バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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 どうも、村雪です!


 さて、今週二度目の投稿となるのですが・・・今回、勝負の決着がつきますっ!長期戦を期待してた方々、期待に添えずすみません!

 でも、あまり長く続けても読んでいる皆様もそのうち退屈してしまうのではないかととも思い、あまり長くなく、かつ今までの召喚勝負よりも長いであろうこの回の文量で締めさせてもらおうと思います!

 さあ、最後に勝つのはどちらか!?正直、原作の召喚獣の原理を守っているのか自信がないのですが・・・!


――ごゆっくりお読みください。


勝敗―断定、出来ないのが勝負ってもんです。

「せいっ!(シャッ!)」

 

「おっと!(ひょい)甘いよ十六夜さんっ!(ブンッ!)」

 

「変態のあなたに言われると腹が立つわねっ!(ガンッ!)ふっ!(ヒュォンッ!)」

 

「い、今は変態は関係ないと思うけどねえ!(ガキンッ)ていっ!(ガンッ!)」

 

「(ズザザザッ!)捉え方の問題よ、っと!(ギラッ!)」

 

「うわわっ!?(しゃがみ!)」

 

 

 

 攻撃をかわし、かわされ、防ぎ、防がれ、反撃されて、反撃する。今の僕と十六夜さんは、その6パターンを何度も何度も繰り返していた。

 

 くそぉ・・・!思っていたより、十六夜さんの召喚獣の扱いがうまい!!二本のナイフを隙を作らずタイミングよく振ってくるから、木刀一本の僕は、あんまり攻撃も仕掛けられずに防御の頻度が高くなっていくばかりだよ!

 

 

「ちょこまかと・・・!さすがは観察処分者をやっているだけあるわね!(ヒュン!)」

 

「(ヒラリ!)普段は嬉しくない言葉だけど、今ならありがたく思う言葉だねっ!でいっ!(シュッ!)」

 

 

 もう一本のナイフが牙をむく前に、木刀を召喚獣めがけて突く!どうだっ!?

 

 

「(サッ!)ふんっ、私は皮肉のつもりで言ったのよ!」

 

 

 くっ、ダメか!横にそれてかわされた!十六夜さんこそちょこまかとーっ!

 

 

「せいっ!(ビュオ!)」

 

「っとおっ!」

 

 

 すぐさま僕は後ろへジャンプする。じゃないと十六夜さんのナイフ横払いが当たっちゃうからね!

 

 

「くうぅ・・・!十六夜さん!どうしてそんなに召喚獣の操作がうまいの!?半年間観察処分者で召喚獣を操作してた僕と、そんなに大差ないじゃないか!」

 

「知らないわよそんなの。あなたの操作が下手なだけじゃないの?」

 

「初めて召喚獣の扱いでそんなことを言われたーっ!!」

 

 

 召喚獣の扱いに自信を持っていた僕の誇りが思いっきり汚されたよっ!間違いなく十六夜さんが上手なだけだからねそれ!?謙遜のつもりなのかもしれないけど、僕に対しては高慢もはなはだしいよ十六夜さん!なんか十六夜さんらしくて思わず笑いそうだけども!

 

 

「・・・その顔は何かしら。変態な上にマゾだったの、吉井明久?さすがに引くわね」

 

「本っ当に君はズバズバ言う女の子だねっ!」

 

 

 心を傷付けるって意味では召喚獣のナイフよりもずっと鋭いよ!そこらへんは全然お姉さんの美鈴さんと似ていない!

 

 

「あ~もう。十六夜さんがあっさり負けてくれれば簡単だったんだけどなぁ・・・・」

 

「ふざけた戯言ね。なぜ私がわざわざ、変態のあなたにわざと負けてやらないといけないのかしら?」

 

「うん。その変態という言葉がなければ素直に受け取ってたんだけど、そこまで言われると納得いかないのが僕ってやつなのさ」

 

 

 男、吉井明久。ここで一つ、僕がただの変態じゃないことを十六夜さんにわかってもらおうじゃないか。ここで黙って負けたら男が廃るってもんだっ!

