バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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 どうも、村雪です!まだ一応五月なのにこの暑さ!思わず顔をしかめてしまいますね!

 さて、前回も言いましたように、今回もオリジナル回で、新たに一人東方キャラクターに登場してもらいます!

・・・・・・が、そのことについて。

―――これは誰?全然違うぞ!キャラおかしい!・・・って思う方が結構出るんじゃないかと村雪、かなり思っています!

 彼女のファンの方には非常に申し訳ないのですが、村雪がこうしたかったということで、そこは許してやってください!たぶん、皆さんの思う彼女とはだいぶ違う姿になると思います~・・・・・・


 いつもとは少し雰囲気も違った今回。いろんな不安もありますが、いつも通りこの言葉を告げさせてもらいます。楽しんでもらえる内容になっていることを・・・!!


―――ごゆっくりお読みください


ニューファミリー!純白の内気少女編
来宅―迎合、の時の交流が……後を変える


「ん~、こんなものですかね?」

 

「そうね。あ、でもポン酢は切らしてたわね。取ってくれない美鈴?」

 

「は~いよっと。あ、レミィ達のお菓子もついでに買っておきますか?」

 

「ん、そうね。どうせなら買っておいてあげましょうか」

 

「あ、ついでにあの黒麦茶というものも―」

 

「あれは少し割高だからやめておきなさい」

 

「おうっ、残念」

 

 

 あれは体に良いらしいんですけどねー。でもまあ、健康だけが取り柄の私にはいりませんかね!興味心で高いものを買うのはよくなかったです!

 

 

「じゃあレジに行きましょうか」

 

「そうね」

 

 

 私、紅美鈴(ホン メイリン)と銀髪碧眼の可愛い妹、十六夜咲夜さんは、自宅の近所のスーパーで買い出しに来ていました。時刻は夕方、主婦の皆様も夕飯の買い出しに気合を入れて店はにぎわっているなか、私たちはレジに到着してレジを済ませました。

 

 

「あー、良い夕焼け具合ですねー」

 

「確かに。一日が終わるって気持ちになるわね」

 

 

 山の向こうに消えゆく夕日。クラスメイトの土屋君が女の子専門のカメラマンじゃなければ、激写していたことでしょう。

 

 

「今日また色々とありましたからねー、早く風呂に入ってゆっくりしたいもんですよ」

 

 

 Fクラスという魔界クラスでは、出血や暴力は当たり前。朝から遅刻してきた生徒に担任の先生が鉄拳を振り下ろしたり、女子のスカートの中を撮ろうとしたムッツリが鼻血を流したり、学年一バカと言われている二人組がバカをやってそれに鉄拳制裁と、平凡と言う言葉が全く見つからない日々を過ごしております。ちなみに私は普通です。何もしてまぜんからね?ちょっとバカをする人にストップをかけただけです!

 

 

「じゃ、早く戻りましょう」

 

「そうですねー」

 

 

 そんな混沌の魔窟を耐え抜いた私は、自宅でその疲労を癒す予定。私達は荷物を持って、少しだけ早足に家へと戻りました。さあ。この一日の疲れをしっかり家でとるとしましょう!具体的には咲夜さんかレミィ達にハグです!

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー!」

 

「おかえりメーリン咲夜っ!」

 

 

 ごく普通の一軒家。我が家に到着して玄関に入ると、小さな可愛い二人の妹が出迎えに来てくれました。

 

 

「ただいま。レミィ、フラン。何か変わった事があった?」

 

 

 咲夜さんが荷物を置いて、レミィことレミリア・スカーレットとその妹、フランことフランドール・スカーレットに尋ねます。

 

 

「うん、あったよー?」

 

 

 すると、綺麗な金色の髪をこくりと頷かせてフランが言います。

 

 

「え、何かしら?」

 

「うん、それがね」

 

 

 

「お母さんが今日早く帰るそうよ。フランの話が本当ならねっ!」

 

 

 フランが口を開く前に、レミィが蒼髪の頭を精一杯あげてその変わった事を答えました。

 

 

「母さんが?」

 

「むー。嘘じゃないもんっ。お姉さまったら私が言おうとしたのに横取りしないで」

 

「フラン、そんなに怒らないの。でもそれは本当なのね?」

 

「そうだよ咲夜ー」

 

 

 役目を奪われ不満そうにするフランを宥めながら、咲夜さんは確認を取ります。

 

 ふ~む、別に早く帰るのがおかしいという事じゃないんですけど、連絡まで入れてくるのは珍しいですね?何かあったんでしょうか?

