バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

51 / 78
 どうも、村雪です!

 今回は召喚大会ナシで、どちらかと言えば喫茶店の方で話を進めていきたいと思います!とはいえ、サブタイトルからも分かるように、ただの喫茶店側の話ではないのですが!

 少々どなたかの性格が変わったかな?と思うところもありますが、そこもは一つ大目に見てもらえれば!あの状況なら、彼女たちがああなっても仕方がないと思うのですよ~!

 では、ここで言っても何のことだという話ですので――

――ごゆっくりお読みください。


犯罪―愚行、をする奴にゃ情け不要ですっ!

「ただいま~!」

 

 

 私は元気よくFクラスの教室へ入ります。ちょっとお客さんがびっくりした目で見ましたけど、ここはご勘弁を!うまく決勝戦に進むことが出来て、少し浮足立っているのですよ~!

 

 

「あ!おかえりです力持ちのお姉さんっ!」

 

「おっ、その感じだと勝ったみたいだな?」

 

「ええ!おかげで決勝戦進出です!」

 

「おお!やるわねメーリン!さすがアタイの子分なのよさ!」

 

「ですから子分になった記憶はありませんよチルノ!?」

 

 

 そんな歓迎を受けながら、私はすぐにホールの仕事の準備を始めます。決勝戦は明日行うということなので、今日の召喚大会は終了。あとはホールの仕事をするのみです!

 

 

「へ~、美鈴さん達は決勝戦に進んだの?」

 

「おお、吉井君と坂本君。ええ、うまく勝つことが出来ましたよ!」

 

 

 準備をしようとする私に、今度は吉井君と坂本君が話しかけてきました。彼らは私とは逆に、どこかへ出かけるような準備をし始めます。

 

 

「吉井君達も今から大会ですか?」

 

「うん。準決勝に行ってくるんだ」

 

「俺たちがいない間、店の方は頼んだぞ?」

 

「分かりました!健闘を祈ってますよ~!」

 

 

 坂本君達はお店のことを私に頼んで、教室を出ていきました。

 

 ふむ、ということはもしこの試合で吉井君達が勝てば、決勝戦は彼らと勝負をすることになるのですね。それはまた面白い試合になりそうで楽しみです!

 

 

「さて、頑張るとしましょうかっ」

 

「メ、美鈴さん!あちらのお客さんをお願いします!」

 

「あ、は~い!」

 

 

 さっそく仕事を与えられたので、私はすぐさま移動して仕事に取り組み始めます。

 

 

 そのあとも、お客さんへ注文の伺い。お茶やゴマ団子の提供。たまに話しかけてくるお客さんとの雑談やチルノのおバカ行動の制御。果ては土屋君の撮影の被写体など(スカートの中を撮ろうとしていた時は、もちろん抵抗しましたよ?)をこなし続けました。

 

 

「悪い美鈴さん。飲茶の葉がなくなったから、ちょっととってきてくれないだろうか」

 

「分かりました。んじゃちょっと行ってきますね!」

 

 

 先ほどのゴマ団子と同じように、空き教室へと向かいます。ホールの私がやることかな?とも思いますけど気にしない気にしない!きっと厨房の皆さんが忙しかったんですよね!

 

 

「え~と、葉っぱはどこに・・・」

 

 

 

 再びお目当てのものを準備室で探す私。荷物はきれいに並べられていて、先ほど私の後始末を頼んだ吉井君と妹紅さんがしっかりやってくれた証拠です!すみませんね2人とも~!また埋め合わせはしますからね~!

 

 

「あ~、あったあった!」

 

 

 これですね!さっきは変な男子に絡まれたりして面倒でしたから、今回はあっさり見つかって助かりました~。まあそう何度も、波乱な展開があってたまりますかってことですね!そんなことはマンガだけで十分です!

 

 

 あとは、あさった荷物を元の場所に戻して、と!

