今週もちょっと早めに投稿させてもらいました!さて、妹紅さんの登場編は終了です!とはいえ、これからもバシバシ出てもらうので、誤解はなさらずに!
前回は少し静かな雰囲気でしたが、今回はいつも通り!にぎやかに楽しくしてみたつもりです!どうか、楽しんでいただければ!
――ごゆっくりお読みください
「咲夜さん。昨日は母さんに怒られてましたけど、何をしたんですか?」
「い、言わないで美鈴(メイリン)。私だって何をしたのか聞きたいくらいよ。はー・・・」
学校への登校中、重い溜息を咲夜さんはつきました。ほ、本人の希望通り、母さんに連れられて何をされたのかは聞かないでおきましょう。
「そう言う美鈴は何をしてたのよ?どこにもいなかったじゃない」
「私は妹紅さんに家の案内をしてたのですよ。ねえ?」
「・・・・・あ、ああ…」
私たちの後ろを近く遠からずの距離でついてきた妹紅さんが、小さく返事をしました。
「あら、そうだったの」
「そうですよ。それにしても妹紅さんの制服姿、素敵ですね~」
「・・・・・・(ぷいっ)」
「ああっ、そっぽを向かなくてもー」
妹紅さんが今着ているのは私達と同じ、黒のブレザーと赤のスカートの文月学園の制服。とても似合っているので賞賛したんですけど、妹紅さんには恥ずかしかったみたいです。
で、その昨日やってきた妹紅さんなのですが・・・なんと、今日から文月学園に編入することになったそうです。それも私達と同じ二年生ですよ!
私も母さんから聞いた時には驚きましたけど、聞けば既に転校の手続きは済ませて、学校の教科書や制服一式も購入しており、どのクラスに入るのかを決めるクラス分け試験も行ったらしいです。妹紅さんの存在を知らなかったので当たり前ですけど、そんなことになってるとは全く気付きませんでした。
でもま、そこら辺の事を聞くのは妹紅さんにとっても嫌かもしれませんし、自粛するとしましょう。
「ところで、妹紅さんはどのクラスなんですか?」
学力が高い順にAクラスからFクラスと、所属しているクラスで学力を測られるこの学校。出来ることなら高いところへ行ってほしいですよ!
「・・・え・・・・・・た、たぶ『おはよう紅、十六夜、藤原(ふじわらの)』――~~ッ!?(ギュッ)」
「わわっ?お、おはようございます西村先生」
も、妹紅さんが自分から私の背中にしがみついてきたですってー!?
「西村先生。おはようございます」
「ああ、おはよう。……俺の顔を見た途端に隠れられるのは、少々辛いものを感じるものだな」
そのきっかけのようである、生活指導の先生かつ私達Fクラスの担任、西村先生は苦笑しながら妹紅さんに話しかけていました。
「西村先生は、妹紅さんの事を知ってらっしゃるのですか?」
咲夜さんが私も気になったことを代わって聞いてくれます。だって自己紹介もしてないのに、妹紅さんの名前を呼んでるんですよ?そりゃ気になるってものですよ。
「ああ。今日からここで学ぶことになる転校生だろう?」
「はい。あってますが、先生がなぜその事を?」
「この時期に生徒が転校してくることは特殊ケースで、先生全員に把握してもらうことだからな。それに、藤原のクラス分け試験を見たのは俺だ」
「あー、そうだったんですか」
・・・ん?私の勘が何かを告げましたよ?しかも経験上、この感覚はダメな方ですね。
「それで、だ。藤原、お前に渡す物がある」
西村先生がスーツの内ポケットから茶封筒を出します。おそらく、自分の所属するクラスが書かれた紙が入ってるあれですね。
「この中に、お前がこの一年過ごすことになるクラスが書かれてある。開けて見るように」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(パシ)」
「妹紅さん、こんな怖い顔で怒って見える先生ですけど、西村先生はそんなに怖い人じゃないですよ?だからそんな警戒しなくても大丈夫ですよー?」
「むう。別に怒っているわけではないのだがな・・・」
妹紅さんが私の背中から恐る恐る封筒を取るのを見て、西村先生は自分の顔を触り始めます。あはは、そんな事をする西村先生は可愛らしく見え
「んぎゃ!?な、何でげんこつするんですかーっ!」
「俺にとって苦い物を感じたからだ」
「い、言いがかりですよー!?」
でも実は当たっちゃてます!西村先生は体力だけじゃなくて、勘もすごかった!
