バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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どうも、村雪です!

 今回は召喚大会がメインとなります!が、いつもどおり、ど真剣バトルは期待しないでくださいね!あくまでこれはギャグSSでございますので!村雪はハラハラするようなストーリーを作れないのでしてよーっ!

 そこを踏まえて、美鈴さんや明久たちの一回戦目の勝負!


――ごゆっくりお読みください。


一回戦―簡潔、に終わるか苦戦するかは組み合わせしだいね

「では、これより試験召喚大会の一回戦を始めます。二組は準備を始めてください」

 

 

「よし、頑張りましょうか咲夜さん!」

 

「ええ、さくっと決めましょう」

 

 

 召喚大会は校庭の特設ステージにて行われることになってまして、私たちはさっそく1回戦の勝負に挑みます。

 立会の先生は数学担当の木内先生なため、勝負科目は当然数学です。

 

 

「頑張ろうね、律子」

 

「うんっ。優勝して一緒にスイーツを食べ歩きよ、真由美!」

 

 

 そんな私たちの相手は女子二人組。1人は確か、Bクラス戦で戦後対談の時に居たような?微妙にフラグを立てた気もしますが、油断はできない相手ですね!

 

 

「じゃあ4人とも、召喚を始めてください」

 

 

「「試獣召喚(サモン)っ!!」」

 

 

 その言葉と同時に、相手2人の足元からお馴染みの魔方陣が表れて、召喚者がアニメチックにデザインされた、小さく可愛らしい試験召喚獣が姿を現しました。

 

 

 

『Bクラス 岩下 律子   数学  179点 

        & 

 Bクラス 菊入 真由美  数学  163点    』

 

 

 

 2人とも西洋風の鎧と剣で身を固めていて、なかなか強そうな見た目です。この武器を駆使して、先に相手の召喚獣の力である〝試験の点数〟を0にした方が勝者。これが〝試験召喚バトル〟でございます!

 

 

「咲夜さん。試獣召喚!」

 

「ええ。試獣召喚っ」

 

 

 そして、次は私たちが合図を叫び、召喚獣を呼び寄せます。

 

 

 動きやすい緑色のチャイナドレスに、星のマーク正面に入った中華帽をかぶった召喚獣。こちらが私の召喚獣です。武器は己の拳だけ!というと聞こえはいいですが、率直に言うと素手です。いちおう硬度はあるみたいで、ある程度の威力の武器なら防げますが、リーチが短いのがなかなか痛い…!せめてトンファーか何かが欲しいですっ!

 

 

 一方咲夜さんの召喚獣は、青をベースにしたメイド姿。動きやすくするためかエプロンのかかったスカートはふくらはぎ辺りまでと、非っ常にセクシーでございます。これで手に持っている二本の白く輝くの銀のナイフがなければ、威圧感を与えることなく、癒しを与える召喚獣となっていたに違いありません。

 

 

 そんなこんなで、向こうのように鎧だとか剣だとかで、統一性があまりない私たち。一見では、軍配をあちらに上げたくなるでしょう。

 

 

 

 

――が、ここで勝負を作用する大きな要因は、点数でございます!

 

 

 

 

『Aクラス 十六夜 咲夜  数学 324点 

         &

 Fクラス   紅 美鈴  数学 219点 』

 

 

 

「「ウソォ!?」」

 

 

 

 さあ!勝負を始めようじゃありませんかお二方!咲夜さんと、咲夜さんのおかげで胸を張れるようになった私の点数に勝てるでしょうか!?

 

 

「じゃあ咲夜さん!あちらの岩下さんをお願いします!」

 

「了解!」

 

 

 分担を決め、私たちはすぐさま行動を始めます。二対二でも戦えるのですが、連携を取られて万が一、があるかもしれませんのでサシで勝負です!

 

 

「行っきますよぉ!」

 

 

 まずは距離を詰めないといけないので、召喚獣を菊入さんの召喚獣へと走らせます。こういう時に魔理沙やお空の召喚獣みたいな武器があれば、スッごい楽できるんですけどねっ!

