破天荒騎士銀河道中物語   作:放浪人

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 皆様どうも始めまして、もしくはこんにちわ。放浪人と申します。
 これまで読み専でしたが、新年を迎えたりエピソード7が公開されたりウチのレコーダーがぶっ壊れ今期アニメが全滅したりそれで狂乱していたところに変な電波を受信したりと色々あった結果、この作品を執筆・投稿する結果にいたりました。(ぇ

 しかしまさか初投稿がこの作品になろうとは………スター・ウォーズを愛する皆様どうかお許しくださいませ(土下座 そしてこの作品、どこまで続けられるか自分でも甚だ疑問ですが、何卒よろしくお願いします。

 ちなみに、本当にどうでもいいことながらこの作品を書いた正確な理由ですが
『フォースの覚醒公開』→『テレビでSW放送祭り』→『おい金ローなんだこの編集しまくりなEP1』→『おい何で字幕なんだよ深夜版。真綾さん返せ』→『なんかむしゃくしゃして銀魂見ながらやった。後悔も反省もしている』
 以上(ヲイ;

 それでは皆さん、どうぞ。


EPISODE Ⅰ : THE PHANTOM MENACE
一人のバカのせいで苦労する者達の物語


 STAR WARS EPISODE Ⅰ : THE PHANTOM MENACE  ANOTHER STORY

 

 CHAPTER 01 「一人のバカのせいで苦労する者達の物語」

 

 

 暗い、どこまでも闇が広がっていく暗く冷たい宇宙。その広大無比な空間の一角を、一隻の航宙船が駆けていく。

 朱色の塗装が施されたその航宙船は、この銀河一帯を統治している――本当に出来ているのかは、まあ置いといて――銀河共和国が制式に採用しているものであり、船体に描かれている共和国のマークは、この船が共和国の意思の下に行動しているものであると語っている。

 

 そんな船が向かう先には、青を主体としてそれを緑や白で彩った巨大な球体が浮かんでいる。暗黒の宇宙において自らの色と輝きを主張する、まるで宝石のようなその球体――水と緑に溢れる有人惑星ナブーがいくつかの衛星を周囲に巡らせつつ宇宙空間に浮かび、人間の乏しい認識能力では判らないものの、ゆっくりと自転している。

 

 そんなナブーとその星へ向かう航宙船の間には、幾つもの鉄の塊が漂っていた。洗練されたフォルムと朱い塗装を施された『レディ』と、そのレディを魅了せんばかりの『宝石』を遮るその無粋な物体の正体は、レディと同じく人の手で造られた船だった。

 

 通商連合――その名が示すとおり、商業という利益行為を追求して宇宙を股に駆ける者達が集い、一つの巨大な『力』となった存在。経済という人の高度文明を機能させるにおいて必要不可欠なそれを担う彼らこそが、巨大で鈍重で、商人らしく実用性と機能性に重きを置いた故に無骨なデザインの艦に乗り、隊を成して『艦隊』を形成し、立ちはだかっていた。

 

 美しい星と、その星に向かう船、そしてその間に立ちふさがる艦隊。

 さながら、麗しの航宙船(レディ)が美しい(宝石)に近づくのを、空気を読めない艦隊(ナンパ男)が妨げているかのような構図だった。

 

 と言っても、それはどこぞの三流キザ野郎が並べ立てそうな虚妄であり、実際は違う。

 

 船の目的地は、とりあえずはあの無骨な艦隊なのだ。惑星ナブーに向かうのはその後である。

 船とそのパイロット達の役割は、この船に乗った二人の人物を先ずはあの艦隊に送り、問題なく二人の役目が終われば、そのまま共和国本星コルサントに引き返すこと。ナブーまで赴くのは、その『問題』が解決に至らなかった場合の道程である。

 

 最も、問題が解決できなかった場合というのは、あの艦隊の腹中に入り込むこの船が無事でいられるか甚だ怪しい事態になり得る、ということでもあるのだが。

 

 

 既に航宙船は艦隊のレーダー探知範囲に入っており、それに合わせてこの船が共和国のものであることを示すビーコンを発信している。相手が共和国と戦争でもやらかそうとしない限り、そんな事態にはならないだろう。