 

 

 

「いけ召喚獣!十六夜さんの召喚獣をぎゃふんと言わせるんだよ!」

 

「ふん!やれるもんならやってみなさい吉井ぃ!」

 

 

 僕はまた十六夜さんの召喚獣の頭へと木刀を振り下ろす!ちょっと危ないけれど、ここは思い切って仕掛けるべしだっ!

 

 

 

「でりゃああっ!(グオオッ!)」

 

「あきらめの悪いっ!!」

 

 

 ガキィンッ!

 

 

 右手のナイフにてガードされる攻撃。だけどそれは予想済みっ!

 

 

「お返しよ!(ギラッ!)」

 

「!」

 

 

 まぶしい危険な輝きを放ったナイフが右から迫りくる! 僕よ!ここからが大事だぞおおっ!

 

 

「でええい!」

 

 

 

 僕は召喚獣に、右手だけを木刀から放させ――――迫りくるナイフを持つ召喚獣の左腕をとらえさせるっ!

 

 

 

がしっ!

 

 

「っ」

 

「っしゃあ!」

 

 

 よし、これで左手を封じることは出来たよ十六夜さんっ!

 

 

「なら、力で押すまで・・・っ!(グググ!)」

 

「!あ、あわわ!?」

 

 

 あだだ・・・!十六夜さんの方がまだ点数は高いから徐々にナイフが近づいてくる・・・!!で、でも、その行動が僕にとってはラッキーだよっ!

 

 

 

 

「・・・ぃよいしょっ!(スッ)」

 

 

 右手を放し、木刀に込めてる力をゆるめて召喚獣一匹分横へずらさせる!これはいつぞや火焔猫さんがした方法なんだけど、マネをさせてもらうよ火焔猫さん!いきなり抑えがなくなったら、いくら十六夜さんでも平気じゃないでしょ!?

 

 

「あ・・・っ!?(フラッ)」

 

 

 狙い通り、力の受け場をなくなった十六夜さんの召喚獣は前へとたたらを踏んだ!さあ、今こそ好機ぃっ!

 

 

 背中を向ける十六夜さんの召喚獣めがけ、木刀を思い切り振り下ろすっ!

 

 

「だりゃーっ!」

 

 

 バキイイッ!!

 

 

「アグッ・・・!?」

 

 

 

 

『2―Aクラス 十六夜咲夜  日本史 125点 』

 

 

 

 よおしっ!十六夜さんの点数がだいぶ減った!!もうひと押しっ!

 

 

「――んのっ、やってくれたわねっ!!(シャッ! シュンッ!)」

 

 

 とは言え、まだまだ戦闘は可能。体勢を立て直した十六夜さんの召喚獣が、2本のナイフを構えて僕の召喚獣に攻め来る!

 

 

 

「っと!(ヒュン!)そう簡単にはっ、くらわっ!(ガキィッ!)ないよ!」

 

 

 危ないけれど、点数相応のナイフ攻撃はさっきまでよりずっとゆっくりだ。僕はせわしなく木刀を動かしながら攻撃を妨げる!

 

 よし、これならいける!あとは十六夜さんが隙を生むまで待って――!

 

 

 

「やっ!(シュンッ!)」

 

 

 

 ドスッ!

 

 

「っつ!!?いっだああぁあああっ!!横っ腹に燃え上がるような鋭い痛みがあぁあああーーーっ!?」

 

 

 観察処分者だから召喚獣の受けた感覚が僕にも思い切り伝わってきたいてええええっ!

 

 

 こ、この激痛は間違いなく――――召喚獣の横腹に刺さったナイフ!ま、まさかここで武器であるナイフを一本投げて来るとは!全く予想してなくて防げなかったよ十六夜さん!

 

 

「隙よっ!(ギラリッ!)」

 

「!!」

 

 

 や、やばもう一つのナイフが――!