 

 

「フラン、母さんは他に何か言ってた?」

 

「え?う~~~ん・・・・・・私が帰るまで食べずに待っててくれ、とか。多く食うからご飯を多めにお願いだって言ってた」

 

「?分かった。ありがとフラン」

 

 

 つまり、お腹がすいて帰ってくるということかな?そういうことなら、きちんと多めに準備をしときましょうか。

 

 

「じゃ、咲夜さん、そういうことらしいですので、早めに準備するから手伝いますよ」

 

「悪いわね。じゃあお願いするわ」

 

 

 今日の夕飯担当は咲夜さんでしたけど私も応援決定です。ちなみに私と咲夜さんでしたら、料理の腕は咲夜さんの方が上手です。

 

 

「レミィ、フラン。よかったら風呂を軽く水で洗って、風呂を沸かしておいてくれないかなー?」

 

「はーい美鈴!」

 

「ちょ、待ちなさいフランッ!私がやるのよー!」

 

 

 どたどたと2人は風呂場へと向かいます。全く、見ていて和みますねー♪

 さて、では私達も準備にかかりましょうか。私はピーラーでニンジンの皮をむきはじめます。

 

 

「でも、どういうことかしら?お母さんが帰るまで待っててくれって・・・?今日って何かあったかしら?」

 

「ん~・・・私たち四人の誕生日でも、母さんたちの誕生日でもないですし・・・」

 

 

 思い当たることがありません。私の記憶力が衰えていないことを願いたいです・・・

 

 

「でもま、母さんがそう言ってるなら言う通りにするだけなんですけどね。ここはご飯で漫喫してもらいましょう」

 

「・・・お母さんが一番好きなのはお酒だけどね」

 

「・・・た、確かに」

 

 

 じゃがいもを水洗いする咲夜さんの言葉の言う通りです。今日の夕飯はシチューのつもりだったんですけど・・・酒にあうものなんですかね?

 

 少し気になりながら、私は皮を剥いたニンジンを扇形に切り始めました。

 

 

 

 

 

 

「それでね。フランが私のチョコレートを勝手に食べたのよ。ひどいでしょ!?」

 

「お姉さまだって私のジュースを勝手に飲んだでしょー!おあいこだよ!」

 

「お姉ちゃんなんだからいいでしょ!」

 

「私だって妹だからいいじゃん!」

 

「うー!」

 

「むー!」

 

「ほらほら、けんかしちゃだめよ?お姉ちゃんも妹もどっちも優しくないとねー」

 

「美鈴、それは私への戒めの言葉でもあるのかしら?」

 

「え、い、戒めって!そりゃまあ優しくしてほしいですけども!」

 

「そう。たまに考えておくわ」

 

「たまにですかっ!?」

 

「「・・・・・・メーリン」」

 

「やめて!?その優しさは何か違うわよ2人とも!」

 

 

 仲直りしたのは結構ですけど、優しさのつもりの同情の目で見られるのが逆に辛いです。この二人もいずれは反抗期になるんですかねー・・・

 

 

「・・・でも、まだかしらお母さん。シチューが冷めるんだけど・・・」

 

 

 咲夜さんが時計を見ながらつぶやきます。 

 私たちの座る長方形のちゃぶ台には、大きなお鍋一杯のシチューとそれをよそうお玉に皿にスプーン、そしてご飯のジャーも持ってきて準備万端です。

 

時間はもうすぐ19時。早いと言うからにはもうそろそろだと思うんですけど・・・

 

 

 

ガチャ

 

 

「ただいまー」

 

『あ』

 

 おっと、タイミング良く聞きなれた声が届いてきました。

 

 

「帰ってきましたね」

 

「おかえりー!」

 

「おかえりなさい!」

 

 私たちの時のように、2人が玄関に駆けていきます。そのうれしそうな顔のこと!ご飯を食べてたら行かないんですけど、今は食べてなかったから行ったんでしょうね!