 

 段々と艦隊に接近していく船、その船を巧みに操縦するパイロットの男女一組も、『まだ敵ではないが、味方でもない』相手に乗り込んでいくと言う事実に、今更ながらも緊張した面持ちになる。

 それでも彼らは果たすべき職務を全うすべく、それぞれの作業に入る。船のメインパイロットである女性が回線を開き、相手側の通商連合に連絡を入れる。

 

 

「連合艦隊、共和国最高議長の派遣された特使が乗艦を希望しております。乗艦許可を願います」

 

 

 一見冷静なようだが、鋭い者ならその声が微かに震え、少しではあるが冷や汗を浮かべていることに気づくだろう。それでも毅然としたものもまた見られるのは、生来の気質か、それとも共和国の使者として威厳を損なわんとする矜持か。

 

 それを、画面越しのハゼかカエルか何かがなんやかんやで突然変異して二足歩行したような、けったいなミュータントが見抜いているかどうかは、分からないと言うかどうでもいいことだが。

 

 

《乗艦を許可しよう。ナブーの封鎖は法に則ったもの、こちらに疚しいところなどありはしない。

 ……ところで、今ワシのことをカエルとか何とか言わなかったか?》

「い、いえ。ノイズを聞き間違えられたのではないでしょうか」

 

 

 船長は若干不機嫌になったカエr……目の前の惑星ナブーを封鎖しくさりやがった通商艦隊総督ヌード・ガンミ――――

 

 

《ヌート・ガンレイだ!! なんだその卑猥な名前は!?》

《か、閣下。いかがなされたので……?》

《……う、ぅむ……?何やら酷く侮辱されたような気が……?》

 

 

 ――改め、ヌート・ガンレイを上手くやり過ごし、艦隊の要である母艦――球体をCの文字で囲んだような形状のドロイドコントロールシップから発される誘導ビーコンに従って操縦を自動化させる。

 モニターも通信が切れて暗転しており、向こうにこちらの様子が知れることはない。なので、パイロット二人は大きく息を吐き出し、緊張を少しだけ緩める。

 そして船長である女性はジトッと、自分達の後ろ――相手側のモニターからは死角になる予備シートに座り込んでいる人物に顔を向ける。

 

 

「あの、一応交渉相手なんで、あんまり相手を怒らせないでいただきたいんですが……」

「バッカお前、あいつらが交渉なんか考えてる訳ないだろ。絶対あれだよ、誘い込んでノコノコ来たところをガス巻いてオチたところをバーン!だよ。死体なんか跡形もなく焼却されるよ?バーンだけに。メラゾーマなんか使うまでもなくメラで瞬殺ですよ」

「いや、なんの話をしてるんですか。あと上手くないですそれ。というか洒落にならないんでやめてもらえません?」

 

 

 訳のわからないことと身も蓋もないことを遠慮なく並び立てつつ、表紙からしてアレがイヤンでウッフ~ンな雑誌を捲る男。

 背中の中程まで伸ばした灰色の長髪を黒い帯で一本に纏め、特徴的な黒装束と体を覆えるフード付の茶色いローブにブーツといった服装を着こなした人物。

 

 ちなみに容姿は整っていて美丈夫の体を成してはいるものの、腐りかけた魚のような目をしているので台無しとなっている。そのくせエロ雑誌を見る目はこの上なく真剣だ。最低である。もっとも女性を前にして堂々と読み耽っている時点で最低なのだが。

 なおどうでも良いことながら参考までに、この雑誌『紅髪巨乳義妹ミオちゃん特集~燃えるストレートロングなツンデレ義妹と一日中……~』とある。趣味が丸判りである。

 

 

「大体見ただろ、あの顔。どう見たって悪代官だよ。何あれ、ハゼなの?カエルなの?どっちなの。魚類なら魚類、爬虫類なら爬虫類らしく肌を滑々にしときなさいよ。なにあの不健康極めました、みたいな泥色の肌。なにあの目。どこからどこまでが白目でどっかどこまでが瞳孔なの?見分けづれーんだよ。悪代官なら悪代官らしくブクブク肥太ってろよ。ガリッガリなインテリ気取りやがってあの守銭奴共」