 

 

 

「よっこいしょ――」

 

 

「おいお前。Fクラスの奴だな?」

 

 

「・・・・・」

 

 

 ここはいつから、マンガの世界になったのでしょうか。私は少しうんざりしながら振り返りました。

 

 

「・・・はい。そうですけど、どちらさま?」

 

 

 見ると、またいかつい3人の男子が私の方を見据えていました。はい、間違いなくいい雰囲気ではありませんねこれ。なぜ一日に二度もこんなことが起こるのか・・・

 

 

「ならいい。おい、連れてくぞ」

 

「「おう」」

 

 

「は?」

 

 

 とたん、急に私のもとへ三人が寄ってきました。え、え?連れてく?問答無用ですか?

 

 

「・・・あの。何をされる気ですか?」

 

「黙ってろ。お前は俺たちについてくりゃいいんだよ」

 

「無駄な抵抗なんかするなよ?こっちは三人で、女のお前なんかに勝てるわけないんだからな」

 

「にしても、ラッキーだな。こんな可愛い子を連れていけるなんてよ」

 

 

「・・・・・」

 

 

 またも不快になる言葉を言ってくる三人。どうやら、こちらの質問に答える気はないようです。

 

 

はあ~~。こっちは穏便に聞いているというのに・・・・・

 

 

 

 上等です。もう一回やってやろうじゃないですか。

 

 

「おっ、すげえやわらかい腕だな――(グイッ)」

 

 

 

 そんな戯言を言いながら、1人が私の肩を掴んできます。

 

 

 

 

「――せいいっ!」 

 

 

―――ので、私は遠慮なく、その腕を掴んで背負い投げをかましました。

 

 

 

 

「「!なっ!?」」

 

 

「ぃっ!?げうっ!?」

 

 

 残る二人があっけにとられている内に、私は掴みかかってきた男の背中を叩きつけます!

 

 

 が、それでは終わらせません。同じく遠慮せず、背中の痛みに苦しそうな顔をする男の腹を踏みつけました。 

 

 

「ふんっ!(どすっ!)」

 

「がぶううっ!?おぇぇぇええええっ!」

 

 

 それには参ったようで、彼は腹と背を押さえて苦しそうに転げまわりました。敵には容赦などかけない!一切手加減などしませんよっ!

 

 

「「て、てめええっ!」」

 

 

 残った2人が仲間をやられたことに血相を変えて襲いかかってきました。が、今更文句を言おうが遅い!きっかけはあんたらにあるんですからねえええっ!!

 

 

「大人しくしてやがれ!おおらああっ!!(ブンッ)」

 

「っと!」

 

 

 一人が粋の良い言葉を叫びながら殴りかかってきましたが、しょせん口だけ!ただがむしゃらなパンチをすぐさまかわします!

 

 

「おおおおおおっ!」

 

 

 そしてその回避ざま、全力の拳をあごへとかます!

 

 

「っらあっ!」

 

 

 ガゴンッ!

 

 

「あがっ・・・!?」

 

 

 うまく入ったようで、くらった彼は完全に白目をむきながら背中から倒れこみました。

 

 さて、あと1人!

 

 

「な、なんだてめえ!?何かやってやがるなっ!?」

 

「っ!ええ、少々拳法をねっ!」

 

 

 拳をかわしながら、私は答えなくてもいいことに律義に答えます。結構昔からやっているので、並みのケンカじゃ負けませんよ!

 

 

 

 

「くそっ・・・!なら、他の女のとこに人数をやるんじゃ・・・!

 

「っ!」

 

 

 

 ・・・今の言い方。他にも女子を狙ってる!?

 

 

 

「せぇえいっ!(ドスッ!)」

 

「ぐっ!」

 

 

 即座に腹へと突きをくらわせますが、腹を押さえるだけで彼は倒れません。

 

 

・・・ならかまわん!さっき踏みつけた奴に聞いてやります!

 

 

 私はチャイナドレスで動きやすくなっている足で、左足の方を、まっすぐ天井へと伸ばしました。

 

 

「・・・いっ!?ま、待て!それはやりすぎだ―!?」

 

「うるせぇぇえっ!」

 

 

 そして、彼の頭に空に上げたその足を――振り下ろしました。

 

 

 

 ゴッギイインッ!!

