バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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どうも、村雪です!

 前回までで、準決勝戦の一回戦が終わっていたので、準決勝二回戦もあると思われた方がいるかと思いますが……すいませんっ!どうしてもほとんどが原作と同じ流れになってしまいますので、省略させてもらいます!

 一応最初の文で大まかな流れが分かると思うのですが、以前も似たようなことがあったのにすみません!どうかお許しをおお!


 さて、今回で学園祭初日が終わります!おそらく、後の展開が多くの方に予想されていると思いますが、続けて読んでもらえることを願って!


―――ごゆっくりお読みください。

 


事情―解決、すれば一安心ですね~。

「明久ぁぁぁあ!!てめえなんてことをしやがったぁぁっ!」

 

「なにって雄二、ただ霧島さんに雄二の身柄を好きにしていいって言う条件で僕たちに勝利を譲ってもらっただけじゃんか」

 

「どこが〝だけ〟だっ!俺の人生を転落させる一言だろうが!」

 

「なんだよその言い方!雄二だって文句を言ってなかったでしょ!?」

 

「お前に声を封じられて何も言えなかったんだよボケ!あれか!?博麗の時の仕返しのつもりか!?」

 

「その通りだよこの野郎っ!商品券に加えて二千円の散財をしなくちゃいけない僕の痛みを味わえ!」

 

「たかが二千円で俺の人生を破滅って割に合わなさすぎだろうがぁぁぁあっ!」

 

 

 ええい!ああ言えばこう言う!男なら腹をくくるんだよ雄二っ!

 

 

 召喚大会準決勝。決勝戦へと進むための大事な勝負で僕たちが戦うことになったのは、2年Aクラスのトップである霧島翔子さんと、秀吉の双子のお姉さんにあたる木下優子さん。

 

 そんな手ごわい相手と勝負をすることになったんだけど、当然普通に勝負をするのじゃなくて、卑怯な作戦を雄二は企んでいたんだけど、その雄二の策あっけなく失敗。絶体絶命に陥りかけたけれど、そこで僕の冴えわたる頭がひらめいたのさ!

 

 

――雄二をダシにすれば、僕たち勝てるんじゃない?ってね!

 

 

さっそく霧島さんに〝雄二を好きにしていいから、勝たせてもらえないかな?〟って言ってみたら・・・びっくりするぐらい簡単に、霧島さんはOKを出しました。そんな一途なところ、僕は応援するよ霧島さん!

 

 それで取引成立…と思いきや、雄二が大慌てで取引を中止させようとしてきたので頸動脈をついて黙らせることによって、取引が成立。木下さんも少し不満そうだったけど、霧島さんの迫力に根負けて、僕たちは勝利を手にしたのさ!その時の周囲からの冷たい目が痛かったけれど、勝てたんだから気にしない!

 

 

 そして今、僕たちはFクラスに戻りながらさっきまでの会話を繰り広げていた。

 

 

「いいじゃないか別にっ!おかげであと一回勝てば僕たちの勝利なんだからさ!」

 

「俺にとっては本末転倒なんだよバカ野郎!」

 

 

 これだけ言っても雄二は怒鳴ってばかり。全く素直じゃない男だなあ。

 

 

「・・・・まあいい。もう現実は現実で怒鳴っても変わらん。今は喫茶店のことだけを考えてやる」

 

「そうだよ雄二。霧島さんとのことは遅かれ早かれなんだから、今は喫茶店のことだけを考えよう!」

 

「本当に腹が立つなてめえっ!絶対この件については後悔させてやるからなっ!」

 

 

 そうやって雄二がうるさく怒鳴ると同時に、僕達はFラス教室前へと戻ってきた。雄二の言う通り、召喚大会の決勝戦は明日になるから、今は喫茶店で頑張るときに違いない。

 

 女子の皆やムッツリーニ達厨房班のおかげで、中華喫茶『ヨーロピアン』繁盛しているから、僕たちホール班もしっかり頑張らないと申し訳ないものね!

