ぼっちな俺はとある理由で田舎で暮らす。   作:ちゃんぽんハット

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更新遅くてすみません!

今回はドキドキランチタイムが終わった後からです!

それではどうぞ。


田舎暮しその12

昼飯も食べずに教室に戻ると、皆は机を後ろの方に下げて箒を持ったり雑巾を持ったりしていた。

どうやらこれから掃除らしい。

そういえば俺の掃除場所はどこになるのだろうかと思っていると、一人の男子が声を掛けてきた。

 

「おーいハッチー!ハッチーの掃除場所、教室だべ!」

 

雑巾を持った手をブンブンとふっているあいつは、確か戸部とか言っただろうか?

うん、あの頭の悪そうな髪の毛と、あの頭の悪そうな喋り方は間違いなく戸部だ。

さっきも俺に積極的に話し掛けてくれたし、結構好印象(笑)のやつだ。

ハッチー(笑)ってアダ名をつけたのもあいつだしよく覚えてる。いいやつだ(笑)

 

……いや、多分本当にいいやつなんだと思うんだが……あのタイプはどうも苦手だ。

いかにも青春を謳歌してるリア充みたいで、本来なら決して俺と交わらないような人間。

実際前の高校ではあの手のタイプと関わったことは1度もないし、あったとしても事務連絡くらいだ。

俺とは住んでる世界がまるで違う。

そう……そうであるのだが……

 

「おお、わざわざ悪いな」

 

「んな礼なんかいーって!ちなみに陽乃も教室掃除なんよ~。これ、キてるっしょ?」

 

「いや何がキテるのか全くわからんのだが。てか濡れ雑巾振り回すなよ、汚いだろ」

 

「っべー、危うく人に水掛けるとこだったわ」

 

「おいよく見ろ俺にかかってんだろ。なに、お前の中で俺って人じゃないの?」

 

とまあ、こんな風に会話をしなければならないのだ。

しかも割りと本音でである。

いや、俺だって出来ればしたくないよ?

今までこんな風に人と話したことなんて家族くらいとしかなかったし、何か俺までもリア充(笑)みたいな感じがして気持ちが悪い。

にも関わらず、俺がこんなことをしなければならないのは、こいつとの契約があるからだ。

 

「え~、私と一緒で嬉しくないの?」

 

「……あいにくと俺は掃除は一人でする派でな。誰かと一緒にやるとかどうでもいいし、そもそも今まで一緒にやってくれる人がいなかった」

 

「うえーん戸部くーん、八幡がいじめるよー」

 

「いじめてねえよ。てか棒読み過ぎんだろお前。後俺の自虐にツッコンでくれない?無視が一番キツいんだけど」

 

「お前?お前って、だれのこと?」

 

「うっ…………は、陽乃……」

 

「うわー、キョドリ過ぎて流石の私でもちょっと引くなー」

 

「やめて、ハッチーのライフはもうゼロよ」

 

「はははー、何それおもしろーい」

 

「やめて、本当にやめてもう辛い」

 

陽乃との契約の1つ、自分と話す時は本音で話すこと。

この約束のせいで、俺は今のように会話をすることになっている。

一応陽乃とだけでいいと言われたのだが、それだと何か不自然に見えるし、下手すると俺が陽乃に好意を抱いているように見えるかもしれない。

陽乃にだけ心を開く男、比企谷八幡。

まあ、実際は心を無理矢理アンロックされてるわけだが。

ハッチーの心、アンロック!

俺はバツタマかよ。

 

とにかく、陽乃と気軽にコミュニケーションを取るなら他のヤツともそれなりに付き合わなければならない、という結論に至ったわけだ。

簡単に言ってるようだが、コレが結構しんどい。

さっきの戸部との会話だって、本当にあんな感じでいいのかわからないし、戸部が嫌悪感を抱いているかもしれない。

常に不安が付きまとうわけだ。

これではいつ力が発動するかもわからない。

 

そこでふと戸部の方を見てみると、なにやらポカーンという顔をしていた。

あれ?俺何かやっちまったか?

