さぁ、ハクレイの姿とはーーーー!?
アインクラッド。
正式には「浮遊城アインクラッド」というらしい。
天才、茅場晶彦が作り出したVRMMORPG「ソードアートオンライン『SAO』」の舞台となる仮想空間である。周囲にもいくつか浮遊島が浮いており、 百層からなる巨大な鉄と岩の浮遊城で、内部の一層ごとに雪山、草原、森林などを内包している。一層ごとに「迷宮区」と呼ばれるボスのいる部屋までのダンジョンがあり、ボスを倒すと上の層の「転移門」を
ゲームの内容は簡単に説明するとこのような感じだ。
アインクラッドの中には「NPC」(ノン・プレイヤー・キャラクター)がすんでおり、多種多様な街も存在している。さらに攻略だけのスキルだけでなく、「釣りスキル」や「鑑定スキル」または「お料理スキル」等、アインクラッド内で擬似生活も楽しめるようなスキルが多種多様にある。擬似的ではあるが「婚約」も可能。
続けて言うが、婚約も可能。
更に言うが、婚約も可能なのだ! (大事な事なので三回言いました)
簡単にソードアート・オンラインの概要を思い出したハクレイは視線を前に向ける。
ーー全ての準備は完了した。
さぁ、ログインの時。
彼は迷うことなく、仮想世界へと身を躍らせた。
ざわめきは、SAOの舞台。アインクラッドに降り立つと直ぐに聞こえてきた。ログインが完璧に完了すると更に大きくなる。
『……これがSAO、ソードアート・オンライン』
世界に降り立った少女は小さく呟いた。
頭の上には『hakurei』という名前が浮かんでいる。
サービス開始と同時にログインしたからか、辺りには人だかりが出来ていた。歓声がひっきりなしに聞こえてくる。
ふと顔を上げると、そこにはゲームとは思えないリアルな世界が存在していた。β版よりも更に画質が向上しており、先程発した声もハッキリと耳に届く。
これが、ソードアート・オンライン。
天才、茅場晶彦が作り上げたVRMMO。
ーー現行のゲーム全てと違う、リアルな世界。
『皆、これが。これが世界初のVRMMO。茅場晶彦が作り上げた仮想世界。ソードアート・オンラインです』
β版をプレイした際にも思っていたが、数ヶ月ぶりにこの世界に戻ってきて再び思う。ハクレイは感動に震える声でリスナー達へこの世界を紹介した。
続いて、プレイスタイルを一言で告げる。
『そして、今日。この世界で俺は最速での第一層攻略を目指しますッ!!』
それが実況の始まりだった。
1
宣言から数十秒後。
少女、ハクレイは西洋風の街並みが立ち並ぶ『始まりの街』を駆け抜けていた。
客観的に容姿を説明しよう。
一言で言えば小さな女の子、というのが正しい。見た目は一二歳程度の少女だ。清潔そうな白の上着に丈の短い春色スカートという姿がより一層少女らしさを感じさせる。
ついで肩まである黒髪に若干膨らみかけの胸と、大分危険な香りを漂わせている。
というか、美少女だった。
……中身を考えればただの変態だけれども。
コメント欄も慌ただしかった。「グラフィック凄い」「ハクレイちゃん
意見も様々。コメントで遊ばれている感が若干ある。ここまでくるとお祭り騒ぎと言っても良いかもしれない。
というかハクレイとしてもこの容姿は予想外だった。
(かなり酷い見た目になると思ってやったんだけど。予想外に良いの出来ちゃったよ。つかコメントにもあったけど某弾幕ゲームの博麗霊夢をまんま小ちゃくした感じっつーか……。いやまぁそれ関係なくても幼女が剣で敵を倒す様子なら画になるし良いのか? 良いよね?)
