やっぱり浪漫ですね……。あ、後ランキング入りしてました。ありがとうございます。
追記、リトルネペントの弱点を修正しました。
曇天。
空がどんよりとした曇りのせいか、森の中に入ると視界は一段と悪くなる。
足場も生い茂る草木の上を踏みしめている状況なので一歩踏み出すごとにザクザクと音が鳴った。
そんな視界不良に加え、実況本番という悪条件下にも関わらずズンズンとハクレイは森の中を駆け抜けていく。
『もう直ぐ、リトルネペントの巣窟です』
言って、ハクレイはゆっくりと息を整える。ツン、と森の濃い香りが鼻をついた。
邪魔な草木を
『ソードスキルですか? あぁ、初めてレベルアップした時に説明し忘れてたんですけど、SAOのスキル振りってソードスキルとパラメータとで別枠なんですよ。武器によってのソードスキルが固定で用意されていて、そっちはそっちで割り振れるのでご安心下さい』
動きとは裏腹にのんびりとした口調だった。そしてハクレイは解説を開始する。
『で、リトルネペントについてですが。リトルネペントは、まぁいわゆる植物系モンスターです。分かりやすく言えば某ポケットモンスターのウツボットから大量に触手が生えてる感じかな? 一言で言えば、皆の大好きな触手さんです』
言うと、「触手プレイ」「待ってた」「これを待ってたんだよ!」「触手プレイキタコレ!」「分かってるよな?」「服だけ溶かす溶液……」「←媚薬効果もありだろ?」「こ の 変 態 共 が」「←男は皆変態なんだ」とダーティなコメントが増えた。一応、SAOの対象年齢って一三からなのにこの敵はネタとしてどうなのだろう、とハクレイはちょっと真剣に考えてみる。
(……βテスト時に女キャラで検証した時、確か溶液で服の耐久値を削り切られた時だけ完全にアウトな感じになったもんなぁ)
というかそんな実験をしている時点で馬鹿丸出しというか、性に対して貪欲なのだがそれは置いておこう。
正直思い出したくない検証だが、現在の姿も相まって何故か頭をよぎる。まぁよほどのミスをしなければそのような事には陥らないだろうが。
そんな事を考えながら突き進んでいると、ハクレイは森の奥に存在する広場に辿り着いた。森の一角に不自然な感じに作られている広場は、いかにもモンスターが出現する場所ですよーと配慮されているようにも思える。
広場にはウツボット、というよりウツボカズラのような細長い姿のモンスターがポツポツと出現していた。
……ウツボカズラという割には頭があり、そこから芽が出ているのだが、無数の触手で体を支えている姿はどこからどう見ても十八禁の本に出てきそうなモンスターだった。
というか本当にどこからどう見ても十八禁です。
本当にありがとうございます。
ハクレイは心の中でそんな事を言い放つ。
さて、ここまで見ればもう分かるだろう。
ーーーーそう、あれがハクレイの目的であるリトルネペントだ。
『はい、あの触手モンスターがリトルネペントです。今回のクエスト内容は、あのリトルネペントの頭に生えている芽の部分ですね。偶に、その芽の部分に花を咲かせているリトルネペントが居るので、その花を引きちぎって持ち帰るのが主な内容になります。では早速戦っていきましょう。ソードスキル使うからよく見てろよ!』
言い放ち、ハクレイは剣を構えて突撃する。
「幼女VS触手」「18禁展開はよ」「期待」「幼女が触手に襲われると聞いて」「キモいなあのモンスター」「ハクレイさん頑張れー」「ハクレイ
意見も様々だが、とりあえず勘違いしないでほしい。この放送は幼女が触手に襲われる18禁放送ではなく、SAOの最速攻略を目指す放送である。
耳に入ってきたゆっくりボイスに心の中でツッコミながら、ハクレイは対リトルネペントの解説を開始する。
『フレンジーボアは自分か付近の仲間が攻撃されるまで敵対行動を見せませんでしたが、それとは違ってリトルネペントはアクティブモンスターなので近付くと臨戦態勢に入ります。その為、一番効率が良いのは正面から弱点を切り裂く事だと俺は思ってます』
同時、ハクレイが真っ直ぐ三匹のリトルネペントに突っ込んでいくと三匹とも臨戦態勢に入る。
そこでハクレイは剣を横に傾けて解説する。
『リトルネペントの弱点はウツボ部分と茎の接合部です。接合部の長さは三センチから五センチで若干個体差があります。代わりに、リトルネペントの身長の個体差は無いのでこのように寸分違わず真っ直ぐ横薙ぎして刈り取ればーーーーッッ!!』
言って剣を真横に傾けたハクレイはソードスキル発動のためのモーションに入る。
これはソードスキル発動の為に必要な動作だ。ソードスキルによってモーションは異なるが、今回使うソードスキルの場合は『剣を横に傾ける』ことが発動の条件だった。
しかしリトルネペントもただ攻撃されるのを傍観しているわけがない。三匹とも反撃のため、粘液に濡れた触手を腕のように伸ばしてハクレイを捕らえようとする。
だが、リトルネペントの攻撃が届くよりハクレイの動きの方が早かった。
『お待たせしました。これがソードスキルです。《ホリゾンタル》!!』
叫んで、ハクレイは光のエフェクトを撒き散らしながら横に傾けた剣を水平に薙ぎ払った。