 

 

「む!えいっ!」

 

 

 菊入さんの召喚獣もこちらへと駆け寄りながら剣を振ってきます。私の召喚獣とは違って、少々長い剣を持っているからリーチは向こうのが上。注意しなきゃ! 

 

 

「おっと!」

 

 

 ひらりとかわしましたが、菊入さんはそこで諦めずに剣を振り続けました。数撃てば当たる作戦ですね!でも、私は当たらないようにしないと、ねっ!

 

 

「えい!やっ!」

 

 

「わわっと!?」

 

 

 縦、横と剣を振ってくるのを横にずれたりしゃがんだりして回避。私もそうですけど、菊入さんは私よりも召喚獣の操作はあまり慣れていないみたいで、避けるのはそれほど苦労しませんでした。

 

 そして、この差をを利用しない手はありません。そろそろ攻撃に移りましょうか!

 

 

「とりゃあ!」

 

 

「あっ!」

 

 剣を振ってがら空きになった胴に一発、二発と私の召喚獣の商売道具ならぬ勝負道具の拳を叩き込みます。よし、点数がまあまあ減りましたね!このまま決めるとしましょう!

 

 

「ふっ!とっどめぇっ!」

 

 

 二発の打撃を受けてぐらつく菊入さんの召喚獣に、ダメ押しと一発、あごにストレート加え、最後に顔に右ストレートを当てます!そのまま倒れた召喚獣は、時間がたっても立ち上がりませんでした。

 

 

「ああっ!?そ、そんな~っ!」

 

 

 

『Bクラス 菊入真由美  数学   〇点 

        VS

 Fクラス   紅美鈴  数学 219点 』

 

 

 

 よし、私の方はこれで勝利ですね!あとは咲夜さんですが、果たして・・・

 

 

「はっ!」

 

「いやー!?」

 

 

 見れば、咲夜さんの召喚獣が岩下さんの召喚獣を、武器でナイフで切り裂いていました。おお、なんと素早い動きでしょう。さすが高得点保持者、って感じですね!

 

 

「くううっ!悔しいいいぃ!」

 

「ス、スイーツ食べ放題がーっ!」

 

 

 2人が悔しそうに私たちを見てきます。ですが、申し訳ありませんが私達も商品券が欲しいんですよー!だから手加減なんかしてあげませんっ!

 

 

「はい。勝者は十六夜・紅ペアですね。互いによく頑張りました」

 

 

 木内先生が勝者の名前を告げて、労いの言葉をかけます。よーし!めでたく一回戦勝利です!

 

 

「やったわね、美鈴(スッ)」

 

「はい。やりましたね!(スッ)」

 

 

 そしてそのあと、私達は何も言うことなく片手を掲げ、

 

 

 

 

「「お見事一回戦っ」」

 

 

 パチンと手を合わせました。初陣は、見事完勝ですっ!この先もこの調子で行きましょー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、美波もひどいなあ。うっかり口がすべっただけじゃないか」

 

「知るか。しっかし、まさか藤原が姫路と同じ料理技術を持ってるとは思わなかったぜ。あ~、目の前に大鎌を持った翔子が見えた…」

 

「良かったじゃない。美少女が出迎えに来てくれたんじゃないか」

 

「死への出迎えをどう喜べってんだ!?」

 

 

 ぜいたくだなあ。どうせ来るなら美少女が良いに決まってるのに。

 

 藤原さんの特性ゴマ団子を食べた雄二が目を覚まして(チルノも目が覚めてゴマ団子の事を暴露しそうだったけど、僕と美波で必死に留めた)、僕達は召喚大会の会場に到着した。なし崩し的に出場することになったけど、設備の向上のため姫路さんのため!必ず優勝しないとね!