 

 

 がらがらっ 

 

 

 

「・・・・・・い、いらっ、いらっしゃいませ・・・」

 

 

「あれ?」

 

「ん?」

 

 

 ――そう意気込んでFクラスに入った僕たちを待っていたのは、全く想像していなかった光景だった。

 

 

「・・・あ。あ、あんた達か・・・」

 

「あ、ご、ごめんね?僕と雄二で」

 

 

 謝ることもない気もするんだけど、頑張って挨拶をしたのに、それが僕たちのせいで空振りになっちゃったら謝りたくなるもの。それが彼女だったらなおさらだ。

 

 雄二も同意見みたいで、謝りながらも僕の気になったことを聞いてくれた。

 

 

「おお、すまないな藤原。だが、どうして藤原がウェイターの恰好をしてホールの仕事をやっているんだ?」

 

「・・・・・・ふ、不本意でだよ・・・・・」

 

 

 白髪の少女、シャイな藤原妹紅さんは、しかめっ面で雄二の言葉に答えてから視線を落とした。

 

 黒い蝶ネクタイに白いカッターシャツ。青色の長ズボンをはいて男子の恰好をする藤原さんだけど、全くその可愛さが衰えていない。むしろ、ボーイッシュな恰好が、さらに彼女の魅力をひきたててるんじゃないかな!?

 

 

「・・・メ、美鈴から、伝言・・・」

 

「ん?紅から?」

 

 

 あれ?伝言ってことは、美鈴さんは今ここにいないってこと?そう言えばどこにも――

 

 

「お待たせしました!これがゴマ団子だよっ!」

 

「おお、ありがとうお嬢さん。元気いっぱいで、見ていて明るくなるよ」

 

「えへへ、ありがとー!」

 

 

「こ、こちらご注文のヤ、飲茶よ!受け取りなさい!」

 

「うわあ~!可愛い~っ!!ありがとう、よくできたね!」

 

「う、う~!こっ、子供扱いするなぁ!怒るわよっ!?」

 

『きゃあああ!!お持ち帰りしたい~~♡』

 

 

 いないかわりに、美鈴さん達の妹である青い髪の子と金髪の子が、お客さんの間を行き来していた。誰もが和んだ顔や興奮した顔になって、二人の行動を見守っている。かく言う僕も思わずほっこりしている気がするね。

 

 

「あれは・・・紅の妹たちじゃないか?なんであいつらまでホールをしてるんだ?」

 

「・・・あ、その・・・あ、あいつらがやりたいって言うから・・・・だ、ダメか・・・?」

 

「ああいや、それは全然いいんだがな」

 

 

 さっきも葉月ちゃんがやっていたし、彼女たちがダメだって言うことなんかない。お客さんも喜んでいるし、こっちからお願いしたいぐらいだ。だから安心していいよ妹紅さん!

 

 

「で、紅の伝言ってのはなんなんだ?」

 

 

 

「あ、ああ。・・・さらわれた奴を戻しに・・・カラオケの店に行く・・・って」

 

 

「あ?」

 

「へ?」

 

 

 へ?さらわれた?

 

 

「さ・・・さらわれたって、どういうこと?」

 

「…………そのままの意味、だけど・・・・」

 

「・・・誰がさらわれたんだ?」

 

「・・・私と、美鈴以外の女・・・」

 

「ええ!?ひ、姫路さん達がっ!?」

 

 

 だ、誰がそんなことをっ!?営業妨害もそうだけど、なんでそんなことが起こり続けるの!?

 

 

「明久落ち着け。・・・藤原。そのカラオケ店ってのは、学校近くのコンビニが正面にある店でいいのか?」

 

「・・・そう、だと思う。変態が・・・近いって言ってたし・・・」

 

「ムッツリーニも一緒か・・・しかし、誘拐とはな・・・」

 

 

 僕と違って冷静な雄二が、腕を組んで何かを考えだした。変態と聞いてムッツリーニの名が出てきたのは、ひとえにムッツリーニの変態力の恩恵だと言えよう。

 

 

「よし明久。今から一応加勢に行くか」

 

「!当然だよ!急いでいかなくちゃ!」

 

 

 雄二の言葉に、僕は二もなくうなずく。姫路さん達をさらったやつを絶対ぶん殴ってやるぞ!

 

 

 

「じゃあ藤原、俺たちも行ってくるから頼んだ」

 

「・・・早く、連れ戻ってこいよ・・・・」

 

 

 ぶっきらぼうだけど、皆の身を案じた藤原さんの言葉をしっかり受け止め、僕らはすぐに教室を出た。待っててね姫路さん達!そして首を洗ってやがれよバカ野郎ども達めっ!