「―――妹紅さん?開けないの?」
「「ん?」」
咲夜さんの声に私と西村先生は、声の方、つまり私の後ろを向きました。妹紅さんが背中にしがみついていますから、私は頭だけを動かします。く、首が痛い・・・!
「・・・・・・・・・・・・」
その視界の右端っこで、妹紅さんが手に持った封筒をじーーっと見つめていたのが見えました。
「ど、どうしましたか妹紅さん?」
「・・・・・・開けないと・・・・・・だめなのか?」
「へ?」
何を妹紅さんは言いだすのでしょう。
「それはそうよ妹紅さん。だって開けないとクラスが分からないでしょ?」
咲夜さんの言葉通りですよ妹紅さん。まさかクラスがどこに行くのかを知ってるわけじゃあるまい
「………私、どのクラスに行くのか分かる・・・・・・と、思うから・・・」
「ええっ?」
そんなバカな!?じゃあ、クラスを知る時のあのドキドキ感を味わえないという事じゃないですか!そんなのもったいないですよー! (あなたがそれを言いますか・・・)
「何を言ってるのよ、そんなわけないわ。ですよね西村先生?」
「・・・・・・・・・ああ。そう、だな (スッ)」
ん?先生。今の空白と横を向いたのは、ただの気まぐれですよね?
「妹紅さん。そういう事だから開けましょう。それも一つの行事だもの」
「・・・・・・・・・・・・やっぱり、こいつは・・・・・・・・・嫌だ……(びりびり)」
「う・・・そ、そんなひどいこと言わないでよ…」
嫌そうに妹紅さんは封筒を開けだします。で、でも咲夜さんの言ってることは本当なんですよ?だから咲夜さんを嫌いにならないであげてください~。
「――藤原。俺はお前のことを知らなかった」
『?』
突然、そんなことを言って西村先生が罰の悪そうな顔をして妹紅さんを見ます。
「後から学園長に聞いて・・・・・・藤原が、極度の人見知りだという事を知った」
「・・・・・・(ごそごそ)」
妹紅さんは西村先生に目を向けないまま、封筒を開封します。西村先生もそれは気にならなかったみたいで、言葉を続けます。
「だからこそ、今更になるが、そしてそれをお前が言っていたとしても、俺のやることは変わらなかっただろうが・・・それでも、一つ言わせてほしい」
「・・・・・・(がさっ)」
お、紙が出てきました。え~と、妹紅さんのクラスはどこ――
「・・・・・・済まなかった。が、嫌なことがあるのなら、きちんとその事を言いなさい」
『藤原 妹紅 Fクラス』
「えっ?」
「も、妹紅さんっ!?」
私と同じクラスですか!?それは良かっ、じゃなくて!
「な、なんでまたFクラスなんですか!?」
Fクラスってよっぽどひどくないとならないと思いますよ!?ひ、ひょっとして、妹紅さんはそこまで頭は・・・
「・・・・・・・・・だって……その先生が、近くで見てて…………全然集中できなかったし・・」
「「・・・・・・西村先生」」
「・・・生徒の不正行為が無いかを見るのも、教師の仕事だったんだ・・・。すまん、藤原」
なるほど、さっきの嫌な予感はこれだったんですね。母さんにしか慣れていないようである妹紅さんが、知らない大人の男の人、それも怖くていかつい顔をした西村先生と二人きりになれば、そりゃー気が気でなかったもしれませんねー。こればっかりは西村先生が原因と認めないといけません。
「ごほん。とにかく、すまないがこの結果は絶対だ。今日からお前は俺の受け持つFクラスで学んでもらう」
「……ええぇ・・・・・・・・・・・・・最悪」
「・・・・・・そんなあからさまに怯えた表情で、ひどい事を言わないでくれ・・・」
普段は強気な西村先生も、純粋に人に怯えられたらへこむという新事実を私は知りました。吉井君達風に言うなら、鉄人の目にも涙、ですね。
「ごほんっ。では藤原。色々と準備やら連絡しておくことがあるから、一緒に職員室に来てくれるか?」
そんな先生の言葉に、妹紅さんは、
「・・・・・・・・・・・・い、いや、だ、です」
「え・・・も、妹紅さん?」
咲夜さんが驚きの声をあげます。どうも、妹紅さんの人嫌いは生半可ではないみたいです。よもや先生の指示を断るとは・・・
「いや、そう言われてもだな・・・」
「あ、後で・・・・・・教室でして。職員室は絶対、嫌だ・・・」
職員室に何か含むところがあるのか、妹紅さんは『絶対』とまで言って西村先生の言葉はねのけようとします。
「だがな藤原。お前は新しい転校生ということになるのだから、先に教室で待ってもらうというのは・・・」
西村先生が困ったような顔になって、腕を組みます。吉井君達のように問答無用で連れて行かずに、柔らかく説得しようとしているあたりは、西村先生の配慮が伺えますね。お見事です。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、」
「・・・へ?な、何ですか妹紅さん?」
そんな西村先生の説得に長く口を閉じた妹紅さんは、私を見上げて、
「・・・・・・あ、あんたも・・・・・・その・・・一緒に、来てよ」
妥協案を出しました。
「はい?」
「なに?」
「・・・どうでもいいけれど、美鈴と先生の反応、そっくりね」
咲夜さん、全くそのとおりかもしれませんね。
「む?まだ紅が来ておらんのう」
僕、吉井明久がFクラスでいつもの皆と話をしていていると、始まりのチャイムがそろそろというところで秀吉が周りを見てそう言いだした。
あ、そう言われると美鈴さんの姿がないや。どうしたんだろ?
