さてさて、今回からは原作第二巻、学園祭編に入らせていただきます!まだまだどうなっていくかは分かりませんが、読者の皆様の期待に添える内容にしていきたいところです!
――では、ごゆっくりお読みください
準備―楽しい、学園祭なんですからもうちょっと気合を入れましょうよ~!
「では、今日の運営委員への連絡は以上です」
「ふぃ~~・・・」
広い教室で行われていた話し合いが終わり、私達はばらばらと解散をし始めます。ん~、肩が凝りますね~。
「美鈴(メイリン)。Fクラスの準備はどう?」
そう言ってこちらにやってきたのは、静かな銀色の髪と、見ていると癒されそうなグリーンの目が素敵な女の子です。
「あ、咲夜さん。Aクラスの準備はどうですか?」
「順調よ。あらかた準備も進んでるわ」
そう言って私の妹である、十六夜咲夜(いざよい さくや)さんは胸を張りました。
何の準備かと言いますと、この文月学園の新学期最初の行事、『清涼祭』での各クラスの出し物のことです。
各クラスメンバーが協力して、一つの何かをするということがクラスの結束を高める、ということで毎年行われているイベントですが、私達はその運営委員としてこの教室に集合していたというわけです。
「それで、美鈴達はどうなの?」
「あ~。実は、運営委員もそうですけど部活の方も忙しくて、あんまり分からないんですよ。たぶん進んでるとは思うんですけどねー」
「あら、そうなの」
「はい」
部活の方はたった二人しかいないから、必然的に絶対参加となりますし、最近は意外と忙しい日々を私は送っているわけです!
「あ、ところで美鈴」
しばらく廊下を歩いていたら、咲夜さんがはっと碧眼の目で私を見てきました。
「はい、なんですか?」
「試験召喚大会ってあるじゃない?」
「あ。ありますねー」
この学校独自のシステム、『試験召喚システム』を用いることで生まれた『召喚獣』を社会にアピールするために、召喚獣同士が戦うトーナメント戦の名称ですよね。その勝負に勝ちあがって優勝すれば、何か景品があるんだとか。
「せっかくだし私と一緒に出てみない?景品には商品券なんかがあるらしいから、絶対損じゃないわ」
「おっ!それはいいですねー!」
そういうイベントは、聞くよりやっぱり参加してこそ楽しみがあるんですよね!しかも優勝すれば商品券も手に入りますし、まさに一石二鳥です!
「乗りました咲夜さん!いっちょ優勝目指しましょうか!」
「決まりね。じゃあ後で細かい話はしましょ。じゃ」
「おっけーです!では!」
私は咲夜さんと別れて、自分の教室であるFクラスに戻ります。頭はFクラスのメンバーのことで埋め尽くされ中です!
「う~ん、きちんと準備はしてますかねー?」
咲夜さんにはああ言いましたけど、Fクラスの人が真面目に出し物に取り組もうとしてるところが、全く想像できないんですよね~。代わりに、だらーっとしてくつろいでる姿が簡単に思い浮かびます。
「・・・とは言え、さすがに出し物ぐらいは決まってますか!」
さすがにこの時期だと決まってますよね。私が忙しくして行ってない間も、皆が協力してきちんと準備に取り掛かってくれてるでしょう!
そうこう考えているうちに、Fクラスに到着です。このぼろぼろの外見にもだいぶ慣れましたねー!
ガラガラ
「皆さ~ん、準備は進んでますかー?」
私はぼろぼろのドアを持ち、皆が頑張っているであろう教室への扉を開けます。
「・・・・・・ん?んんんんっ?」
・・・・・・が、私の予想は大きく外れました。
「あ……メ、美鈴さん。おはようございます」
「あ、おはよーございます。・・・おはようじゃなくてこんにちは、の時間帯ですけどね」
「そ、そうですねー・・・」
あはは・・・と無理な笑顔を作るのは、学年でもトップクラスの学力の持ち主、姫路瑞希(ひめじ みずき)さん。
「メ、美鈴。委員会の仕事はどう?上手くいってる?」
「まあぼちぼちですよ。こちらもぼちぼち進んでますか?」
「・・・あ~。ま・・・・・・まあね」
明らかに動揺して目を逸らすのは島田美波さん。トレードマークのポニーテールも、どことなくへにょっとしてるのは偶然でしょうか。
「………お、おかえり」
「あ、ただいま妹紅さん。大丈夫でしたか?」
「・・・・・・人がほとんどいなくなったから・・・ま、ましだ…」
「そうですかー。それは良かったです」
言葉通り、本当に普段より気楽そうにして座っているのは、床にふわっと散らばるほど長い純白の髪の持ち主、藤原 妹紅(ふじわらの もこう)さん。すごい人見知りで、私たちの家に一緒に住んでる居候、ではなく家族です!