 

 

 

「・・・まあ、俺の予想では蛇足に終わりそうだけどな」

 

「?どういうことさ雄二?」

 

 

 雄二が良く分からないことを言ったので尋ねる。だそくって、確か無駄なことをするってことだっけ?何が無駄なことなんだろう?

 

 

「・・・そのままの意味さ」

 

 

 雄二は、思いきりひきつった笑顔になって答えた。

 

 

 

「・・・あの紅に殴りこまれたら、俺の経験上、相手はなす術がないだろうと思ってな」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 否定せずに、思わず納得してしまった僕はひどい男となっちゃうのだろうか。

 

 

 

 

 

 

――でも、そんな考えを持っていたのも現場に到着するまで。神様は僕を見放さなかったようだで・・・・・・

 

 

 

 

 

「「ひぃぃいいいいっ!!」」

 

「も、もももう許してくれぇぇぇえええ!!」

 

「かあちゃあああああんっ!!」

 

 

「おい待てごらぁ!なに逃げてやがる!ああ!?」

 

「ちょ、待て待て待て美鈴!もうこいつら体全体がボロボロで怯えきってやがるからそろそろ許してやれって!!」

 

「いいえ!こんなレミィ達をさらおうなんざ考える奴にはまだまだぬるいです魔理沙っ!だから前から離れなさいっ!」

 

「わ、私たちのことを思ってじゃないのかよ畜生っ!」

 

「さああんたら歯ぁくいしばりなさい!これで一発ずつ殴ってやります!」

 

 

 

「ひいっ!メ、メメ美鈴さん!?い、今手に取ったガラスの灰皿を何に使う気ですかぁ!」

 

「瑞希さん!これは正当な理由があっての行動です!だから問題ありません!だから腰から手を放してくださいっ!」

 

「ど、どう見ても過剰攻撃すぎますっ!お願いしますからどうかやめてあげてくださいぃぃぃ!!」

 

 

 

「お、落ち着くんじゃ紅!今のお主はもはや悪以外の何にも見えぬっ!」

 

「レミィ達の安全を確保できるのなら悪役上等です秀吉君!ですから私の手を放してください!」

 

「そ、そういうわけにもいかんじゃろう!ム、ムッツリーニ!倒れてないでお主も手伝わんかっ!なぜ紅に触っただけで鼻血がそれだけ出るんじゃ!?」

 

「・・・思い出し発作だ・・・!(ドクドク)」

 

「何を思い出したのか、あとではっきり吐かせてやるのじゃ!」

 

 

 

「ふ、ふえええ~~ん!ち、力持ちのお姉ちゃん怖いです~~~っ!!」

 

「は、葉月泣かないで!美鈴は葉月を怒ってるんじゃないから!ね!?」

 

「はづき!そんなにめそめそしてたらアタイみたいな最強にはなれないわよっ!だから泣くんじゃないのよさ!」

 

「葉月をはげましてくれるのはありがとチルノ!でもその言い方は出来たらやめて!ウチは葉月に、普通の子になってほしいのよ!」

 

「なにぃ!?みなみあんた、はづきにアタイみたいになってほしくないっていうの!?」

 

「ごめん!絶対なってほしくないわね!」

 

「な、なんですってーっ!?」

 

 

 

「ええい!三人共!!早く離せってのですよぉぉぉおお!!」

 

「ぜ、絶対離せるかぁぁぁ!!」

「絶対離しませんんんんっ!!」

「離すか大バカ者ぉぉぉおおっ!!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・雄二。美鈴さんって・・・怖いね」

 

「・・・激しく同意しよう。明久」

 

 

 なぜか誘拐犯らしき男たちが暴行の被害者みたいになっていて、誘拐された姫路さん達が暴行を加えようとする美鈴さんを必死に抑えていた。美鈴さんの手には光り輝く灰皿が握られていて、少し乱暴に叫びながらそれを振りかぶろうとしているその姿は、誘拐犯よりもよっぽどチンピラに見えた。

 

 

・・・とにかく、少し出遅れたようである僕らにできることはただ一つ。

 

 

「雄二、美鈴さんを止めようか?」

 

「だな。今の紅は、誘拐よりもひどいことをしでかしそうだ」

 