「ん?そう言えばまだ来てないな、紅のやつ」
「ひょ、ひょっとして風邪でもひいたんじゃないの?」
「いや、〝美鈴は風邪をひかない〟って言うぜ」
「ま、魔理沙ちゃん!その言い方は間違っているし、そんなこと言ったらダメですよ!?」
「そうだよ魔理沙。そこは〝雄二とチルノは風邪をひかない〟、だよてあだまがいたくて腕もいだいいい!?」
「まったく。明久ダメだぞ?そこは〝明久という大馬鹿野郎は風邪をひかない〟が正解だ。よく覚えとけ大馬鹿野郎」
「その通りね、良く言ったのよさ坂本。アタイのどこがバカだってのよ、この大バカよしーが」
こ、この2人が僕より賢いだなんて意地でも認めないぞ!たとえもの凄い力の万力や、地味に痛い腕の肉をつねる攻撃を受けても!
キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイムが鳴りましたね」
「うし、じゃあ座るか」
「そ、そうだね。いたた・・・」
雄二達から解放されて、僕たちは自分の席にばらばらと座り始めた。痛た、雄二は本当に力が強いなあ。あと、チルノに握られたところが地味にひりひりするよ。
「皆、席に着くんだ」
チャイムが鳴り終わると同時に、担任の鉄人こと西村先生が入ってきた。相変わらずの筋肉の持ち主だ。それで僕は何度ひどい目に遭ったのやら・・・
「よし、皆席に着いたな。出欠を取る。浅野」
「はい」
そのまま出欠確認が進んで、最後の1人の名前が呼ばれて確認は終了(なんでか美鈴さんの名前が呼ばれてもすぐに次の名前が呼ばれてたけど、なんでだろ?)。鉄人は出欠帳をパタリと閉じた。
「よし、皆揃っているようだな。しっかり勉学に励むように」
皆って、美鈴さんがいないじゃない。鉄人は何を言ってるんだろう?とうとう脳も筋肉になっちゃったんだろうか?
「さて、俺から一つ連絡事項がある」
連絡事項?今まではそんなになかったのに、珍しいなー。何か変わったことでもあったのかな?
「突然だが、今日からこのクラスに転校生が入ってくる」
ざわ・・・!!
鉄人の突然の言葉に、クラスの皆がざわめき始めた。それは僕も同じだ。転校生が来るっていうのは良く聞くけど、自分のクラスに来るっていうのは初めてだ!一体どんな人なんだろう?
「へ~!せんせー!それってどんな奴なの!?」
チルノが元気よく挙手して、僕の知りたかったことを聞いた。今回だけは感謝してあげよう。
「チルノ。〝奴〟じゃなくて〝人〟と言え。・・・・・・そうだな」
僕だけじゃなくて、皆が鉄人の言葉を待つ。大事なのは・・・!
「・・・・・・俺が詳しく言うのもなんだから、あまり言わないでおこう。だがこれだけは言っておく。その子は、かなり人見知りの激しい女子だ。あまり負担のかけるようなことをするな」
『よっしゃあー!!女子きたきたきたぁぁぁ!!』
野郎たちの魂の叫びが響き渡る。やった~!どうやら神様が微笑んでくれたみたいだ~!!ありがとう神様、この男の比率が高いバカクラスに女の子が舞い降りてくるなんて・・・!ああ!人生捨てたもんじゃなしだ!