「・・・で、秀吉君、そして田中君」
「な、な、なんじゃ紅?」
「な、何か用か?」
そして、男子である田中君と見た目は美少女、性別は男と、神様が間違えたのではと思ってもおかしくない男友達、木下秀吉君の…………現在クラス内にいるたった二人に、私は尋ねます。
「ほぼ全員の男子と2人の女子が見当たりませんが、どこに行ったのですか?」
「・・・あ~、じゃな」
「あ~・・・・・・」
何かを作るために出かけているならいい、のですが、この秀吉君達の濁し具合や、瑞希さんと島田さんが目を合わせないようにしているところからして・・・…
「・・・あ、あそこじゃ(スッ)」
「・・・ああいうわけだ(すっ)」
秀吉君達がものすごく言いづらそうに、窓を指さしました。ちなみにここは三階です。窓の外には爽やかな空が果てしなく広がっていました。
「?」
つまり、外を見ろということですよね?2人が指さす窓へと私は歩み寄り、確認をします。
「ん~?外で何を―――」
『よっしゃチルノ!ここは一発ぶちかましてやれ!』
『任せなさいまりさ!さあよしー!来るのよさ!』
『勝負だチルノ!今日こそどっちがバカなのかを赤白つけてやる!』
『バカね!そこは赤白じゃなくてモノクロよ!』
『意味はあってるが、それを言うなら黒白だ!』
『・・・ふ、やっぱりチルノはバカだったみたいだね』
『よ、よしーだって間違ってたでしょ!色があってるぶん、アタイの方が最強でよしーの方がバカなのよさ!』
『何を!こうなったら意地でも君からストライクを取って、僕の方が上だと証明させてやる!』
『上等よ!場外までぶっ飛ばしてやるわ!』
『・・・野球とバカさは関係が無い』
『いいから早くゲームを進めろ2人共!私も早くバットを振りたいんだぜ!』
とっても楽しそうに野球をしているおバカ達がグラウンドにいました。
「…………ほっほぉ~~・・・私はそれなりに色々とがんばって、清涼祭を成功させようと色々とややこしい仕事をしてましたのに、皆さんは楽しく野球ですか~。それも、クラスの出し物を準備せずに……ですかー・・・!!」
「ご、ごめんなさい!」
「ご、ごめん!」
「ああ~…悪い」
「す、すまん」
「・・・・(ぺこ)」
5人から謝罪をもらえました。一応悪いとは思っていたみたいです。まあ多勢に無勢、あれだけの人数をたった五人で止めるというのも酷な話ですかね。
「いえいえ~。5人はきちんと残ってくれてるので、皆さんは謝る必要はありませんよー?」
悪いのは、野球に参加している人達に違いないですよねぇ・・・!?
「では、あのおバカ達をせんめ・・・連れてくるのですよ」
「今絶対殲滅って言いかけたよな!?」
「メ、美鈴さんダメですよ!?」
田中君、瑞希さんが何か言いましたが、今の私の頭はあのおバカ達の事でいっぱいです!後で聞きましょう!
さあ、まずは奴らの場所へと向かうべき!
ガラッ!
「っ!!?お、おおおお主何をする気じゃっ!!?」
「ちょ!?あ、あんたまさか!?ややめなさい死ぬわよっ!?」
「・・・あ、危ない・・・!!」
「よ、よせ紅さん!それはまじにシャレにならないぞっ!?」
「だ、だっだダメです美鈴さんんんんっっ!!?」
5人の思い切り慌てる声を華麗に聞き流して、私はあの阿呆達への移動に移りました。
「とうっ!」
う~ん。建物の三階から落ちていくというのは、非常に心地いい風を感じるものですねー。
「「お、落ちたぁぁぁああ!?」」
「何考えてんのよぉぉおお!!?」
「・・・あ、あう・・・(コテン)」
「・・・あ……だ、大丈夫か・・・?」
ああ、この浮遊感はいつぶりですかね!とそう考えてる間にも地面はすぐそこ!変に捻らないように足を整えて――!