 

 

 ガシュッ!

 

 

「!あっ、づ、づぅぅうう・・・・!!」

 

 

『2―Fクラス 吉井明久 日本史 105点 』

 

 

 な、なんとか防げたけど、掴んだのが刃のところだからダメージ判定が・・・!そして手の平もやばいくらい痛いいいいい!!

 

 

 

「っ!惜しいわね・・・!」

 

「それはざ、残念だった、ねっっ!!(ブンッ!)」

 

 

 やられっぱなしでいられない!木刀を振り上げ、思い切り接近してきた十六夜さんへぶちかますっ!

 

 

ガシッ!

 

 

「あっ!?」

 

 

『2―Aクラス 十六夜咲夜 日本史 109点』

 

 

「そ、そっちこそ、残念だったわね・・・・!」

 

 

 でもそれは成功せず、木刀の先を握られて防がれたっ!あ、あと一発!また減った十六夜さんの点数的に、あと一回だけでもちゃんと攻撃できれば、いけるっ!

 

 

「いだだだ・・・・っ!!(グググ・・・!)」

 

「・・・くぅ・・!(グググ・・・!)」

 

 

 でも、互いに握った武器は離さず、状況は膠着状態に。獲物はどちらにも動か――

 

 

ググ・・・ッ!

 

 

「!いっ!?」

 

「点数は、私のが上よ・・・!(グググ・・・ッ!)」

 

 

 い、十六夜さんの言う通り、僕のほうが点数が低いから徐々に木刀は押し返され、ナイフが近づいてくる・・・!やばっ、このままじゃ刃の先が届くのは時間の問題だ。何か手を打たないと・・・!?

 

 

「い、いぢぢ・・・っ!」

 

 

 ナ、ナイフの刃の部分を握ってるから掌が痛いっ!とっさだったから仕方ないけど、きちんと腕を掴んでおけば良かったぁ!

 

 

「ここまでのようね・・・・っ!正直、ここまでやられるとは思っていなかったわよ!くやしいけど、そこは認めないといけないわ・・・!」

 

「な、なんのまだまだだよ・・・!!」

 

 

 なんて言ったけど、ナイフは少しづつ近づいてるし、武器は握られて動かせないから状況は最悪だ!

 

 

『2―Fクラス 吉井明久 日本史 92点 』

 

 

 さらに追い打ちをかけたいのか、刃物が手に当たっているから点数がほんの少しずつ下がってやがるよ!畜生っ!十六夜さんは木刀を握ってるからか全然減っていないというのに!僕の木刀も差別なくナイフみたいにあつか――――!!

 

 

 

 

 

・・・ナイフ・・・・・?

 

 

 

「――――あっ」

 

 

 

――――上手くいくか、そもそもの前条件を達成できるかが分からないけど・・・・・1つ、策が――――!

 

 

 

 やられる前に、ここはいちかばちかだっ!

 

 

「っと!」

 

 

パッ

 

 

 僕は上手くいくことを願いながら、左手の木刀から手を離す!

 

 

 

「!?諦めるつもり!?」

 

 

 突然の行動に驚いた顔をした十六夜さんが疑わしそうに尋ねてくる。

 

 

 ふっ、まさか!これも勝利の可能性へと手を伸ばすためさっ!

 

 

 

「・・・ふー・・・っ!」 

 

 

 僕は一瞬だけ、一応相棒である普通の木刀を見る。十六夜さんに握られた木刀よ、君には悪いけど、今必要なのは君じゃない。

 

 

 

 必要なのは―――こっちの武器だっ!!

 

 

 

 

 

「・・・づ・・・っ!」

 

 

 出来るのか分からないけど・・・腹に刺さったままだった十六夜さんのナイフを握らせ――

 

 

 

 

「ぐっ――ッだあああああぁ!(グイイッ!)」

 

 

 

 

――届いてくる痛みを我慢し、一気にお腹から引き抜く!

