バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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 どうも、村雪です!少し間が空きましたが投稿をさせていただきますね!

 さて、今回から強化合宿編に入るのですが、今回の投稿は導入部分的な感じとなりますので短めとなっております!ゆえに楽しめる部分がないかもしれませんが、読んでもらえれば幸いです。
 
それでは、

―――ごゆっくりお読みください。


 


モラルなんざ捨て置けいっ!仁義なき強化合宿編!
手紙―中身、を気にするのは人の性だぜ


 

 

「う~ん……今日もいい天気だぜ」

 

 

 おっすお前ら。自称ならぬ周称『恋に生きる女』で有名な美少女、霧雨魔理沙(きりさめまりさ)ちゃんとは私のことだぜ。

 

・・・ん、なに?周称なんて言葉がないだって?そんなもん見て感じるんだ。恋に理屈は通じないんだから、私にも理屈は通用しないんだぜ。なんせ私は恋の化身だからな!!(※始まって早々、なるほど意味がまったく通じませんね)

 

 

 そんな私がえっちらおっちら歩いているのは、私の通う高校、文月学園までの通学路。毎日家から遠くない距離を歩くわけなんだが、さすがに二年近くも歩いてりゃ~女の私でも慣れて来る。おかげさまで人並みの体力は付いたんだぜ。

 

 

「む、おはようなのじゃ魔理沙」

 

「おっ、秀吉じゃないか。おはようだぜ!」

 

 

 下駄箱で靴を履き替え、さあ階段をあがるかってところで声をかけてきたのは、私と同じFクラスに所属している男子の木下秀吉だ。すげージジ臭い話し方をするのが特徴なんだが、それ以上に際立つのがその顔つき。

 

……う~ん、男子って言った私が言うのもなんだが、完全に女の顔なんだぜ。そこら辺の女子にも負けてないんじゃないか?でも、私の方が可愛さでは勝ってるけどな!

 

 

「む?わしの顔になにかついておるか?」

 

「いやなに。秀吉の顔が相変わらず可愛いなって思っただけだぜ」

 

「じゃ、じゃからわしは男じゃと言うておろうがっ!可愛いなどと言うな!!」

 

 

 そうやって怒る顔もまた可愛いから手のつけようがないんだよな~。吉井たちが秀吉を女扱いする気持ちが分かるぜまったく。

 

 

「ところで、秀吉は明日からの合宿の準備はばっちりか?ついうっかり忘れ物なんてのはつまらないぜ?」

 

「は、話を逸らしおってからに…むろん準備万端なのじゃ。学力向上が目的なのじゃが、明日からが楽しみじゃのう」

 

「だな。あ~早く明日になってほしいぜ!!」

 

 

 強化合宿と言って、四泊五日という長い期間を文月学園が持つ旅館か何かで過ごすという、この学校の中でも有名な行事の一つが明日からあるわけだ。

 

 秀吉の言う通りあくまでこれは学力を高めるための学習イベントなんだが、友人やクラスメイトと一緒に何日も過ごすなんて言われたら、いくら勉強漬けでもテンションが上がるってもんじゃないか!!

 

 

 

 

……し、しし、しかも!そその中には、ア、ア、アイツがいるわけで……!わ、私と同じで楽しみにしてる、よな?よなっ!?

 

 

 

 

「ふむ…アリスも楽しみにしておったぞい?昨日の部活で話したのじゃ」

 

「ふぁっ!?な、なんでそこでアリスが出て来るんだよ!?私何も言ってないぞ!?」

 

 

 こいつエスパーだったのか!?私の心の声をドンピシャにあてやがったぜ!

 

 

「何も言っておらぬが、思い切り顔に出ておるのじゃ。いやはや、アリスが関わるとお主は明久と同じくらい分かりやすいのう」

 

「いっ、言うに事欠いてあの大バカ吉井と一緒だと!?いくら秀吉でもそれだけは聞き逃せねぇ!」

 

 

 少し可笑しそうに言う秀吉だけど、私にとっちゃあなんも面白くない!!あれほどアホで鈍くて罪づくりな天然男子と一緒にされたら私のプライドが傷つくぜ!私はあいつみたいにアホなことなんて一回もしてないんだからよっ!