 

 ピンチを救ったであろう美鈴さんが、恐ろしい筋金入りのチンピラになってほしくない。僕たちは珍しく意見を合致させて、三人のもとへ手助けに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったくもうっ。ひどいですよ皆さん。なにも床に押し付けてまで止めることもなかったじゃないですか!」

 

「俺だって紅があんなに反発しなかったらあそこまでしなかったよ!もう少し手加減ってものをしやがれ!」

 

「ちゃ、ちゃんとしてましたよ!灰皿で一発決めたら、キレイさっぱりけじめをつけようとしてたんですよ!?」

 

「それを世間ではやりすぎだと言うんだ!別に誘拐犯をかばうわけじゃないが、あの4人、図体に合わず本気で泣いてたぞ!?」

 

「まあまあ雄二。でもあいつらは許されないことをしたんだから、それぐらいの罰は当然だと思うよ?」

 

「おっ、分かってくれますね吉井君!そうですよ!あの4人、レミィたちもさらおうって言ってたんですよ?そんなバカ野郎たちに慈悲は無用です!」

 

「未遂の事件であんなに怒っていたのかお前は!?」

 

「ええっ!?ひ、姫路さん達がさらわれから怒ったんじゃないの美鈴さん!?」

 

「い、いえいえそんなことありませんよ!?無論瑞希さん達がさらわれたのも理由に入ってますとも!3割ぐらい!」

 

「「こいつ(この人)、シスコンだーっ!」」

 

「ちっ、ちちちちっちげえしっ!?私シスコンじゃねえーしっ!」

 

 

 へ、変なことを言わないでください!妹に危機が迫ってたら誰だって防ぐに決まってるでしょうが!ただ妹が好き好きでたまらないシスコンとは、似て非なるものです!

 

 

「・・・ん。そろそろ来る時間だな」

 

「ふ~・・・え?誰がですか?」

 

 

 いま私たちがいるのはFクラスの教室。カラオケボックスでの誘拐騒動も終わり(私としてはもう少し怒りたかったんですけど、とりあえず形状は解決しました。)時間はすでに放課後で、いるのは私と坂本君と吉井君の3人だけです。なんでも私に話があるとかで、私は呼び止められたのですが・・・なんでしょう?

 

 そう気になりながら、私が先ほど怒って乾いた喉をお茶で潤していたところで、坂本君がつぶやいたのです。

 

 

「ババアだ」

 

「バ、ババア?」

 

「え?学園長がここに来るの?」

 

「ババアって学園長のことなんですか!?」

 

 

 な、なんて呼び方をされてるんですか!もう少し丁寧な呼び方をしなくちゃいけませんよっ!

 

 

「え、でも、どうして学園長が来られるんですか?」

 

「俺が呼んでおいた。さっき廊下で会った時に『話を聞かせろ』ってな」

 

「話?」

 

「ダメだよ雄二。いやなババアだけど、一応目上の人なんだから用があるなら僕たちが行かないと」

 

 

 吉井君。そこに余計な呼称がなければとてもいい事を言っていましたのに・・・

 

 

 

「用も何も・・・この一連の妨害はあのババァに原因があるはずだからな。事情を説明させないと気が済まん」

 

「や、ですからもう少し呼び方を・・・・・・・・・今なんて言いました?」

 

「だから、あのババァ、学園長が間違いなく今日起きたトラブルの原因だ」

 

「へ!?」

 

「ええぇぇっ!?あ、あのババァ、何か企んでやがったのかっ!」

 

 

 そ、それってつまり、学園長が教頭の竹原を操ってたということですか!?そういえばうやむやになっていましたけど、竹原せんせーの悪事について何も言ってませんでした!学園長もグルなんだったら、他の先生にこのことを告白しないと!

 

 

「やれやれ。わざわざ来てやったのに、ずいぶんとご挨拶だねえ、ガキどもが」

 

「あっ!」

 

「来たか、ババア」

 

「出たな!諸悪の根源め!」

 

 

 ガラガラと扉を開けて入ってきたのは、長い白髪の女性。その風貌に加え、教育者にしては乱雑な話し方から、文月学園の長の藤堂カオルさんに間違いないでしょう。

 

 

「おやおや、アタシが黒幕扱いかい?」

 

「黒幕ではないにしても、俺たちに何かを隠していたのは間違いないはずだ。じゃないとただの出し物で営業妨害が出るとは思えんし、何より、クラスの女子たちがさらわれるなんて事態、どう考えてもおかしい。話は聞かせてくれるんだろうな?」

 

「・・・その前に1つ、確認したいことがあるんだよ」

 

「あ?」

 

 

 坂本君の有無を言わせぬ問い詰めに、学園長は一つ息をはいてから・・・わ、私の方を見てきました?