ふむ、せっかくだし、私達もいきましょうか!

 

 

「よっと、咲夜さんもどうせなら行きませんか?」

 

「そうね。レミィやフランの気持ちが分かるわ」

 

 

 咲夜さんも笑いながら乗ったので、私たちも玄関に向かいました。さて、お帰りと言うのはどのタイミングがいいか

 

 

 

 

ダダダッ  ギュ!

 

 

 

 

「・・・へ?どしたのレミィ」

 

 

 突然、先に行ったレミィが廊下を駆け戻って、私のお腹にしがみついてきました。

 

 

「う~・・・誰、あれ?」

 

「「だれ?」」

 

 

 誰って、母さんなのでは?

 

よく分からず、私はレミィをくっつけながら玄関に向かいました。

 

 

 

 

 

「おう、ただいま美鈴、咲夜」

 

 

 

 長身な私よりも背が高く、透き通るような金のロングヘアーに、黒の長袖セーターと紺色のジーンズを身に付け、女性として見事なメリハリを持った身体。そして熱い情熱が滾る紅い瞳の女性が、大きなカバンを持ちながら笑顔で手をあげます。

 

間違いなく私たちの母――星熊 勇儀 (ほしぐま ゆうぎ)でした。

 

 

「あ、お帰り母さん」

 

 

――玄関に居たのが母さんだけならば、レミィが言ってることが分からないままだったと思います。

 

 

・・・・・・が、私はレミィの言いたいことが分かりました。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・(ギュッ)」

 

 

「ほら、隠れてちゃダメさな。ここは頑張るところだ。なっ?」

 

 

 

 

 レミィが言ったのは、母さんの後ろに立ち、その大きな背中のセーターを握って隠れるようにしながら、こちらを見ている少女のことを言ってたのでしょう。

 

 

 

 

 

 

「突然な話になるが、今日からここに居候させる子だ」

 

 

 

 母さんは私たちを見ながら、そう言いました。

 

 

「へ~!そうなの!?」

 

「ああ、そうだよフラン。仲よくしてあげてくれ」

 

「うんっ!」

 

 

フランがニコニコ笑いながら、背中から見てくる彼女を見ます。

 

 

「今晩は!私の名前はフランドール・スカーレットだよ!あなたは?」

 

 

 全く物怖じせずに、フランは自己紹介を始めました。その積極的さは、この場で一番必要なものだったと言えるでしょう。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「ん、頑張んな。大丈夫」

 

「・・・・・・・・・・(コク)」

 

 

 母さんの言葉にコクリと頷き、彼女は少しだけ姿を背中側から現しました。

 

 

 

 

 

 

 

 背丈は咲夜さんよりちょっと低そうで、だいたい160㎝ぐらい。

 

 

 

 瞳は母さんと同じ赤色。

 

 

 頭には、霊夢のものに似た大きさの、赤色が入った白生地のリボンが。

 

 

 

 

 

 

―――しかし、それよりも目立っているのが・・・・・・母さんよりも非常に長く、もはやくるぶしにまで届くのではないかという長さの、純白の髪。

 

 

 

 そして白のカッターシャツに、ところどころに札のような柄が入った赤いオーバーオールのズボンを身に着けた少女が、ためらいがちに口を開きました。

 

 

 

 

「・・・・・・―――こう」

 

「?こう?」

 

 

 う、顔を下にむけた状態で声も小さいだったので、彼女の声が聞き取れませんでした。フランも同じようで、責めるような雰囲気無く彼女に尋ねます。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・~~っ!!(ぱっ)」

 

 

 

 フランの問いかけに、彼女は下に向けていた顔をあげ、真っ赤になった顔で私たちを見据えて、

 

 

 

 

 

 

 

「も、も、妹紅っ。ふ、藤原 妹紅だっ」

 

 

 

はっきりと、彼女は自分の名前を紹介してくれました。

 

 

 