 

 

 

「ガゲブゥッ・・・ッ!?」

 

 

 脳天にかかと落としを受けてはたたじゃいられない。最後の彼は、ぐるりと白い眼を向いて顔から床に倒れていきました。

 

 

「ふう・・・」

 

 

 さて、三人を倒して、とりあえずは身の安全を確保。次は・・・

 

 

「――お~い、ちょっと、あなた」

 

「うぐぅ・・・!い、いでえぇ・・・!」

 

 

 背と腹を痛めつつも、意識がしっかりある男子に声をかけます。しかし、そうとう効いたのか、彼は苦しそうな顔をしてうめくばかり。

 

 

「こら。呼んでるんですから聞きなさい」

 

「ぐえぇっ・・・!?」

 

 

 ぐいと苦しむ男子の首元を掴み、私の方を向かせます。正直、苦しんでいる人に追い打ちをかけるようなことはしたくないんですけど、先ほど聞いた言葉がどうしても気になるので、私は心を鬼にして問い詰めます。

 

 

「今の彼が、他の女子がどうこうと言っていたのですが、どういうことですか?」

 

「ひっ・・・!」

 

 

 さらに絞める力を上げると、彼は先ほどまでの下卑た顔を消し、怯えた表情で吐いてくれました。

 

 

「・・・え、Fクラスの女達をさらってこいって命令されたんだ!だ、だから、Fクラスの女子のところには他の仲間が行って・・・・」

 

「・・・さらってこいですって?」

 

 

 誰が聞こうと、完全に犯罪行為じゃないですか!いったい誰がそんなバカげたことを!?

 

 

「誰に?誰に命令されたの?答えなさいっ!」

 

 

 

「あぐぐげっ・・・!お、お、お前らのとこの教頭だよっ!ほ、ほら、あの眼鏡をかけた・・・!!」 

 

 

「は、はぁあ・・・っ!?」

 

 

 そ、それって、さっきから何回かウチのクラスに来てた・・・!?

 

 

 

「か、竹原(たけはら)教頭先生のことっ!?」

 

「あ、ああ!そんな名前だった!」

 

「な、なんでまた・・・!?」

 

 

 思わず耳を疑いそうです!学園のNo.2とも言える教頭先生が、自分の学園の生徒を誘拐させるなんて・・・!わ、私、とんでもないことを聞いたんじゃないですか!?

 

 

「理由はっ?何か聞かされてはないの!?」

 

「ぐぐぐ・・・知らない!ほ、本当だっ!俺らはただ命令されただけなんだよ!」

 

「む・・・!じゃあ、なんでそんな命令を聞いたんですか!?いくらなんでもやっていいことじゃないってことぐらい分かるでしょう!」

 

「う・・・・う、上手くいったら、俺たちの学校の先公に、成績のことで口を聞いてくれるって言われたんだ。だから…」

 

 

 うっわ、そんなことを言ったんですか教頭!そんな裏取引を引き出して生徒に悪行をさせようとは、もはや最悪のセンセイですね!絶対敬いたくありません!

 

 

「・・・ま、まあ、教頭のことは今いいわ!それより私をどこへ連れて行こうとしてたのかを答えなさい!」

 

 

 何人も誘拐して、バラバラな場所に置いとくとは考えづらいです。たぶん一か所にまとめて監禁をするでしょうから、その場所はおそらく私を連れて行こうとした場所!

 

 

「・・・!い、いや、それはさすがに言うわけには――」

 

「ああん!?さっさと答えろって言ってんですよ!」

 

「ぐえええっ!?・・・こ、ここから五分くらいのとこにある、カラオケボックスのパーティールームだっ!が、ふ・・・!し、しまるからゆるめて――!」

 

「・・・はい。分かりました(スッ)」

 

「げっほ!ごほごほごほ・・・!」

 

 

 よし、よく言ってくれました!それに免じて、もう手は出さないでおきましょう!