 

 

「えーと。なんでしょう?」

 

「赤い長髪で、背の高い女子・・・・あんたが紅美鈴で間違いないかい?」

 

「は、はあ。あってますよ?」

 

 

「・・・・・・・感謝するよ。そして、すまなかったね」

 

「え?」

 

 

 そう言って学園長は頭を下げ、ってちょ、ちょっと!?

 

 

「や、やめてくださいよ!?どうして突然頭を下げるんですか!?」

 

「どうしてもこうしても、このガキどもの言う通り、アタシのせいで誘拐なんてことが起きたんだ。それをアンタがうまく納めてくれたそうじゃないか。それにアンタ自身にも手は向けられたそうだし、感謝と謝罪ぐらいするさね」

 

「そ、そんな!私が勝手にやっただけなんですから別にいいですって!その謝罪は他の瑞希さん達にしてあげてください!」

 

 

 学園長なんて偉い人に頭を下げられるなんて、居心地が悪すぎますよ!それだったら普通に言葉だけでよかったのに、意外と学園長は礼儀を重んじる方だったんですね!?

 

 

「やれやれ、謙虚な娘だねえ。あんた達クソボウズ共にも、こんな謙虚さを持たせてやりたいよ」

 

「ふん、余計な世話だ」

 

「なんだとババア!僕はこんなにも謙虚に穏便に話を聞いてやろうとしてるのに、何て言い草だ!」

 

「その態度が謙虚さからかけ離れてるって言ってんだよ、バカジャリが」

 

 

 学園長はそんな悪態をついてから、ようやく頭をあげてくれました。ふ~、思わず緊張してしまいましたよ~。

 

 

「さて。侘びと謝罪をも終わったし、話すとしようかい。あまり話したくないことだが、仕方ないね」

 

 

 そして、学園長さんは話し始めました。

 

 

「アタシの目的は、如月(きさらぎ)ハイランドのペアチケットなんかじゃないのさ」

 

「へ?」

 

 

 すいません。説明の冒頭から話が分かりませんですよ?

 

 

「ペアチケットじゃない!?どういうことですか!?」

 

「アタシにとっちゃあ企業の企みなんかどうでもいいんだよ。アタシの目的は、別の優勝賞品の方さ」

 

 

 ん?優勝賞品って、召喚大会のでしょうか?

 

 

「別のって言うと・・・商品券と、『白金の腕輪』とやらか」

 

「ああ。あの特殊能力がつくとかなんとかってやつ?」

 

「あー。そういえば、そんなのも書いてありましたっけ」

 

 

 優勝賞品一覧の中で見ましたね。なんでも一つは点数を半分こにして召喚獣を二対同時に出せる機能で、もう一つは、立ち合いの先生がいなくても使用者が立会人になって召喚用のフィールドが出せる機能、だそうです。

 

 

 

「その『白金の腕輪』を、あんたらに勝ち取ってほしかったのさ」

 

 

「・・・え~~と、要するに吉井君達は、優勝して賞品を手に入れるよう頼まれたってことでしょうか?」

 

 

「ああ。だいたいそんな感じだ。それと引き換えに教室の補修を許すってな」

 

 

「そ、そうだったのですか~」

 

 

 だったら、もしも吉井君達が準決勝に勝っていて明日勝負になれば、負けた方が良いんでしょうか?困りましたねぇ・・・

 

 

「じゃあ、どうして吉井君達にその腕輪を手に入れてもらいたかったんですか?」

 

「・・・・欠陥があったんだよ」

 

「欠陥、ですか」

 

「恥ずかしい話だが、点数が一定水準を超えると暴走が起きちまうんだよ」

 

 

 学園長が苦々しい顔をしながら説明をしてくれました。一定水準ってことは・・・平均点を超えたらダメ、ってこと?