「それを、負担をかける行為と言うんだアホ共が・・・」
「吉井君・・・」
「アキ、あんたその内、女の敵になるわよ…」
そんな三人の声は有頂天の僕には聞こえなかった。
「じゃあ、西村先生。その女子は今廊下にいるのか?どうなんだぜ?」
「ああ。廊下で待ってもらっているというのに・・・今の大声で怯えてたらどうするというのだ、全く」
はあと頭を押さえる鉄人だけど、僕達はその女の子のことしか気にならない。どうしよう、その子は優しい人なのかな?僕の事を好きになったりしないかな?そんな青年らしい夢が溢れて全然止まらない!
「・・・では、そろそろ呼ぶとしようか」
ガラリと前のドアを開けて、鉄人が廊下へと出た。ああ、ついにこの時が・・・!
「では、入ってくれ」
鉄人がもう一度教室に入ると同時に、スッと扉に手がかけられた。
おお、なんてきれいな手なんだろう・・・!その先に美少女がいると考えると、僕は期待せずにはいられなかった!
現れる細い腕、でも健康さは全く失われていないから、とっても魅力的だ!嫌でも僕たちは目をくぎ付けになり、皆がワクワクしてその腕を見続ける。
・・・・・・そして、遂にその姿が―――――!!
「あ、皆さんおはようございます!」
『チェエェェェエェエンジッッ!!』
「ひいっ!だ、大ブーイングですかぁっ!?」
ショックを受ける綺麗な手の主。それはクラスメイトの紅美鈴さんだった。
ちょっとちょっと!いくら美少女であろうと、この興奮と期待を裏切った罪は大きいよ!?このわくわくと高揚感を返して美鈴さんっ!君にはがっかりだよ!
「おいおい先生~。まさか美鈴が転校生って言うのか?西村先生にしてはひどい嘘だぜ」
魔理沙も非常にがっかりという顔で鉄人と美鈴さんを交互に見る。全くその通りで、転校生が来るなんてウソをついて僕たちをからかおうなんて、あまりにもひどくないかな!?
「何を言っている」
けど、鉄人はただあきれた風に息をついて、
「紅の後ろをよく見てみろ」
『ん?』
そう言ったので、僕たちは美鈴さんの後ろをもう一度見た。ん、んん~?
「・・・・・・・・・・・・・・・(こそ)」
美少女がいました。
ドアの向こうから少しだけ顔をのぞかせているその女子は、顔は半分隠れているけれど、とても整った顔をしているのがすぐに分かるぐらいの美少女だった。
『おお~っ!!』
「・・・・・・っ!(ひゅっ)」
皆の驚いた声に、彼女はすぐに頭を引っ込めてしまったんだけど、そんなところにぐっと来た僕は間違ってないはずだよね?心清らかな男子ならやっぱり思うよね!?
「あ、良かったら私の後ろに隠れてください。それならだいぶ違うでしょう?」
美鈴さんがそう言って廊下に顔を出すけど・・・もしかして、2人は知り合いなの?だとしたら、後で美鈴さんに間を持ってもらうことも出来るよね。よし、後で頼むとしよう。
「・・・・・・(こそ)」
僕が彼女と過ごすハッピーな時間を空想してるうちに、彼女は教室に入って、美鈴さんの背中に隠れた。おかげでその姿は見えない。
「皆さん。彼女はちょっと人見知りをする子ですので、私が前に立たせてもらってますけど許してくださいね~?」
美鈴さんはそう言って謝るけど、僕らは全然気にしない。だって女の子がこのクラスに来てくれるだけですごい嬉しいし、やっぱり無理をするのは可哀そうだもんね。
美鈴さんの後ろに隠れたまま、転校生さん達はFクラス特有のボロボロ教卓の前に立った。
そして、ごほんと美鈴さんはせきばらい、僕たちを見て注意をした。