「いえ、あれ昆虫型です。ニモイディアンなんで」

「は?昆虫?舐めてんの?アイツら昆虫舐めてんの?昆虫ってのはお前アレだよ。手足纏めて六本以上の節足動物なんだぞ。アレのどこが昆虫?アイツらが昆虫の何を知っているって言うの?丸一年を土の中で過ごして、子孫残すためだけにほんの少ししか地上で生きられないアイツらの悲しみと切なさとうるささとウザさと気持ち悪さの何を知っていると言うの滅びればいいと思うんだ蚊と蝉とゴキブリはこの宇宙から消えてなくなれマジで」

「いや、なんの話をしてるんですかアンタ!?」

 

 

 人格批判どころか種族批判を始めたと思ったら、いつの間にか自分の嫌いな虫の話に落ち着いている。サブパイロットの男性が思わず声を上げてツッコんだ。

 

 そんな様子に船長は思わず溜息を吐き、心中でゴチる――この男は相変わらずだ、と。

 

 彼女、船長が彼と関わったのはこれが初めてではない。特使として彼を――正直、この男を特使に任命した彼の上役や議長の頭を疑う。失敬なのは承知しているが。――運ぶのは初めてだが、以前に何度か違う用事で彼を乗せたことは何度かあった。当時訓練生を卒業したばかりのペーペーだった彼女の成長とは裏腹に、彼はあの頃から全く変わっていない。

 自動操縦や計器に気を配りつつも、漫才よろしくボケとツッコミをやらかして騒いでいる男連中を横目で見る。今日、というかこの航行が初対面だと言うのにもう打ち解けている。男同士だからというだけではなく、一見惚けたようなこの男には、人間同士の『壁』を容易く崩してしまう気安さと、それを不快にさせない……訳ではないが、なんやかんやでそこそこいい関係に落ち着かせてしまう『何か』がある。

 最も、勢い余って壁どころか相手を重傷にしてしまうのも彼なのだが。

 

 そんなことを考えていると、本来彼がいるはずの――今は彼の相方が一人でいるはずの個室から船内通信で呼び出しがあった。応答して内容を問うと、その相方は、それはそれは嫌そうに、出来ればしたくないけど仕方がなく、という気持ちが見て取れそうな思いのこもった声で、彼のことを捜していた。

 その心中を察して胸の内でのみご愁傷様と述べつつ、船長は自分の役割をこなすことにした。

 

 

「相方がお呼びですよ、マスター・クロームレイン(・・・・ ・・・・・・・)。そろそろ準備を」

「あーだりぃ。くっそ、あのハゲと妖怪チビ、こんな面倒な仕事押し付けやがって。

 あ、そうだ。君代わりに行ってこない?こんな機会滅多にねえぞ?これで君も晴れて特使だぞ?接待とか賄賂とかやり放題だぞ?」

「いや、自分パイロットなんで。ここで待機しないといけないんで。あとアンタの特使像どうなってんの」

「大丈夫だって。俺の服着てローブ深く被って神妙ぶってりゃアイツらコロッと騙されるって。あんな昆虫だか爬虫類だか判らない奴らに見分けなんかつかないって。

 操縦なんてアレだよお前、ハンドル握ってペダル踏んでブイブイ言わせればいいんでしょ?光を超えて飛んで行けばいいんでしょ?楽勝だって。アイキャンフライ、イエスウィーキャン。オーケー?」

「お前パイロット舐めてんだろ!」

 

 

 どうでもいいがこのサブパイロット、この仕事に就くのが子供の頃からの夢であり、いくつもの難関を乗り越えて今に至っている。それをそんななんちゃって~な風に軽く扱われては、それはキレるというものだ。

 胸倉を掴み揺らしまくるサブパイロットに、平然とした顔でされるがままに揺らされる男。

 この銀河と共和国の秩序維持に大きく貢献してきた存在、ジェダイ騎士団の数少ないマスターの一人、その中でも『最強』の一角と囁かれる人物――アシュヴェル・クロームレイン。

 