 

 

 

「ちょっと!誰が大バカ吉井なのさ魔理沙っ!?」

 

「む?」

 

「ん?」

 

 

 すると、実にタイミングよく・・・いや、悪く入って来た元気のいい声が。

 

 振り向くと、話題の主にして、いかにも天然そうな顔つきな男子である吉井明久が、不満一杯の表情で私らのもとに速足で近づいてきやがった。まだ朝早いというのに、相変わらず元気がいいやつだぜ。

 

 

「お、吉井か。おっす」

 

「おっすじゃないよ魔理沙!僕がいないと思って、僕のどこが大バカなんだよ!?いたって普通の男子高校生じゃないか!」

 

「普通の男子高校生は何度も生徒指導室に呼ばれてゲンコツを受けたりはしないぜ」

 

「あれは鉄人がおかしいんだよ!僕はただ、学校で許されてないゲームをバレないようにしながらやったりしてるだけなのに!それに気付く鉄人が悪いんだっ!」

 

「先生に罪を擦り付けたなこいつ」

 

「しかも自分の罪を本当に理解していない分、たちが悪いのじゃ」

 

 

 これを普通だと言い張る吉井はやっぱりアホだと思うんだぜ。

 

・・・いや、別にこいつをバカにしてるわけじゃないんだぞ?ただまあ一番にあがる特徴が『アホ』かなって言う話で。吉井にも良いところがあるってことを私はちゃんとわかってるからな?

 

 

 

「しかし明久、今日は一段と早いのじゃな。いったいどうしたのじゃ?」

 

 

 Fクラス前に到着し、Fクラスのおんぼろドアを開けながら秀吉が吉井にたずねた。そう言えば吉井っていつもチャイムギリギリで教室に入ってきてたな~。だというのに今は時間に余裕をもって登校してきてるけど、まさかこれから雪でも降るんじゃないだろうな?天変地異なんかごめんだぜ。

 

 

「ああ、今朝はなんか早くに目が覚めちゃったんだ」

 

「なるほど、さては明日からの強化合宿で浮かれているのじゃな?」

 

「あはは、そうかもね」

 

「あ~。私もその気持ちが分かるな」

 

 

 私も今朝は少し早くに目が覚めたからな。悔しいがその純真さだけは吉井と一緒みたいなんだぜ。

 

 

「わしもじゃ。皆で泊りがけで行くものじゃから、すごく胸が躍っておるぞい」

 

「だよな~。私も胸が弾んでやがるんだぜ!」

 

「やだなぁ2人とも。胸がって言うほど大きくないくせに」

 

「おう、ちょっくら面貸せや吉井。お前の顔面を見間違えるくらい大きくしてやるぜ」

 

「落ち着くのじゃ魔理沙。きっと明日の合宿をそれだけ楽しみにしておるのじゃろう。じゃからその固く丸めた教科書はかばんにしまってやるのじゃ」

 

 

 1つだけでもこいつと同じって認めた私が憎いんだぜ、まったく。

 

 まあここは心の広い私だから許してやるけど、やっぱり吉井と一緒くたにされるのは金輪際ごめんだ。私はここまでセクハラまがいの言葉を吐いたことがない!せいぜいからかいの言葉だけだ!!(……どっちもどっちですね)

 

 

 

「でも四泊五日なんて、修学旅行みたいでやっぱり楽し――――っ!?」

 

 

「?おい、どした吉井?」

 

 

 言い切る前に突然息をのんだ吉井。その顔はさっきまでと打って変わって、衝撃の色がありありと浮かんでやがる。何かあったのか?