ダァンッ!
「ふぃ~・・・!」
やっぱりしびれますねえ!ですがこれしきのことはなんのそのですよ!
少し足の調子を整えた後に、私は目的のアホ集団へ向かって駆け出します!
「――あなた達ぃ!準備もせずに遊び呆けて何やってんですかこらあぁぁあああっっ!!!」
『い!?』
大声を出したので少しだけ気が晴れました。さあ、残りのこの煮えたぎる気持ちはあなた達で払わせてもらいますよおおっ!
「全員!本気でしばかれたくなかったらおとなしく折檻を受けなさいっ!!」
『どっちにせよ手は出すのかよ!?』
私のもやもやがそれだけ溜まっているという事です!さあ!最初は逃げずに向かってくるチルノですかねええええ!!
「(ガラッ) どうだ、清涼祭の準備は――ん?お前たち、他の奴らはどこだ?あと、お前たちも窓に張り付いて何をしている?」
「あ、西村先生」
「………………(ソソッ)」
「藤原。俺が来た途端に距離を置こうとするのはやめてくれ。別に俺は怒っていないんだ・・・・と、姫路はなぜ倒れている」
「あー、たぶん、さっき衝撃的な場面に出くわしたからだと思うぞ、西村先生」
「なんだそれは?・・・で、最初の質問だが、他の奴らはどこにいるんだ?」
「そ、それなのじゃが、外で野球をしに出て行きおって・・・…」
「・・・あのバカどもは・・・。教育指導の時間が必要だな!」
「・・・せんせ。その必要は無いと思うぞ」
「なに?どういう意味だ田中?」
「・・・・・・あ、あれ」
「?藤原。外に何が―――」
『もおおお!!皆さんなんで逃げるんですかー!』
『殴られると分かって誰が逃げねえぇええ!!』
『全くだ美鈴!お前に捕まる気は全くないぜっ!』
『むう!そっちがその気なら、私も本気でやりますよおお!』
『げっ!?さらに早くなるだと!?』
『くっ・・・坂本!ここは頼んだぜっ!』
『ぐあっ!?キ、キサマ霧雨!このタイミングで俺に足をかけるとは正気か!?』
『いたって正気だぜ!坂本・・・私のために、いっちょ逝ってきやがれっ!』
『逝くのに一度も何もあるかバカ、ってんぎゃあああああっ!!』
『チルノーー!!気をしっかり持つんだよー!?』
『・・・・・も、もしもアタイが生まれ変わるのなら、よし-みたいなバカじゃなかったら何でもいいのよ、さ・・・』
『僕にとって一生消えない傷になる言葉を遺言にするんじゃないっ!!』
『いったあ!?あんたには死にゆく女に優しさを持ってないの!?そんなんだからあんたはバカなのよ!』
『そんな元気があるバカが死ぬもんかバカ!僕より君の方がバカなのに気付いてないから、チルノはバカなんだ!』
『言ったわねぇ!?今日という今日は許さないのよさ!』
『いいよかかってこい!そろそろ君と決着を付けてやる!』
『ま、待て美鈴!なんでお前そんなに怒ってるんだ!?私らは野球をしてただけだぜ!?』
『それで十分原因ですよっ!私はあんまり楽しくない事にも一生懸命頑張ってるのに、皆さんは自分の仕事もせずに楽しく遊んでっ!ず、ずるいじゃないですか!!』
『それって完全に私情が混ざってるじゃないか!あ待って美鈴、おわああぁっ!?』
『う~!私だけ頑張って、これじゃ私、バ、バカみたいじゃないですかああああ!』
『(カシャカシャ)・・・対価は払ってもらったぞ、紅・・・!(ボタボタボタ ガクッ)』
「・・・・・・」
「メ、美鈴が・・・ちょっと怒りに行ってるところですから!」
「・・・どうやら、俺が出張るのは紅を止めるためになりそうだな」
「あ、あながち間違っていませんのじゃ・・・」
「俺、アイツらの誘いに乗らなくて良かった・・・」
「・・・少しあいつと…距離、置こう……」
「う、う~ん・・・…ダ、ダメです美鈴さん~・・・」
「さ、さて。そろそろ春の学園祭、『清涼祭』の出し物を決めなくちゃいけない時期が来たんだが・・・」
Fクラスの教室で、壇上の前に立ったぼろぼろの坂本君が話し始めます。わ、私は悪くないです。ちゃんとそれだけの理由があったのですよー!