ソードスキル、《ホリゾンタル》。その効果は敵を水平に斬りつける単発スキルである。例えいくら剣振りの軸がブレたとしても、このスキルを使えば間違いなく水平に切ることが可能なのだ。
ただ、一つ問題があるとすれば、三センチから五センチの高さしかないリトルネペントの茎の接合部を、たった一発で正確に、そして複数のリトルネペントの動きを読み切って、同時に切り裂けるだけの角度と位置調整を行う必要がある事ぐらいである。
しかし、世界初のVRMMOであるSAOのソードスキルに感動したのか、技術の話はなしにしてもコメントは歓喜の波(一部は嘆きだが)に包まれた。
「おおおおお!!」「かっけぇぇぇ!!」「やはり幼女は最強だった」「
皆、初めて見たソードスキルに興奮したようだった。一部、真性のロリコンもいたようだがまぁネタとして美味しいので個人的にはアリだとハクレイは思う。
ーーとはいえ、その視線が自分に向けられているのは若干恐怖も覚えるが。
(まぁ面白いコメント投下してくれるのは助かるし。同じ穴の
『はい、このようにして狩ります。ポイントは相手の触手を恐れないで確実に当てることです。と言うのは、ソードスキルには使用後に硬直時間がありまして、もし外したら触手で一斉に攻撃されてしまうという、はい。完全にアウトな感じになってしまうので気をつけないとなりませんね。リスク高いですが、とりあえず俺が検証した感じだと、低レベルでリトルネペントを一撃で倒す技がこれしか無かったのですみません』
ボヤきながら、ハクレイは同じ動きを繰り返してリトルネペント狩りを始めていく。その目は真剣そのものだ。
というか、失敗したら放送事故確定なのだから集中せざるを得ないとハクレイは思う。
それでも「ハクレイさん、失敗も見せてよ」「期待」「ハクレイなら……」というコメントが目立つので、
『いやいや、失敗したら放送事故確定だぞ。後リトルネペントの触手も検証したんですけど、防具の耐久力が減っていくのでガチでアウトになります。つか一応RTA……というか最速攻略を目指してますから』
後半は乾いた笑いだったが、とりあえずやるつもりはないと断言する。するとコメントが落胆の色に染まった。
目的の花付きリトルネペントが出るまで狩り続けていくつもりのハクレイは作業のごとく斬り刻みながら、オーバーアクションでこう呟く。
『今更だけど、何この放送。ロリコン多くない? いや、俺も好きだけど。大好きですけど』
「いつもだろ」「今更だなオイ」「ロリコンが何か言ってるぞ」「ハクレイ
ボヤくと同時、こんなコメントがすぐさま返って来るあたり本当に慣れているな、とハクレイは思った。
終いには、「当 た り 前」という赤文字すら上がる始末である。
『はは、まぁ今は幼女だしな。ロリコンも増えるか。あ、今は花付きのリトルネペントが出るまで狩り続けてます。多分しばらく狩ってればそのうち出現すると思うんでそれまでお待ち下さい。あっ、そうだ。今は暇なのでソードスキルを使った遊びをレクチャーしましょうか」
言って、ソードスキルを使わずにハクレイはリトルネペントのウツボと茎の接合部を正確に切り裂いた。
それからクルリとターンして、ハクレイは迫る二匹のリトルネペントを視界に捉える。索敵のスキルを取っているので敵の位置が把握出来ているのだ。
ハクレイはニヤリと笑い、悪戯でもするかのようにクックッと笑う。
『さっきやったソードスキル。《ホリゾンタル》なんですけど、光のエフェクトが出てたじゃないですか。あれを上手く使うとこんな事も出来るんですよ』
射程範囲まで走り込んだハクレイは剣を横に傾けた。
しかし剣は上手で構えず、逆手に構え、腰を低く捻る独特の構えをしている。
そのポーズは、恐らく二〇歳後半なら見ただけでパッと思い浮かぶ人も多いかも知れない。
楽しげな笑みを浮かべて、ハクレイは技名を思い切り叫んだ。
『ーーーーアバンストラッシュ!!』
直後、光を放つ絶技の剣がリトルネペントをポリゴンへと変えた。
「や り や が っ た」というデカデカとした赤文字を筆頭に、「ダイの大冒険!」「やったわそれ!」「傘でやった!」「若い人知らないだろw」「おおおお!」「ヤバい、懐かしいw」「ギガスラッシュで良くね?」「←馬鹿!アバンストラッシュだから良いんだろ」「その発想は無かった」と恐らく二十代後半から四十代の男性(と思わしき)コメントが盛り上がる。
まぁ勝手な偏見に過ぎないが。
今風に言えば『ギガスラッシュ』といえば伝わるだろうか。ドラゴンクエストの特技である。
『このように。似た構えであればちょっと変えてもソードスキルは発動するので、皆さんが子供の頃傘とかでやったあの技も出来るかもしれませんよ』
と締めくくって、また虐殺という名の作業へとハクレイは舞い戻っていく。
さぁ、後は花が出るまでひたすら狩りタイム&レベリングの時間だーーーー。
スキルの割り振りの説明を最初のレベルアップの回に軽く追加しました。
それからアバンストラッシュ。
……ハーメルンでダイの大冒険を知ったのですが、やっぱりかっこいいですね。
主人公の性癖
・ロリコン
・巨乳お姉さん←New