 こんな男が銀河最強だなんて、冗談のようだ――が、彼女はかつて、そんな彼の実力の一端を垣間見ている。訓練は受けていても戦士ではなく、増してや技巧に満ちたジェダイの御技など彼女に分かろうはずもないが、それでも、彼が紛うことなき超一流の戦士であることは知っている。

 

 なので、この男なら敵陣のど真ん中に放り込んでも大丈夫だろうと確信し、

 

 

「いいからはよ行け」

『アッハイ』

 

 

 とっとと尻を蹴飛ばして送り出すことにした。

 その余りの気迫に、サブパイロットまでもが思わず返事をしてしまったのはご愛嬌である。

 

 

 

                  †   †   †

 

 

 

《ようこそ。TC-40です、ご案内致します》

「おいおい、折角の案内が声だけ美人なドロイドかよ。ヒューマンの美女を寄越せ。カエルモドキが出てきたらぶっ殺す」

「黙ってくださいそしてアンタが死ね」

 

 

 銀色のボディを輝かせるプロトコル・ドロイドの慇懃な挨拶に、深々とローブを被った二人組――銀河共和国からの特使の内の一人が早速いちゃもんを付けてくる。まさかのブーイングにドロイドはAIが一瞬フリーズ、その隙を縫うように空かさずもう片方の人物が遮り、今のやり取りをなかったことにするかのように丁寧に頭を下げて礼を返す。

 ドロイドの方もかなり経験を積んでいるらしく、この件は触れない方がいいとAIが判断し、何事もなかったかのように二人を応接室へと案内した。

 

 

《特使閣下のご来訪を心より歓迎します。こちらでお寛ぎください、直ぐに主人が参りm》

「よぉし、んじゃあ酒盛な。オラ、とっととありったけの酒持って来い。ドロイド用のオイルとかカエルモドキが飲む訳の分からんもの持ってきたらネジ単位まで分解して宇宙に放り出すからn」

「わかりました静かに待っていますので出来るだけ早くお願いします」

 

 

 またもやぶっ飛んだことを口走る特使Aをまたもや特使Bが遮り、切迫した声色でドロイドに懇願し、またもやフリーズしかけた彼女(?)を半ば無理矢理に主の下へと送り出した。

 そうして、一瞬の静寂が訪れた。

 

 そう――――

 

 

「よし、んじゃあ全員ぶっ殺すか」

「違うだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 ――ほんの一瞬だけ、ではあるが。

 

 

「何アホなこと口走ってるんですか!? 平和の使者である特使が何で真っ先に皆殺し宣言してるんですか!? 分かってます!? 私達は特使なんですよ!? マスター・ヨーダとヴァローラム議長直々にこの任務を任されているんですよ!? 本当に分かってるんですか!?」

「うるせえなあ。そもそも俺だってこんな七面倒臭い仕事請ける気なかったんだよ。それをお前の師匠のクワイ=ガンがヘマやらかして腰痛めたもんだから、ジジイどもが俺に――――」

「そもそもマスターが怪我したのもアンタのせいだろうがッッッ!!」

 

 

 図々しさここに極まれり――師匠『代理』であるアッシュことアシュヴェル・クロームレインのそんな台詞に、『暫定』弟子のオビ=ワン・ケノービはこの会話を聞かれているかも知れないという危惧すら忘れ、あらん限りの声で叫びながら相手の顔面にゼロ距離ドロップキックをかました。彼がジェダイとして学んだ体術の全てを注ぎ込んだ、完璧なドロップキックだった。もちろん、ジェダイの技にドロップキックなどありはしない。

 

 そうなのである。

 そもそもこの特使という任務、本来(原作)ならオビ=ワンと彼の師であるジェダイマスターのクワイ=ガン・ジンが務めるはずだった。

 ちょうどある惑星で起きていた紛争に、普段から付き合いのあるアッシュと共に調停役として赴いていた師弟は、紛争終結も目前という時にその旨を伝えられ、後はアッシュに任せて引き上げようとした――のだが、そんな動きを察したのか何なのか、敵対勢力が特攻を仕掛けてきてさあ大変。急遽予定を変えて師弟も制圧に加わり、それ自体は上手くいった。

 

