動き出した闇   作:コードネームF

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お久しぶりです!コードネームFです。
二ヶ月以上ぶりの投稿となってしまい申し訳ありませんでした。
色々な事情から書くことができず、二ヶ月以上の月日が経ってしまいました。
その間にコメントもいただき、うれしい限りです。
この物語を最後まで書き上げられるように頑張りたいと思います。

前置きはこの辺にして本編に移りたいと思います。
なお、本編は時系列的にアニメの後の話となっています。アニメを見ていない方はぜひ、アニメを見てみて下さい。

それでは、一章の始まりです。



第一章

まぶしい光が飛び込んできて目が覚める。

体を起こして、大きく伸びをした後時計を見る。

時刻は午前六時。

アラームは六時半にセットしているため、いつもより早い目覚めだ。

俺はベッドから降り、顔を洗うため洗面所へ向かった。

鏡に映るのは見慣れた自分──物部悠の顔。

現在十六才で軍としての階級は少尉。

三年前に“D”として身柄を拘束されて、軍──ニブルに配属。三年間、特殊部隊スレイプニルを率いて数々の戦地を駆けてきた。

俺がミッドガルに転属されたのは一ヶ月前。

いや────転属ではなく転入か。

ここミッドガルは“D”の学園だ。日本の遥か南、赤道付近に位置する無人島を改造して作られた、“D”たちの自治教育機関。

俺は今、軍人ではなく、ミッドガルの生徒として生活している。

水で顔を洗い、部屋に戻る。

 

 

 

 

 

二十五年前、日本上空に突如として出現した最初のドラゴン──“黒”のヴリトラ。

ただ移動するだけで甚大な被害を巻き起こしたその怪物は、物質を無から作り出すという異能を用い、人間側のあらゆる攻撃を無効果した。

必死に抵抗する人類を嘲笑うかのように、怪物は悠々と世界を一周し、現れた時と同様、唐突に姿を消した。

その後、人間の中に怪物と同様の力を持つ者が生まれ始めた。それが上位元素生成能力者“D”、もしくはタイプ・ドラゴンと呼称される子供たち。

そして、“D”の発生と同時期に、新たなる巨大生物が世界中に出現する。

人智を超越する力を持つその怪物たちを、世界はドラゴンと総称し、対ドラゴン専門の国際機関──アスガルを設立した。

アスガルは国連軍を再編し、超法規的に活動できる軍隊──ニブルを組織。ドラゴンが原因で発生した諸問題に、軍事力で介入、解決を図った。

さらに、“D”もドラゴンによる問題の一つと位置づけ、南海の孤島に隔離施設を建造。それがミッドガルの雛型となる。

設立当初は収容所的な側面が強かったらしいが、現在は自治組織として世界に大きな影響力を持つようになり、人権や自治も得ている。

任意の物質を上位元素からの変換で作り出せるという能力は、経済的な価値がとても高い。希少な資源の生産依頼を引き受けることで、“D”は社会に貢献している。

だが、ミッドガルには公になっていない、もう一つの役割があった。それは、つがいを求めて襲ってくるドラゴンを追撃し、倒すこと。

ドラゴンに見初められた“D”は、接触されることで同種のドラゴンに変貌してしまう。実際に、俺がミッドガルへ来る前に、生徒が一人ドラゴン化した。

名前は篠宮都。俺のクラス──ブリュンヒルデ教室の担任である篠宮遥先生の妹であり、俺の妹──物部深月の親友だった。

だから、俺たちは仲間を守るため、日々ドラゴンと戦う訓練も行っている。

そんな中でも学園生活は充実していて楽しいのだが、いまだに慣れないことがある。それは俺以外に男子がいないことだ。

理由は分からないが“D”として生まれるのは女性ばかりで、男子で上位元素生成能力を有しているのは現在のところ俺だけだ。

生徒はおろか、ミッドガルの職員も全て女性なので困ったものだ。

そんな事もあり、学園でただ一人の男子である俺が、何か問題を起こさないよう、ミッドガルで中佐になった妹の深月は、一般寮から離れた自分の宿舎に俺を住まわせ、監視下においている。

俺自身、生活に不満はないのだが……。

 

────もう少し自分の兄を信用してほしいもんだ。

 

そう思う俺だったが、自分の行動を振り返りため息をつく。

思えば深月には心配や迷惑をかけさせてばっかりだ。

 

プルルルル──────!