「ふじわらのもこう、ね!よろしくもこー!」

 

 

「―――――~~~っ!!」

 

 

 彼女、妹紅さんはさらに顔を赤くして、再び母さんの背中に隠れてしまいました。どうやら、あまり人と口をかわすのは好きではない女子のようですね。

 

 

「偉いな妹紅、よくやった」

 

「・・・・・・」

 

 

 母さんが背中越しに妹紅さんを褒めます。それを聞いた妹紅さんの顔がどうなっているのかは、彼女だけが知ることです。

 

 

「じゃ、ここで立ち話もなんだし上がろうか。皆にも説明するから、先に向こうで待っててくれるかい?」

 

「は~い」

 

「分かったわ」

 

 

 フランと咲夜さんが指示に従って、先に居間へと戻りました。

 

 

「・・・メ、メーリン。戻らないの?」

 

「ぐっ。あ、戻るけど、ちょっと待ってね」

 

 

 私に捕まって、涙目で見上げてくるレミィの愛らしさに少々精神ダメージを受けたのを堪え、レミィと似たように母さんに隠れている妹紅さんへ、私は言います。

 

 

「今晩は妹紅さん。私は紅美鈴といいます。何かあれば何でも私に聞いてくださいね」

 

「・・・・・・」

 

 

 妹紅さんからの返事はありませんでしたが、私は特に気にせずにレミィと居間へと向かいました。

 

 

 いやはや・・・・・・懐かしい感覚を思い出しますねぇ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「どうだ妹紅?あいつらと会って、ちょっとは気が楽になったんじゃないか?」

 

「・・・でも、まだ勇儀しか・・・喋りたくない・・・」

 

「んー、まあそれもそうだわな。いきなり仲良く話すなんてのは無理だよなあ~」

 

「・・・ご、ごめん」

 

「なに言ってんだ。それは人間としておかしくない事なんだ。妹紅のどこが悪い、ん?」

 

「・・・・・・ひ、人を避けてるところ。いたっ」

 

「バカ言うな。妹紅は避けてるんじゃない。ただちょっと内気で、自分を出すのが苦手なだけだ。さっきフランの言葉にも答えられただろ?だから大丈夫だ」

 

「そ、そう・・・かな?」

 

「そうさ。自信を持て妹紅。妹紅はいくらでも変われる年なんだからな」

 

「・・・・・・」

 

「まあ後でも言うが、ここは私の家で、お前の新しい場所なんだから、遠慮せずに過ごしな。分からないことがあれば、私でも誰でもいいから気楽に聞け。遠慮なんかしたらデコピンだからな」

 

「・・・・・・うん」

 

「あと、あの4人が話しかけてきたら、出来るだけ会話をしてみることな。妹紅が会話をするのが途中で無理になったら、気にせず打ち切ってもいいから。あいつらはそんなことで怒ったりしないからね。わかったか?」

 

「・・・・・・うんっ・・・勇儀、ホントに・・・・・・ありがとっ」

 

「おいおい、まだ礼は早いっての。その言葉は妹紅が大きくなって立派になった時に言いな。その時は、喜んで受け取るから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃまあ、さっきも自己紹介したけど、こいつは藤原妹紅だ。仲良くしてやってくれ」

 

「・・・・・・(ペコ)」

 

 

 母さんの横に座った妹紅さんが、ぺこりと頭を下げます。 

 

 玄関から移動して居間に腰を降ろした私たちに、その言葉に反論する理由が全くありません。

 

 

「もちろん!」

 

「はーい!」

 

「・・・・・・う~(こく)」

 

「分かったわ」

 

 

 私たち4人は迷うことなく返事をしました。レミィのはあれです。シャイなだけです!