 ただ一つ――アッシュの策によってクワイ=ガンが囮にさせられ、敵の攻撃に晒されたこと以外は。

 しかも、致命打が敵の攻撃ではなく、着地を誤ったアッシュがクワイ=ガンの真上に落ち、その所為で腰をやられたというのだから、何とも言えない結末だった。

 

 結局クワイ=ガンは全治数ヶ月の療養を言い渡され、その間は師弟をよく知るアッシュがオビ=ワンの師匠を代行することとなり、更には特使もこの即興師弟で務めることとなったのである。

 それを推薦したのが他ならないクワイ=ガンなのだから、彼を師としても人間としても尊敬して止まないオビ=ワンも、そのことを知った瞬間だけは師を恨まずにはいられなかった。

 

 なおその事を告げられた際、厳格で知られるマスター・ウィンドゥから酷く同情する視線を向けられたのが、余計に胸にキた。

 

 

「違うんだよ。ほら、ちょうどいい囮がいなくてな?」

「違わねぇだろ!しかも囮にしたことじゃなくて着地に失敗した方!なんで味方にやられなきゃならないんですか!」

「……戦いってのはそういうものなんだよ、オビ。時には味方の刃で傷つくこともあるんだ。そうして、誰しもが強くなっていくのさ」

「なに名言風に仕立てようとしてんだッ!始まりから終わりまでグダグダだろうが!!」

 

 

 普段は礼儀正しいオビ=ワンだが、クワイ=ガンによってアッシュと引き合わされ、その無茶振りに振り回されるようになって以降、彼に対してはすっかりこういう風になってしまったのだ。師匠のクワイ=ガンは「いい傾向だ」などと朗らかに笑って見守るだけなのだからどうしようもない。

 

 

 もちろん、決してこれがオビ=ワンの素なのではない。ただ人間は、良くも悪くも変わってしまう生き物なのである。生きるために」

「なに微妙なフォローを格好つけてやってるんですか!あと全然フォローになってないですから!」

「あーはいはい分かりました。俺が悪いんですねごめんなさいでしたー」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 

 全く感情のこもっていないふざけた謝罪に半狂乱状態になりかけるオビ=ワンだが、そこは流石にそれなりの付き合いをしてきたことと彼自身の鋼の精神もあって、これ以上の追及をしても無意味であると判断し、何とか怒りを押さえ込む。

 

 ああ、これなら無理してでも薬を持ってくるんだった――そう、都合悪く切らしてしまい時間もなくて補充の出来なかった胃薬を、心の底から恋しく思わずにはいられないオビ=ワンであった。彼の恋人が胃薬に成り果てるまでそう遠くはないだろう。

 

 とにかく――そうして漸く冷静さを取り戻し、落ち着いた頭で思考を巡らせる。

 何はともあれ、このバカにちゃんとやる気を出させなければならない。

 

 

「やっぱ面倒だな。よし、とっとと総督だか総統だかの首獲りに――――」

「ちゃんと任務こなさないと報酬出ませんよ?」

「まあ、人間考える頭脳と話し合える言葉を持ってるんだ、先ずは対話を試みないとな」

 

 

 チョレェ。というかここまで現金だと清清しさから更に一周して腹立たしくなる。

 しかし何はともあれ、軌道修正には成功した。あとはこのまま交渉に持ち込めば自分が――――

 

 

 

「――相手に話をする気があれば、だがな」

 

 

 

 ――彼がそう呟いたのは、件のドロイドが来客への茶を部屋に運んできたのと同時だった。

 普段惚けているその男が不敵な笑みを浮かべているのを、オビ=ワン・ケノービは確かに見た。

 

 

 

                  †   †   †

 

 

 

 コントロールシップの中央管制室にて、ヌート・ガンレイとその副官は、一人の人物を迎える。

 と言っても、その人物はガンレイの目の前にいるが、その場にいる訳ではない。遠隔通信を通したホログラム交信で会話しているのである。

 

 その人物とは――――

 

 

「シディアス卿」

《特使共が着いたか》

 

 

 ダース・シディアス――最初に出会った際、彼の御仁はそう名乗った。それが本名であるのかどうかはガンレイに知る由もない。分かっているのは、彼の御仁が恐ろしい力と冷酷さを兼ね備えていること、そして、固有名の前に付けられた『ダース』という称号が意味するものだけ。

