破天荒騎士銀河道中物語   作:放浪人

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 またも日を跨いでしまった……OTL 流石に最初の勢いも削がれて、これからは2,3日に一話上げられればいいところになりそうです。申し訳ない;

 それでは前編に当たる前話の続き、後編をどうぞ。


バカとキ○○イと普段大人しい人は怒らせちゃダメ

CHAPTER 05 「バカとキ○○イと普段大人しい人は怒らせちゃダメ」

 

 

 隔壁越しの管制室にて通商連合総督ヌート・ガンレイが何かを企んでいるのと同じ頃――そんなことなど露知らぬアッシュとオビ=ワンは、一瞬で前門の超強度隔壁、後門のドロイド軍という状況に陥っていた。しかも左右の通路からも挟み撃ちに来ているので、本当に逃げ場がない。

 

 

「このままでは殺られますよ!どうするんですか!?」

 

 

 三方向からのブラスターを必至に裁くオビ=ワンと、流石にオビ=ワン一人には任せられなかったのか自らもセーバーでブラスターを撃ち返しつつ隔壁を調べるアッシュ。片手にセーバー、体は壁側に向けたまま、見てもいない弾丸を的確かつ高速で弾くと言う離れ業をやってのけている。

 

 

「あー、何か駄目っぽいな。この壁セーバー通り難いし、思った以上に硬くて厚いから()じゃちと壊せそうにねーわ」

「そんな……!」

 

 

 いつものアッシュらしからぬ否定的な発言に思わずオビ=ワンも苦悶の表情を浮かべる。

 しかしそう言うアッシュ自身には相変わらず焦った様子はなく、隔壁から離れると周りの壁を調べ始めた。もちろん攻撃は相変わらず見ないまま弾いている。

 

 

「? 何を――」

 

 

 その行動に疑問を抱き口にするのと、アッシュが行動を起こすのは同時だった。

 

 

「フンッ」

 

 

 アッシュはセーバーを握っているのとは反対の手を拳にすると、隔壁にすぐ隣接する部分の壁をそのままぶち抜いた。あまりにも容易く。

 

 その光景自体はオビ=ワンにも珍しいものではなかった。徒手空拳。今代最強のジェダイ・マスターとされるメイス・ウィンドゥ、肉体を用いた武術にも造詣の深い彼の弟子であった故か――ほんの僅かな期間だけだったらしいが――、アッシュもそうした肉弾戦に長けている。

 腕力や脚力をフォースで高め、手足をフォースの力場で覆いドロイドの鉄の体すら破壊するというその芸当は、良くも悪くもオーソドックスなオビ=ワンには出来ないものだ。

 

 しかし問題はそこではなく、アッシュの行動の意図。まさか今更、あの隔壁ほどには強固でないはずの周りの壁をぶち抜いて行こうとでも言うのか。いや、この状況では有効な手かも知れないが――――

 

 

「ん~、これか?……あぁもう面倒くせーな。とりあえず全部引っこ抜くか」

「え、ちょっ、一体何を――」

 

 

 何やら不安になりそうなことを一人ゴチているアッシュにオビ=ワンが声を掛けて静止させようとするのと、彼がぶち抜いた壁から色々なコードをグチャグチャに絡ませた握り拳を引き抜くのは同時だった。

 

 

「えーっと、どれをどうすりゃいいんだっけ?ったく、こんなもん一つに纏めりゃいいだろ、何でこんなゴチャゴチャしてんだ。欠陥構造だよ欠陥構造」

「……そうか!回線からフォースでハッキングを!」

 

 

 オビ=ワンも知識としては聞いたことはあった。電子回路にフォースで介入し、相手のシステムにハッキングすると言う裏技のような技法。

 ただしコンピューターは言わば機械で作られた人造の脳。それも人間一人の容量では扱えないような膨大な情報の処理を目的としているのだから、いかにフォースといえどそれを全て掌握することはできない。

 あくまで単純なもの。そう、例えば――――

 

 

「これで隔壁の扉を――」

「あ」

「え゛」

 

 

 アッシュの思惑を察し驚嘆の声を上げるオビ=ワンだが、直後にアッシュの漏らした間抜けな声がそれを凍りつかせた。

 

 ガクン、という重厚な音が響くと、次いでエラーを知らせるような電子音が発生。そして隔壁は閉まったままだ。

 沈黙――ドロイドの撃つブラスターの発射音と、それを跳ね返すアッシュ達のセーバーの音だけが空しく響く以外の、全てが沈黙した。

 