「じゃあ、今から自己紹介をしてもらいますので、静かにお願いしますね!」
転校生の事でざわざわしていた皆も静かになり、聞く準備が整ったのを確認した美鈴さんが、転校生の方を向く。
「では、お願いしますね」
「・・・・・・・・・・・・ん(すっ)」
その姿を見た瞬間、おおおっ・・・!って声がクラス中からあがり出す。
美鈴さんの後ろから半分体を出した転校生さん。その姿を見て僕が最初に思ったのが、白いなー、だった。
もちろん顔も可愛くて、このクラスにいる女子(チルノはバカだから除外しよう)の誰にも負けず劣らずなんだけど、なんといってもその髪が凄い。
まるで、雪みたいに真っ白で純白の綺麗な髪。
それを地面に届きそうなくらいに伸ばしていて、ただすごいと言うか、神秘的っていう言葉が似合ってるんじゃないかな?とにかく、僕たちに与える衝撃はすごかった。
「うわぁ~・・・!」
「き、きれい・・・」
「おお、スゲェのよさ・・・!」
「へ~、すごい髪だな~!」
姫路さんや美波にチルノ、それに、普段は人をからかったりする魔理沙も、ただ感動の声や褒める言葉をこぼしたりしている。男子にいたっては、もはや言葉どころか呼吸も忘れそうな勢いで、転校生を見て固まっていた。
「う・・・・・・・・あ、う・・・・・・・・・・こ、こ、んにちは」
視線の的となった彼女は、ちょっとだけ美鈴さんの後ろに体を戻して、挨拶を始めてくれた。
「・・・藤原妹紅、だ。よ、よろしく」
ふじわらのさん、はそこでぺこっと少しだけ頭をさげた。少し短かいけれど、これで自己紹介は終わりみたいだ。
「そういうことだ。皆、仲良くするのはもちろんだが、あまり藤原に負担をかけないように一緒に過ごすんだぞ」
鉄人が念を押すように僕らを見渡す。全く、僕のような紳士が藤原さんのようなレディーに迷惑な行為をするわけないじゃないか。あとで隙間なく質問をするぐらいだよ。
「では、藤原。そこがお前の席だ。紅、フォローを頼むぞ」
「はーい!」
「・・・・・・(こく)」
「うむ。ではこれでHRを終了する。しっかり勉学に学ぶように」
ああ、今日も一日さわがしくなりそうだ。僕の左斜め前に座った藤原さんとその右側の美鈴さんを見て、僕はそう思った。
「初めまして藤原さん。紳士で有名な近藤です。結婚後もよろしく」
「はーいエセ変態紳士は黙りましょーねー」
やれやれー、やっと昼食の時間ですか。今日はまた一段とお腹がすきましたねー。これはきっと妹紅さんの護衛が原因ですねえ。
「もこうさん。前から好きでした。結婚してください」
「前も何も今初めて会ったんでしょーが。出直してじゃなくて諦めなさい」
朝、西村先生が出て行くと同時に、私の左の席、つまり妹紅さんにクラス中の皆が話しかけようとしたんですが、最初に話しかけたのはFクラス一の秀才、姫路瑞希さんでした。
『こんにちは、藤原さん。私は姫路瑞希っていいます。お好きに呼んでください!』
『・・・・・・・・・・・・よ、よろしく』
『あ、でもせっかくですから、私の事は瑞希って呼んでくれませんか?あと、私も妹紅ちゃん、って呼んでいいでしょうか?』
『・・・・・・・・別に、いいけど・・・』
『ありがとうございますっ。これからよろしくお願いしますね、妹紅ちゃん!』
『・・・・・・・・・・・・・・よ、よろしく」
姫路さんが明るく話かけていくのを妹紅さんがぽつぽつと答えるだけのやりとりでしたが、きっと妹紅さんも嫌だとは思っていないでしょう。その証拠に、顔を固くしていたのが少し緩みましたもの!