「そうよ坂本!アタイ達サッカーしたりバスケットボールしたりして全然話とかしなかったけど、アタイ達は何すんの?」
「野球だけじゃなくて、そんなこともしてたんですか・・・」
同じくボロボロのちっちゃいおバカ娘、チルノ・メディスンのさらっとした暴露に私はこめかみを引きつらせます。そんな楽し、じゃなくていけないことは休み時間にしなさい!私も行きますから!
「チルノ。それなんだが、今から誰かを議事進行並びに実行委員として任命するからそいつと話を付けてくれ」
「丸投げなのよさ!?」
坂本君はそう言ってぐだ~とした態度になりました。どうも坂本君は学園祭みたいな行事は嫌いみたいです。だからといって、野球をするというのもどうかと思いますよ?
「で、その実行委員だが……ホ、紅はどうだ?」
「私ですか?」
自業自得なんですから、そんなに私を見てびくびくしないでください。意外と傷つきますよそれ。
まあ、実行委員になって、クラスの皆と頑張ってみるのは楽しそうなんですけど・・・
「悪いんですけど、運営委員やら試験召喚大会なんかもあるんで、手一杯ですねー」
私だってか弱い女子なんですから、これ以上やることを増やしますと過労で倒れちゃいますよ!
「そうか・・・じゃあ島田はどうだ?」
私がダメと分かって、坂本君は島田さんへと矛を変えます。しかし、島田さんも困り顔です。
「え、ウチ?でもウチも召喚大会があるから、ちょっと困るかな」
あら、島田さんも大会に出るのですか。二人で一組らしいですけど一体誰と出るのでしょう?
「魔理沙はどう?そういうの得意そうじゃない」
「んぉ?でも私も召喚大会に出るぜ?美波の理論で行くと私も忙しいことになるなー」
「そ、そう言って、ただやるのが嫌なだけでしょ。ウチのせいみたいに言わないのっ」
「正解だぜ。ばれちまったか」
島田さんの言葉にケラケラ笑う魔理沙。魔理沙は興味のあることにはすごく熱心ですけど、無いものには人並みのやる気ですからねー。
「じゃあさ雄二。姫路さんにやってもらったらどう?」
すると、静かにしていた吉井君が瑞希さんを推薦しました。
「え?私ですか?」
「うん。姫路さんだったら話し合いが荒れずに進みそうだからね」
「そ、そんな。お上手です吉井君っ」
「・・・さらっと、私らだと話し合いが荒れて、上手くいかないって言われたよな」
「仕方ないわよ魔理沙・・・ウチらと瑞希だったら、どう見ても瑞希の方が丁寧そうだもん・・・」
照れる瑞希さんに不満気な魔理沙に残念そうな島田さん、全て一つの言葉が原因です。罪な男ですね、吉井君。
「姫路には無理だな。多分全員の意見を丁寧に聞いている内にタイムアップになる」
「あ、それは言えてますね」
瑞希さんは優しい子ですから、誰かの意見を却下したりはせず1人1人の意見を叶えようとするに違いありません。だから、話を纏める役目にはちょっと不向きですねー。こういう時は咲夜さんみたいなピシッとした人が適任かもしれません。
「す、すいません・・・それに、私も召喚大会に出ますので・・・」
「え?そうなの?」
「そうよアキ。ウチ一緒に出ることになってるわ」
「ほー。じゃあこのクラスからは三組も出るんですか」
ギュッと手を握り締める瑞希さん達に、魔理沙に私。これは互いにぶつかり合う可能性がありますねー。
「んー、じゃあ他に誰か適任が――」
「はいはいはいはーいっ!アタイが適任なのよさ!」
誰にするかを坂本君が再び考えようとしたところに、元気な大きい声。手をぶんぶんふりながらチルノが立候補しました。いや、チルノ本気ですか?私にはあなたが上手く進行をさせるところが全くイメージできませんよ?