 

しかし、戸部はハッと我に帰ると、急にニヤニヤし始めた。

 

「あーね、そういうこと。マジか~」

 

腕を組み、謎に納得をした顔で何度も頷いていた。

 

「いや~これはあれっしょ、そういうことっしょ」

 

全く持って何を言ってるのかわからないが、何となくこいつがとんでもない誤解をしているような気がした。

 

「おいちょっと待て戸部、おそらくお前は誤解している」

 

「いや、別に隠す必要ないって!俺は分かってるから!大丈夫大丈夫!」

 

「いやちょっと落ち着けとりあえず話をだな……」

 

「大丈夫大丈夫!俺ってば口結構硬いし?安心っしょ?」

 

「知らねえし、そういうやつは大抵信用ならないんだよ。いいから話を聞けって……」

 

「にしても陽乃とハッチーがね……はなっからそんな気はしてたけどまさかね……」

 

「勝手に感慨にふけってんじゃねえ!」

 

くそ!こいつ全く話を聞かねえ!

 

「おい、お前も何とか言ってくれ」

 

「…………」

 

「おい、聞こえてるだろ?何で無視すんだ?」

 

「…………」

 

「おいって!……くっ……は、陽乃?」

 

「どうしたの八幡?」

 

「ちっ、マジでこれ意味わかんねえ……」

 

「何か言った?」

 

「……何でも。とにかく、こいつの誤解を解いてくれ」

 

「もー、しょーがないなー」

 

やれやれと肩をすくめる陽乃。

少しイラッとしたが、今は誤解を解くのが先だ。

我慢我慢。

 

「これくらいでイライラするなんて、八幡カルシウムとった方がいいよ?」

 

「いいから早くしてくれ頼む」

 

つーか本当にこいつ、人前でも俺の心の声に反応してきやがった。怖すぎる。

 

まあ何はともあれ、陽乃はちゃんと戸部に説明してくれるようだ。

あんだけ口がたつんだ。

何かしら上手い言い訳を考えてくれるだろう。

 

「おーい戸部くーん」

 

「ん?」

 

「このことは、私たちだけの秘密ね?」

 

「……あ、あーはいはい、やっぱりね。うん、これもう完璧っしょ。いやーマジ半端ないわ」

 

「お願いね♪」

 

「オーケオーケまかし!俺にまかし!誰にも言わないから心配しなくて大丈夫よ!」

 

「ありがとー♪今度何かお礼するから♪」

 

「んな気にすんなって!影ながら二人のこと応援してっからさ!頑張れよ!」

 

「本当にありがとー♪」

 

…………おい。

 

「それじゃあ八幡、掃除しよっか♪」

 

「それじゃあじゃねえよ。一個も誤解解けてねえぞ。むしろ認めてんじゃなえかよ」

 

「私別に認めてないけど?」

 

「いやそうなんだが……」

 

「そんじゃヒキタニ先輩、邪魔者は退散しますんで後おねしゃす!」

 

「おい待て戸部、だからこれは誤解だ。それと急に先輩扱いすんじゃねえ。後俺は比企谷だ」

 

「おつかれっした!」

 

「あ、おい!……はあ、どうしてこうなった」

 

「まあまあいいじゃん別に。大したことじゃないし♪」

 

「大したこと過ぎるだろ。俺にはいきなりハードモードでプレイするドM趣味はないぞ?」

 

「はいはい、とにかく掃除しよ掃除!」

 

「……はあ」

 

そうして掃除を始める俺たち。

その最中にも、他のクラスメイトから色々と話しかけられたりからかわれたりした。

お熱いだの、出来てるのだの、ヒューヒューだの。

お前らの頭の中はお花畑か!

まあわざとだということは分かっているのだが。

 

そして話しかけられたら、俺も出来る限り本音を心掛けて返事をした。

したつもりなのだが……

 

……本当にこれでいいのだろうか?