 

 

「来たわね。吉井君、坂本君」

 

「あ、八雲先生」

 

 

 そんな僕たちに声をかけたのは、僕にとっては恐怖の存在である八雲藍先生・・・・じゃなくて、そのお姉さんである八雲紫(ゆかり)先生。ふわりと長めにその金の髪を伸ばして、短めに整えてぴしっとしている藍先生とは違って、とても物腰の柔らかそうな数学の教師だ。

 

 

「次の対戦はあなた達よ。相手はもうお待ちだから、ステージにあがってもらえるかしら?」

 

「うっす」

 

「はい」

 

 

 八雲先生に言われた通り僕たちはステージに上がって、相手のチームと対峙した。

 

ん?あれって・・・

 

 

「げっ!?ル、ルーミアさん!」

 

「んー?あ。確か、Fクラスの人だったかなー?」

 

「そ、そうだよルーミアちゃん!あの吉井君と紅さんに私たちは負けちゃったんだ!」

 

「あ、そうだったのだー」

 

 

 メガネをかけた女子の言葉にうんうんと笑顔でうなずくのは、僕に『食べられる』というとんでもない恐怖を心深くまで刻み込んだ少女、ルーミアさん。

 

 この子だけに関しては、その無邪気な笑顔が邪悪に見えてしまうのは仕方ないこと・・・!うう、忘れかけてた古傷が顔を…!?

 

 

「ほう。あいつが召喚獣を喰らう召喚獣を使う女子か。いい体験をさせてもらったじゃないか明久」

 

「そんなわけないでしょ!僕一瞬痛さで目の前が真っ白になったんだからね!?雄二もくらってみれば分かるよっ!」

 

 

 でもこんなバカでも観察処分者じゃないから痛みは受けないか!くそぉ、雄二が観察処分者だったらいくらでも僕が痛みをくれてやるのに!

 

 

「では二組とも揃いましたから、勝負を始めましょうか」

 

「頑張ろルーミアちゃん!目指せ優勝商品券だよっ!」

 

「おー。勝てば色々食べれて・・・うふふ~。楽しみなのだ~(じゅるり)」

 

 

 よだれをぬぐうルーミアさん。前も思っていたんだけど、ずいぶんと食べることが好きなんだなあ。召喚獣が噛みつき攻撃仕様になってるのも、きっとそこら辺の影響じゃないかな?

 

 

「二組共、召喚をお願いしましょうか」

 

「はい!試獣召喚(サモン)!」

 

「試獣召喚だー」

 

 

 八雲先生の指示に従ってルーミアさん達二人は叫び、2人の足元から召喚獣が出現する。

 

 で、大越さんの召喚獣は、剣に鎧とよく見かける召喚獣の恰好だけど・・・・・ダ・・・ダメだ、あのニコニコ笑った黒いワンピースの召喚獣を見ただけで体全体に鳥肌が立ってきた!戦う前に僕を弱体化させるなんて卑怯だよルーミアさん!

 

 

「明久、俺たちも召喚・・・ってえらく震えてるが、足を引っ張んなよ?試獣召喚」

 

「そ、そこは僕を気遣うところだよ!試獣召喚!」

 

 

 遅れて僕達も召喚獣を出す。僕のは相変らずの改造制服に木刀と、チンピラさが際立つ姿。一方、神童と呼ばれたこともあった雄二の召喚獣は――

 

 

「……あれ?雄二、武器は?」

 

「おー、私と同じだなー」

 

 白色の改造制服を着ただけで、何も持っていないような気がする。ルーミアさんの言ってるように、雄二の召喚獣もゾンビもどきの攻撃をするのかな?それだとだいぶ強そうに見えてくるかも――

 

 

「よく見ろ―――メリケンサックを付けているだろう?」

 

「ざ、雑魚だ!雑魚がいるっ!」

 

「へー、紅と一緒なのかー」

 

 

 美鈴さんは点数があって一発一発が強かったけど、雄二みたいなバカだったら、いくらメリケンサックがついてても絶対にへなちょこな攻撃に違いない!

 まあ点数が高かったら別だけど、バカな雄二にそんな高い点数は取れるはずないし・・・

 

 

「勝負よ!チンピラコンビさん!」

 

「お醤油とお砂糖の味付けチームじゃないかー?」

 

 

 2人がそう言って召喚獣を構えだす。白と黒の学ランを着て、メリケンサックと木刀を着た僕たち二人の召喚獣がそう言われても否定が出来ないや。でも、ルーミアさんに食べ物で例えられるとシャレにならない気がする。

 

 ともかく、ルーミアさんとだけは戦いたくない。ここは雄二に任せるとしよう。あ、でも点数の方はどうかな?僕の方が上だったりしないだろうか?

