離れしていた数年前よりも人間離れしている。

 

「両儀の野郎、いよいよ人間やめたんですかねィ」

 

 沖田は楽し気に呟いているが、ストレスの種が増えた土方の胃はきりきりと痛んだのであった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 銀髪の男、坂田銀時ら3人を大江戸警察署へ移送するように指示を出した後、土方たちは自分達の上司を迎えるためにホテルの入り口で整列していた。

 豪華な公用車から出てきたのは全警察組織のトップ、警察庁長官である松平片栗虎である。

 

「楽にしてくれ」

 

 彼の言葉に従い、土方たちは敬礼をやめる。

 

「土方と、沖田以外の連中は現場検証に戻れ。土方と沖田は聞きたいことがあるから残ってくれ」

 

 言葉に従いホテルに戻っていく隊士達。片栗虎は土方たちに近寄り、言葉を交わす。

 

「久しぶりだなぁ。トシに総悟よ」

 

「そうですねィ」

 

「そうだな、松平のとっつぁん」

 

 沖田はどことなく嬉しそうにしているが、土方はなぜ片栗虎が地球にいるのかが不思議でならない。彼は数日前に全宇宙警察サミットに行ったはずだ。いくら技術が進化したとはいえ、連絡を入れて1時間や2時間で戻ってこれるような場所ではない。

 不思議そうな顔をしている土方に片栗虎は年齢に合わない悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

 

「各星の政府高官は母国に緊急事態があった時に備えてその星のターミナルへの直通の航路があるのさ」

 

 そう答えた片栗虎に土方は驚愕する。確かに両儀式は大物なうえに見つけたら絶対に秘匿回線で連絡しろと言われていたが、まさかそんな事態になるような人物だとは思ってもいなかった。松平は視線を鋭くし、殺気も含めた目で土方に尋ねる。

 

「で、両儀はどこだ」

 

 まさか自分に殺気をぶつけられるとは思っていなかった土方は言葉に詰まってしまった。明らかに逃がしたとは言えない空気に土方に代わって沖田が話す。

 

「逃がしちまったんですが……」

 

 その言葉と同時に刀が土方の喉に、拳銃が沖田に突き付けられる。まさか刀と銃を突き付けらえるとは思っていなかった2人は完全に硬直してしまった。普段、銃ばかり使っている片栗虎が刀を抜いたのにも驚いたが、その筋が自分達のように普段から殺し合いをしているような鋭いものであったのにも土方と沖田は驚いた。

 片栗虎は声を荒げる。

 

「逃がしただァ?テメェら腹切る覚悟はできてんだろうなァオイ!」

 

 普段の冗談ではなく本気で怒っている片栗虎に土方は必死に弁明する。

 

「た、確かに逃がしちまったが、あいつは桂たちの飛行船に乗って逃げていかなかった!ついっきそこのビルから飛び降りていったんだ!」

 

 土方の言葉に何を言いたいのかが分かった片栗虎は銃と刀を収める。

 

「つまりだ」

 

 片栗虎が口を開く。

 

「ヤツはこの近辺にいると?」

 

「可能性は高い」

 

 その言葉に鼻を鳴らした片栗虎は背を向ける。

 

「とっつぁん!どこにいくんですかィ」

 

 沖田の質問に片栗虎は怒鳴る。

 

「両儀を探しに行くに決まってんだろ!!」

 

 怒鳴られた沖田はビクッとなったが構わずに片栗虎は続ける。

 

「今度正式な通知を出すが、今後両儀式の手配書は取り下げだ。それと真選組は半年の厳しい減給。土方と沖田は桂、両儀の両名の確保失敗の始末書だ」

 

 片栗虎の剣幕に切腹も考えていた土方と沖田は、想像よりも軽めの処分に息を吐いた。そして安心すると同時に両儀式の手配書取り下げに関して疑問を覚えたが、その様子を見ていた片栗虎が釘を刺す。

 

「お前らの処分が軽めなのは、ここ数年影すら見せなかった両儀の尻尾を捉えたことに対する報酬変わりだ。そして両儀のことは今後考えなくていい。通常の勤務に戻ってくれ」

 

 それだけを言って片栗虎は車に乗り込み去っていった。

 土方たち、は自分達が考えている以上に深い両儀式の件にこれで関わらずにすむと溜息を吐いた。




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