 

突然、ノート型端末の着信音がなった。

画面を見るが、相手の番号は表示されていない。

 

────こんな時間に誰だ?

 

深月なら直接言いに来ればいいし、そもそも番号が表示される。

非通知で俺に通信を求める相手は────一人しかいない。

正直、応答したくはないが、向こうが通信を求めるからには、それなりの理由があるのだろう。

覚悟を決めて応答のアイコンに触れる。すると、画面にノイズ混じりの映像が映し出された。

 

『やあ、物部少尉』

 

ニブルの軍服を着た男が、画面の向こうから切れ長の目で見つめてきた。

 

「……ロキ少佐」

 

俺は男の名を口にする。

ロキ・ヨツンハイム少佐。俺がニブルにいた頃の直属の上官であり、俺を誰よりも強い人殺しに育てようとした人物。

 

『ミッドガルに少々用があってね。それに物部少尉にも話しておきたい事があると、無理を言って回線を繋いで貰ったのさ』

 

「はあ……話しておきたい事ですか」

 

ロキ少佐の話しておきたい事────嫌な予感しかしない。

 

『まずは君に賛辞を贈ろう。バジリスク討伐おめでとう、見事な活躍だ。ミストルテインは役に立ったかね?』

 

「……はい、おかげさまで。ただ、バジリスクは俺一人ではどうにもならない相手でした。危機を乗り越えられたのは、皆が力を合わせた結果です」

 

俺は先日のバジリスク戦において、ニブルが開発した爆弾──ミストルテインの譲渡をロキ少佐に要求した。それはリヴァイアサン討伐後にロキ少佐と交わした「何でも好きなものを用意する」という口約束に基づいたもの。これで貸し借りはゼロになったとも言えるが、無理を言い過ぎたかもしれないという負い目を多少は感じている。

 

『本当に大したものだ。君は本当に優秀だよ。私の手元に置いておけないのが非常に残念だ』

 

「っ────」

 

その言葉に悪寒が走る。

彼は口元を歪めて言う。

 

『どうだ、物部少尉。私の元に戻る気はないか?』

 

「…………」

 

その問いに、俺は無言を返す。

 

『はは────冗談だ。そんなに怖い顔をするな』

 

ロキ少佐はさわやかな笑顔で言うが、本心は分からない。

 

『さて、それでは本題に入ろう。君に以前話したフレイ・バナラントという人物を覚えているかな』

 

俺は思わぬ問いかけに反応が遅れる。

 

「えっ?……はっはい。確かニブルを追放された人ですよね?」

 

フレイ・バナラント。俺が昔────ロキ少佐の元にいた時に一度だけ聞いただけだったが覚えていた。

軍隊であるニブルの中、女性で初めて中佐の位を得た人物。

 

『その通りだ、物部少尉』

 

ロキ少佐の表情から笑みが消える。

 

『そのフレイがドラゴン信奉者団体の信者二十五名を殺害した』

 

「なっ……!」

 

驚愕で思わず声が出る。

 

────なぜ、そんな事を……

 

俺の疑問は、次のロキ少佐の言葉で明らかになった。

 

『彼女の思想は過激でね。ドラゴンのみならず、“D”も排除するべきだと主張した』

 

「っ────!」

 

言葉も出なかった。

“D”は今やエネルギー資源を補っている大切な存在だ。その“Dを排除することは、人道的にも、社会的価値からも認められていない。

 

『もちろん、そんな主張は通るはずもなく、彼女はニブルに残しておくのは危険だと判断され追放された。彼女なら、ドラゴン信奉者団体の一つや二つ潰しても、なんらおかしくない』

 

ロキ少佐は淡々と語るが、そんな軽々しいものではない。

すると画面の奥の切れ長の目がすっと細められる。

 

『物部少尉。ここまで言えば、君にも私が何を言いたいか分かるはずだ』

 

「!……まさか」

 