 

 

「よっしゃ!じゃあ早速妹紅の歓迎会もかねて、晩御飯といくか!」

 

 

 パシンッと自分のふくらはぎを叩いた母さんが、ストップをかけていた夕飯をせかします。たぶん、私たちに食べるのを待たせていたのはこのためだったんでしょう。他人が食べてる最中に入り込むのは、中々勇気が要りますからね~。

 

さっきフランが言ってた『多く食う』っていう母さんの伝言ももしかしたら、1人『多く来る』って言ってて、妹紅さんのを増やしといてくれって言ってたのかもしれませんね。

 

 

「さ、全員持ったか?」

 

 

 そんな気配りをした母さんが、日本酒を注いだ器を持って確認します。

 

 

「持ったわ、お母さん」

 

「オッケーよ母さん!」

 

「………」

 

 

 私と咲夜さん、妹紅さんはウーロン茶を普通のガラスのコップに入れて準備万端。

 

 

「あ、待っておかーさん!お姉さま早く入れて!」

 

「う、うるさいわね!自分で入れなさいよっ!」

 

 

 なぜかフランがレミィに牛乳を入れさせていますが、すぐに完了して、2人は子ども用カップを手に持ちます。

 

 

「終わったわかあさんっ!」

 

「おうっ!んじゃまあ!」

 

「あ…」

 

 

 母さんが妹紅さんを引き寄せ、ってお茶がこぼれてるから母さんっ!

 

 

 

「妹紅が我が家へ来てくれたことに、乾杯っ!」

 

 

『乾杯っ!』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・お、お邪魔・・・・する、しま、す・・・」

 

 

 でも、今はそんなこと気にしないでいましょう。母さんと私たちの唱和に、妹紅さんもほんの少しだけ嬉しそうにしてくれてますからねー。

 

 ぞこから、私たちは食事と妹紅さんとの会話を堪能しました。ちなみにシチューの評価は、母さんはうまいと言いながら何杯も食べ、妹紅さんは私たちが話しかけてるのに気付かないほどシチューを熱心に食べていました。大成功ですよ咲夜さんっ!

 

 

 

 

 

「ふ~、ご馳走様。美味かったよ、美鈴、咲夜」

 

「お粗末様。作ったかいがあったわ。ねえ美鈴?」

 

「そうですね~!どうでしたか妹紅さん?」

 

「・・・・・・よ、よかった」

 

「そうですかそうですか!ありがとうございます妹紅さん~」

 

「けぷっ。じゃあ、わ、私が後片付けするわ!」

 

「あ、私もするおねーさまっ!」

 

「1人で充分よフラン!」

 

「じゃあおねーさまが私に代わって!」

 

「いやよ!」

 

「むー!」

 

「こら、やめなさい2人とも。片付けなら私がやるから――」

 

「「私がするのっ!」」

 

「・・・は~。じゃあ、3人でするわよ。フランは冷蔵庫に入れる物を入れて、レミィは食器を台所に運んで。私は食器を洗うから、それでいい?」

 

「む~・・・分かった」

 

「よろしい。レミィもいいわね?」

 

「わ、わかったわよっ」

 

 

 おっと、咲夜さん達が食卓の片づけの割り振りをしてしまったので、私のやることがなくなってしまいました。しかし、テキパキ動く咲夜さんは家政婦みたいですね~。言ったらチョップされると思いますけど。

 

 

「美鈴」

 

「あ、なに?」

 

 

 見ると、母さんは家に入ってきたとき持っていた大きなカバンをまた持っていました。

 

 

「今から私は妹紅の部屋の掃除をするから、美鈴は家の案内をしてやってくれないか?場所が分からないと困ることも出来るだろうしな」

 

「おっけー」

 

 

 丁度仕事を探してたところですしね。喜んで引き受けましょう!

 

 

「・・・あ、い、いいよ、別に。勇儀も、そんな気にしなくても・・・」

 

「まあまあそう言わず。さ、行きましょ妹紅さん」

 

 

 あまり乗り気じゃないらしい妹紅さんだったので、私は妹紅さんの手をにぎ

 

 

 

 

「―――ひっ・・・!(バシィッ)」

 

「あ」

 

 

―――る前に、妹紅さんに手をはたかれました。

 

 

 

 

 

「・・・・・・あ、あ・・・!ご、ごめ、ごめんなさ「す、すみません妹紅さんっ!」い・・・えっ?」

 

 

 妹紅さんが何かを言う前に、私は即座に頭を下げました。

 

 

「ちょ、ちょっと強引にやりすぎました!申し訳ありませんっ!ここは許してやってしてくださいーっ!」

 

「・・・・・・え、ふぇっ?」

 

 

 だ、誰だって強引に動かされようとしたらそりゃー反発しますよね!まだ会って間もない私なんかでしたらなおさらな事でしたあっ!