 そして――――

 

 

「ごめん、壊しちった★」

「何やってんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?」

 

 

 まさかの逆効果。どうやら隔壁を開けるどころか、下手な干渉をしたばかりに電子回路が破損、物理的にもロックされてしまったらしい。

 早い話、管制室を密室にしてしまったのだ。アッシュ達が入り込む前に。

 

 

「何で!何で出来もしないことをやったんですか!? ていうか何でやろうとした!」

「いや違うんだよ。以前知り合いがちょちょっとドロイドファイターの回路引っ張り出して、それでブイブイ乗り回してたからさ。アレが大丈夫ならコレなんて楽勝だろうって思ったんだよ。そしたらこんなことに」

「試しもしなかったことを土壇場でやるんじゃないッ!!!」

 

 

 なんということだ、ほんの一瞬でも尊敬の念を抱いて損した。これで退路ならぬ進路が絶たれてしまった。

 そうオビ=ワンが心の中でOTLする最中にもドロイドの攻撃は続く。というより今更だが、よく今まで致命傷を受ける事無く捌けたなと、自分の成長を虚しく喜ぶ。もちろん現実逃避だった。

 

 ただ、今までのやりとり中ずっと攻撃を撃ち返していたので数はそれなりに減り、周りには破壊されたドロイドが散らばり積み重なっている。幸運なことにそれが敵にとっての妨げとして機能していた。

 加えて、まだ多くはあるが敵の数にも終わりが見えてきていた。最悪、このまま通路を強行突破するという手も――――

 

 そこまでオビ=ワンが思考したところで、彼、そしてアッシュも異変に気づく。なお彼は、手にこんがらがっていた回路をようやく引き剥がしたところだった。

 

 

「ん?」

「何か……来ます」

 

 

 ことここに至って今度は何を――そうオビ=ワンが身構えると、ちょうど彼らの目にも『それ』が見えた。

 

 

「あれは――」

「ダンゴムシ?」

「違います。デストロイヤードロイドです」

「いやドロイディカだろ」

「知ってんじゃねえかッ!!」

 

 

 そんな二人のやり取りはさておき。アッシュがダンゴムシと呼んだそれは、言い得て妙な程に当て嵌まっていた。

 

 正式名称ドロイディカ。複数形でドロイディカスとも称されるそれらは、B1バトル・ドロイドを開発したドロイド開発工業社の最大手たるバクトイド・コンバット・オートマタ社に並ぶ企業、フラック=アーフォック・オートマタ工業社の手で生み出された、Pシリーズと分類されるドロイドであり、ある程度の汎用性に重きを置くB1ドロイドとは違い完全な戦闘・殲滅行動を目的に作られた兵器だった。

 遠距離移動の際は今まさにアッシュ達の前で行っているような、ダンゴムシの如く本体を円盤状に変形させて滑るように地表を高速移動し、攻撃に際しては既存のマニピュレーターを廃して両腕に組み込まれているツイン・ブラスターによる怒涛の連続掃射を行う。

 

 しかしこのドロイドの最大の特徴はそれではない。本来なら特定拠点やよくて航宙船・戦闘機に搭載されるのが一般的である偏向シールド発生装置を超小型化させ、それを個々に内蔵しているのである。しかも、高速移動形態では不可能だが、通常戦闘では問題なく展開でき、一方的に相手を攻撃できるという悪夢のような性能を備えている。

 当然そんな破格の機能を持つのだから生産コストはとんでもないものになっているのだが、そこは泡銭を溜め込んでいる通商連合なので、ちゃんと軍隊規模で買い揃えられているのだろう。

 

 そんなものが今まさに、アッシュ達目掛けて高速で転がってきていた。しかも三機も。

 道理で今までブラスターを撃ちまくっていたB1バトル・ドロイド達が牽制に徹している訳だ。

 

 しかしこれは――――

 

 

「チャンスですよアッシュ!」

 

 

 ――と、オビ=ワンは希望を見出したような顔をしている。

 オビ=ワンに自覚があるかどうかは不明だが、彼のそんな反応は普通の人間からして見たら異常としか言いようが無い。

 

 もう一度言うが、ドロイディカは一機ごとに偏向シールドを備えている。これはちょっとやそっとで破壊できる代物ではなく、それこそ戦闘機のブラスター砲くらいでなければ突破はできない。そしてその厄介さはそのままジェダイにも当て嵌まる。

 

 言うまでもなくジェダイの主たる戦闘領域はセーバーによる近接戦。場合によっては即席で銃器を手にする場合もあるが、あくまで場合によっては、だ。中・遠距離からの攻撃に際しては、高速の身のこなしで翻弄しながら接近し懐に入り込むか、ブラスター程度のものならセーバーで弾き跳ね返せばいい。

 

 では、その相手が凄まじい連続掃射を行いつつ、重砲火クラスの攻撃でなければ受け付けないシールドを張っている場合は?