 

 

「じゃあ、あなた達はとりあえず、永琳先生のところに連れていきますね」

 

「げほっ・・・え、えいりん??」

 

「はい。保険の先生ですよ。今の話を聞かせてもらったら、さすがにこのまま野放しにするわけにはいきませんので、ちょっと治療がてらそこにいてもらいますね」

 

「・・・・・もう、背中と腹の痛みが取れるならなんだっていい。ぐええ・・・まだ痛ぇえ・・・!」

 

 

 よほど痛いのか、男子はやわらかく軟禁すると言われてるのに、力ない言葉でそう答えるだけでした。

 

 

「そうですか。すぐに話が進んで助かりますよ」

 

 

 ここでまたひと騒動があるかと考えてましたけど、杞憂に済んでよかったです。

 

 

「歩けますか?私はこの2人を運びますから期待はしないでくださいね」

 

「くそ・・・こんな女が相手なら、のるんじゃなかった……」

 

「どんな相手でもイケないことはしないって、強い意志を持ってほしいものですよ」

 

 

 すんだことですから、もう取り消すことはできないのですがね。

 

 

―――さて。この三人を連れて行って、もともとの目的の飲茶の葉っぱを教室に持っていったら、準備ですね!

 

ん?なんのかって?

 

 

 

そりゃあもちろん―――殴り込みの準備ですよ。

 

 

 

 

 

ガラリ

 

 

「・・・・紅、緊急事態」

 

 

 Fクラスに戻ってきた私に土屋君が駆け寄ってきて、今起こっているであろうことを伝えにきました。

 

 

「あ、ええ。瑞希さん達がさらわれたそうですね?」

 

「(コク)・・・・なぜ知ってる?」

 

「私もターゲットだったようですよ。急にさらおうとしてきたので、返り討ちにして吐かせました」

 

「・・・・さすが」

 

 

 そう言いながらも、土屋君は少し呆れ顔です。むう、もう少し無事だったことに安堵してくれたっていいじゃないですか~。

 

 

「・・・それで?」

 

「ええ。どうやら皆さんは学校の近くのカラオケボックスのパーティールームにいるみたいです」

 

「・・・あっている」

 

「ん?なんで土屋君も知ってるんですか?」

 

「・・・(スッ)」

 

「?なんですこれ?」

 

 

 見せてきたのは、何やらよくわからない黒い機械。これは・・・?

 

 

「・・・発信機」

 

「今この時だけは、何も聞かなかったし見なかったことにしましょう」

 

 

 女子がさらわれたときに、どこへ行ったかを知るためにとっさに仕掛けだけだと信じます!

 

 

「・・・反応は、そのカラオケボックスの場所と一致している」

 

「ふむ。ウソではなかったみたいですね。では行くとしますか!」

 

「・・・明久たちは待たないのか?」

 

「それも考えましたけど、まだ時間がかかる可能性もあるからやめました。土屋君はどうですか?」

 

「・・・問題ない。備えはある」

 

「助かります」

 

 

 応援を待ってる間に何かがあったら本末転倒ですからね。さまざまな道具を持った土屋君がいれば十分でしょう!

 

 

「で、さらわれたのは?」

 

「・・・秀吉、姫路、島田と妹、チルノ、霧雨の6人」

 

「1人男子がいますけど、この際スルーですね」

 

 

 それよりも・・・

 

 

「妹紅さんは無事だったのですか?」

 

「・・・・厨房にいたから、手を出せなかったのかも」

 

 

 あー、なるほど。さすがに関係者だけが入れるところには入らなかったんですね。妹紅さんが無事、一つまずそこは安心できました。

 

 

「にしても、ほぼ全員のホール班女子が抜けたのは痛いですね。代わりもいないですし・・・」

 

 

 味でも満足はしてくれるでしょうけど、やはり女子という華やかさを求めて来る人も何人かいるわけです。そんな人たちには今現在の状況では、不満を与えてしまうかもしれませんね・・・

 

 

 しかし、私の懸念に土屋君は、

 

 

 

 

「・・・誰もいないというわけではない。―――藤原が、ホールをやってくれている」

 