 ――そして、一度関わった上で彼に逆らえば、悲惨な末路をたどると言うこと。

 

 

「シディアス卿、封鎖を解除いたします。この計画、失敗です。ジェダイには勝てませ――――」

 

 

 

《総督。その腰抜けの顔、二度と余の前に晒すでない》

 

 

 

 総督より彼との付き合いが浅い故に、目の前にいて存在しない人物(シディアス)への恐怖よりも直ぐ身近に存在している脅威(ジェダイ)が上回っている副官が進言するが、相手は感情――慈愛の類など元より、怒りや軽蔑すら伺わせない冷え切った声で、ホログラムの御仁はそれを切り捨てる。もしこの場にいたなら、副官は物理的にも切り捨てられていたかも知れない。

 しかし感情こそなかったものの、その代わりとは言わんばかりに言葉には有無を言わせない威圧が込められており、それはホログラム越しでもこちらに正確に伝わってきた。

 それを諸に受けた副官は、種族の特性上不健康な色の肌を更に悪化させ、おずおずとシディアスの視界に入らないところまで退がる。

 

 

《ジェダイを差し向けられたのは予想外だ。直ぐに始末せよ》

「しかし閣下、相手は――――」

《ジェダイとて不死身ではない。ドロイドによる集中攻撃を行えば一組程度――――》

 

 

「相手は、あの(・・)クロームレインなのですが」

 

 

《…………………》

 

 

 沈黙――圧倒的沈黙であった。

 同時に、総督は一瞬、目の前の人物が白目になるのを幻視した――ような気がした。

 

 

《……何故、あやつがおる。クワイ=ガン・ジンはどうした》

「は、はあ……それが、任務に就く直前に負傷したため、急遽その場にいた者を代行させたとか。恐らくそれが――――」

《…………ウソダトイッテヨプレイガス……》

「は?」

《い、いや、何でもない。

 例えクロームレインだろうと恐れるには足らん!ドロイディカも配備されていよう、何としても仕留めろ!よいなッ!!》

「は、ははっ!」

 

 

 困惑したと思ったら消沈し、そしたら急に虚勢気味に怒鳴り散らす。今日のシディアス卿は狂しておられるようだ。

 『いいな、絶対だからな!?』と念押しまでされてからようやくホログラムが消え、相手との通信は途絶した。

 

 シディアスの威圧――後半はこの上ないグダグダだったが――から解放された総督は大きく息を吐き額の汗を拭った。

 そんな彼の様子をうたがいながら、退がった時と同じように副官がおずおずと近づいてきた。

 

 

「閣下……一体、そのクロームレインというジェダイは……?シディアス卿があれ程動揺されるなどと」

「うむ………」

 

 

 最初に浮かべていたシディアスへの恐怖はすっかりと失せ、代わりに困惑を顔に貼り付けた副官が総督に問う。そんな彼に、しかしガンレイ総督が見せた反応は意外なものだった。

 

 

「……うん……シスだって、嫌なものはあるよね……」

「は?」

「……ジェダイマスター、アシュヴェル・クロームレイン……あやつは『最強最悪のジェダイ』と呼ばれている男だ」

「さ、最悪……!?」

 

 

 およそ、銀河の平和維持を標榜しているジェダイに付けられるとは思えない呼び名だった。それを聞いただけで副官は先程のものとはまた違う恐怖に駆られ、体を震わせる。

 一体、どんあ悪鬼羅刹の如き所業をすればそんな異名が付き、どれ程に実力があればその上でジェダイを続けられるというのか。まだ見ぬ、しかしすぐ近くにいる未知の人物への妄想は瞬く間に膨れ上がる。

 

 ――ところが。

 

 

「……そうよな……如何にシスといえど人間……我らのように、苦手なものもあるのだろう……シディアス卿も、ご苦労されておられるのだなあ………」

「か、閣下?」

「……今度お会いする時は新製品の胃薬と精神安定剤を送るとしよう。我らの大願成就の為には、お互いに精進せねばな」

「あの、閣下?」

 

 