 

 

 気になったので、僕はここで全員の点数を確認した。

 

 

 

『Dクラス ルーミア・アピュエス  数学    151点

             &

 Dクラス      大越冬美   数学    140点  』  

 

 

 

 

『Fクラス 吉井明久  数学  63点 

 

 Fクラス 坂本雄二  数学 159点     』

 

 

 

「!?ゆ、雄二!なんでそんな点数になってるの!?」

 

 

 Bクラス並の点数じゃないか!そんなの雄二が取れるなんて信じられない!チルノの英語の点数が高いと知った時に次ぐ衝撃だよ!

 

 

「ああ。前回の試召戦争の以来、Aクラスに勝つために本気で勉強をしているからな」

 

「へー。なんでまた勉強を?」

 

 

 雄二が自分から勉強をするなんて、何かあったのかな?

 

 そんな僕の疑問に、雄二は苦々しい顔で答えてくれた。

 

 

 

「……前に、翔子に聞かれたんだ」

 

「?何を?」

 

「………式は、和風と洋風のどちらがいいか、と」

 

「…霧島さんは一途だねー」

 

「『……私は洋風がいい』と言って、翔子はアリス・マーガトロイドにウェディングドレスの制作を頼みやがった・・・それを奴も引き受けて、どんどん既成事実が出来上がっている・・・!」

 

「ごめん雄二。今の話、僕はアリスさんがドレスを作るって話の方が衝撃を受けたよ」

 

 

 アリスさんとは霧島さんと同じAクラスの女子。魔理沙の話だと縫物なんかが趣味らしいけど、まさかドレスまで作れるとはなぁ。友達に作ってもらうとなると霧島さんも嬉しいだろうし、実に素晴らしい計画だね。雄二にとっては困ることみたいだけど。

 

 

「俺はもう負けられない!次で勝たないと、俺の人生は!俺の人生は……」

 

「雄二落ち着いて!きっと幸せな人生が築けるから!」

 

 

 暴れそうになる雄二を羽交い絞めにする。僕だったら霧島さんみたいな美少女にそこまで思われると、嬉しさで爆発しそうなんだけどなあ。それを嫌がるって雄二はやっぱりバカだと思うよ。

 

 

「あはは、変な人たちだなー」

 

「ルーミアちゃん。あんまり見ちゃダメだよ。チンピラがうつっちゃう!」

 

 

 大越さん。チンピラは移るものではないと思うよ?そしてルーミアさん。僕をバカな雄二と一緒にしないで!

 

 

「坂本君の顔色が悪いみたいだけど、大丈夫かしら?」

 

「あ、すいません。ほら、雄二起きて」

 

「婿入りは嫌だ・・・・・・。霧島雄二なんて御免ぼごぁっ!はっ!?」

 

 

 よし、これでオーケー。殴られて雄二は正気になったみたいだ。

 

 

「すいません八雲先生。もう大丈夫です」

 

「そう・・・ちなみに参考までに、私は和服で式を挙げたいわ」

 

「「誰も聞いてねえよっ!」」

 

「だ、だ誰も来ねえよですって!?失礼よ二人とも!私だってこんなに魅力あふれてるでしょ!?」

 

「「ケバさが溢れてるだけだっ!」」

 

「ケバッ…!?」

 

 

 

 

 思わず声を荒げる僕らと、ショックを受けた顔で固まる先生。ちなみに八雲紫先生は独身で、こういう話題に良く食いついてくる。良いお相手が見つかることを願います。

 

 

「う、ぐ・・・・!ま、まあいいわ!ここは大人の対応で黙ってあげるわ。感謝しなさい二人とも!」

 

 

 その対応が大人から離れると思います、八雲先生。僕も隣で呆れたような目をする雄二も、きっと同じことを思ってるんだろう。

 

 

 

「では、始めましょうか。二組とも、頑張りなさいっ!」

 

 

 そう言って八雲先生は僕らから距離を取った。ちょっと色々あったけれど、ようやく勝負の開まりのようだ。

 

 

「ルーミアちゃん!そっちに行って!私はこっちに!」

 

「オッケー」

 

 

 さっそくルーミアさん達2人の召喚獣は、僕らの召喚獣を挟み込むように移動する。

 