 

 そんなことを言いました。

 

 

「へ?・・・も、妹紅さんが?」

 

「・・・(こくり)」

 

 

「・・・・い、いやいやいや!?それはさすがに嘘でしょう!?あれだけ頑なにやりたくないって言ってた妹紅さんがするはずないじゃないですか!・・・って、はっ!?さてはあれか!妹紅さんの恥ずかしい写真を撮ってそれで脅迫したんですね!?最低です!」

 

「・・・そんなことはしていないし、そんな写真もまだ撮っていない・・・!!」

 

「どっちにせよ撮る気じゃないですか、この変態っ!」

 

 

 その時はカメラ破損とまんじ固めを覚悟してもらいますよ!絶対妹紅さんが傷付くでしょうからね!

 

 

「・・・・・いるんなら、手伝ってほしいんだけど・・・」

 

「おわわっ!?も、妹紅さん!?」

 

 

 突然の声にびっくりして振り返ると、顔を赤くしながらも不機嫌さ丸出しの妹紅さんがお盆をもって立っていました。

 

 なぜか恰好は蝶ネクタイに白いカッター、そして青色の長ズボンと男子のホールが着ているウェイター姿ですが、もともとの容姿が綺麗だからか、全く違和感を感じさせません。妹紅さんが正義、なのでしょうか?

 

 

「ほ、本当にホールの仕事をしてるんですね妹紅さん。・・・土屋君に脅されて、とかではないですか?」

 

「・・・紅、俺を何だと思っている・・・!」

 

「女性の不幸をネタにするムッツリスケベです」

 

 

 私の断言に、土屋君は二の句を継げませんでした。

 

 代わりに答えたのは妹紅さんです。

 

 

「・・・そいつに、他の女子がいない間だけでもって言われたんだよ。・・・・ぜ、絶対やりたくなかったけど・・・なんか、緊急事態みたいだから・・・その・・・」

 

「そ、そうなんですか、妹紅さん・・・!」

 

 

 ぽつぽつと消え入るような説明に、私は少なからず驚きと喜びを感じました。あれほどてこを入れてもやりたがらなかったホールを、渋々などの言葉でもぬるい態度ながらも自分の意志で、その理由が店のため、ひいてはクラスの皆のためなんて・・・!!

 

 

「わ、わっ!私はもーれつに感動しましだ妹紅しゃ~~んっ!!」

 

「・・・う、うるさいな。しぶしぶやってるだけなのに・・・」

 

 

 ふてくされた顔をする妹紅さんですけど、私には皆のことを心配しての行為だって分かっていますよー!

 

(※正直な話、妹紅さんの言う通り、しつこい頼みに断れきれなかったというのが6割で、クラスのためにという思いは4割ほどのようです。それを少ないと見るか多いと見るかは・・・お任せします)

 

 

「・・・今からでも、チャイナドレスに・・・」

 

「き、着るかっ・・・!なんでそんなもの着んだよ・・・変態・・・!」

 

「・・・変態じゃない・・・!ただしゃし、店のため・・・!!」

 

「・・・・・やっぱりこいつ、変態だ・・・・!」

 

 

 珍しく声を荒げて土屋君を糾弾する妹紅さん。ですがそこまでチャイナを拒否されると、私も泣きたくなります。チャイナドレス、良いと思うんだけどなぁ・・・!

 

 

「・・・と、とにかくっ・・・あんたも手伝えよ、美鈴」

 

「あー、で、でも今から連れていかれた6人の奪還に行くのですよ。ですから、もうひと踏ん張りしてもらえませんか?」

 

「・・・・・・え~・・・本気・・・・?」

 

「す、すみませんけどお願いしますっ!すぐに戻りますのでお願いしますぅぅ!」

 

「・・・・・はぁぁぁぁ・・・やっぱり、やるんじゃなかった・・・」

 

「あ、ありがとうございます!そしてほんとにごめんなさいぃぃっ!」

 

 

 まるで世界が終わったかのように顔を青くさせる妹紅さん。緊急時とはいえ、人見知りの妹紅さんにこんな役を任せてしまって心がずきずきします!