 賢明なジェダイなら十人中十人がこう言うだろう――打つ手なし、三十六計逃げるべし、と。

 

 ならば、何故そんな最悪の相手の登場に対してオビ=ワンが驚喜しているのか?

 答えは簡単、攻略法はあるのだ。彼の隣にいる人物――アッシュ限定の、ではあるが。

 

 ドロイディカは謂わば最新鋭機であり、ジェダイの中で最も多く各星の内乱調停や紛争に借り出されているアッシュ、クワイ=ガン、オビ=ワンのトリオでも、まだ何度かしか対峙したことはなく、その撃破には搦め手を要した。敵前逃亡したのも一度や二度ではない。

 しかし幾つかの戦闘において、アッシュは迫り来るドロイディカを真正面から撃破している。何ら小細工なしに、真っ向から。

 

 その方法というのは、聞けば馬鹿馬鹿しくなるようなもの。

 一つは、高速移動形態ではシールドを張れないので、相手がその状態で接近してくるのを狙い、こちらも高速で接近しシールドを張られる前に斬り捨てるというもの。

 もう一つは、連続掃射だろうが何だろうがドロイドの豆鉄砲と変わらず全て跳ね返し、接近してセーバーでシールドごと潰すこと。ただし普通のセーバーではシールドの突破に時間を掛け相手を破壊する前にやられてしまうので、セーバーの出力を無理矢理にでも強化できるアッシュならではの策である。

 

 ――なんというか、改めて見ると脳筋思考にも程がある。要は『殺られる前に殺れ』ということだ。搦め手も何もあったものではない。

 

 しかし脳筋だろうが策は策。ましてやこの現状、選り好みはしていられない。しかも他のB1ドロイド達はドロイディカの援護に回っているのか攻撃の手を緩めている。彼らにとっての虎の子であるドロイディカさえ破壊できれば、この梗塞状態を抜け出すことも出来――――

 

 

「……なあ。なんかアレ、停まる気配なくね?っていうか突っ込んできてね?あと速過ぎね?」

「……え?」

 

 

 そう言って前方を指差すアッシュに倣って改めてドロイディカ達を見ると、確かにスピードを緩める気配が全く無いどころか、今まで見てきた同型機よりも速い。それもトチ狂ったような速さだ。

 おかしい、この距離ならそろそろ変形の為に減速するはずなのだが。

 

 

「あれ?え、あれ!?」

「あ、これはアカンですわ」

 

 

 そして、猛突進してくるドロイディカとアッシュ達の接触が目前に迫った瞬間――――三機のドロイディカが、大爆発を起こした。

 

 

 

 ドロイディカは だいばくはつを つかった!

 

 

 

                  †   †   †

 

 

 

「ィイヤッホォォォォォォォォォォォォォォォォォォゥ!!!!」

「………………」

 

 

 諸手を挙げての喝采と、顎が外れんばかりに口を開けての絶句――ガンレイとハーコの反応は、そんな対極に分かれていた。あと、ハイテンションぶりがメーターを吹っ切っているガンレイからハーコは数歩離れている。言うまでもなくドン引きしていた。

 

 それはそうだ。ドロイディカスが現れた時にはハーコもこれが切り札なのだと納得し、しかし「それでも勝てるだろうか」と不安に思っていたところ、あろうことかそのドロイディカスが戦うでもなく周りを巻き込んで自爆したのだから。

 

 何というか……なんだこれ。どういう状況?

 

 

「掛かったな、アシュヴェル・クロームレイン!! 貴様が既にドロイディカスを信じられない手段で攻略していることなど把握済み!そんなワシが正面切って貴様に普通の戦術を用いるものか!

