感想、評価ありがとうございます。
そう言えば今更ですけど、この作品って正しくはRTAじゃないんですよね。
だから『最速攻略』という言い方をしたりタイトルを元RTA実況者、にしているわけですが。
(前書きや後書きで普通にRTAって言ってるあたり何処か抜けてる作者ですけれど)
時間が四時二十分を回った頃、ようやくハクレイは目的地であった街、《トールバーナ》へと到着した。
ホルンカの村よろしく、『最速到達おめでとうございます』の文字と一五〇〇〇コルが追加で支給された事を先に言っておく。
アインクラッド第一層の第二主街区である《トールバーナ》は、フロア南部に位置している。迷宮区に最も近い街であり、フロアボス討伐の最前線となる街だった。その様相はもっぱら西洋風の石造りの街というイメージで、始まりの街と似た雰囲気を思わせる。少し年月が経っているようで、所々古びた印象があった。
しかし街自体は随分と綺麗であり、NPC達が毎日掃除しているのか埃っぽいという感じではない。人の数もそこそこ多く、活気の良さがうかがえた。
『ここが今回の最後の街です。やっぱりSAOの街って凄いよなぁ。グラフィック、というかほぼ現実に見えますし』
走りながらあちこち見回したハクレイはふとそんな感想をハクレイは呟く。
コメントでは「到着ゥ!」「やっぱ始まりの街と似てんな」「ここまで長かったな」「やっと第一層攻略が見えてきたか」と若干疲れたような印象が見受けられるものが多い。
まぁなんだかんだで四時間くらい経ったし、と思うハクレイ自身、かなり疲れを感じてきている。ここまでノンストップできた事もその要因の一つだが、それ以上にソロプレイが厳しいのだ。
一応弱点なんかの情報はあるが、所々変更されているモンスターも多々見受けられた。そんなモンスターは無視したり強引に倒したりで何とか誤魔化し、やり過ごしここまで来ているのだがいかんせん精神的な疲れがヤバイ。
(まぁ最速で第一層を攻略する、と言った上に今日一日でなんて条件を自分で付けた以上やるしかないけど)
『さて。ここまで来たら残り僅か、ではないか。とりあえずここから先は迷宮区へ突入するのみですね。で、今回この街でやる事なのですが特にないです。素通りして、迷宮区に繋がる森の方へと走ります。そこに行商人が居るので、そこで防具を購入する予定です』
とりあえず気を取り直してハクレイは説明する。というか本当にやる事がないのだ。正直ここまでの過程で必要なアイテムは大方手に入れてしまったし、残りの防具も購入場所は決めている。コルが余っているので何かアイテムを買おうと思えば買えるだろうが……。
『正直必要なアイテムが無いですね。まぁ転移結晶があれば良いんだけど確かあれは第一層に無かったし』
よって買い物予定もなし。そもそもトールバーナ自体、β版では迷宮区手前の最前線の基地程度の感覚で使用していたし、食事などの娯楽施設を使った覚えくらいしか無い。一応売られているアイテムも確認したが効果が余り変わらない以上買っても無駄になるだけだった。
『一応、
ボヤきながらも足は止めない。
「どこまで最速でやんの?」「つかレイド組んでやるVRMMOなのにソロでボス倒せんの?」「その企画も楽しみだな」「ソロでボスは思った。削りきれんの?」「←フィールドボスは直ぐ終わったぞ」「←あれは中身ただの雑魚やろ。危険なのは一撃死しかね無い突き攻撃だけやで」「突き攻撃(意味深」「あのさぁ……」「中身考えたらあのさぁ……としか言えんな」「どこを突くんですかねぇ」
コメントも階層ボスを削り切れるかの心配が出た以外は大方いつも通りだった。
段々飽きが出てきたな、と思いつつちょっと気分を変えようか、とハクレイはこんな質問を出してみる。
『一個皆に聞きたいんだけどさ、皆どんな感じで見てんの? この生放送』
するとすぐに答えが返ってきた。
「全裸」「全裸待機」「酒呑みながら」「←酒に同じく」「昼間から酒か……」「お菓子食いながら」「お菓子に同意」「全裸待機のやつちょっと待てや」
全裸待機はともかく、他は普通の回答だった。ふーん、と呟いてハクレイはトールバーナを駆け抜ける。
そうして数分間でハクレイはトールバーナを抜けた。
『何だろう。最後の街なのにこの通り道感』
言葉にするとちょっと悲しかった。
トールバーナを抜けると、視界に広がるのは森である。迷宮区へはこの森のゾーンを通り抜ける必要があった。
その途中で行商人のNPCが居たと記憶している。
『もうこの辺りはアレだよね。ただの作業』
メタいことを言い、妙な物悲しさに包まれた。
なんか気が緩み始めてるなー、とか思いつつハクレイは足を進めていく。
それから五分。
道は完全に覚えているため、間違えることなくハクレイはちょっとした広場までたどり着いた。
そして、そこには数人のNPCの姿がある。
『あっ、居ましたね。あそこのNPCから防具を購入していよいよ迷宮区に突入します。こっからが本番だからな! むしろ今までが前座なので、ここからは死との隣り合わせです。レベルも低いので』
ちなみに現在のレベルは五。当初、ハクレイが提示したボス攻略の為の最低レベルだった。
この場合、レベル五も上がったというべきか。それともレベル五しか上がらなかったというべきか。ごく普通のレベル上げゲームなら四時間やってれば二十レベル辺りまでいっていてもおかしくは無いのだが、そこはやはり現実世界と時間がクロスしているSAO。レベルもかなり上がりにくい仕様のようだ。
とはいえ初日でレベル五というのはかなり破格のレベルなのでは無いかと思う。ついでに何だかんだここまで最速できているのも条件としては悪く無い。
『ポジティブにいこう。まず迷宮区ではモンスターのレベルが一回り上がるので気をつけていきます。具体的に言えば雑魚モンスターに殺されかねないのでかなり危険です。今から買う防具を着て、四発耐えれるかどうかかな。ボスなら一発が限界ですけど』
その言葉に対し、コメントの反応は「そうなのか」「結構危ない橋渡らないと勝てないのか」「いけるか?」「ギリギリだな」「一発しか耐えられない……避けゲーかな?」「ポーションが重要になってくるな」「
それからハクレイはNPCの元へと駆け寄る。
『すみません。防具一式下さい。一番身軽なやつを』
「やぁいらっしゃい。旅人の服シリーズだね。今直ぐ装備する?」
ハクレイが声をかけると、白髪にメガネをかけた商売人を思わせるNPCが反応する。スムーズに返してくれたNPCの言葉に頷き、購入するとハクレイの体を一瞬光が包み、服装が変化した。
『うわ、スースーする』
上は水色を基調とした服に青いマント。下は青いミニスカートという立ち姿。上着は若干サイズが大きく設定されているのかいわゆる萌え袖のような感じになっており、見た目がロリなハクレイにはよく似合っている。下のミニスカートも若干大きいので普通サイズのスカートと同じような感じになっているが、動きやすそうな感じだった。
まぁそれ以前にスカートに慣れていないので違和感があるのだが、
『もうスカートにはどうでも良いや。ゲームだし。じゃあ先に行きましょうか。それからその間にこの服装を見て何を思ったか正直に言ってみろお前ら。ついでだし片っ端からツッコミ入れてやるよ』
そう言ってハクレイは迷宮区への森道を突き進んでいくのだった。
「一言」
もう性癖を無理に増やさなくても良いと思うんだ(真理)
さて、今回は衣装チェンジです。トールバーナなんて無かったんや……。