この間数秒。とりあえず気を取り直してハクレイは走りながら説明を始める。
『で、ですね。とりあえず今は防具屋に向かっています。さっき最速での攻略を目指す、と言ったんですけど。βテスト時の検証では、初期装備だと第一層のボス。「イルファング・ザ・コボルド・ロード」の攻撃一発で死ぬんですよ。なので、まずは最初から持っている金を全額つぎ込んで防具一式揃えます』
イルファング・ザ・コボルド・ロード。
第一層のボスにして、今回の企画の最難関の敵である。
とりあえず手持ちの情報としては、武器はオノとバックラー(盾)。残りHPが少なくなると武器を曲刀カテゴリのタルアールに持ち替え、攻撃パターンが変化すること。
後、一人で検証した結果では、レベル一の初期装備だと一撃で死にかねない程度の攻撃力を持つ事。行動パターンは決まりがなく、状況に応じて複数のパターンに分かれていくことくらいか。
後は三匹のルイン・コボルド・センチネルという取り巻きモンスターもいることだ。
とはいえ、あくまでβ時の話である。正式バージョンでは変わっている可能性も否めない。
まぁその時はその時で考えよう、とハクレイは気持ちを切り替える。そして一息に目標を告げた。
『防具はそれでオッケーです。剣は次の村のクエストで手に入るのがこの層で一番強い武器なのでそれを使用します。とりあえず今日の目標としては第一層の攻略を目指す予定です。β時では四時間程度でイルファング・ザ・コボルド・ロードまで辿り着けるようにルート検証したので、今回もそれぐらいの時間でボスに挑めるよう頑張ります。途中途中で解説も行っていきますのでどうかゆったりとご覧下さい』
言い切って、幼女ハクレイは裏路地に体を滑り込ませた。そこから右へ左へと迷いなく進み、やがて一つの防具屋へと辿り着く。
コメントでは「やだ、舌足らずな声可愛い」「というか声そのままでいくん?」「ハクレイー!俺だー!結婚してくれー!」「俺の股間の剣も使って下さいボロン」「←通報した」「←おまわりさんコイツラです」「それじゃあハクレイちゃんは俺がもらいますね^ ^」「←テメェもだロリコン」「
とカオスな感じに流れている。それらを早口で拾っていく読み上げソフトの「ゆっくりボイス」はかなり有能だとハクレイは思った。
そして防具屋についてからする事は簡単である。
「やぁ、どうやら防具屋を利用するのは『初めて』みたいだね。良かったr」
『
店に入って迷わず店主のNPCに向かって走る。するとハクレイの姿を認識したのか、髪の毛が若干後退しているNPCがハクレイに声をかけた。
それからハクレイはガタリ、と身を乗り出して物を要求する。
(この場合『説明は要りません』と力を込めて言うことでチュートリアルをキャンセルした)
ちなみに他の客はいない。ここは殆ど一般プレイヤーに知られていない知る人ぞ知る店なのだ。
そもそもの話。裏路地の店を構えるNPCや裏路地探索などの緻密な作業を行うプレイヤーは少ない。そこから更にβテストはクジによる抽選から選ばれたプレイヤー達なのだ。余計に数は少ないだろう。
そんな中、ガチ勢筆頭のハクレイはソードアート・オンラインを幾重にも検証した。細かいバグチェックから裏技の開発。果ては敵キャラクターの攻撃力や守備力などの情報も全て頭に入れている。
……まぁ、全てがβテスト時のものには変わりないが。
ちなみに説明するとこの店は表通りより良い装備を格安で売ってくれる店だったりする。
「……お探しの商品h」
『防具一式。今すぐ装備していきます。足りない代金分は現在着ている防具を全て売りで』
間髪入れずハクレイが言う。すると次の瞬間、ハクレイの装備が変化する。
白の上着に春色スカートという姿から、某ドラゴンクエストのような革装備へと。色気もへったくれもない姿だが、それでも横乳が微妙に膨らんで見えるのでコメントも沸き立った。
「ロリパイ!」「おぱい……」「おぱい……」「黙れロリコン共(゚Д゚)」「幼女最高」「オイ店主困惑してんぞwww」「キャンセルすんなしww」「クッソワロタw」「ヤバい、一瞬エロいと思った自分がいる」「←ここまで俺の自演」「こいつ手慣れてやがるw」
一部おかしなコメントも見られたが、大まかには予想通りのコメントだった。
剣以外の初期装備を全て売払ったハクレイは心の中でにやける。それから勢いよく元来た道を戻りながら、次の目的を口にした。
『じゃあ次は皆待ってただろう戦闘に行きます! ボス戦前にレベルは最低五は欲しいので、次の村に向かうついでにエンカウントした敵を全部倒していきます。レベル調整ってヤツですね』
先程と同じルートを真逆に突き進みながら街へと戻ったハクレイは言い切って街中へと飛び出した。
まだ見慣れない装備をしたハクレイを見て周辺にいた一般プレイヤーが目を丸くしていたが気にしない。
コミュニティ登録人数も順調、というかかつてないレベルで増えていた。コメントも「おおおおおお!!」と沸き立っている。
『戦闘の際にβテスト時に調べた敵の情報と行動も解説していきますので、宜しくお願いします。じゃあ行くぞお前ら! 幼女が敵をぶっ飛ばす姿をよく見とけよっ!』
そして。
街中から最短ルートで外へ通じる門を潜り抜けたと同時。
可愛らしいロリボイスと共にハクレイは剣を構え
「一言」
この物語は、実況者がSAOの生放送で幼女になって元RTA走者という肩書き引っさげて第一層を一日で攻略を目指すお話です(意味不明)