 そやつらは貴様を殺すため、わざわざコリコイド達と頭を突きつけ合わせて考え抜いた末の仕様改良型ドロイディカ!貴様をあの世に送るための特攻兵器よ!!」

(だからいつの間にそんなモンを……)

 

 

 そう、これこそがガンレイの切り札。高価な最新鋭機たるドロイディカを捨て駒にした、まさに泡銭を稼ぐ輩くらいしか使えないような手段だった。

 

 対ジェダイ――否、対アッシュ仕様の特殊改造ドロイディカ。ガンレイが自ら語った通り、ガンレイ達通商連合と、ドロイディカの開発元であり彼らと同様に幾度となくアッシュに煮え湯を飲まされ辛酸を舐めさせられたコリコイド達が、あくどい頭をつき合わせて考えを巡らせた結果、この正気を疑いたくなるような改造兵器は生まれた。

 

 シンプル・イズ・ザ・ベスト――考えに考え抜き、策を巡らすに巡らせ抜いた結果、彼らは「と言うかむしろアイツに下手な搦め手とかやっても意味なくね?」という考えを経て、一回転して単純な答えに回帰した。

 そもそもの兵器に求められる『効率性』を全面排除、要は「何があっても標的(アッシュ)だけは殺す」という目的だけを達成することに特化した、『手数で相手を惑わす』のではなく、『相手の対処・回避の余地を潰し、なおかつ相手の虚を突いて一気に畳み込む』という方向に打って出たのだ。

 

 その答えが即ち――特攻自爆。

 あろうことかドロイディカ最大の価値である偏向シールドを廃し、その地上走行能力と物理装甲を最大まで強化することで機動力と耐久力を上げ、内蔵させた高出力爆薬で周りに味方がいようが何だろうが、標的(アッシュ)ごと吹き飛ばす――と言うか、標的(アッシュ)さえ殺せれば他はどうでもいいという、極端極まりない構想の末に誕生した、キワモノ中のキワモノである。

 改造案を完成させたコリコイドも、実物を作り上げた後から「何作ってんだろ……」と自己嫌悪に陥ったとか何とか。

 

 

「仕上がって見たら装甲材質とか回路の追加とかで元の値段を更に上回ってしまったが、貴様の首に比べれば安いもの!ここで息の根を止めてくれるわぁッ!!」

(というかあんな場所で自爆なんかさせるなよ。絶対後先考えなかったろこの人)

 

 

 先程の自爆攻撃で艦に致命的な影響は出ていないかとオペレーターにチェックを指示しつつ、心の中では至極最もことを口にするハーコ。

 幸いにも彼らのいる管制室はガンレイの施していた超強度隔壁により、爆発の震動で何人かが転倒した以外は被害は皆無だった。最も、ガンレイがその辺りまで計算していたのかは未知数だが。

 

 ハーコがモニターに目を向けると、それは黒一色になっていた。今までアッシュ達のいる管制室前を移していた監視カメラがドロイディカの自爆の影響で死んでしまったらしい。

 急ぎ近くにある別の監視カメラの映像を回させるが、爆風で生じた黒煙や熱気により視界は皆無、熱探知も機能していなかった。排煙装置と消化装置を稼動させているので、もう間もなく復旧できるとは思うが。

 

 

「死んだでしょうか……?」

「あれであの外道が死ぬものか。だが幾許かの手傷は負わせられた筈、このまま一気に仕留める!おい、急いで次のドロイディカスを向かわせろ!」

(まだ自爆させる気かよ。というか大丈夫なのかここ)

 

 

 キ○○イのジェダイ(アッシュ)も怖いが、かと言って艦内でドロイドを自爆させた挙句に艦ごと吹き飛びました、なんてオチも御免だった。

 なので、願わくば画面の向こうでアッシュ達が死んでくれていることを祈りつつ、何とかガンレイを止めようとしたのだが――――

 

 

「……あれ?」

 

 

 ちょうど排煙と消火が済んだらしく、モニターの映像も視界が開き始めた。

 そこには――――

 

 

「……なあっ!?」

 

 

 そこに映し出されたものを見て、ガンレイは絶句した。ハーコも声こそ出さないものの同様である。

 

 それは何というか、『壁』だった。無数の何らかの機械の残骸が、ある場所――アッシュ達がいた地点を覆うように群がり、『壁』を形成している。いや、厳密には作っていた、と言うべきだろう。その『壁』は所々に穴が開き、覆い隠していた内側を晒してしまっていた。

 

 そしてそこに怨敵(アッシュ)はいた。どう見ても健在、手傷どころか衣服に焦げ跡すらついていないという姿で。

 何も持たない左手は前方に突き出すように掲げられている。反対の右手には、気を失っているのかぐったりとしているオビ=ワンが後ろ襟を掴まれて引き摺られていた。

 