 

 

「だからアンタ達みたいな『優勝の可能性を持つ低得点者』ってのが一番都合が良かったってわけさ」

 

「・・・そ、そ、そうですか」 

 

「なるほどな。得点の高い奴が使えなかったってわけか」

 

 

 坂本君と私は学園長の言い分に苦笑します。本当に学園長は歯に衣着せない言い方をされますねえ。そんなところが逆に親しみを感じますよ!

 

 

「雄二、僕たちは褒められてるってことでいいのかな?」

 

「いや、お前らはバカだって言われてるんだ」

 

「なんだとババァ!」

 

「それぐらい自分で気づけっ!」

 

「ど、どうどう吉井君。決して侮辱してるわけではありませんよっ!」

 

 

 しかし吉井君とは仲が深まったこと間違いなしです。私に押さえてられている吉井君に目をやることなく、坂本君は学園長を見ます。

 

 

「にしても・・・そうか。そんな学園の醜聞をよしとするヤツなんて、首謀者はうちに生徒を取られた他校の経営者か?」

 

「その通り。一連の手引きは教頭の竹原によるものだよ」

 

「あ!そ、そうですよ学園長!さっき保健室に行ってもらった私を誘拐しようとした男子もそう言ってました!」

 

 

 危うくレミィ達にも魔の手は伸びようとしていたんです!ここはひとつしっかり対応をしてもらわないと黙ってられませんよ!

 

 

「ああ知ってるよ。だからこそ、あんたには感謝してるのさ、紅美鈴」

 

「へ?」

 

 

 そんな慌て気味な私に、学園長は変わることなく雑な言葉で口を開きました。

 

 

「八意先生がその男子共に話を聞いてね。それをもとに竹原の教頭室を調べまわったのさ。疑いを晴らすっていう名目で、隅から隅までね」

 

 

 

 

 

 

『せ、先生方っ!これはプライバシーの侵害だ!だから今すぐ――』

 

『(ガシッ)まあお待ちください、竹原教頭。これは竹原教頭の無実を潔白するための調査です。一つ協力されてください』

 

『う・・・か、上白沢先生・・・っ!』

 

『それとも、我々に見られてはまずいものがあるのですか?先に言ってもらえたら助かるのですが・・・』

 

 

『・・・!!い、いえ。そんなものはありませんよ?ただ、あまりいい気分はしないものでつい―』

 

 

『藍、どう?』

 

『・・・はい、姉さん。文月学園の評判を下げ、その見返りとして自分をその学校の教員として雇ってもらうというメール履歴がありました』

 

『ほう?』

 

『へえ・・・?それはそれは・・・』

 

『・・・な・・・!な、なんでそれが・・・!?』

 

『他にも運営資金にはない出費の内容やら、八意先生の言っていた誘拐事件の、男子に送ったと見られるメールもありますね。これはまた・・・』

 

 

『・・・・・っ!!?』

 

 

『・・・・竹原教頭。どうやらあなたには、どうしようもなく失望させられたみたいだ。己の利益のために、自分は口だけで子供に犯罪行為を促し、何の罪もない子供たちを誘拐するなど・・・私は今すぐ、あなたの脳天をかち割ってやりたいぐらいだな・・・っ』

 

『ヒ、ひい!ヒイイイッ!?』

 

『待ちなさい慧音先生。気持ちは分かりますが抑えて。あなたを思ってくれている生徒たちはきっと、先生がそのようなことをされるのを望んではいません』

 

『・・・すまない、紫先生』

 

『いえ。それだけ生徒を愛されてるのがはっきり伝わりましたし・・・私も、腹の中ではどす黒い感情が煮えたぎっているわ』

 

『同意です姉さん。生徒を守るのが教師の役目。・・・そして何より、子供を守るのが大人の役目というのに・・・あなたは教師失格だ』

 

『・・・う・・・うううう・・・』

 

 

『竹原教頭。あなたは教師としてやってはいけないことをされました。その罪がどれほど重いのか――――今一度、心から考えなさい』

 

 

 

 

 

 

「そこから竹原の悪事についての証拠がごろごろ出てきてね。また何かをすればそれを公にするって言ったら、すっかり大人しくなったよ」

 

「きょ、脅迫ですねもはやっ!?」

 

「いいや違うよ。アタシは穏便に、そのことを交渉に持ちかけただけさね」

 

「穏便だろうと過激にだろうと、弱みを握って交渉をしたら脅迫になると思いますよ!?」

 

 

 キヒヒと悪い笑顔を浮かべる学園長には、全く悪びれた様子はありません。竹原先生がもう悪いことをしなくなったのは良いのですけど、何やら後味が悪い!もうちょっと絵本みたいな展開で終わってほしかったです!