 

 おのれ誘拐犯め!この落とし前もきっちりつけてもらいますよっ!

 

 

「じゃ、じゃあ妹紅さん。ちょっと行ってきますね!坂本君達が戻ってきたら、このことを話して近くのカラオケボックスにいるって伝えてください!」

 

「・・・・分かった。じゃ、じゃあ・・・まあ・・・・気を付けろよ」

 

「了解です!行きましょう土屋君!」

 

「・・・了解」

 

 

 そこから私たちは駆け足で奴らのアジトへと向かいました。妹紅さん、その間はホールをお願いしますよーっ!

 

 

 

 

 

 

 

『・・・お、おお待たせ、しましたっ。こちらっ、飲茶とゴ、ゴマ団子でしゅ。・・・っ!ごご、ごゆっくり、どうじょ・・・!』

 

 

 

『―――ご、ご苦労さん、藤原さん・・・だ、大丈夫か?』

 

『・・・・もう、死にたい消えたい帰りたい・・・。勇儀ぃぃ・・・』

 

『ちょ、なな、泣かないでくれ!?べ、別にかむぐらい誰でもあるっ!だからそんな気にすることなんか――』

 

『・・・みんなじろじろ見てくるし・・・いちいち人の失敗を見世物にして・・・!!』

 

『そ、それはたぶん、藤原さんがめちゃくちゃ綺麗で、女子が他にいないから見とれているだけだ!!絶対そういうのではないと保証するっ!むしろ誇っていいと思うぞ!』

 

『・・・なんの慰めにもならないよ・・・・・!

 

 

―――――ん・・・?また来たのか・・・?』

 

 

 

 

 

『うんっ!ゴマ団子とっても美味しかったもん!』

 

『ま、まあまあだったけど、せっかくだからまた食べに来たわっ!』

 

『・・・・・・ん。そ、そうか・・・』

 

『あれ?メイリンはいないの、もこう?』

 

『・・・あー、ああ。ちょっと・・・・出かけたな』

 

『そ、そうなの?じゃあ、妹紅は美鈴の代わり?』

 

『・・・・・まあ、そうなる・・・かな』

 

 

『へ~!じゃあ!私たちもやっていい!?』

 

『・・・・?何を?』

 

 

『お店の仕事っ!』

 

『え・・・。・・・・な、なんで?』

 

『一回お店の人をやってみたいのっ!でも、さっきは向こうで咲夜にダメって言われたから・・・お願いもこうっ!』

 

『・・・2人とも・・・やりたいの?』

 

『わ、私はそこまで興味ないわよ!で、でもフ、フランが一緒にやろうって言うんだもん!だから、妹のわがままに付き合ってるだけだからねっ!』

 

『わ、わがままじゃないもん!さっき咲夜がダメって言った時、お姉さまの方ががっかりしてたでしょっ!』

 

『ししっし、してないもん!私そんなにショックなんか受けてないもんっ!』

 

『あ、ケ、ケンカはやめな・・・。

 

 ・・・・・ん・・・・やらせて、いい・・・?』

 

 

『え?そ、それは俺たちにとってもありがたいが・・・いいのか?』

 

『・・・本人がやりたいって言うから・・・・。じゃあ2人とも・・・やってみる・・・?』

 

『ほんとっ!?うわあ~ありがとうもこうっ!(ぎゅっ)』

 

『・・・!!う~、あ、ありがとう妹紅(ギュッ)!』

 

『―――~~っ!?だ、抱き着くのは、やめてくれ・・・・っ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!二名様でよろしいでしょうか?」

 

「あ、先に連れが来てますので大丈夫です」

 

「え、あ、そ、そうでしたか?」

 

「はい、すみません。では。・・・土屋君、場所は分かりますか?」

 

「・・・二階から反応がある」

 

「よし、行きましょうか」

 

 

 私たちは学校から近場にあるカラオケ店に入り、発信機の反応のもとへ急ぎます。

 