 一体どうやって――消耗させるという最低限の予想に届いていない結果に混乱し呆けていたガンレイだが、真相は簡単なものだった。

 

 自分達に突っ込んできたドロイディカが何らかの特攻目的であると寸前で察したアッシュは、咄嗟にフォースで周囲に溢れていたドロイドの残骸を自分達の壁にするように二重三重にして掻き集め、更に可能な限りフォースによる障壁を展開し、案の定だった自爆攻撃を凌いだのである。

 流石に咄嗟だったのでオビ=ワンは反応しきれず、残骸の壁だけでは消しきれなかった衝撃を諸に喰らい気絶してしまい、今のようにアッシュに確保されているが。

 

 自爆して消えたドロイディカスは元より、その自爆によりアッシュ達を包囲していたB1ドロイドまでが全滅してしまったことから、取り敢えずの脅威は消えたと判断したらしいアッシュは左手を下げ、宙に浮いていた残骸も床に落ちる。

 

 そんな光景を目にしたガンレイはというと――――

 

 

「お、おのれェェェッ……!」

「か、閣下……?」

 

 

 呆然状態から復旧したのか、それとも憎き相手の生存に怒りが蘇ったのか、あるいはその両方か。いずれにせよ怨敵の健在を認識したガンレイは、全身を怒りと屈辱に戦慄かせると怒声を上げる。

 

 

「早く次の部隊を送れ!! ドロイディカはもちろん、他のB1ドロイド達もだ!絶対に奴らを仕留めろ!」

「お、落ち着いてください閣下!これ以上艦内であんな爆発を起こしたら……!」

「知るかァッ!例えこの艦が沈もうと、奴を殺せるなら本望だ!!!」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?!?!?』

「………………………………………………………………」

 

 

 まさかの自滅覚悟(乗艦員の同意無し)に取り巻きの通商連合の面々は絶句する。

 どう見ても本末転倒、完全に目的を履き違えている。いや、もしかして本当にアッシュ抹殺が宿願になっているのだろうか。どっちにしてもいい迷惑だ。

 ただ、どういう訳か今までガンレイの相方を務めていたハーコだけは沈黙していた。

 

 そうしている間にも、指令系統(管制室)の混乱で追撃の手が緩んだ瞬間を見逃さなかったアッシュは、それはもう厭味ったらしい笑顔で手を振ったと思ったら、次の瞬間には目にも留まらぬスピードで通路を駆け去っていった。

 その際に『バイバイキ~ン』というフザけた台詞や『ぐえっ』となんか首でも絞められたような声もしたが、混迷する管制室の面々には届いていなかった。

 

 

「あッ!あの野郎逃がすか!追えッ!地の果て、宇宙の果てまででも追い掛けて殺s」

 

 

 ――ガンッ!!!

 

 

「ギャンッ!?」

『え゛』

 

 

 突然、混沌とした流れを圧し折るようにその音と悲鳴が響き渡った。

 

 

「いい加減にしろよ、クソが」

 

 

 一切の感情を込めずにそう淡々と呟いたのは、他ならないルーン・ハーコその人だった。

 その手には護身用のブラスター小銃が握られている。ただし普通に構えるようにではなく、銃身の方を握って鈍器に見立てた風である。そんな彼の前には、タンコブを作って床に突っ伏しているガンレイ。どう見ても撲殺現場です。

 

 冗談はさておき、ガンレイの暴走を(物理的に)止めたハーコは、予想だにしなかった状況に身も心も固まり立ち尽くしている周囲の同僚達に指示を出していく。

 

 

「とりあえず、予定通りドロイド軍を地上に展開。あの二人のことは放っておいて。関わるだけ被害が増えるから。

 あとコイツ(総督)は縛り上げて頭冷やすまで倉庫にでも放り込んどいて」

「アッハイ」

 

 

 そのあまりにも落ち着いていて的確な判断に空恐ろしいものを感じつつ、現状では指揮系統の最上にいるハーコの命令に従う。

 本来の最高指揮官である総督を縛り上げるのに他の面々が全く罪悪感を感じなかったのは、まあ仕方ないだろう。自分達を巻き添えにしてまで私怨を晴らそうとした輩を気遣うほど、心の綺麗な人間はここにはいない。

 

 そうして、目下の脅威と混乱を取り除き、何とか安定を取り戻した管制室。あの阿呆(ガンレイ)が目を覚ますまでは――意識的にも、正気的にも――総督代理として指揮を務めることになったハーコは、しかし新たな問題を思い出す。

 