 ただ動いているだけでトラウマが効いてガクガクしてきたけど、勝負は始まっているから動揺を見せてはダメだ。ここは挑発してルーミアさんの心を揺さぶろう。

 

 

「ふっ。ルーミアさん。前回も僕と美鈴さんに負けたってのに、また負けに来るとはね」

 

「むー。確かにそうだけど、今回もそう上手くいくとは限らないのだ」

 

 

 ぷうと顔を膨らませるルーミアさん。ほんっとに、あの勝負が無ければどれだけ可愛いと思えただろうか!噛まれる痛みを味わった僕には全く心が動かないっ!

 

 

「それに、今回は紅がいないから私達に有利なのだー」 

 

 

 む?あれあれ?美鈴さんは高く見ているけれど、僕や雄二の事はあまり高く見ていないのかな?

 

 

「やれやれ。俺たちもなめられたものだな、明久」

 

「全くだよ雄二。どうやら彼女たちは、僕たちの強さが分かってないみたいだね」

 

「んー、そうなのかー?」

 

「ル、ルーミアちゃん。油断は禁物だよ!」

 

 

 大越さんは僕たちがただ者じゃないってわかっているみたいだ。ここは一つ、僕達の実力をルーミアさんにも知ってもらおうか!

 

 

「じゃあ、雄二!」

 

「おう、明久!」

 

 

 僕たちの間に言葉は不要。僕達は目を合わせてから頷いて、行動に移る。 

 

 

 

「ルーミアは任せた!」

 

「ルーミアさんは頼んだよ!」 

 

「んー?」

 

「へっ!?わわ、私に2人ぃ!?」

 

 

 僕たちはルーミアさんから離れ、大越さんに接近して対峙した。あれ?

 

 

「って雄二!ルーミアさんを放っておいてどうするのさ!ここは点数の高い雄二が相手するところでしょ!?」

 

「いや、ここは明らかにお前の出番だろうが!俺は前の試召戦争で召喚をしたことが無いんだぞ!?」

 

「僕は前回ルーミアさんの召喚獣に酷い目にあったんだよ!?なのに僕にやらせるなんて、雄二には血も涙もないのかい!?」

 

「そのぶん行動が読めるだろうが!少しくらいは役に立て!」

 

「それはこっちのセリフだよバカ雄二!」

 

「野郎!表に出やがれ!」

 

「上等だバカっ!」

 

 

 僕と雄二は互いに胸元を掴んだ。ルーミアさん達の前にこいつを葬らなきゃいけないみたいだ!

 

 

「あはは、2人は仲が良いんだなー」

 

「そ、そうかなあ?なんだか全然まとまってないみたいだけど・・・」

 

 

 はっ!愉快そうな物と変な物を見る目で見られてる!これじゃ僕らの凄さが見せつけられない!

 

 

「あ~・・・・・・コホン」

 

 

 一つ咳をついて、僕は2人に告げる。

 

 

 

 

「どうだい?僕たちの凄さ、分かったかな?」

 

「ええっ!?い、今のでどうやって!?」

 

「凄く面白いのは分かったのだー」

 

 

 残念。どうやら分かってくれなかったみたいだ。

 

 

「じゃあ仕方ない!実力行使で分からせてあげるよ!雄二!作戦を説明してくれ!」

 

「そこは自分で考えろよ!……まあいい、なら俺の作戦はこうだ」

 

「うん」

 

 

 急なふりにもすぐに答えるとは、さすが腐っても神童だ。僕は雄二の言葉に耳を傾ける。

 

 

「明久があのメガネの女子、大越を引き付けて――」

 

「ふむふむ」

 

「――その間に明久がルーミアを倒すんだ」

 

「せめてルーミアさんだけにして!」

 

 

 それって僕の負担が増えただけじゃん!だったら最初の案で良かったよ!

 

 

「よしわかった!じゃあ明久、お前にルーミアは任せたぞっ!」

 

「なんだか上手く丸め込まれた気もするけど、了解!こうなったらあの時の雪辱戦だ!」

 

 

 僕達はそれぞれの敵の下へ召喚獣を走らせる。僕の狙いは、人間プレデターのルーミアさんだ!