 

 

 

 

 

「!!?なっ・・・!?」

 

 

 

 

・・・・・・よ、よしっ!!特に問題なくナイフを動かせてる!他の召喚獣の武器もどうやら使えるみたいだ!助かった!こんな行動を取るとは賢い十六夜さんも想像してなかったみたいで、驚愕の顔であっけにとられている!

 

 

 

 十六夜さん!この勝負・・・勝たせてもらうよっ!

 

 

「おりゃああああああーっ!!(シャッ!)」

 

 

「あく・・・・・・っ!?」

 

 

 ナイフと木刀の刃の部分、両手に二つの武器を握った十六夜さんに防ぐ術はない!

 

 

 

 僕は一切の暇を与えず・・・十六夜さんの召喚獣、その胸へと――白く輝く鋭いナイフを突き立てた。

 

 

 

 

ドシュッ!

 

 

 

 

 

『2―Aクラス 十六夜咲夜 日本史 0点』

 

 

 

 

 

「!!?!?!?・・・う、うそ・・・・っ!?」

 

 

「――――ったあああああーっ!!」

 

 

 

 

 やってやったよこん畜生ぉおおおおーっ!人生でなかなか見られないほど、今の僕は達成感に溢れてるぞおおおお!!

 

 

 

 

『!?!?あ、あやっ、あやややーっ!?な、なんということでしょう!ここでまさかの大判狂わしっ!たっ、ただいま!2―Fクラスの吉井明久君が、2―Aクラス、十六夜咲夜さんに勝利を収めましたーーーっ!!』

 

 

 

『う、うそおおお!?』

 

『いやああああ~~!!』

 

『わあああああああ!!』

 

『うおおおお!すげええええっ!!』

 

 

 射命丸先輩の驚きと興奮混じりの実況に、場内は爆音のような悲鳴と歓声に包まれる。よっぽど僕の勝利が信じられないみたいだけど、僕自身も夢じゃないかと思ってるから気にしない!

 

 

 

「明久・・・!テメエうまいことやりやがったなこの野郎!」

 

「うん!僕も自分で驚いてるところだよ雄二!!」

 

 

 そんな喜びをかみしめている僕に、雄二が珍しく喜んだ顔で声を荒げた。っていうことは・・・

 

 

「じゃあ雄二は、負けちゃった感じ?」

 

「ぐっ・・・あ、ああ…見事にやられちまった・・・・!明久、あとは頼むぞ・・・!」

 

 

 真剣な顔で頼んでくる雄二。大事なものが懸かってるからなんだろうけど、それは僕も同じ。だから返事は一つ!

 

 

「任せな雄二!」

 

 

 十六夜さんに勝利。それも見事な成果だけど、まだ試合は終わっていない!

 

 

 

 

「―――さあ!勝負だよ、美鈴さんっ!」

 

 

 

 僕は最後の敵、十六夜さんのパートナーであり、コンビの雄二を打ち破ったクラスメイト――紅美鈴さんと対峙した。さあ、気合いを入れるんだ僕っ!そして最後の勝負を制してやるんだーっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい美鈴・・・!ま、まさかっ、あの変態に遅れを取るとは・・・っ!くやっ、悔しいぃぃぃ・・・!!」

 

「い、いやまあまあ咲夜さん!負けちゃったものは仕方ないですからそう責めずにっ!」

 

 

 吉井君に負けちゃった咲夜さん。悲壮感溢れる顔で頭を下げられては私の方が申し訳なくなりますから!?

 

・・・し、しかし、坂本君との勝負を制して見てみれば・・・咲夜さんが負けるとは・・・・!全く予想だにしていませんでした!吉井君ってそういうところを含めて、全く読めませんね!?

 

 

 

『あややや!ここでよもやの十六夜さんが敗れたことにより、互いにペアーがやられたことになりました!これで残っているのは、2―Fクラス紅美鈴さんと、同じくFクラスの吉井明久君です!さあ、果たして最後に残るのはどちらでしょうかっ!?』

 

 

 4人の中ではクラス、または学力的にも一番だと言っても過言ではない咲夜さんが敗北したことに、大いに会場がざわめきます。気のせいでなければ、射命丸先輩もその空気に当てられて興奮気味な気がします!