そして一時間目のチャイムがあり、会話は終了されました。
「藤原妹紅さん!俺と結婚を前提に付き合ってくれ!」
「まずはお付き合いを前提に交友を深めようとしなさい。上手くいくかは保証しませんが」
で、一時間目終了後。ポニーテールが特徴の島田美波さんと、私と近所の霧雨魔理沙、そしておバカのチルノ・メディスンが妹紅さんと会話をしました。
『おっす!アタイはチルノ・メディスンよ!今日からもこーはアタイの子分ね!』
『あほ。いきなり何を言うんだぜ』
『あいた!』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・い、いやだ・・・』
『あ、大丈夫よ。この子はそう言うのが好きなだけだから。ねえ魔理沙?』
『おう、その通りだぜ』
『………あ、そう』
『あ、ウチの名前は島田美波よ。で、そっちの女子が霧雨魔理沙、それでこのちっちゃいのがチルノ・メディスンよ』
『あ、私の自己紹介を取ったな美波~。ま、そういうわけで、わたしは恋に生きる霧雨魔理沙だぜ。よろしくだぜ妹紅』
『・・・・・・よ、よろしく』
『ちょ、ちょっと待つのよさ!アタイの背がちっちゃいんじゃないわ!アンタ達がでっかすぎるのよ!』
『え?そうでもないわよ。ウチはかなり低い方だけど?』
『私もだぜ』
『う、うう~・・・はっ!もこー!もこ-はアタイは普通だって言ってくれるわよね!?』
『・・・え・・・・・・・・・し、知るかっ』
『どうやら妹紅は私らの仲間みたいだぜ、チルノ』
『大丈夫。きっと成長期がまだなだけよ、チルノ』
『一年前からずっと変わってないのよさーっ!!』
『・・・・・・・・・・・ご、ごめん』
チルノも涙を流すという事を、この時初めて知りました。
チャイムが鳴って二時間目の担当の福浦先生が来ても、チルノは涙を止めませんでした。そしてそれを気にせず授業をする先生。担任が変わっても変わらないでいてくれて、ほっとしました。
「もこたんまじ最高―っ!」
「あ、そのあだ名可愛いですね」
そして二時間目終了後。妹紅さんに話しかけたのは秀吉君と土屋君です。
『・・・・・・土屋康太。よければ、写真を撮りたい(バシャバシャバシャ)』
『・・・え、え・・・・・・!?』
『許可の前に撮っておるぞい。やめんかムッツリーニ。藤原が嫌がっておるのじゃ』
『……や、やめろ・・・・・・』
『・・・・・・分かった』
『すまんのう。わしは木下秀吉というのじゃ。よろしく頼むぞい、藤原』
『・・・・・・・・あ、あんた・・・・・・女子?』
『わ、わしは男じゃーっ!』
『ひっ!?ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん―――!』
『あ、え!?ま、待ってくれ藤原!そ、そんなに謝らずとも、わしはそこまで怒っておら――!』
『・・・秀吉く~ん?ちょーっと、私についてきてもらえますかねえ?』
『ぐあっ!ま、待ってくれ紅!わしもあれほど嫌な思いをさせてしまうとは思わな、い、痛い痛い痛い痛いのじゃーー!』
『・・・・・・・・・・・・大丈夫?』
『――さいごめんなさいごめん・・・・・・え……さっきの奴は・・?』
『・・・・・・珍しく、怒られている。南無・・・』
次の初めては、秀吉君をしかることでした。私は三時間目担当の先生に頭突きを食らうことで秀吉君を解放しました。ああ、今思い出しても凄い石頭ですよ・・・
「藤原。その髪を触らしてくれ」
「吹き飛ばされたいんですか変態こら?」
「同じく」
「よおし。ちょっとあんたら歯をくいしばりなさい」
そして三時間目終了後、痛む頭をさすりながら横を見ると、今度はこのクラス一の問題児、吉井明久君と坂本雄二君が妹紅さんと話そうとしていました。
『今日は、藤原の妹紅さん!これからよろしくね!』
『・・・・・・・・・・・・「の」が一つ、多い・・・・・・』
『え、う、うそ!?』
『名前を間違えるなんて、お前は最悪だな、バカ久』
『そう言ったそばから、悪意に満ちた間違えをわざとする雄二はどうなるんだよ!』
『藤原。俺はこのクラスの代表の坂本雄二だ。このバカに変わって深く詫びよう』
『・・・・・・・・・ん』
『ご、ごめんね藤原さん。僕の名前は吉井明久っていうんだ。聞きたい事があったら遠慮なく聞いて?出来る限り相談に乗るよ』
『・・・・・・じゃあ・・・・・・なんで、ミカン箱?・・・机・・・』
『『こいつのせいなんだ』』
『・・・・・・・・・』
『ちょっと!どう考えても雄二のせいじゃないか!?雄二があそこで霧島さんに負けてなければ僕たちが勝ってたじゃん!』
『それはお前にも言えるだろうが明久!何が僕は本気を見せてないだ!本気を見せたところでたかが知れてたじゃねえか!』