 

 

「―――はっはっはっは!だとよ妹紅!美鈴はああ言ってるけど、どうするさ?」

 

 

 か、母さん!全然笑い事じゃないからね!?私が初対面にして、妹紅さんに嫌われるのではないかという瀬戸際を笑うとは、母さんは鬼かっ!

 

 

「あ……じゃ、じゃあ、許すっ。うん・・・、許す」

 

 

 ふ~、妹紅さんがこくこく頷いてそう言ってくれました。妹紅さんが優しくて良かったです・・・

 

 

「で、では妹紅さん。私が案内させてもらうので、よかったら案内されてくれませんか?」

 

 これじゃどっちが主導権を握ってるのかわかりませんねー。あはは。

 

 

「・・・・・あ。じゃ、じゃあ―――」

 

 

でも、この言い方は正しかったみたいです。

 

 

「―――――案内、頼む、・・・・・・みます」

 

 

妹紅さんの緊張が少し解けたみたいですから。

 

 

「はい♪任せてください」

 

 

 私は先のこともあったので、妹紅さんにはタッチしないで案内を始めました。

 

 

 

 そこからは、どこに何があるだとか、あれが誰の部屋だとか使うときに注意することなんかを説明していきました。ちなみに私と咲夜さんはそれぞれの部屋を、レミィとフランは2人で一つの部屋を使ってます。

 

 

「――-で。ここが私の部屋です。とは言っても、咲夜さんとかもマンガを取りに自由に入ってますから。妹紅さんも気にせず入ってくださいね?」

 

 

 大きい本棚を二つ使ってますから、なかなかの量になってます。きちんと小遣いから使ってますから問題ありませんよ?

 

 

「・・・・・・」

 

 

 妹紅さんも静かに私の案内と説明を聞いています。ど、どうも不安になりますねー。私はきちんと正解の案内をしているのでしょうか?普段当たり前に過ごす場所を説明するのって、意外と難しいものですねえ。

 

 

「さ、じゃあ次はあっちの方を――」

 

「――――なあ」

 

「あ、はい?」

 

 

 や、やっぱり説明がヘタでしたかね!?

 私の部屋の事でなにか聞きたいことが出来たみたいなので、妹紅さんの言葉を待ちます。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・なんで……その、そんな簡単に、受け入れんの?」

 

「へ?」

 

 

 しかし、質問は私の部屋なんかとは関係のないものでした。

 

 

「なんで、って・・・?」

 

「だ、だって……おかしいだろ。いきなり得体の知れない女が自分の家に来たら・・・…普通は驚く。絶対にっ」

 

「いや、これでも最初は驚きましたよ?」

 

「・・・だ、だとしても、その後は話なんかしないっ。ただ適当に会話して、静かに過ごすだけに決まってる。自分から話しかけようなんて、絶対思わないっ!」

 

「は、はあ・・・」

 

「・・・・・・なのに・・・な、なんであんた達は、こんなに明るく会話をするんだ?・・・も、もしかして、私に何か企んでるんじゃないの?なぁ・・・」

 

 

 妹紅さんはまくしたてるように言葉を続けて、私をキッと睨みました。

 

 

「企むって、なんか悪の親玉って感じがしますねー」

 

「ふざけないで、ちゃ・・・ちゃんと答えろっ」

 

 

 先程まで居間で見た妹紅さんとは違って、かなり敵意をむき出しています。ずっと大人しくて分からなかったのですが、これが彼女の素なのかもしれません。

 

 

「とは言っても、別に私たちは何も企んでませんよ」

 

「・・・じゃあ、なんであんなに、明るく私に接するんだよ」

 

「なんでって、そりゃー・・・」

 

 

 ありきたりな言葉になりますけど・・・

 

 

「これから一緒に過ごすんですから、仲良くしていきたいじゃないですか」

 

「・・・・・・」

 

「・・・本当ですよ?」

 

 

 う、疑ってますね妹紅さん。ですけどこれは本音です。家が嫌な雰囲気になるのを好む住人はいませんよ。

 

 

 

「・・・・・・分かった」

 

 

 妹紅さんの目がわずかに和らぎました。ほっ、なんとか及第点だったようです。

 

 

「・・・・・・でも、最初の方の答えは?」

 

「えっ。さ、最初?」

 

 

 最初も何も、今ので全部答えたつもりなんですけど・・・?