 

 

「・・・まあ、私もそうなんですがね!」

 

 

 どんな展開だろうが、お祭りはやはりこうでなければっ!とにかく盛り上がって最後まで上がり続けるのが祭りの鉄則!

 

 

「ごめん、美鈴・・・!あとをお願いするわ・・・!」

 

「お任せを咲夜さん。きっと勝ってみせますとも!」

 

 

 咲夜さんからの言葉も受け、私のやる気は満タンです!さあ!やりましょうか吉井君!

 

 

「いくよ美鈴さん!最後の勝負だっ!」

 

「!上等ですよ!」

 

 

 咲夜さんを負かした吉井君も、気合の入った声で私に勝負の申し出をしてきます。それにさらに盛り上がる会場!おーっし!なんか私もまた気合いが溢れてきましたよ!

 

 

「さあ吉井君、互いに後腐れのない勝負といきましょうかっ!」

 

「ごめん!僕ってやつは負けたら間違いなく不満が残る奴だと思うよ!」

 

「あっははっ!吉井くんが男らしいことを言ってくれると思った私がバカでしたっ!」

 

 

 とは言え・・・あははははっ!吉井君らしくて笑えてきます!通常運転のようで何よりですよっ!

 

 

「おおおおっ!(ダッ!)」

 

 

 ですが、どんな心持ちでいようが今は勝負の真っただ中!私は遠慮なく、吉井君の召喚獣へと自分の召喚獣を突っ込ませます!

 

 

「らあっ!(ゴオッ!)」

 

「うわわっ!?(シャガミッ!)」

 

 

 む、咲夜さんを倒す吉井君には簡単すぎる攻撃でしたか!しゃがんで拳をかわす吉井君の召喚獣は、すぐさま戦闘態勢に入ります!

 

 

「やったな美鈴さん!こうなったらもう容赦しないぞっ!」

 

「はっ!ナメられたものですね!遠慮なくやってみなさいやぁぁああ!!」

 

 

 勝負は始まってるのですから、情けなど無用!見ごたえのある戦いを繰り広げようじゃないですかーっ!!

 

 

「そりゃぁあああっ!(ブオンッ!)」

 

「ふんっ!(サッ!)」

 

 

 ガキンと、私の召喚獣の拳と吉井君の召喚獣の拳が衝突します。拳が武器なので、木刀が当たって点数が減少しないのは助かりますね!

 

 

『2―Fクラス 紅美鈴  日本史 101点』

 

『2―Fクラス 吉井明久 日本史  92点』

 

 

 微妙にですが、私の方が点数は上!・・・とは言え、操作技術の経験値では吉井君の方が圧倒的に勝ってるのであまり意味がありません!これは油断できませんね!

 

 

「よいしょっ!(タンッ)」

 

 

 いったん召喚獣を下がらせ、吉井君の召喚獣が動いてくるのを待ちます。ここは慎重にいくべしですよね!あまり攻めすぎて攻撃されるのはダメですし!

 

 

「む、来ないのならこっちから行くよ!(ドドッ)でえいっ!(ビュンッ!)」

 

 

 しばしの膠着ともいかず、吉井君はすぐさま召喚獣を私の召喚獣へとけしかけてきます!先ほどは縦向きにでしたが、今度はななめ一閃ですかっ!

 

 

「いよっと!(ガギッ!)」

 

 

 無論受けるわけにはいかないので、もう一度拳でガード!

 

 そのまま空いた右手で――!

 

 

「左ストレートォ!(ビュオオッ!!)」

 

「ぅわっ!?」

 

 

 ドスッ!

 

 

 狙うは腹部です!さあどうだっ!?

