内容はタイトルの通りです。
大分簡略化してますがご了承下さい。
ハクレイが迷宮区へ突入した丁度その頃。
外の世界では騒ぎが巻き起こっていた。
ーーーーーーーーーーーー
ふと、テレビでも見るかという気分。
本当に何気ない、日常の中の一コマを切り取ったような時間のはずだった。
それなのに、これは何なのだろうか。
『えー、速報です。今日発売され、サービスが開始致しました世界初のVRMMO、通称ソードアート・オンラインにて死傷者が出ました。詳しい事は分かっておりませんが、頭に装着するナーヴギアを外部から外した時に、ジュウ! という音とともに頭が焼き切れたとの事でーー』
SAO参加者から死者が出た。
そのニュース速報が流されたのは午後四時。
ソードアート・オンラインが始まってから四時間が経過した時のことだった。
「何、これ」
何やら画面ではニュースキャスターがただならぬ様子で原稿を読み上げており、画面の端ではスタッフが慌てたように行き来する姿が映ってしまっている。
どうやら新たな情報を持ってきたらしい。
『ーー今、情報が入ってきました。現時点での死者は最低でも一六〇名。他にも多く見込まれるとのこと。また、製作者である茅場晶彦さんの行方も分からなくなっているとの事で、現在警察が行方を捜索中とのことです』
そこまで言ってニュースキャスターは紙を置いた。
他のチャンネルにも付け替えてみるが、テレビ東京を除いた全てのチャンネルで全く同じニュースが放送されている。
「何、これ……」
震えた声で呟いた言葉は虚空に消えていく。
1
オタクニュースアプリを開く少年がいた。
開いた理由は特にない。
今季のアニメは何が有力候補かな、その程度のものだ。
いわば毎日の日課というやつである。
しかし、そのトップニュースに浮かんでいた文字は。
「今日サービス開始! 世界初のVRMMOソードアート・オンラインで事故発生。多数の死者が出る?」
記事をスクロールすると、ソードアート・オンラインをプレイした人達が大量に謎の死を遂げているという記事が載っていた。
その後ランキングを開いてみるも、ランキング上位は全てそれ関連の記事で埋まっている。
「……またvipperの仕業か? ガセネタだろこんなもん」
他の記事の大半も「ソードアート・オンライン、デスゲームか?」「SAOで死者が出た件www」「ナーヴギアを取ったら死ぬ!?SAOのニュースまとめ」といった内容で、とてもではないが現実味がない。
だが、あまりにも量が多すぎた。
「……え? ガチネタなのこれ」
そうして思い出されるのはSAOを購入したと言っていた友人の姿。
呟いた声は消えていく。
2
また別の場所に移り変わる。
『ソードアート・オンラインにて死者がーーーー』
つきっぱなしになったテレビの声なんてもう聞こえなかった。
「……ぁ」
カラン、と音を立てて何かが落ちた。地面に落ちた丸い何かはコロコロと地面を転がって、壁に当たる。
動きが止まったことでようやく。
転がったものが何なのかを理解する。
「あ、あぁぁぁ……」
地面に転がっていたのはナーヴギアだった。
ナーヴギアを手から取り落とした人物は、地面にへたり込む。そして視線をゆっくりとベッドの方へと向けた。
その時、焦げたような臭いが鼻をつく。
香ばしい香りだった。何が焼けたのかを知らなければ、美味しそうな香りだね、とでも言ってしまいそうな。
「……嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」
耐え切れなくなって半狂乱になりながらも、ベッドの上に寝ている人物の元へ近付く。
寝ている人物はピクリとも動かない。
「なぁ、嘘だろ! 死んだなんて嘘だろ! ドッキリなんだろ! 何とか言えよ!」
その時だった。
叫び声を上げた人物の耳に、テレビからこんな声が届いたのはーーーー。
『ナーヴギアを外さないで下さい! 何らかの不具合かは分かりませんが脳が焼け切れて死に至ります』
「ーーーーーーあ、」
口から漏れ出た声はもう、聞こえない。
友人の心臓の鼓動ももう、聞こえない。
聞こえたのは、お前が殺した、という自分自身に対する声だけだった。
3
また別の場所では。
とあるスレッドが盛り上がっていた。
ソードアート・オンラインで死者が出た件
1 名前:名無しのvipper
内容はタイトルの通り
情報交換の場として使ってくれ
2 名前:名無しのvipper
>>1
スレ立て乙
サンクス
3 名前:名無しのvipper
今死者一六〇人。あ、また増えた一八〇人
4 名前:名無しのvipper
お前らがあんなに欲しがってたゲームだぞ
5 名前:名無しのvipper
死亡理由が原因不明か……
まさかデスゲームとか?
ナーヴギア外したらアウトって言われてるし
6 名前:名無しのvipper
もうこれでソードアート・オンラインは終わりだな
死者とかゲーム史上類を見ない最悪の展開だろ
7 名前:名無しのvipper
誰か助けてくれ!
高校生の息子がSAOをプレイしてて寝てるんだがどうすればいい
情報求む!