『なにを!雄二が僕に言ったんじゃないか!』
『あほが!あんなもん信じるお前がバカなんだよ!』
『やるか!?』
『上等だ!』
『…………け、けんかは・・・・・・よくない・・・』
『む、仕方ない。ここは藤原さんの言う通りにしないとね』
『そうだな。やれやれ、明久はロリコンのくせに、こういう時には常識を持つからな』
『…………ロリコン・・・・・・うわ・・・』
『ち、違うよ!だいたいあれも雄二のせいじゃないか!僕は完全に濡れ衣を着せられたんだよ!』
『何を言う。お前も嬉しかったんじゃないか?何せ、あの八雲 藍先生の自慢の娘、橙(チェン)だ。会ったことはないが、年齢が同じなら、かなりの美人だと俺は思うぞ?』
『・・・あ、なるほど。そう言われるとまんざらでもないね。お付き合いしたくなるかもれないや』
『・・・・・・・・・あ・・・え…?』
『でも、あんなに可愛がるなんてどんな子なんだろうね?いい子なのかな?』
『さあな。そればっかりは八雲先生に聞かないと分からん』
『だよねー』
『とてもいい子だよ。仕事が終わって家に帰ると、「おかあしゃまお帰り!」と言って出迎えてくれるな』
『へー。そうなんだー』
『母を愛する娘って感じだな』
『………え・・・・・・だ、れ・・・?』
『そしてそれだけじゃない。料理を作るときも、「橙も手伝うっ!」と、自分から手伝ってくれて、私の負担を減らそうとまでしてくれるんだ』
『へー、偉いなあ』
『全く、明久が9才のころは何もしなかっただろうな』
『あはは、そうだったかもね~』
『同感だな。貴様らのような奴が橙と同じようなことをしているなど、聞くだけで虫唾が走る』
『・・・・ひっ………!』
『やだなあ。ひどいじゃないですか八雲先生ー』
『全くだ。生徒にはもっと愛情を注ぐべきだ、八雲先生』
『なに、その必要はあるまい。貴様ら2人には、愛情ではなく憎悪を注ぎ込むので十分だろうからな』
『あはは、八雲先生は冗談を言う人だったんですね』
『これは新しい発見をしたな、明久』
『残念だが、私はあまり冗談が好きではなくてな。橙のからんだことには一度も冗談を言ったことが無い。覚えておくといい』
『・・・・・・う、う~・・・・・・!!』
『そうでしたかー。あっはっはっは』
『それは済まなかった先生。はっはっはっは』
『いいさ。今から存分に叩き潰させてもらうからな。クックックッ・・・』
『・・・・・・』
『・・・・・・』
『・・・・・・(パキボキボキ)』
『・・・!!・・・・・た、助けて、勇儀・・・!』
『『――――サラバッ!!』』
『貴様らそこになおれぇぇぇっ!!』
・・・休み時間は終わり、四時間目の担当は八雲 藍先生でしたが、2人の仇敵を討ちに行ったために、自習となりました。
妹紅さんが思い切り震え上がって泣きそうになっているのは、八雲先生のせいではなくあのバカ二人のせいだと私は決めます。だって、咲夜さんやレミィやフランが同じことされたら、私はもっと荒れ狂う自信があるからでございます。家族って大事ですよねー!
そして、現在昼休み。
「・・・・・・・・・・・・(ふるふるふる ぎゅ~)」
「だ・・・大丈夫、ではないですよねえ~・・・大丈夫ですよ妹紅さんー。私がいますよー」
「妹紅さん!俺とデートをして」
「やかましい!とっとと諦めてください!」
さきほどの吉井君達が原因による八雲先生の乱心に、妹紅さんはぶるぶる怯えてず~っと私にひっつく状態になっちゃってます。私としては頼られてるみたいみたいで嬉しいんですけど、喜ぶところじゃありません。
そんな状態なのに、やむことが無く振り続けるバカ男子からのアプローチ。全く、先生に負担はかけるなって言われてるのに、何考えてやがるんですか!そりゃ悪意が無いってのは分かるんですけど、もう少し普通の話をしかけなさいよっ!
下心丸出しすぎて妹紅さんは何も答えれないから、代わりにさっきから私が答えてるってことにいい加減気づきなさい!
「だ、大丈夫ですか?美鈴さん、と妹紅ちゃん」
そんな私たちを心配して、瑞希さんが遠慮気味に声をかけてくれました。
「あ、私は全然だいじょぶですよ。でも妹紅さんがちょっとね」
「さっきの八雲先生は怖かったもんね・・・大丈夫、妹紅?」
「・・・・・・・・・・・・・だ、大丈夫じゃない」
島田さんも妹紅に声をかけて、顔をしかめさせたまま妹紅さんは正直に答えます。ど、どうしましょう。これって保健室に連れて行くべきでしょうか。
「そ、そうよね。ウチが保健室に連れて行ってあげよっか?」
「・・・い、いい。これも、訓練になるから・・・・・・嫌だけど……」
「妹紅さん・・・」
妹紅さんはフルと首を横に振ります。ううっ、自分を変えようとするその気持ちに、私の鼻がツンと来ました…!