 

 

 

『2―Fクラス 吉井明久  日本史 80点 』

 

 

「むっ!」

 

 

 どうやら後ろにとんでかわされたみたいですね。ですが点数は減っていますので、当たるは当たりましたよ!点数を減らせればとにかく上出来です!

 

 

 

「この!(ブンッ!)」

 

「っと!(しゃがみ!)」

 

 

 今度は横払いですか!ガードが間に合いませんので、ここはすぐさましゃがみます!

 

 

「――っしょ!右ストレートォッ!(シュッ!)」

 

「っと!そう何回もくらわないよ!(ひらり!)」

 

 

起き上がってからの反撃は当たらず、吉井君は一歩下がって距離を置きました。ふう、さすがにそんなホイホイとは当たりませんか!

 

 

「さすが、召喚獣操作が上手ですね吉井君!」

 

「ふふん、美鈴さん。命が懸かってたら誰でも嫌でもやる気が出るってものだよ!」

 

「ええ!?い、いつこの勝負はそんな殺伐な死合になりましたっけ!?」

 

 

 勝負前にも言ってましたけど、これはあくまでも学園祭の出し物の一環ですよ!?そんな行事を行う学園があってたまりますかっ!

 

 

「美鈴さんには分からないだろうけど、僕の明日はこの勝負に懸かってるんだ!だから、絶対に美鈴さんを打ち負かしてみせるっ!」

 

「!よくわかりませんけど、それならば口じゃなく実際に実現させてみなさい!そう簡単にはいかせませんっ!!」

 

 

 むむ!私だってやるからにはきっちり勝ちたいっ!それほど勝利を断言されちゃうと、意地を張りたくなるのが私という人間ですよーっ!

 

 吉井君の勝利宣言に少しムキになっちゃいながら、私は召喚獣を操作し始めます。まったく、頭に血が上ってるせいで操作が雑になってる気がします!もしもそれが狙いだったら、意外と策士ですね!吉井君!

 

 

 

 

 

 

「!よくわかりませんけど、それならば口じゃなく実際に実現させてみなさい!そう簡単にはいかせませんっ!!」

 

 

 

 あ、やばい。美鈴さんの雰囲気が変わった。僕はもしかしたら、美鈴さんの尻尾か何かを踏んづけたのかもしれない。

 

 

「おおおおおっりゃあ!!(グオオオオッ!!)」

 

「うわっと!?(スッ!)」

 

 

 勢いよく駆けてきた美鈴さんの召喚獣が、右腕を使ったラリアットを狙ってきた!くそっ!なんて技を使ってくれるんだ!昨日その技を繰り広げた八雲藍先生を思い出しちゃったよ!

 

 

「くのっ!でい!」

 

 

 それでも、横を過ぎた美鈴さんの召喚獣は背中を見せて隙だらけだったので、一歩遅れながら僕は、そこへ木刀を振り下ろす!

 

 

バキイッ!!

 

 

「あいたっ!?」

 

 

『2―Fクラス 紅美鈴 日本史 39点』

 

 

!!よおし当たった!しかもかなり点数も減らせたぞっ!この調子だよ僕!

 

 

「うあちゃぁ・・・っ!や、やってくれましたねぇ!」

 

「む!」

 

 

 再び手を構える美鈴さんの召喚獣。攻撃をしてくるみたいだけど、点数が僕より下になったから怖くはないっ!

 

 

「ていっ!(シュッ!)」

 

「よっ!(サッ)」

 

 

 やはり動きはさっきまでよりも遅く、迫ってくる拳も問題なく回避でき―

 

 

 

ガツンッ!(召喚獣の足のすねを蹴られた音)

 

 

「いだだっ!?」

 

 

 あ、足の攻撃だって!?そっちは予想してなかった―――――

 

 

「せいやあああああっ!!」

 

 

 バギャアッ!

 

 

「げふうっ!?」

 

 

 その隙を突かれて顔面にもて、いってえええええっ!!一瞬目の前が真っ白になりかけたああああ!!これ顔面がめり込んだんじゃないのおおおお!?