「おっ。じゃあチルノ、お前に決定だな。後は任せるぞ」
「任せなさい!」
坂本君は誰かがやってくれるのならどうでもいいらしいみたいで、すぐさまチルノに丸投げしました。が、それに不満がありそうなのが1人。
「え~。雄二、チルノに司会とか無理だと思うよ?もう人が空を飛ぶってぐらい無理じゃないかなあ」
チルノがおバカなら彼もおバカ、吉井君が納得いかない顔でチルノと坂本君を見つめまます。
「ふふん!バカなよしーはアタイがこんな凄い仕事をするのに、しっとしてるのね!」
「べっ、別にしてないよ!バカなチルノがちゃんと仕事をできるとは思わない、って思ってただけだい!」
「だ、誰がバカよっ!よしーの方がバカに決まってるのよさ!アタイがやることをよしーは出来ないんだから!あっかんべー!」
「チ、チルノちゃん。女の子がそんなことしちゃダメですよ~!」
チルノが眼元をひっぱって舌を出し、吉井君に反発しました。『チルノマジラブリー』って言葉が周りから聞こえたのは空耳です。多分。
「で、出来るよ失敬な!チルノなんかより僕の方が上手く仕切れるさ!やーいばーかばーか!」
「バ、バカじゃないもん!アタイの方が最強よバカっ!」
「2人とも子どもですかっ!」
吉井君も負けじと体を使った挑発をし始めます、今度は間違いなく、『吉井うぜえ』って顔と言葉を周りでたくさん確認出来ました。
「じゃ、じゃあアタイとよしー、どっちが上手く出来るかを勝負なのよさ!アタイが勝つのは目に見えてるけどね!」
「いいだろう!後で後悔しない事だね!」
――そんなこんなで、司会進行役には吉井君とチルノに決定しました。もう安心できる要素がありません!
「じゃあ、あんた達!学園祭での出し物について話し合いを始めるのよさ!」
「だいぶ遅いスタートですねぇー・・」
多分他のクラスではとうの昔の話です。ひとまずチルノが司会をして、吉井君が黒板に書く役割をするみたいです。
「アタイらFクラスの出し物だけど、アタイにふさわしいと思うアイディアが浮かんだ奴は手をあげなさい!その中からアタイが決めるわ!」
「チルノ!まとめ役とは真逆の事を君はやろうとしているぞっ!」
「うっさいよしー!さあ、思い浮かんだ奴は手をあげるのよさ!」
「別にチルノに似合わなくてもいいからね!?皆、やりたいことを普通に言っていいからね!」
「黒板担当は黙って黒板を見てればいいのよバカ!」
「痛い!?いくら女の子の力とはいえ、すねを蹴られるとすごく痛いよチルノっ!」
「おいおい、司会がもめてどうするんだぜ」
「ある意味、いいコンビをしてますねー」
「そ、そう?どこがよ美鈴?」
見ていて心が少し和むからですよ、島田さん!
吉井君の訂正もあってか、クラスの何人かがパラパラと手をあげます。学園祭に全くの無関心というわけではないみたいです。
「はい、ムッツリーニ!」
最初に当てられたのは、そんな名誉なのか不名誉なのか分からないあだ名の持ち主、ムッツリスケベな土屋康太(こうた)君。その鼻に刺さったティッシュがその事実を裏付けます。
「(スクッ)・・・・・・写真館」
「・・・なんか、土屋の言う写真館って、かなり嫌な予感がするわね」
「同意です」
入場者は男子限定な気がしますよ。
「なるほど!最強のアタイの写真を撮るって事ね!やるじゃないムッツリーニ!」
「チルノ、たぶん違います。そっちの方が健全そうですけども」
「・・・不健全な事など、考えていない・・・!」
チルノも可愛いですから、決して悪くは無い人入りにはなると思いますけどね。
「よしー!さっそく黒板に書くのよさ!」
「あいよー」
チルノの指示に、吉井君は素直に黒板へと土屋君の案を書き
【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】
「ってちょっと吉井くーーーんっ!?」
その店名!思いっきりやらしいイメージしかしないじゃないですかー!
「へ?なに美鈴さん?」
「な、何もカニもありませんよ!その名前はダメだと」
「はい横溝!アンタのアイディアは!?」
ちょっとチルノ!まだ私が物申してますよ!
