IS~人柱と大罪人~   作:ジョン・トリス

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第四話


努力は裏切らない

無駄な事は存在しない。

経験してきたこと、そのすべてが糧となる。

自分と自分のしてきたことを信じるべきだ。

報われるかどうか、全てはそれ次第だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----努力は裏切らない----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日の放課後、校庭集合だぜ!」

 

昨日の食堂での別れ際、見事なサムズアップと共に茜はそんな言葉を告げてきた。

訳を聞けば何でも特訓をするらしいので具体的な内容も秋終は尋ねたのだが、

 

「乙女の秘密よん」

 

の一点張りで全然答えてくれない。

流石にイラッとしたが、これ以上何かを言っても面倒になること間違いなしだったので大人しく従うことにしたのだ。

そして、少し大きめの校庭と校舎の境にあるベンチの上に座りながら秋終は茜が来るのを待っていた。

 

すると、

 

「よぉ」

 

「お前も来ていたか」

 

現れたのは、織斑一夏と篠ノ目箒であった。

 

「あぁ。何で此処に?」

 

軽く挨拶を返すと思っていた疑問を口にした。

 

「全生始に言われてな」

 

「俺もだぜ」

 

思わず頭を抱えた。

まさかこの二人を巻き込むとは・・・

 

(恐ろしい子!!!)

 

「どうしたんだ?」

 

考えていた事が顔に出ていたのか、一夏が訝しげに聞いてきた。

 

「いや、何でもないよ」

 

昨晩、茜と会うことで僅かではあるが感情の整理ができた。だがそれは、結局一時的な物であり、秋終は再び苛まれていた。

 

日も暮れ始め、辺りからは部活動に励む声が聞こえる。

時刻は5時になろうとしていた。

 

それから程なくして茜はやって来た。

 

「いや~めんごめんご。遅れちったぁ」

 

反省の様子無しの謝罪と共に。

 

「遅い。何してたんだよ?」

 

説明なしの召集と茜の遅刻により、その言い方にはいくら棘が伺える。

 

「それがねぇ。ISの特訓しようと思って訓練機借りようとしたら、予約が埋まって無理だって言うんだよ!酷くない?」

 

「当然だな。ISの数は限られているのだ。おいそれと借りれる物ではないだろう」

 

篠ノ之の言った通り、ISの数は限られている。正確には動かすために必要なコアの数だ。そのコアがなければISは動かない。故に訓練機と言えど、誰しもが自由に使えるとは限らない。

 

「ならどうするんだ?」

 

訓練機がなければISの操縦ができない。今必要なことは操縦経験であり、それが出来なければこの集まりの大半の意味が失せてしまう。

その事を踏まえての織斑の疑問であった。

 

「ん~なら、魂の特訓?」

 

茜をの除く三人の心が一つとなった。

 

(((何を言ってるんだ))))

 

開いたく口が塞がらないとはこの事だ。

鳩が豆鉄砲を喰らった様でもある。

 

「具体的には?」

 

こめかみを押さえながら秋終が尋ねる。

このアホさ加減は今に始まった事ではないとは言え、流石にあたまが痛む。

 

(頭痛が痛い)

 

頭痛が痛いとは何ぞや。

 

「んー、具体的にと言われてもなぁ・・・。何かこう~気持ちでカバーしてく!みたいな?」

 

つまりはノープラン。

これぞ茜クオリティー。

 

(((やれやれ)))

 

再び三人の心が一つになった瞬間であった。

 

 

 

 

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あれから一週間たった。

あの後、篠ノ之の一言

 

「せめて肉体を鍛えるべきだ」

 

の言葉により、基礎体力の向上に努めていた。

ランニング、腕立て、腹筋、背筋、スクワット、うさぎ跳とまるでどこかのスポコンアニメの様な特訓をひたすら行った。数週間でそこまで効果が見込まれると思えないが、やらないよりましであった。

 

ちなみに全生始茜が、

 

「魂!魂!」

 

とうるさいので特訓に瞑想も追加された。

 

特訓だけでなく朗報も入った。

織斑一夏と渚秋終の二人に専用機が渡されると言うこと。二人は世にも珍しい男性操縦者なので、どこぞの研究施設がまっさきに名乗りを挙げたのだ。

 

もっとも、秋終にとっては別に嬉しくもないのだが・・・

 

いろんなことがあり、現状でやれることはやった。

後は明日の戦いにそなえ、ゆっくり休むのみである。

 

(いよいよ明日か)

 

時刻は23時。場所は寮のラウンジ。

殆どの生徒が自分の部屋で休んでおり、人影は見えない。

 

秋終は独り、この場所で佇む。

眠ろうとしたがまったくと言っていいほど眠れない。

戦う事を考えれば脳裏にチラつくのはあの日の出来事。

赤く染まった景色と自分の叫び。

さくらんぼの髪留め。

 

いつの日か秋終は言っていた。

 

ーーーー声が聞こえるんだーーーー

 

と。

 

それが誰の声なのか。

 

誰の叫びなのか。

 

もしかしたら自信の声なのかもしれない。

 

「なぁにしてんだよぉー!」

 

「ぐぇっ」

 

カエルが潰れたような声が出た。

茜の脳天チョップ炸裂である。

 

「うひひひ。何その声ー!」

 

相変わらずの汚い笑い声をあげる彼女。

 

「何すんだよっ!?」

 

言って気付く。

彼女の笑い声が秋終の中の不安を払った事に。

どんなに苦しくても彼女にちょっかいをかけらると普段の自分に戻る事に。

何時だって不安な時、こうして彼女は側にいてくれた事に。

 

「茜」

 

「ん?」

 

「ありがとう

 

「・・・・・・・うん」

 

そんな短いやりとりで二人は確かに通じあった。

 

 

 

 

 




続く

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