元RTA実況者がSAOをプレイしたら   作:Yuupon

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 村に到着ゥ! 今回は若干ニコ生の説明も兼ねてます。




 


6.ホルンカの村到着からクエスト受注まで

 

 

 

 村周辺まで来ると、始まりの街と打って変わってどんよりと曇り空が広がっていた。はっきりしない天気である。湿り気を含んだ空気を体全体で感じるのは、何だか嫌な予感を告げているようだ。

 ここまで何のミスもなく突き進んできたRTA幼女こと、ハクレイはようやく見えてきた村を見つけて歓喜する一方振り払いきれない不安を抱えていた。

 

『おぉ! やっと見えてきましたね。時間は……一時間くらいか。レベルは三まで上がってますので良い調子ですね。これから宣言通り、クエストを受けに行きます』

 

 勿論。その不安を表に見せはしない。実況者として身に付けたリアクションスキルを存分に生かし、ハクレイは歓声を上げる。

 SAOは現実より感情表現が豊かなので、嬉しそうな美幼女の姿が画面に映し出された。

 「天使や……」「天使」「第一印象から決めてました!」「なお、走りは止まらない模様」「RTAちゃんの笑顔可愛いw」「中身は……」「←RTAちゃんは黒髪幼女だろいい加減にしろ!」

 画面いっぱいに映し出された幼女の笑顔に対するコメントが盛り上がる。

 なんかむず痒いな、とハクレイは内心思いながら村まであと少し、とひた走った。

 

『あー、良いっすね。良い調子です。とりあえず村……ホルンカの村というのが正式名称なんですが、ホルンカ村に入ったら、一番最奥にあるデカイ屋敷にいるNPCのクエストを受けます。その報酬でもらえるアニール・ブレードを使って、ボス攻略する予定です。それから一本だけオノを購入。あとは余裕があればもう一本アニール・ブレード、無理なら売ってる剣で代用しますが、もう一本武器を補充します』

 

 言うと同時、村に飛び込む。

 と、不意にウィンドウが表示された。小さな四角いウィンドウである。

 

【ホルンカの村第一到達おめでとうございます。第一到達ボーナスとして一五〇〇〇コル(SAO内のお金)を進呈します】

 

 そのウィンドウが消えると同時、チャリンと音が鳴ってハクレイの所持金が増えた。コル、というのはSAO内のお金である。確か初期に渡されるコルが一五〇〇コル程度なので、かなりの大金だった。

 βテストでは最速攻略出来なかったので、見たことのない報酬に目を丸くする。

 

『おおお! マジか、こんなのあったんですね。いやでもこれかなり助かります。コルが足りるか微妙だったんで。というか現状最速らしいですよ皆さん!』

 

 言うと同時、コメントが溢れる。それから波のような宣伝が巻き起こった。

 「おおおお!」「最速キター!」「コル増えたな」「ミラーも埋まってて見れねぇw」「宣伝荒ぶってるww」「こうこつ(広告乙)です」「今来た、わこつ(枠とりお疲れ様」「8888888(パチパチパチパチ)

 

 そして良い流れはそこで止まらない。

 次の瞬間、画面上部にこのような文字が浮かぶ。

 【ニコ生クルーズが訪れました】

 ニコ生クルーズとは、世界の新着動画と同様のシステムである。簡単に説明すると、ニコニコ生放送内をランダムに巡回するサービスで、それを船に見立ててクルーズ。見ている視聴者を船民と呼び、気に入った動画があればそのままその動画に移ることも出来、それを『降りる』と表現している。まぁ一言で言えば、視聴者を増やすチャンスなのだ。

 現にコメント欄には、「クルーズから」「クルーズから」「モンハンか」「またモンハンか」「またモンハンか、壊れるなぁ」「モンh、SAOじゃねーか!」「クルーズキター!」「こn(こんにちはの意味)「こn」「よーじょ」「幼女!」「幼女!幼女!」と一部を除いて今までと違ったコメントが見られる。

 

『おぉ、クルーズが来た。とりあえず今、SAOの最速攻略してまして、最速で次の村に到達したところです」

 

 ハクレイは落ち着いた口調で言った。

 ここにきて急に増え始めたコメントにどう反応すべきか、と考えつつとりあえず攻略に集中する。

 ホルンカの村は、よくある田舎のような感じだった。農作業服のNPC達が畑を耕している。建物は茅葺屋根(かやぶきやね)の家や、木で出来たログハウスのような家が多く見られた。