そもそも、本当に本音で話せてるかも怪しい。

俺自身、自分の本音って何だっけと、よくわからなくなってくる。

何と言うか……今どういう状況なのか謎だ。

 

すると突然、甘い香りが鼻をくすぐると同時に、耳元に暖かい息がかかった。

 

「大丈夫だよ、八幡」

 

「あん?」

 

「大丈夫。上手くやれてるよ」

 

「…………」

 

「皆もちょっと驚いてたみたいだけど、そんなに違和感感じてないみたいだよ?」

 

「……お前が急に名前で呼び合うようにしたからな、そりゃ驚くわ」

 

「そうじゃなくて、八幡が意外に喋るってこと」

 

「…………」

 

「言ったでしょ?自然にしてる方がいいって」

 

「…………」

 

「大丈夫、上手くやれてるよ」

 

俺にだけ聞こえるように、小さく呟かれたその言葉。

言葉の主はニコリと俺に微笑みかけてくる。

その笑顔が、ほんの少しだけ優しい顔に見えた気がしたが……多分気のせいである。

だがまあ……少しだけ不安は安らいだのだった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

掃除を終えて、午後の授業も終えて、今は帰りのホームルーム。

やっと長い長い1日が終わる。

今日は本当に疲れた。

心も体もクタクタである。

さっさと帰ってこたつ様で丸くなってゆっくしよう。

そう心に誓っていると、平塚先生のよく通る声が教室に響き渡った。

 

「それでは明日も皆元気で登校するように。来週の期末試験の勉強もしっかりするんだぞ。では日直」

 

きりーつ、れい、さよーならー

 

号令と共に教室がガヤガヤとし始める。

さっさと帰っていく者、友達と駄弁っている者、勉強道具を準備する者と様々であった。

 

そんな中、俺は呆然としていた。

それは平塚先生の最後の言葉が原因だ。

 

 

 

期末……試験……だと?

 

 

 

そう、どうやらこの高校は来週から期末試験のようだ。

今は勉強期間なのだろう。

部活動に向かおうとする生徒は一人もいないことが、それを証明している。

 

これは……参ったな……

来週いきなり試験とは予想外だった。

いや転校してきたこの時期を考えると、確かに2月期の期末試験をしてもおかしくない。

そうなのだが……

 

範囲ってどうなってるんだ?

 

これが一番の問題だった。

一応今日行われた授業は、大体の進度が前の高校と変わらなかった。

いや、正確には俺が予想してたところまで授業が行われていたのだが。

というのも、引きこもってた1ヶ月、俺はその期間に行われたであろう授業の分を自分で勉強していたのだ。

そのため何とか今日の授業にも着いていくことができたが、やはり不安は大きい。

実際に受けていないのだからそれは当然だし、そもそも……

 

 

 

試験範囲、誰に聞こう……

 

 

 

俺は今日1日で、クラスのほとんどと話をしたと思う。

だがそれは、あくまでも話しかけられたら答えるだけで、決して自分から話しかけるなんてことはしなかった。

それにいつも側には陽乃がいて、何だかんだと上手いこと会話をスムーズにしてくれていた。

まあつまり……

 

 

 

自分から話しかけるとか、何それ無理ゲー。

 

 

 

はてさてどうしたものか。

いっそのこと、平塚先生に直接聞きに行こうかと思ったその時、

 

 

 

「八幡、生徒会室行くよー♪」

 

「…………は?なんで?」

 

「ふふー、八幡が試験についてお困りのようだから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が教えてあげるよ、イロイロと♪」

 

それはそれはとても素敵な、もとい俺からすれば邪悪にしか見えない笑顔でそう言ってくる陽乃。

……嫌な予感しかしない。

なんなら悪寒しかしない。

 

「あーひっどーい!私悪いことするつもりないよ?」

 

「だからナチュラルに……いやそうじゃなくてだな」

 

「ん?」

 

「……あのー、範囲だけ教えてくれたりしない?」

 

「ふふーん♪」

 

「…………」

 

「い、や♪」

 

「……はははー、ですよねー」

 

「というわけで!早速生徒会へレッツゴー!」

 

「…………おー」

 

こうして、期末試験までの1週間、陽乃先生による特別講座が開かれることになったのだった。

 

こいつと二人きりとか……はあ、帰りたい。

 

そうは思うものの、黙って陽乃の後に続き生徒会室へと向かう八幡であった。

 

ただまあ、八幡の心配は杞憂におわるのであった。

 

というのも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室にはすでに人影があったからだ。

 




さてさて、生徒会室の人影とは一体……

次回をお楽しみに!出来るだけ早くあげます!

それにしても陽乃にイロイロと教えて貰えるなんて、八幡羨ましいですね!

それでは今日はこの辺で。

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