 

 

「おー。あのときのリベンジをするのだー」

 

「悪いけどそれは僕のセリフだよ!覚悟ルーミアさん!」

 

 

 召喚獣に獲物である木刀を構えさせて、ルーミアさんの召喚獣へと突っ込ませる。こうなったら攻撃あるのみだ!

 

 

「そりゃあ!」

 

 

 ルーミアさんの召喚獣に木刀を振り下ろす。当たってくれたら儲け物の攻撃。ルーミアさんは――

 

 

「おー。お返しだー」

 

『……(ガパァッ!)』

 

 

 横にずれて難なく回避。その可愛らしい口を大きく開けてギラリと鈍く光る、刃ならぬ歯を僕の召喚獣に突き立てようとする。

 

 

「っ―――うう!」

 

 

 その鋭い歯に、僕に刻み込まれたトラウマが暴れ出して体が震えそうになる。

 

・・・でも、僕だっていっぱしの男!このままびびってたら男が廃るってもんだい!

 

 

「回避ーっ!」

 

『……(ガチィン!)』

 

 

 迫ってきたルーミアさんの召喚獣を、横に跳んで回避させる。

そこまでは前も出来たことだけど、今日の僕は一味違うぞ!

 

 

 僕は召喚獣に全力の力を込めさせて、横を空ぶったルーミアさんの召喚獣の背中に木刀を叩き込んだ!

 

 

 

「根性、いっぱぁぁあっつ!!」

 

 

 バキッ!

 

 

「!むー!」

 

 

『Fクラス   吉井明久    数学 63点

         VS

Dクラス ルーミア・アピュエス 数学 83点 』

 

 

 

 よし!あの時とは違って、ちゃんと点数を減らせた!

 

 

 

「やったなー!」

 

 

 のけぞりそうになりながらも、ルーミアさんの召喚獣はすぐに僕の召喚獣に向き直って口を開けて迫ってくる。

 

 

「よっ!もういっちょぉ!」

 

 

 バシッ!

 

 

「あうー!」

 

 

 一度回避して攻撃に移れたのが自信になって、僕はなんなく横にずれてかわすことに成功。もう一度木刀をヒットさせた!

 

 

『Fクラス 吉井明久       数学 63点

       VS

 Dクラス ルーミア・アピュエス 数学 38点 』

 

 

 

「な、なんだか前と違う気がするのだー!?」

 

「今回は君に、グロテスクな物を見せられてないからね!」

 

 

 あれを見て思いっきり動揺したけど、冷静なままだったら僕には経験という大きなアドバンテージがある!だから、今回は勝ってみせるぞ!

 

 

「やー!」

 

「何度やっても無駄だよ!」

 

 

 またルーミアさんの召喚獣が襲いかかってくるけど、僕は慌てることなく横にずれ

 

 

 ガシッ!

 

 

「!?げっ!」

 

「捕まえたぞー!」

 

 

 僕の腕を手が掴んだ感覚がってややばい!このままじゃ避けられな――

 

 

「お返しなのだっ!」

 

 

 

ガブゥッ!

 

 

 

「!!!にぎゃああああーっ!!腕に針山が突き刺さったような痛みがァァァあ!!」

 

 

 

『Fクラス  吉井明久      数学 41点

        VS

 Dクラス ルーミア・アピュエス 数学 38点 』

 

 

 

 痛ってええええええっ!点数が僕より下なはずなのに!まともにくらったら痛さはあの時と変わんないいいいいい!

 

 

「形勢逆転で、このまま勝つのだー!」

 

「ぐ、ぐぎぎ・・・!」

 

 

 じ、じわじわと痛みが増してきた・・・!うううう…!このままじゃ、ルーミアさんに僕の点数がゼロになる!

 

 でも、僕達は負けるわけにはいかないんだっ!

 

 

「グッ――っっでえぇぇぇえいい!」

 

 

「!?わ、わー!」

 

 

 噛みつかれた腕を渾身の力で空に掲げると、噛みついていたルーミアさんも一緒に空に浮んだ。今は僕の方が点数が高いから、彼女に抗うすべはない!