 

 

「ともかく、もう竹原には勝手はさせないよ。そこについては安心しておくれ」

 

「ま、まあそれについては本当に良かったです」

 

「よかったー。これで姫路さん達に危険はないってことだね。ババァ、これからはちゃんと気を付けてよ?」

 

「まったくだ。ババァ、しっかり監視してろよ?」

 

「ふん。あんたらクソボウズに言われなくてもそのつもりさね」

 

 

 口は悪いですけれど、皆さん穏やかな雰囲気で会話をしています。やれやれ、これで一件落着ですね!明日からは気兼ねなく学園祭を楽しめそうですよ!

 

 

「さて、じゃああとは優勝賞品の〝白金の腕輪〟だな」

 

「あ・・・そういえば吉井君達は決勝戦に進んだんですよね?」

 

「うん。美鈴さんが僕たちの相手だよね?」

 

「はい。あの、学園長。そうなったら私たちは・・・・わ、わざと負けた方が良いんでしょうか?」

 

 

『白金の腕輪』の事情を聞くと、吉井君達が勝たなくちゃいけない気がしてきます。あまり負けたくはないのですが、そんな事情があっては・・・

 

 

 

「いや、そんなことはするんじゃないよ。決勝はいろんな人が見てるんだ。そんなことをしちまったら八百長試合で思い切り叩かれちまうさね」

 

「あ、そうですか?」

 

「ああ。もしもあんた達が勝ったら、『白金の腕輪』だけ、そこのバカガキどもに譲ってやってくれるかい?」

 

「分かりました。その時はきちんと吉井君達に譲ります!」

 

 

 よかった~!もしも負けてくれって言われてたら、どうやって咲夜さんを説得すればいいか悩んでましたよー!このことは他言無用なようですし、咲夜さんを納得させるような理由が全く思いつきませんでした!

 

これで気兼ねなく、決勝戦に望むことが出来ますね!

 

 

 

「ええええ!?バ、ババア!そこは美鈴さんに負けろって僕は言ってほしかったよ!?」

 

 

「へ?」

 

 

 突然、吉井君が慌てた様子で学園長に抗議しました。え、あ、あれ?なにかまずかったですか?

 

「あん?別にアタシとしちゃあ、『白金の腕輪』が戻ってくるんならどちらでもいいさね。むしろ、礼儀知らずのあんたらには負けてもらって、この娘に勝ってほしいぐらいだよ」

 

「そんな!?ババァ、僕達を見捨てないで!可愛い生徒じゃないですか!」

 

「バカ言うんじゃないよ。あんた達よりもこの子の方がよっぽどかわいい生徒だ。万が一にも八百長を仕掛けるとしてもこの子を勝たせるさね」

 

「そ、そんな殺生なっ!?」

 

「え、え~と・・・ありがとうございます学園長」

 

 

 よ、よくわかりませんけど、吉井君は八百長を仕組んでも優勝をしたいようです。でも、学園長も手は抜くなと言っていますし、何より五千円の商品券がかかっていますからね!私も負ける気はさらさらないのです!

 

 覚悟しておいてくださいね吉井君、坂本君っ!

 

 

 そう意気込んだところで、Fクラスでの話し合いは終了、清涼祭一日目は幕を降ろしました。

 

 

 

 

 

 

『雄二っ!今日は徹夜で勉強をしよう!明日の決勝戦は絶対勝たなきゃいけないよ!』

 

『お?明久がそんなことを珍しいな。明日が命日なのか?』

 

『負けたらそうなる可能性があるんだよっ!』

 

『んん?何かあったか?』

 

『ほらっ!博麗さんと勝負したときに約束してたじゃん!「負けてくれたら商品券五千円分のものをあげるって!」』

 

『おお、そう言えばそんな約束もしてたな。でも確か、さらに四割ぐらい付け足されてなかったか?』

 