 それはこの計画そのものの成否ではなく、ましてやあのジェダイ(キ○○イ)のことでもなく――――

 

 

(あの隔壁、どうやって開けよう)

 

 

 自分達が絶賛閉じ込められているという事実だった。

 

 副官はつらいよ。

 




■自己啓発こ~な~。
○長い?
 まさか8000字も行くとは……分けて正解でしたね!(目逸らし

○アッシュの限界?
『今』はこれが精一杯(カリ城並感

○肉弾師弟
 という訳ではありません。そもそもアッシュはウィンドゥ先生ではなく『師匠』から戦闘術を学んだので、どちらかと言えばそっちですね。
 ちなみにウィンドゥ先生が肉弾戦をこなすのはその『師匠』の影響もあるという捏造追加設定があります。

○今日のフォース講座
 ハッキング。作者の初見はトゥーン版でウィンドゥ先生がドロイドファイターを乗り回すシーン。でもあれ本当にどういう仕組みなんだろう;

○壊しちった、テヘペロ★
 バカはやらかす。ちなみに知り合いとはウィンドゥ先生のことではない。

○ダンゴムシ
 作者命名のオリジナルあだ名。ちなみにEPⅠでのドロイディカは複数形でドロイディカスだったりオビ曰くデストロイヤードロイドだったりと名称がややこしい。

○企業云々
 社名と簡単なあらまし以外は作者の適当な設定。これを書くに当たって作者も初めて知った設定の細かさに脱帽です。

○名前呼び?
 公の場ならともかく、こうした現場では基本名前呼び。知り合って間もない当初は「マスター・クロームレイン」とか「マスター・アッシュヴェル」とか呼んでいたが、本人が一々長いと名前呼びにさせた。あとオビが「マスター」と呼ぶのが馬鹿馬鹿しく思えたからとかなんとか(ぇ

○前線トリオ
 原作では特に記述はないが、ここではアッシュとの付き合いが災いして三人でよく色んな星の紛争地域に送り込まれる。そんなもんだから実はオビは、この時点で既にパダ=ワン卒業しても問題ないくらい経験積んでたりする。というかそこらの正規ジェダイより遥かに場数踏んでいる若手のホープ。アッシュに揉まれて成長もしてるしね!(白目

○脳筋アッシュ
 殺られる前に殺れ。師匠の教えでありアッシュのスタイル。シールドなど張らせるものか!(天

○だいばくはつ
 イシツブテとゴローンはほんとにウザかった。せっかくHP削って捕まえようとしたら自爆とか、なんど開発陣を呪ったことか。というか野生のポケモンに覚えさせるなよJK

○イヤッフー
 種の勇者王理事の「ィイヤッタァァァァ!」とどっちにするか迷った。どうでもいいことだろうけど;
 ちなみに使ったのは00でスペシャルで2000回で模擬専(笑)なあの人。まさか最後まで生き延びるとわ(遠い目

○対アッシュ仕様特攻改造型ドロイディカ
 名は体を表す。何もかもがトチ狂った、ある意味でこの小説を象徴するような存在(ぇ 最大の利点であるはずのシールドを無くして自爆兵器にしたという狂気の代物。やらかしたコリコイドは今も自己嫌悪でノイローゼだとさ。
 というかなんか大仰に書き連ねたけんども、これって(用いられるかどうかは別として)戦術としては普通にある奴じゃね?……ま、まあ軍人じゃないんだからそこはね?(震え
 え、これなら改造せずにそういう目的の奴作ればいいって?…………君のような勘のいいガキは嫌いだよ。

○今日のフォース講座2
 割とポピュラーな使い方だが、ここでアッシュは『短時間で無数の残骸を二重三重に集積する』とその上で『フォースの障壁を張る』を同時にやるというという離れ業をやらかしている。
 オビ?これが普通の反応です(白目

○スーパーガンレイタイム?
 終了。そしてハーコの逆襲。本当はもっと小物な展開だったのに書いている時に電流走った。タイトルが示している人物でもある。副官はつらいよ。
 本当、なんで名前すら知らなかったモブがこんなに輝いているんだろう……(首傾げ


 という訳で、ガンレイの逆襲と見せかけて実はハーコの逆襲だったという話(ヲイ 作者の想像を遥かに超える展開でした(震え

 前書きにも書きましたが、これからはよくて2・3日に一度の更新になりそうです。それ以上、あまりに長く掛かるような際は可能な限り活動報告とかに記したいと思います。
 それでは皆様、また次回。

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