 

 いっつ・・・!も、もっと痛みが増したけど、ここは我慢だああああああ!

 

 

「な、何をする気なのだー!?」

 

「き、君を倒すんだよ!今度こそ覚悟するんだ、ルーミアさん!」

 

 

 バタバタするルーミアさんの召喚獣が、出来るだけ上に上がったのを確認して……僕は召喚獣に、一気に腕を振り下ろさせる!

 

 

「かち割れろぉぉぉおっ!!」

 

「!?ひ、ひどいのだーっ!」

 

 

 君が言わないでっ!そう思ったけど口にはせずに、僕は渾身の力で腕、そしてルーミアさんの召喚獣の頭を地面に叩きつけた!

 

 

ゴッチィィン!

 

 

「あうあーっ!?」

 

 

『Fクラス   吉井明久    数学 41点 

        VS

 Dクラス ルーミア・アピュエス 数学 0点  』

 

 

 

 期待通り、ルーミアさんの召喚獣は鈍い音をたてて地面に強かに頭を打ち付けた!起きる気配は全くないし、点数を見ても・・・!

 

 

「――やったあああ!僕の勝利ぃぃぃい!!」

 

「む、むーっ!また負けたのだー!」

 

 

 ルーミアさんの点数がゼロになったぁぁあ!!これで僕の雪辱は晴らせたよー!

 

 

「オラオラオラオラオラオラアッ!!」 

 

「きゃああああ!!」

 

 

 向こうでは雄二の召喚獣がそのメリケンサックでラッシュをかまして、大越さんの召喚獣をぼこぼこにしていた。これでは大越さんの召喚獣も無事には済まない。

 

これでめでたく、僕たち二人の勝利だ!

 

 

「そこまでね。勝者は、吉井君と坂本君のペアーよ」

 

 

 勝敗の軍配が紫先生によってあげられる。よし!見事一回戦勝利だ!

 

 

「ご、ごめんルーミアちゃん負けちゃった!」

 

「んーんー。私も負けたから,おあいこなのだー。……あなたは、なんていう名前だったかなー?」

 

 

 向こうの2人が残念そうに慰め合っていたけど、ルーミアさんが僕にそう尋ねてきた。ま、まさか腹いせに僕を食べる気!?

 

 

「え、え~と・・・よ、吉井明久だよ?」

 

「吉井明久・・・ん、そうなのかー。おめでとうなのだ吉井」

 

「へ?あ、ありがとうルーミアさん」

 

 

 そんなことは全くないようで、ルーミアさんはニコニコ笑って僕の勝利を褒めてくれた。う~ん、やっぱりこの人はいい人なんだね。怖すぎる召喚獣がのせいで僕は怖がっていたけど、これからは気にすることなくルーミアさんと仲良くなれそうな気が――

 

 

 

「でも、今度は吉井の召喚獣をバリバリ食ってやるから、覚悟するのだー」

 

「そんな日が来ないよう、全力で僕は願うよっ!」

 

 

しなかった。その感覚を想像するだけですごい恐ろしくて痛いっ!やっぱりルーミアさんは僕のトラウマだよっ!もう顔を見るのも怖いよ!

 

 

「まずは一勝だな、明久」

 

「あ、そうだね。まずは一勝だね」

 

 

 お、おっとっと。そういえば僕にはまだやることがあったね。ルーミアさんの宣言は二度と来ないと信じて、ひとまず忘れよう。

 

 そして、僕と雄二は向き合って勝利の確認をしあう。

 

 

「そんじゃあ、改めてー」

 

「うん」

 

 

 互いに一致したので、僕らは手を差し出して―――友情を確かめ合った。

 

 

 

「さっきの決着をつけるぞクソ野郎!」

 

「それはこっちのセリフだよバカ野郎!」

 

「ひぇ!?け、喧嘩し始めたよあの2人ー!?」

 

「あはははー。ご飯は残念だけど、おもしろいものが見れたからよかったのだ!」

 

 

 破顔するルーミアさんたちを横目に、僕達は熱い思いを拳に乗せて互いの顔面へと叩き込みあった。

 

 

 

 

『う~ん。アグレッシブな人も、見ていて飽きないわね?意外とアリなのかしら?』

 