 まったく、皆の憩いの場を監禁の場所に選ぶとはふざけたものです。友達を救出するためにカラオケ店に入る日が来るなんて、全く想像していませんでしたよ。

 

 

「・・・この部屋だ」

 

「む」

 

 

 しばらく歩いていると、一つの部屋の前で土屋君が声色を変えることなく告げました。私も気を引き締めます。

 

 

「よし、では突撃しましょうか」

 

「・・・まずは、中の様子を知るべき(ごそごそ)」

 

 

 待ったをかけた土屋君は、また見慣れぬ機械を出しました。

 

 

「ん?土屋君、それは?」

 

「・・・盗聴器」

 

「そろそろ私もフォローが出来ませんよ!?」

 

 

 普段、土屋君が何に使うのかがものすごく気になります・・・!ま、まさか私のどこかにも仕掛けられたりして・・・ませんよね!?

 

 

「・・・俺が店員に化けて、仕掛けてくる。これを使え」

 

「は、はい。お願いします」

 

 

 なぜそんなものがあるのか。土屋君はさっき見た店員さんと同じ格好になって、私にな聞き取り用の機械を渡して問題の部屋へと入っていきました。

 

 う、う~ん。非常に頼もしいのですが、敵(しゃしんさつえい)になったらとてつもない脅威です!今後はさらに注意をしないといけませんね!

 

 

「・・・え~と。これはどうやって聞くのでしょう」

 

 

 でも今は味方ですので、その心配は今はやめておきましょう、私は見慣れぬ機械を耳にあてました。ん~~・・・

 

 

 

『・・・失礼します。灰皿をお取替えします』

 

 

 お、土屋君の声ですよね?どうやらうまく仕掛けられたみたいです。

 

 

『おう。・・・にしても、遅いな田川達。連絡もないのか?』

 

『ああ。何もないな・・・あいつらまさか、失敗したんじゃないのか?』

 

『まじかよ?誰だっけあいつらのターゲットは?』

 

『確か・・・赤い髪の奴だ。そういえばそいつには注意しろ、とかあの眼鏡もぬかしてたっけ・・・』

 

『は!?そ、そんなの聞いてねえぞっ!?』

 

 

 次いで聞こえてくる知らぬ男子の声。〝メガネ〟って・・・・絶対竹原教頭のことですよね?なんたってそんなことを命令しますかねえ。生徒として悲しく、そして情けなく思いますよ・・・

 

 

 

『ちょっとあんた達!アタイ退屈なのよさ!だからさっさと解放しなさいよっ!』

 

『うるせえ!せめてそこは怖いからとかぬかせバカ!』

 

『誰がバカよ!ゆうかいなんかするクズに言われたくないのよさ!』

 

『ぐっ!て、てめえ・・・!』

 

 

 おっと、無事元気そうで何よりです、チルノ。でもあんまり刺激する言葉を吐いちゃうのはどうかと・・・

 

 

『お、このピザ美味いな~。瑞希たちは食わないのか?』

 

『・・・・あ、は・・・はい。大丈夫です・・・』

 

『お主・・・この状況でよく食べられるのう・・・アホじゃったのか?』

 

『おいおい木下、失礼だなー?どうせこいつら出してくれないし、こうも言うだろ?慌てても良いことがない、ってな』

 

『・・・お主のメンタルにはあきれ果てるのじゃ・・・』

 

『す・・・少しだけうらやましいです・・・』

 

 

 次いで聞こえてくる三人の声。でもそこには誘拐されているという緊迫感が全く感じられません。

 

 ちょ、自由すぎますよ魔理沙っ!おかしい言い方ですけど、誘拐されたなら誘拐されたらしく大人しくしてなさいっ!というか誘拐犯!もっとしっかり行動を束縛しなさいよ!なんで私がそんな犯人側の指摘をしなくちゃいけないんですかっ!