「ああ。メイド喫茶じゃなくて、ちょっと衣装を変えたウエディング喫茶ってのはどうだ?」
「ウエディング喫茶?それって何すんの?」
「やることは普通の喫茶店だが、ウェイトレスがウエディングドレスを着るって感じだ」
「は~、いろいろあるんですねー」
ウエディングドレスですかー。私はどっちかといいますと、和服の方に興味がありますかね?でも、咲夜さんとかすっごく似合いそうな気がしますよ。
「ふ~ん。まあ面白そうね!却下よ!」
「その言い方だと〝許可〟じゃね!?」
チルノ、似ているけれど意味が真逆の言葉って日本語によくありますから、気を付けましょうね。
『斬新ではあるな』
『憧れる女子も多そうだ』
『ちょ、ちょっとウチ着てみたいかな』
『わ、私もです』
『分かるぜ美波、瑞希。私もぜひアイツに着てもらいたいな』
『でも、ウエディングドレスって動きにくくないか?』
『調達も大変だぞ?』
『それに、男は嫌がらないか?人生の墓場、とか言うくらいだしな』
『え?だ、男子ってそんな風に思ってるの?』
『じ、人生の墓場・・・ですかぁ……』
『・・・知りたくない現実を見たぜ・・・…ま、まあア――はおん―だし大丈夫、大丈夫・・・』
『魔理沙、急にぶつぶつ言ってどうしたのよ』
大丈夫魔理沙!きっと〝彼女〟もウエディングドレスに興味がありますよ!『このドレス、縫い目もしっかりしてて凄いわ。良い作りね』とか言ってくれますよ!
ともかく、『ウエディング喫茶』というものは、賛否が分かれていますが、出し物候補として充分ありなようです。
「よしー。黒板に今のアイディアを書くのよさ」
「あーい。え~っとウエディング喫茶だから・・・」
吉井君はぶつぶつと考えながら、再び黒板に記録。
【候補② ウエディング喫茶『人生の墓場』】
「もっと結婚に夢を持ってくださいよお!」
よりによってなんて名前ですか!それじゃ店に来た人に、夢も希望も与えられないじゃないでしょうがー!言ったところで改名されないでしょうから、もう口にはしませんけどね!
「次!え~と、はいまりさっ!」
「ああ、ここは一つ、王道のお化け屋敷でどうだ?準備期間が短いからすごいもんは作れないが、人を満足させるレベルのものは作れると思うぜ」
「あう…お、お化け屋敷ですか・・・」
「ウ、ウチはちょっと嫌かも・・・あ~、ルーミアって子の召喚獣を思い出したわ」
続いて魔理沙の提案。お化け屋敷は凝った作りをすることが出来るかがカギなので、良案か悪案なのかは分かりかねますね。
「お化けやしきね!よしー!」
「りょうかーい。え~と、お化け屋敷は女の子が叫ぶから・・・」
【候補③ お化け屋敷『女性が凄いことになる館』】
「・・・・・・」
ど、どことなくエッチな想像をしてしまうのは、私が汚れてるからじゃないですよ!?きっと皆さんもしてますよ!きっと!
「じゃあ他!あ!はい須川!」
次は須川君です。吉井君のネーミングセンスに負けないようなネタをお願いしますよ!
「俺は中華喫茶を提案する」
「ちゅーかきっさ?チャーハンとか作んの?」
「いや、あくまで喫茶店だから、ウーロン茶とか簡単な飲茶を出すだけになるよ。最近じゃあヨーロピアン文化が中華料理の淘汰が見られるから、その流れを変えようと一石投じてみたいからな。焼け石に水かもしれないが、水滴が石を穿つとも言う。中華料理は古来からあって、料理文化の中心とも言われていて――」
「OK.分かったのよさ須川、アタイにはもう十分に伝わったわ。よしー、今のをしっかり書いとくのよっ!」
放棄しましたねチルノ。須川君が苦笑したのはあなたのせいですよ!
それにしても、須川君は中華に何か思い入れがあるのでしょうかねー。ちなみに私は普通です。てへっ♪
「りょ、了解。え~と・・・」
吉井君が黒板に書きあげます。当然、普通の名前ではありません。
【候補④ 中華喫茶『ヨーロピアン』】
・・・もはや出し物と一切関係ないですねっ!須川君の言葉から適当に取っただけでしょそれ!いっそ名前を付けない方がましです!