 

 

「ん?どうしたのじゃ明久」

 

 

 

「What’s up, Hideyoshi, Marisa? Everything goes so well… 」

 

 

「異常事態じゃな」

 

「吉井。何があったか聞いてやるんだぜ」

 

「どうしてわかったの!?」

 

 

 逆にそれで気づかれないと思ってたのか・・・私は吉井の将来が少し心配になってきたんだぜ。

 

 

「そりゃ分かるだろ。見れば一発だ」

 

「さ、さすが魔理沙と秀吉…。僕の完璧な演技を一瞬で見破るなんて……」

 

「いや、演劇以前に言語の問題なのじゃが…」

 

「大根役者もいいところだな」

 

 

 良くも悪くも吉井は隠し事が下手だからなー。でもま、正直ってことだからそっちの方が私としては良い気がするけども。

 

 

「え、ええっと…とにかく!大したことじゃないから2人とも、見なかったことにしてくれない?」

 

 

 さすがに吉井もごまかしは不可能だって分かったみたいで、手を合わせながら私たちにそんなお願いをしてきた。え~、そう言われてもな~…

 

 

「そもそも何があったんだ?私はそれが気になって仕方ないんだが」

 

「え…え~~っとね~~~~……」

 

 

 

 私の好奇心溢れる反応に吉井は視線を逸らすのみ。ふむ、そんなに言いたくないことなのか………なおさら知りたくなったぜ。

 

 

「おい吉井~。そういうことは誰かに相談した方が楽になるもんだぜ?だからここはお話大好き魔理沙ちゃんに話してみな。な?」

 

「そ、そんな顔をされて言われても、話したくなるどころかもっと話したくなくなるよっ!!」

 

「確かに、どう良く見ても話を秘密にする顔ではないのう…」

 

 

 心外だぜ。別に私は内容を聞いても言いふらしたりなんかはしない。せいぜいその話で本人をからかったりするだけだ。

 

 

「…む?明久、その手にある封筒はなんじゃ―――」

 

「!!じゃじゃじゃあ頼んだよ2人ともっ!!それじゃっ!」

 

「あ、おい!!」

 

 

 しかしそれは叶わず、脱兎のごとく吉井は教室から走り去っちまった。やれやれ、カバンくらい置いてきゃいいのにどれだけ慌ててるんだか・・・。

 

 

 とまあそれより、だ。

 

 

「秀吉、封筒ってなんだ?」

 

「ああ、明久の手に小さな封筒が握られておったのじゃ。ひょっとするとそれが原因かものう」

 

「ほー。封筒ね~」

 

 

 そんなものはここにくるまで持っていなかったな。たぶん教室に入ってから手に入れたんだろうけど、それがどうしたってんだ?他言するなって言ってたからたぶん人に知られたくないものだろうけど…

 

 

「まあいやな物ではないのじゃろう。明久も少し明るい顔になっておったからの」

 

「へー。分かるもんなんだなそういうの」

 

 

 演劇をやってるみたいだけど、そういうところが鍛えられるものなのか?…いや、ただ秀吉が凄いだけか。だってそれだったら同じ演劇部のあいつも目聡くなるはずだもん。相も変わらず鈍感な友人のままだし……

 

 

 

 

「…ん?待てよ?封筒……中はたぶん手紙……吉井明るい…………って!まさか中身はラブレターかっ!?」

 

 

 

 ザワッ!

 

 

 

『おい…聞いたか今の?』

 

『ああ、確かラブレターって…』

 

『まさか、霧雨か木下がラブレターをもらったって言うのか?』

 

『ああ?ざけんじゃねえ。いったい誰に許可をもらってそんなナメたことやってやがんだ…!』

 

『誰だその男の風上にも置けねえやつは。今すぐおれが返事を暴力で返してやらぁ…!!』

 

『探せっ!その悪魔の手紙を送ったカス野郎に世の中甘くねえと身を持って教えてやるんだ!!』

 

『『うおおおおおおおっ!!』』

 

 

 

「おっといけねえ。このクラスでその言葉はタブーだったんだぜ」

 

「なぜわしが男に告白されたようになるのじゃ。そこはせめて女子じゃろうに…」

 

 

 私もそうだけど、うちのクラスの男子はこういう話にものすごい目がないからなー。もらい主が違うだ性別が違うだと私たちが何を言っても、こうなったら耳を貸す連中じゃないから自然鎮火するまで放っておくのが一番だぜ。

 

 

「しかし、しまったな。今からでも吉井を追いかけて中身を見に行くか」

 

「あれほど知られたがっておらんのじゃから、ここは一つ我慢してやろうぞい。明久もきっと喜ぶのじゃ」

 

「ん~。私は吉井に感謝されるより手紙を見れる方が嬉しいんだけどなー」

 

 

 つってもまあ、秀吉も友人である吉井のことを思って止めてるんだから、今回だけは見逃してやるか。私と秀吉に感謝するんだぜ吉井?