 

 

『おい!お前は何勝手に食ってんだ!黙って大人しく――』

 

『うっさいわよあんた!葉月が怯えちゃうじゃないっ!』

 

『!お、お前はお前でなんでそんなに堂々と文句を言ってんだっ!誘拐されてるって立場を忘れてないか!?』

 

『だまりなさい!こっちも仕方なく大人しくしてんだから文句を言うなっ!』

 

『お、お姉ちゃんが、怖いです・・・!』

 

『あ、ご、ごめんね葉月?葉月に怒ってるわけじゃないの。あのお兄さんたちに怒ってるのよ?』

 

 

『・・・・もう、なんなんだよこいつら・・・』

 

『なんでこんなに普通なんだよ・・・もっとビビるところだろうが・・・』

 

『ここまで図々しい女は初めてだ・・・』

 

『吉井と坂本はまだ来ねえのか・・・』

 

 

 

 

 

「・・・・これ、私が来る必要なかったかもしれませんね」

 

 

 誘拐された女子に怒鳴られる誘拐犯。この誘拐犯たち、めちゃくちゃ平和主義な気がします。むしろ魔理沙やチルノの方がひどいとさえ思えてきました・・・

 

 

 

「(ガラッ)・・・元気そうだった」

 

「私は思わず、もっと怯えてろなんてひどいことを思ってしまいしたよ・・・」

 

 

 もはや何をしに来たのかが分からなくなりそうです。戻ってきた土屋君もホッとした様子ですが、わずかながらに呆れた雰囲気もあります。

 

 

「相手は何人いましたか?」

 

「・・・4人だ」

 

「なるほど、ありがとうございます」

 

 

 なんにせよ、救出に来たのだからその目的は達成しないとね。ひとまずは隙が出来るまで様子を――――

 

 

『でも、どうする?赤い髪の奴が本当に田川達を返り討ちにしてたら・・・』

 

『・・・・・・あ。そう言えば赤い髪の奴にも、妹みたいなやつが2人いなかったか?』

 

『あー、青い髪と金髪のちっちゃい奴か。それがどうした?』

 

『そいつらを人質にしたら、赤い髪の奴もおびき寄せられるんじゃないか?』

 

『あ、いい考えだなそ――』

 

 

 

 ドガァンッ!

 

 

『『!!?』』

 

「いっ!?」

 

「な、何だてめえっ!?」

 

 

 

 

 前言撤回。タイミングなんか気にせず、今すぐこの四人を叩き潰してやりましょう。

 

 

 

 

「誰だぁあ?―――お望みどおり来てやったんじゃいっ!」

 

 

 

「は、はあ!?」

 

「!?あ!こ、こいつだ!紅美鈴とかいう奴だっ!?」

 

「は!?な、なんで一人でここに・・・!?」

 

「た、田岡達をどうしやがった!?」

 

 

 やいやいと騒ぎだす4人ですが、そんなことは後でいくらでも答えてやります!私の気が済んだらねええ!!

 

 

「そんな友人のことより、今はあんたら自身の心配をしやがれぇぇっ!!」

 

 

「「「「ひっ!?」」」」

 

 

 あの愛らしいレミィ達に危害を加えようとする輩は排除するのみ!私は全身全霊の力を腕に込めて、4人を討ちに走りました。

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます!

 今回は少し原作の流れに添った内容、誘拐部分の話を投稿させてもらいました!とはいえ、原作とは大きく違って、誘拐された女子陣も、誘拐した男子達も、どこかギャグさを感じられる内容とさせてもらいましたが!

 そうさせてもらった理由なんですが、村雪、出来るだけ笑いが起こるような明るく楽しいssを書きたい!!というのを目標に『バカと中華小娘とお姉さん』を書いてきまして、もしもここで原作のように書いちゃったら、その目標から少し離れちゃうことになるのですよね~!

 なので、原作とは違って女子達には厚かましくたくましく、そして男子陣には少し弱気になってもらうことで、誘拐という犯罪イベントを明るいイベントに変えてみようとしてみました!
 少し暴走気味の美鈴さんによる、この後の暴虐を考えるとギャクパートがバイオレンスになりそうですが、そこもある種のギャグパートの一つと撮ってもらえれば!!

 それではまた次回っ! 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。