 

 

 

『2―Fクラス 吉井明久  日本史 40点 』

 

 

 ち、ちくしょう!せっかくかけ離れてたのに、また点数差が埋まっちゃったじゃないか!僕の天下はたった数秒だけかよっ!

 

 

「おおおおりゃあっ!!(ビュオオオ!)」

 

「!?」

 

 

 っていつの間にか拳が目の前に―っ!

 

 

 

「だああっ!?」

 

 

 バシイッ!

 

 

 あ、危ない危ないっ!!当たる寸前でガード成功できてなかったら、今頃顔面強打につきおねんねしてたところだよ!

 

 

「むっ、惜しかったです・・・!」

 

「お、おかげで木刀が向こうに行っちゃったけどね!」

 

 

 とっさの反応だったから、思わず手の木刀をすっとばしてしまった!こ、これって言うなら丸腰状態じゃない!?僕大ピンチっ!?

 

 

「それは災難ですね!ぬうううう~っ!!」

 

「そ、その反応はむしろ喜んでるね!?うわわわっ!?」

 

 

 絶好のチャンスと言わんばかりに攻撃の手を強める美鈴さん。ぼ、木刀までは手が届かないし、取りに行こうにも美鈴さんの召喚獣のせいで動かせないっ!こうなったら、僕も素手で戦うまでだっ!

 

 

「ぐっ、うおおおお~・・・!!」

 

「!むむ・・・っ!!」

 

 

 

『あやや!これはクライマックスが近そうか!?紅さんと吉井君、拳の競り合いを始めました!2人の点数はほぼ同じ!どっちの押しが勝つでしょうか!?』

 

 

 

『頑張って美鈴さ~~ん!!』

 

『頑張れ美鈴せんぱ~いっ!』

 

『メイリンやってやるのよさーっ!』

 

『わ~!!頑張れメイリ~ン!』

 

『メッ、美鈴頑張りなさ~い!』

 

『おら~!どっちも頑張るんだぜー!!』

 

『バカなお兄ちゃん、頑張れ~~っ!』

 

『アキ~!ファイトよーっ!!』

 

『が、頑張ってください吉井君っ!』

 

 

 

 射命丸先輩の実況に、僕たちの名前を叫ぶ観客の皆。中には知っている声の人もいて、美鈴さんだけじゃなく、僕にもエールをくれている!とうとう僕に女の子からのモテ期がきたのかなっ!(※ 純粋に応援しているだけです。)

 

 

「ぬ、ぬぐぐぐ~・・・っ!」

 

「・・・む、むむむむ・・・っ!?」

 

 

 

 と・・・ともかくっ!そんな黄色い(※違いますが)声援には応えたくなるのが男だよねぇええええ!

 

 

「――どおぉおっせいいいいいっ!!」

 

 

 バチインッ!!

 

 

「っ!?あ、わっとぉ!?」

 

 

 よしっ!僕の召喚獣が美鈴さんの召喚獣を押し返した!今度はこっちが隙を突く番だっ!

 

 

「おおりゃあーっ!」

 

「あ、うわわっと!?」

 

 

 バシッ!

 

 

「――あ、あっぶないですね全くっ!」

 

「!でも、攻守逆転だよ美鈴さん!」

 

 

 手のひらに受け止められたけど、さっきとは反対のこの状況。みすみす好機を逃がすわけにはいかない!僕は迷うことなく、掴まれた拳に力を籠める!

 

 

 

「うおおおりゃあああっ!!」

 

「だ、あだだだだ・・・っ!?」

 

 

 少しづつ美鈴さんの手が下がり、僕の拳が彼女へと近づいていく!あ、あと、少しいぃぃ・・・!!