 シディアスに続き、ガンレイまでもが妙に神妙である。いや、神妙というか、しんみりというか。

 

 

「あぁ、本当に……嫌な事件だったなぁ……銀行グループの連中も、この前また下っ端をいくつも潰されたと泣いてたっけ………ほんとにアイツ死んでくんないかなあ。酒でもお金でもあげるから」

「か、閣下!お気を確かに!」

 

 

 目が完全に遠いものと化していた。もう少しすれば悟りの境地に至れるかも知れない。商人がそこに至ったら色々とオシマイなのだが。

 

 

「あの男は……あのジェダイはな……」

(ゴクリンコ)

 

 

 ズーン、という効果音が聞こえてきそうな落ち込み具合の中、ポツリと総督は語りだした。

 

 

 

 

 ――なおその頃。

 

 

 

 

「ほーら見ろぉ。だから言ったろ?俺言ったろ?アイツら絶対騙し討ちするって。俺の言うことを聞かないから。俺の体は20%が正直で出来ていまぁす。残りの80%は巨乳萌えと義妹萌えと金と酒と糖分です」

「~~~~、~~~~~ッ!?(全然正直じゃない!? いや、どうでもいいですから早く何とかしてください!というか何で毒ガス吸っても平気なんですか!?)」

「俺が俺で俺だから。by気○団」

「~~~~、~~~~~~~~……ッ!(意味が分かりませんよ!というか本当に何とかしてください!もう息が……!)」

「いや、携帯用の酸素ボンベ使えや」

「あ……――って、しまっ、ごほっごほっ、うごえっ……!」

 

 

 こちらはこちらでグダグダであった。

 

 




■自己啓発コーナー。
○シリアスをどこへやったの!? この人でなし!
 莫迦め、シリアスは死んだわ!

○三流キザ野郎?
 作者のこと。調子こいてなんかかっこよくしようとして失敗しましたOTL

○ハゼ?カエル?
 作者が最初にガンレイを見て浮かんだ感想。でも調べたら昆虫型らしい。解せぬ。

○なにこの銀髪パーマの目が死んでいるような主人公。
 大丈夫。髪は灰色で長いし目は「死に掛けた魚のよう」だから。ただしモチーフになったのがそれなのは間違いない。原キャラよりマシになるかヒドくなるからは今後次第。

○なにこの銀魂テイスト。好きなの?
 銀魂見ながら書いたんだから仕方ない。アニメでシーンの切り抜き作るぐらいには好き。

○紅髪巨乳義妹?
 上栖先生と大熊先生は天才だと思う。ええ、大好きですが何か?(キリッ

○こんなのオビ=ワンじゃない。
 犠牲となったオビ。なお更に増えていく様子。

○こんなのシディアス卿じゃない。
 増えていく言うたやん。ちなみにこいつが最大の犠牲者になります。

○クワイ=ガン降板?
 オリ主にやられた哀れ原作主人公。津嘉山氏の声はいつ聞いても濡れる。なおこの物語では末永く生存してオビ達の心の癒しになっていただく予定。そして何故かオリ主への評価が高く、余計に弟子の胃を凭れさせる。

○主人公は最強?
 だってMBTとか撃つのよ?

○というか何なのこの主人公。転生者?
 ジョーカー星団の人間がSW世界に転生したーとか最初は考えたけど、純SW世界の住人に納まった。ただし何者か(作者)の意図により常に変な電波を受信しており、別世界(他作品)の技やらネタをやりまくる。


 これはヒドい(白目 多分に勢いな点はあれども何故こうなった;

 それはさておき皆様、この作品を読んでいただいて誠にありがとうございます。色々と憤懣やるかたない点が多いとは思いますが、蒙昧な作者の試みと思って暖かい目で見ていただけたら幸いです。
 二度目になりますが、感想やご意見・批評いずれも諸手でお待ちしております。

 なお今更ながら、作者は映画六作品とトゥーン版クローンウォーズは一通り見ていますが外伝作品などは一切手をつけておりませんし、設定もwikiをたまに覗く程度なので細やかな差異はご容赦ください。見過ごせない間違いがありましたらどうぞご指摘を。

 それでは皆様ごきげんよう。次回でまたお会いしましょう。


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