がらがら
「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」
その時、Fクラスの担任、筋肉が凄い西村先生が教室に入ってきました。
「あ、西村先生。一応候補が四つ黒板にあがったところですよ」
「そうか。どれ…」
私の言葉に、西村先生がゆっくりと黒板を見ます。
【候補① 写真館 『秘密の覗き部屋』】
【候補② ウエディング喫茶 『人生の墓場』】
【候補③ お化け屋敷 『女性が凄いことになる館』】
【候補④ 中華喫茶 『ヨーロピアン』】
「・・・・・補習の時間を倍にした方が良いかもしれんな」
「こ、黒板に書いた人だけでお願いします!!」
あ、あれがおかしいってことぐらいはわかりますから!
「ち、違うぜ先生!それは吉井が勝手に書いたんだぜ!」
「そうです先生!僕達が決めたんじゃありません!」
「僕らがバカなわけじゃありません!」
皆さんも補習は嫌なので、必死に西村先生の言葉に抗議します。吉井君という生贄を出しながら・・・
「バカ者!みっともない言い訳をするな!」
『!!』
あわっ!?く、クラスメイト1人を売る方法は西村先生も看過できませんでしたか!?
西村先生の一喝に、私たちは思わず背筋を伸ばし
「先生は、バカな吉井とチルノを選んだこと自体が頭の悪い行動だと言っているんだ!」
『ああっ!た、確かに・・・』
「こら待て鉄人!それが教師の言う言葉なの!?そして皆もそれはそうだって顔をするんじゃないよっ!僕をどんなバカだって思ってるのさ!君らは最低のクズだよ!」
「全くなのよさ!アタイはしっかり仕事をこなしてたのに!バカなのはよしーだけにしなさいよっ!!」
なるほどと納得して脱力しました。西村先生の発言に2人は猛反発しましたけど、的は射ていると思います。
「全くお前たちは・・・。少しは真面目にやったらどうだ。稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そう言った気持ちすらないのか?」
『!!』
その西村先生の言葉にクラスの全員がはっと息を呑みました。
「そうか!その手があったか!」
「何も試召戦争だけが設備向上のチャンスじゃなかった!」
「いい加減この設備にも我慢の限界だ!」
教室がざわざわとし始めます。私たちがAクラスに勝負を挑んだのは設備を交換したかったからなので、またもその機会が来ればざわつき出すのも自然の摂理でしょう。
とは言え、ちょっとざわめきが大きすぎてチルノの声が行き渡らなくなりましたの、で私は収拾にかかります。
「はいはーい皆さんいったん静かにー!!そのためにも何をするかを決めないといけませんよーっ!」
パンパンと手を鳴らして静まるように声をあげます。じゃないと、どんどんまとまりがつかなくなるかもしれませんし、火の立つ前に対処するに限りますよね!
「メーリンよくやったわ!んじゃあんた達!何をやるかを、今からアタイが決めるわよ!」
「待とうチルノ!そこはお願いだから皆の意見を聞かない!?じゃないと話し合いをした意味が無いから!皆の不満が爆発するからさ!」
その甲斐あって、皆さんはそこまでざわつかずに静まり返りました。代わりに司会の2人がざわつき始めましたけども。
「え~?仕方ないのよさ。じゃあ、今から多数決で決めるわよ!みんな、この四つの中から一つやりたいことに手をあげなさい!それで一番多いやつをやるわよっ!」
以外にも、チルノは特に文句を言うことなく吉井君の提案に従って多数決を始めました。
「最初に、写真館やりたい奴!―――ん!次、ウエディング喫茶をやりたい人!――よし次、お化け屋敷をやりたい人は!?――おし!最後!中華喫茶をやりたい人―!」
そのまま、チルノの多数決が進んで――
「―よし!じゃあ中華喫茶に決定ね!最強目指して頑張るわよあんた達!」
『おーっ!』
多数決の結果、私たちがすることになったのは――――中華喫茶となりました。チルノの掛け声にみんなが明るく声をあげました。
さあ、決まったことには頑張ってやっていきましょー!
「・・・・・・(ムスッ)」
「・・・も、妹紅ちゃん?どうしました?」
「……………せ、接客・・・出来る気がしない………写真館が、良かった・・・」
お読みいただきありがとうございます!
ちょっと召喚大会の部分で、景品を勝手に追加させてもらいました!美鈴さん達を召喚大会に参加させる方法が思いつかなかったので・・・!別に彼女たちが守銭奴なわけではないですよ!?皆さんもきっと参加したいと思うはずです!たぶん!
さて、清翔祭当日になるまで、もう少し時間がかかると思います。でも、準備期間の部分でも楽しく読んでもらえたら幸いです!
それではまた次回っ!