 

 

 

 

「んじゃ、このことは吉井が帰ってきてから聞くとするかね…っと、ん?」

 

 

 パサリと、荷物をロッカーに入れようとした時に何かが私の足元に落ちてきた。ん?なんだ?

 

 

 

 

・シンプルで飾りっ気のない封筒

 

 

「……ん?」

 

 

 封筒?あれ、私こんなもの入れてたっけ?

 

 

「どうしたのじゃ?」

 

「あ、いや。なんか封筒が入っててさ」

 

 

 拾って確認しても両面に名前はナシ。そんな封筒を見て秀吉は目を丸く。

 

 

「む?明久が持っておった封筒と同じじゃな」

 

「へ?そうなのか?」

 

 

 なんで吉井のと同じ封筒が……まさかっ!?

 

 

「あれかっ!?私にもラブレチャーが来たってことだぜ!?」

 

「いや、それはないじゃろ」

 

「な、なんでだよ!?吉井と同じ封筒ってことは中身も同じだってことだろ!?」 

 

「じゃが、その中身がまだ分らんのぞい。それに百歩譲って恋文にしても、明久と同じタイミングで別の人物にも送るというのは、倫理的にどうなのじゃ?」

 

「うっ……ま、まあ、中身を見るか。それで何かはすぐにわかるぜ!」

 

「ま、まあそうじゃが・・・」

 

 

 呆れとも可笑しがってるとも見える秀吉の笑いを横目に、私はびりびりと封筒の口を雑に破る。べっ、別に慌ててるわけじゃないからな!?あまりないことに少しだけ興奮してるだけだ!ラブレターぐらいもらったことがある(と思う)私を振り回そうなんざ百年早いぜ!

 

 

・・・で、でもまあ、私が可愛いからってラブレターで告白してくるとは可愛い奴だぜ。

 どこの誰かも知らないし、それに応えることも出来ないが、お前の気持ちはしかとこの胸に刻み込ませてもらうんぜ!ふふふふふ~ん・・・!

 

 

 

 

「え~っと、どれどれ……(ガサガサ)」

 

 

 

 

 

 

 

『あなたの秘密を握ってます。これをばらされたくなければ、あなたの傍の■性(間違えたのか、黒く塗りつぶされている)にこれ以上近づかないでください。

 

 

 

 

 P.S. 絶対に負けません。  』

 

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

 ふむふむ。これまたシンプルな脅し文だな。

 

 

 

「―――ってなんじゃこりゃぁあああああああっ!!」

 

 

『最悪じゃあーーーーっ!!』

 

 

 

 私とどこかから聞こえる吉井の絶叫が空へと吸い込まれていった。どうやら喜びとは正反対の感情で、この思いの詰まった手紙を胸に刻み込むことになりそうだぜ・・・

 

 

 

 

 

 






 お読みいただきありがとうございます!魔理沙、恋文じゃなくて残念、そしてすまないんだぜ・・・!


 以前から、『この合宿の時に男子と女子の強さに差がありすぎでは?』という質問をされていたのですが、『男子が足りないのならば女子陣から連れてくればいいじゃない!』と村雪は考えまして、魔理沙にも明久と同じ立ち位置になっていただきました!

 なので今回は、もしかしたら美鈴さんよりも魔理沙が活躍する章となるかもしれません!むろん美鈴さん達にも出てもらうのですが、さてさてどうなっていくのやらや・・・

 まだまだ展開を考えてはいないのですが、皆さんが楽しめるような物語を目指していきたいところですね!

 それではまた次回っ!

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