全身に悪寒が走る。

ロキ少佐が言いたいことは、つまり──────。

 

『フレイが動き出したということは、“D”の排除が目的である可能性が高いということだ』

 

「そんな……」

 

“D”の排除を目的としているなら──────ミッドガルが狙われているといっても過言ではない。

ミッドガルには約七十名の“D”が学園生活を送っている。“D”の排除には欠かせない場所だと言える。

 

『そんなに驚くことでもないだろう。逆に、彼女が今まで動かなかった方がおかしかったのだからな』

 

「だとしたら……なぜ、今……」

 

俺は当然の疑問を口にする。

これまで動かなかった彼女が、なぜ今になって行動しているのか。

 

『どうやら彼女は、仲間を手に入れたらしい。それも、かなりの手練れだ。なんせ、そいつ一人で二十名を相手にしたそうだからな』

 

「っ!……そんな。あり得ない……」

 

一人で二十名を相手にするなど聞いたことがない。

 

『あり得ない話でもないと思うがな』

 

ロキ少佐は底冷えするような笑みで言う。

 

『私の育て上げた君と、どちらが強いかな』

 

身体中の毛が粟立つ。切れ長の目が俺を射る。

目を背けたいのに、背けることができない。

 

『まあいい。少々長話になってしまったな。つまり、くれぐれも用心を怠るなということだ。もしかしたら、近々向こうから接触があるかもしれないからな』

 

「……肝に命じておきます」

 

俺は頷くことが精一杯だった。

 

『それでは、この辺で失礼しよう。気を引き締めておくことだ、物部少尉』

 

プツンと通話が途切れ、画面が消える。

場に張り詰めていた空気が一気に緩む。

 

「はあ……」

 

俺は深いため息をつく。

妙に体が疲れていたので、少しベッドで横になっていると────ノックの音が響いた。

 

「兄さーん。入りますよー」

 

深月の声だ。

時計を見ると七時を回っている。朝食の時間を過ぎているため、呼びに来たのだろう。

 

「悪い。今行く」

 

ベッドから降り、素早く制服に着替え、ドアを開ける。

 

「兄さん。食堂に来ないから寝ているのかと思いました」

 

「悪い悪い。少し考え事をしていてな」

 

先ほどの会話については話さないことにした。

あの話は知ることになるだろうが、俺とロキ少佐の関係で余計な心配をかけさせたくなかったからだ。

深月は俺に一歩近づき言う。

 

「考え事をするのはいいですが、時間はしっかり守って下さい」

 

「あ、ああ、次からは気をつける」

 

深月との距離が近くて、少しどぎまぎしてしまった。

俺と深月は兄妹であり────兄妹ではない。

というのも、俺と深月は血が繋がっていないのだ。

俺はこの事実を────つい先日知った。

深月が本当の妹でないことを忘れていた。いや、正確に言うなら深月が妹ではないという記憶がない。

理由は、グリーン・ドラゴン──“緑”のユグドラシルとの取引。

俺は、三年前に故郷の町を“青”のヘカトンケイルから守るため、ユグドラシルから力の情報──旧文明の兵器データを受け取り、代償として記憶の一部を失ってしまった。

ユグドラシルと取引をするたびに記憶を失い、今に至る。

深月と本当の兄妹でないことを知った今、どう接していいか分からず、変に意識してしまう。

 

「それでは朝食にしましょう。早くしないとご飯が冷めてしまいます」

 

深月は俺の様子には気付かず、いつものように言う。

俺は深月の言葉に従い朝食をとるために食堂へと移動する。

朝食を食べ終わってすぐ、深月は先生に呼ばれていると言って、先に出ていった。きっと先ほどの件だろう。

俺も準備を整えて宿舎を出た。

 




一章は、ほとんど説明になってしまいました。
ストーリーもほとんど進まず、楽しみにしていた読者の方には申し訳ないという思いが強いです。
二章は、まだ制作途中ですが、ストーリーがオリジナルの方向に展開していく予定です。
ストーリーが進むように頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
コメントも随時受付ておりますので、どんな些細なことでもいいです!どんどん書き込んで下さい!

それでは、また出会える時まで……

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