『あ、ああのや、八雲先生!?むだ、じゃ、じゃなくて変ななこと言うのを止めて、ま、まずはケンカを止めましょう!なんだかすごい本気で殴り合ってますよあの2人!?』

 

『ちょっ、あなっ、い、いいい今無駄って言ったわね!?おとなしい顔をして、私の心を破壊してもおかしくないことを言ったでしょ!?』

 

『ひぃ!ご、ごめんなさいっ!つつい本音が出ましたっ!』

 

『ぐふっ!?しょ、正直に言えばいいってものじゃないわよバカ・・・!もっと先生を敬いなさいっ!八雲先生はレディーって言うのよ!』

 

『い、今全然関係ないと思いますよ先生!?』

 

『ん~?八雲先生はレディーなのだ』

 

『まあ!あなたは優しいわねぇ~!はいどうぞ、お菓子よ!』

 

『わー、ありがとうなのだ!』

 

『うふふ。じゃあ、もっと言ってちょうだい!『八雲先生は可愛い』とか、『八雲先生はお淑やか』とか『八雲先生はまだまだ若い』とか!言ってくれたらもっとお菓子をあげるわ!』

 

『せ、先生!物で生徒を釣って得るのが自己満足なんてやめてください!見てるこっちの方がつらいですっ!』

 

『うるさいっ!私はそれで心が救われるからいいのっ!さっ、ルーミアさんお願い!言ってくれたらお菓子よ!』

 

『・・・・・ムー・・・・・』

 

『?どうかした、ルーミアさん?』

 

『ル、ルーミアちゃん?』

 

 

『……私、あんまりウソは言いたくないのだ』

 

 

『え?ウソ?』

 

 

『うん。・・・・・さっき先生が言ったこと、言ったらウソになるのだ』

 

 

『・・・・・?!ひぎいっ!?』

 

 

『ちょ、ルルルルーミアちゃん!?八雲先生が変な悲鳴あげて卒倒したよ!?正直に言ったらダメだってさっき言われてたでしょー!』

 

『え~?でも、ウソは言いたくなかったのだー』

 

『さ、最初レディーって言ったよね!?あれはどうなの!?』

 

『え?八雲先生は男なのか!?』

 

『なるほどねっ!ルーミアちゃんは本当に正直で偉いよ!けど、今だけはやめてほしかったな!先生、うつろな目をを止めて返事してください!八雲せんせ~っ!』

 

 

『……あ、あはは・・・ぶ、ぶさいく……うるさい…………オ、オバサ、ン・・・・』

 

『そ、そうだったのか~・・・八雲先生は、男なのか・・・』

 

『違う!女であってるよルーミアちゃんそれ!だ、誰かこの状況を収めるの手伝ってよぉぉ!!田中くうぅぅんっ!』

 

 

 

 

『――はっ!?』

 

『・・・どうした、田中』

 

『あ、ムッツリーニか。いや、彼女―――がいないからさみしいなって思っただけだ。だから俺にカッターとかボールペンで攻撃体制をとるのはよせ!というかこの一単語にどんだけ反応してんだお前らっ!』

 

 

 

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます!

 さて、まずは改めての紹介を!幻想郷という楽園を創り、最強の妖怪の名を冠するスキマ妖怪!境界を操る女賢者、八雲紫さんのご登場です!そんな方にこの扱い。知られたら村雪は即座に時空の狭間ですね!

 そんな紫さんと一緒に、久しぶりにルーミアさん達にも出てもらいました!噛みついて攻撃、というのは子供のころからよくやりましたが、彼女はレベルが違いすぎて、あごの力がどうなっているのかが恐ろしいです。

 召喚大会を書くにあたって、美鈴さんたちだけにするか、明久達も書くかで悩んだのですが、元々を知らないと分かんなくなっちゃいますので、できうる限りは書いていきくことにしました!原作を知らない方はご安心を!

 とはいえ、やっぱりどこかでは原作と同じということで省かせてもらう可能性がありますので、その時は申し訳ない!後書きなんかでざっくり流れは書くのでお許しください。

 では、また次回からも楽しみにしていただければ幸いです。

――それではっ!

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