8 名前:名無しのvipper
>>7
とりあえずナーヴギアは触るな
どうして死んでるのか分からない以上、手の打ちようがない
外部から外しても死ぬケースあるっぽいし何もしないのが一番だと思う
9 名前:名無しのvipper
>>7
正直情報が足りないから、一つしかアドバイス言えんがナーヴギアに触れんな
10 名前:名無しのvipper
>>8、9
ありがとう
とりあえずニュースを全部見たがテレ東以外SAOの事放送してるけど同じ内容しかやってなくて不安なんだ
何とかしてゲーム内に干渉できないかな?
11 名前:名無しのvipper
茅場が行方不明な時点でもうね
今警察が探してるって言ってたし、レクトとかの会社も動き始めてる
なんか茅場が行方不明な時点でキナ臭いな
12 名前:名無しのvipper
超速報!
SAOを実況プレイしてる奴がニコ生にいるらしいぞ!!
ゲーム内の様子が分かるかもしれん
13 名前:名無しのvipper
>>12
それマジか?
妹が心配だし乗り込んでくるわ
14 名前:名無しのvipper
>>12に追記
実況プレイしてる人の名前は『ハクレイ』
タイトルが『SAOを最速攻略する』だからコメントを真実だと思わせない限り難しいかもしれんな
ただ、そろそろ
他に実況してる話は聞かないから唯一の情報手段だと思われる
本放送はもう埋まってるからミラーに行くべき
15 名前:名無しのvipper
>>12、14
情報提供サンクス!
早速向かってみる!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
数々のメディアによる放送。
飛び交う情報。
しかし真実味を帯びない数々の内容から、段々と一つの方向へと人々は集約していくーーーー。
4
また、別の場所では泣いている少女がいた。
「ねぇ、目を覚まして。覚ましてよ……」
ベッドに横たわる兄のすぐ横に立っていた少女は涙交じりに呟く。
頭に装着された新品のナーヴギアのすぐ横には、『桐ヶ谷和人様へ』と書かれたメッセージカードと、ソードアート・オンラインのソフトパッケージが置いてあった。
「……ナーヴギアは取っちゃ駄目、原因不明の死者……どうすれば良いの?」
ポロポロと涙が零れる。
落ちた雫が寝ている兄の頬に落ちた。
胸が上下に動いているのを見ると、まだ心臓は動いている。
ーーまだ生きている。
それでも不安だった。
ニュースを見ても未だ死亡理由は原因不明。死因も詳しくは分かっていない。
安全に起こす方法も分からないとなれば、不安が起こるのも仕方のない話だ。
「…………ッ」
唇を噛み締める。
恐怖から体を守るかのように両腕を組んだ。
(……何も出来ないのがこんなに辛いなんて)
下手に手を出せば兄は死んでしまうかもしれない。
そんなのは嫌だった。未だに気持ちはゴチャゴチャしていて、納得も理解も把握もしていないけれど、それでも一つだけ確かに言えるのは、死んでほしくないという気持ちだった。
「お願い、神様……」
どうか、無事にお兄ちゃんを返して下さい。
ーーーー桐ヶ谷直葉に出来たのはそう、祈ることだけだった。
5
ーー着々と現実では死者が現れ始めていた。
『えー、また情報が入ってきました! 現在この放送を見てナーヴギアを外そうとされている方はおやめ下さい。外部から外した場合も死亡したケースが存在する模様です。身近にソードアート・オンラインをプレイされている方が居ましたら、ナーヴギアに絶対に触らないで下さい』
テレビのニュース速報やパソコン、携帯、ラジオ。
ありとあらゆるメディアがSAOから出た死者についてのニュースを取り上げ始めていた。
やっている事は殆ど同じことだ。
原因不明の死者。
脳が焼けている、しかし詳細不明の死因。
ナーヴギアを外すと死亡する。
それに加えて専門家(?)達による憶測の情報。
真実が分からない。
何が真実なのか分からない。
そこに追い討ちをかける製作者、茅場晶彦の失踪。
正しい情報を得るためにはソードアート・オンライン内にログインでもするか、中の人の話を聞く必要がある。
しかしソードアート・オンライン内のプレイヤー達は誰一人としてログアウトしてこないし、初期ロットが限られているSAOにログインなんて出来るわけもない。
その事が更に事態を悪化させ、不可解かつ不可思議なものにしていた。
焦る。
無事に帰りを待つ人々は焦っていた。
それでも決定的な真実は出てこない。
何一つ分からない、理解不能。
そんな暗雲が立ち込め、膠着した状況を打開するニュースが流れたのはその直ぐ後の事だった。
『ソードアート・オンラインを実況プレイしている人物が存在している』
その情報は瞬く間に世間へと広がり、ニコニコ動画へのアクセスが加速的に膨れ上がった。
それこそサーバーダウンしかねない異常事態が起こる。
そして。
ハクレイを取り巻く物語は複雑化していくーー。
「一言」
大体これくらいが作者の妄想の限界ですね。
さぁ、外の世界も動き出してここから面白くなってきました(書き手的に)