「しっかし、まだ吉井達は戻ってこないなー。もうお陀仏しちまったんじゃないか?」
「う~ん。らん先生も最強ね。アタイ、思わず身震いしたわ」
廊下を眺めながら魔理沙達はそんなことを言います。チルノがこうもあっさり人を褒めるとは珍しいことですね?
「ちょっと魔理沙。縁起の悪いことを言わないの!」
「とは言え、今の八雲先生だったらありえそうで怖いですけどね」
吉井君達が明日の朝日を拝めることを願いますよ。
「・・・・・・・メ、」
すると、妹紅さんが
「ん?」
「・・・・・・・美鈴」
「!あ、な、なんでしょう?」
い、今、初めて名前を呼ばれましたよね?
「・・・・その・・・・・・あ、ありがと」
「!あ、い、いえ、いえいえいえ~!」
まさか、妹紅さんがお礼を言ってくるとは思いませんでしたよ。男子達を追い払った私に、少しでも心を開いてくれたのでしょうか?良く頑張りました私!
「さ、今は昼休みですから、ご飯を食べてのんびりしましょう」
「・・・・・・ん」
この調子で皆と仲良くなってもらえたら嬉しいですねー。母さんもきっとそれを望んでますよね!
「あ、じゃあウチらもいい?」
「そうだぜ美鈴。私らも妹紅との親睦会に混ぜてくれるよな?」
「い、良いでしょうか。美鈴さん、妹紅ちゃん・・・?」
「アタイもよ!いいわよね!?」
そこに加わろうとする四人組。もちろん!と言いたいのですが、ここは妹紅さんの意見を尊重するするべきですよね。
「妹紅さん、いいですか?」
「・・・・・・か、勝手にしたら・・・いい」
おっと!乗り気ではなさそうにしても、拒絶はしてません!どうやらクラスの女の子と打ち解けるのは遠くないのかもしれませんね♪
妹紅さんがクラスで楽しくいられる未来を垣間見て、私たち六人は昼食を堪能し始めました。
「(どさっ)では、お願いします。八意(やごころ)先生」
「分かりました。・・・・・・けど、一対何をしたのですか、藍先生?この2人、見ただけでもかなりボロボロですが」
「あ・・・い、いえ、少し灸を据えようと思いまして・・・」
「・・・・・・は~。橙ちゃんのことで、でしょ?」
「むぐっ・・・そ、その通りです」
「娘を大事に思うのは悪くないけど、過剰にしすぎるのは逆効果だから気を付けなさい。その内、橙ちゃんを傷つけるかもしれないわよ?」
「う・・・ぜ……善処します」
「全く・・・・・・藍、たまにはその心を紫にも向けてやったらどう?この前も、藍が冷たいー、とか泣き事をこぼしてたわよ」
「いえ、姉さんはあれでいいんです。私が言うのも変ですが、姉さんは私を溺愛しすぎです。だから、少し距離を置いた方が姉さんの為です」
「・・・その言葉、自分の首を絞めてるって気づいているかしら?あなたが橙ちゃんに冷たくされたらどう?」
「トラウマになって臥せる自信があります」
「自信を持って言う事じゃないわよ、馬鹿」
「う、ぅう…鬼が追って・・・」
「誰か、た、助けてくれ・・・」
「妹紅、学校では大丈夫だったか?」
「・・・う、うん・・・色々あったけど…あいつ・・・・・・美鈴が、間を持ってくれたから・・・」
「そうかそうか!どうだ?美鈴もいい子だろう?」
「・・・・・・うん。・・・でも、やっぱり勇儀が一番・・・安心する。ん・・・」
「はっは、そうかい。まあ今日は疲れただろうし、気の済むまで好きに使いな。お疲れさん、妹紅」
「・・・・・~~♪、勇儀・・・膝枕、ありがと」
お読みいただきありがとうございます!
さて、どうだったでしょうか?妹紅さんにFクラスのおバカたちと触れ合ってもらい、久しぶりに藍先生に出てもらって、親バカを炸裂してもらいました!そのどれか一つでも笑いが起こってくれれば、作者としては大成功です!ああ、どうなることか・・・!
では、今回で妹紅さんの登場編は終わったので、次回からはようやく原作、学園祭編に突入をしていきたいと思います!笑いの展開に繋げていきたいです・・・!!
それではまた次回!気軽に感想とか質問をしてくださいね~!