 ハクレイはその一番奥に見える、屋敷のような風貌の家に駆けていく。

 

『あの奥に見える屋敷がそうですね。あそこでクエストを受けたら、皆さんお待ちかねソードスキルです。近々ソードスキルも検証しないとなぁ。βの時は時間が足りなくて出来なかったんですよ』

 

 硬直さえ何とか出来ればなぁ、と呟いてハクレイは屋敷の門を潜る。それから問答無用で和風な屋敷の障子を開けてズンズンと押し入っていくと、一人のNPCが座っていた。

 見た目は、若い。二十歳くらいか。細身の男性のNPCだった。

 

「……お嬢ちゃん? 何処から入ってk」

『どうしたんですか?』『どうやら困っているようですね』『何とかしますから早く要件言ってください』

 

 何処から入ってきたのかい? と尋ねようとしたNPCの会話に割り込むことでキャンセルしたハクレイは一言ずつあえて切りながら、クエスト受注のための言葉をまくしたてる。

 無表情の幼女の言葉責め。と書くと妖しい雰囲気が漂うが、実際その通りなので仕方ない。

 コメントでは「うっ、ふぅ」「もっとお願い」「表情そそる」「お兄ちゃん気持ち悪いって言ってみて?」などの言葉と同時に、赤文字でデカデカと「こ の ロ リ コ ン 共 が」と書かれているのはもはやいつも通りと笑うしかない。

 溜息吐いて、ハクレイは侮蔑の笑みを浮かべてサービスしてみる。

 

『……お兄ちゃん、気持ち悪い』

 

 ハクレイも男である。その為、同じ男性がそそる表情など分かっていた。何故なら彼もまた、様々な性癖を身につけているからだ。

 ついでに言えば今の姿は美幼女である。文句ない演技だと自分でも思う。

 一つ言えば、まくしたてられた上に『気持ち悪い』と言われてギョッとしているNPCが可哀想でならなかった。

 ちなみにNPCの青年の反応は「え、えっと……。気持ち悪い? と、話がずれました。ご、ごめんね? えっと困っているのはね」とどう対応したら良いのか弱ったような反応であり、コメント欄が「ありがとうございます!」という言葉で埋め尽くされていたことを追記しておく。

 それでも何とか気を取り直して本題に移ろうとするも、

 

「実は僕の妹が病気d」

『本題を言ってください』『あぁリトルネペントの花を取ってくれば良いのですね』『分かりました、すぐに取ってきます』『お礼はアニール・ブレードですね。ありがとうございます』『クエストを受注しますね』

「……は、はい。お、お願いする、ね(泣)」

 

 最後はもはや震え声だった。というかこのNPCの青年に恨みでもあるのか、というまくしたてようである。

 ちなみにコメントは笑いの渦に包まれていた。「先読みすんなw」「言わせてやれよww」「キャンwセルww」「鬼畜幼女やwww」「クッソワロタww」「wwww」

 コメントの渦に流れて先程のニコ生クルーズで何人降りた、などの報告が出るがもはやそんなの見てる状況じゃなかった。

 

『じゃあクエストを受注したのでリトル・ネペントというモンスターを倒しに行きます。ここからは色々なモンスターが出てくるので気をつけていかないといけませんね。途中途中で説明も入れていきますのでお願いします』

 

 どうしたら良いのか分からない表情で立ち尽くすNPCを無視してハクレイは屋敷を飛び出していく。

 剣を携え気合十分。ここからが本番だ、と自身に言い聞かせてハクレイは真剣な表情を浮かべた。

 

(フレンジーボアは動きのパターンが変わってなかったけど他のモンスターはどうか。気をつけていかないと死にかねないし、集中しないとな)

 

 とりあえず現状最速でここまで来たのだ。

 あとはこのペースで突っ走るのみだった。

 村を飛び出し、目的のリトルネペントというモンスターが生息する森の方へと駆けながら、ハクレイは宣言する。

 

『お待たせ。ここからはソード・スキルの時間です!! あり得ない動きなので酔わないようになっ!』

 

 「前転の時点であり得ねぇよw」「注意遅いわw」というコメントを視界に捉えながら、ハクレイはクエスト攻略を開始するーーーー。

 

 

 




「一言」
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