 

 

 けど、

 

 

「・・・くうぅっ!ぐぬぬぬぬ・・・!わ、私にも、意地ってものがありますよぉおお!」

 

「う、あぐぐ・・・っ!」

 

 

 抵抗する美鈴さんの召喚獣の力が強くなって、押し返してきた、いたたた・・・っ!!?僕は負けずに召喚獣の拳の力をこめさせる!こ、ここまで来てま、負けてたまるものかぁあああ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぐぐぐぐ・・・っ!?」

 

 

 わっ、私!吉井君がこれほど手強いとは踏んでいませんでしたっ!最初に手痛い一撃を受けた私の失態とも言えるかもしれないのですが、それでもこんな展開になろうとは・・・っ!やってしまいましたよこんにゃろー!

 

 なんとか吉井君の召喚獣の攻撃を押し返し、わずかばかりの余裕が生まれた私は心の中で愚痴を零します!

 

 

「メ、美鈴さんに事情があるのは良く分かったよ!だから必死になって僕に勝とうとしてることも分かる!」

 

「そ、そうですかっ!」

 

 

 ま、まあそこまで大層な理由ではないんですがね!ただ勝ちたいから勝つ!勝負前に咲夜さんに頼まれたというのもありますが、試合が始まったら自分の感情に従うのみです!

 

 

「でもっ!それは君だけじゃなくて、僕の背中にもでっかいダイナマイトがのっかってるからおあいこだっ!」

 

「いや、だから私はデンジャラスがどうとかは全くありませんよっ!!?」

 

 

 そんなものを背負ってたら、この時だって全くしゃべることなくド真剣に勝負を繰り広げてますよっ!!

 

 

「・・・ぬぐぐぐぐ・・・っ!!」

 

「お、おおおぉ・・とおぉ…っ!?」

 

 

 が、そんな私と違って、吉井君は並々ならぬ覚悟を持ち合わせているようでして――

 

 

 

 

 

「―――だあああっっっしゃあああっっ!!」

 

 

「あっ――」

 

 

 バッギイイインッ!!

 

 

――私の召喚獣の手を押し切った一撃は、そんな吉井君の感情がまるまる込められたように重かった気がします。

 

 

 

 

『2―Fクラス 紅美鈴 日本史 0点 』

 

 

 

 

「・・・あ、あやあやややーっ!?なんとなんとっ!十六夜咲夜さんに続き、決して弱くない紅美鈴さんを制したのは吉井明久君っ!!よって、今年の清涼祭に行われた召喚大会の覇者は!ダークホース、吉井明久君と坂本雄二君ペアーでしたああああ!!皆さん、盛大な拍手で彼らを称えてあげてください~~~~~!」

 

 

 召喚大会決勝戦。吉井君が私の召喚獣を倒しその結末に大興奮した観客の声にかぶせ、射命丸先輩が高々と勝者を宣言することで、その幕は下ろされました。

 

 

 いや~・・・やられてしまいました!ですが、決して悪い勝負ではなかったので、まあ良しということにしておきましょう!賞品はダメでしたが、満足感は手に入りましたしね!

 

 

 

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます!

 というわけで、大一番の召喚大会決勝戦!明久雄二の悪童コンビに勝利をしていただきましたーっ!美鈴さん咲夜さんペアーの勝利を想像していた方、申し訳ありませんでしたっ!

 理由につきましては、非常に適当なのかもしれませんが・・・やはり主人公だからと言って必ず勝つとは限らない!負けを潔く認めるのも主人公!と思いまして、本来の主人公に勝ってもらおうということに決めさせていただきました。

 それに加え、明久たちが負けると一部の女性陣が奴らをあの世へと送りかねる恐れがありましたので、今回は明久たちに勝利をとっていただきました!


 今回はおそらく色々と思うことが出来るのかと思うのですが、村雪がこうしたかったゆえ、どうかお許しください~!


 ですが、感想や気なること、字のマチガイなんかがございましたら気軽に送ってください!遅くなるかもしれませんが、必ず返信させてもらいますゆえ!


 それではまた次回っ!ひょっとしたら続けて火曜日に投稿するかもしれませんが、いずれにせよ、また来週お会いしましょう!!



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