『それはこの際いいよっ!いや、全然良くない大事なことだけど、どっちにせよ優勝しないと五千円も手に入らないじゃん!そうなったら僕は嘘をついたってことで・・・は、博麗さんに亡き者にされるじゃないかぁあっ!!』

 

『あー、なるほどなあ。まあ明久、そうならないようにしっかり頑張るんだぞー』

 

『なに自分は関係ないって顔してるんだよ!君も僕と同じペアなんだからしっかり協力しろよ!?博麗さんにしばかれるのは雄二もだからね!?』

 

『とは言ってもなあ~。請求のあて先は明久ってことで博麗も了承してたし、プレオープンチケットが翔子に渡らなくなったんだから、おれはもう優勝する理由もないんだが?』

 

『こ、この外道っ!鬼!バカ!霧島雄二っ!』

 

『ぶっ!?て、てめえシャレにならんこと言うんじゃねえぇ!?』

 

『・・・・嬉しい。ありがとう、吉井』

 

『うおっ!?いつの間にそこにいたんだ翔子!?』

 

『・・・今。嬉しい言葉が聞こえたから・・・』

 

『翔子、それは理由に全くなっていない。むしろ新しい疑問がわいてきたぞ・・・』

 

『・・・雄二。わざと負ける気?』

 

『ああ。俺はプレオープンチケットがお前に渡らなかったらそれでいいからな。俺の目的は果たした』

 

『僕は全然果たしてないっての!っていうか、そんな言い方はないじゃないか雄二!霧島さんがかわいそうだよ!』

 

『俺だって自分の身が可愛いわボケッ!』

 

『・・・そう。分かった』

 

『・・・ん?やけにあっさり引き下がったな翔子?変なもんでも食ったか?』

 

『だから雄二!女の子にそんなこと言ったらダメだって!』

 

 

 

 

『・・・だって、そうなると・・・・・・十六夜達が勝って、プレオープンチケットを譲ってもらえるから』

 

『・・・・・WHAT?』

 

『え、そうなの霧島さん?』

 

『・・・うん。話をしたら、タダはさすがにもったいないから、安くに売ってくれる、て・・・』

 

『・・・・・・・・・・・・・・』

 

『へ~?ただではあげずに売るって、十六夜さんはしっかりしてるな~』

 

『・・・・私も、タダでもらうのは気が引けてたから・・・十六夜は、気配りができる人』

 

『そっか~。さすが十六夜さんだなぁ』

 

『・・・・・雄二。その時は・・・・約束』

 

『だってさ雄二。負けた時は楽しみだね!』

 

 

 

『・・・・ちくしょおおおぉおおおおぉっっ!!明久ぁ!今から死ぬ気で勉強するぞぉぉぉおおお!!』

 

『・・・あ、雄二・・・・・』

 

『あ、どっかに走ってったね。全く、雄二も最初からそうなってたら良かったのに・・・・でも、ありがとう霧島さんっ!おかげで僕が、明日以降も生きていられる可能性が出てきたよ!』

 

『・・・うん。・・・でも・・・・正直に言うと・・・・・・・言わなかった方がよかった、かも・・・・』

 

『そんな悲しいことは正直に僕の前で言わないで!雄二にだったらいくら何を言っても構わないからさ!」

 

「・・・同じくらい、ひどいと思う・・・」

 

「とにかく、女の子との約束のため明日の朝日のため!根性を見せてやるぞ吉井明久ぁああああ!!」

 

 

 

「・・・やっぱり、言わない方が良かったかも・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます!

 今回は色々と話が進んだ回となったので、ややこしかったり間違ったりしてるかもしれませんが、すみませんでした!

 原作では二日目に常夏コンビなんかが出てくるのですが、常夏コンビ、あと竹原教頭にも一日目の間に観念をしてもらいました!悪役方には早々に退場してもらって、ワイワイと騒がしい学園祭の方が面白いと思いましたので!

 いずれにせよ、決勝戦は紅十六夜姉妹ペアーと吉井坂本悪童コンビでございます!この形は最初から望んでいたので、上手くつなげることが出来て一安心ですね!

 何とかこの後も自分でも楽しめるような展開にして、なかなか長かった学園祭編に幕を降ろしていきたいです!

 それではまた次回!何か気になるところとかがあったら、遠慮なく感想に送ってください!

 


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