 

 

「・・・なんで、いきなり居候をするって聞いても、驚かないんだよ」

 

「ああ。そういえば」

 

 

 やれやれ、私の物覚えが悪くて悲しくなりますよ~・・・

 

 

「そんなに深い理由ってわけじゃないんですよ。ただですね――」

 

 

 

 今度の妹紅さんの質問には、私は間違っていないと確信しながら答えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「似たようなことを体験してきたからですよ」

 

 

 

「・・・・・・似たような」

 

「はい。だからこそ、こういう時は明るく話した方が互いに良いと思うんです」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 レミィとフランは初めてですからともかく・・・・・・咲夜さんは一度。私は二回経験したことがありましたからね。やっぱり、慣れってものが生まれてくるものです。

 

 

 

「納得していただけましたか?」

 

 

 答えを返した私は、あまり不快感を与えない(と思います)笑いを浮かべながら、妹紅さんの懸念が無くなったかどうかを聞いてみました。

 

 

「・・・・・・ごめん・・・だけど、私はまだ、勇儀以外とは・・・・あ、あまり・・・話したくない」

 

「・・・そうですか~」

 

 

 それは残念ですけど、初対面ですから仕方ない事ですよね~。

 

・・・でも、その言い方はつまり、母さんのことは話したいと思うほど信頼をしているということ。娘の身としては嬉しい言葉です。

 

 

「・・・・・・でも」

 

「? でも?」

 

「・・・・・・あんたが、悪くない人だっていうのは・・・なんとなくわかった」

 

「・・・ありがとう妹紅さん。それは良かったです」

 

 

 目をあわせないまま、そんな言葉を言ってくれる妹紅さん。まだ会って数時間、あまり距離が近づいたとは思いませんが、決して悪くないスタートにになれたのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

「フラン!皿を運ぶのは私の仕事なんだから、横取りしないでよ!」

 

「だって冷蔵庫に入れる物が無くなったもの!いいじゃない別に!お姉さまったらケチっ!」

 

「だ、誰がケチよぉ!?このわがままフラン!」

 

「何よこのおませお姉さま!」

 

「・・・もう!こらっ!!2人ともいい加減にしないと怒るわよ!」

 

「ひゃ!?」

 

「ぴぃ!さ、咲夜が怒ったー!あーんっ!」

 

「え、ちょ、レ、レミィ!?まだ私は怒ってないわ!だから待って――!」

 

「おいおい咲夜。妹を泣かせたらいけないじゃないか?」

 

「!!お、お母さん・・・!待って!わ、私は泣かせる気は無かったのよ!ほ、ほら私は怒ってないから泣かないでレミィ!?」

 

「う~・・・私じゃなくてフランが悪いのに」

 

「そ、そんなことないもん!だいいち、咲夜が(家事をほとんどして仕事をさせてくれない)イジワルをするのが原因じゃん!」

 

「フ、フランッ!?」

 

「・・・咲夜?」

 

「ひ!?ちょ、ま待ってお母さん!フラン!デタラメなんか言ったらダメよ!!?嘘ときちんと言って!」

 

「え~、でも嘘じゃないもん。咲夜のせいで私がおねえさまとケンカしたんだもの。ねーおねえさま?」

 

「ぐすっ、え?・・・えーと、そ、そうなる…かな?」

 

「レミィまで!?」

 

「咲夜・・・ちょっと、来てくれるか?2人でちょっと話そうじゃないか」

 

「いやっ!ま、待ってお母さん!わ、私は嘘なんかついてないわお母さんんんっ!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・お、お見苦しいところをお見せしました」

 

「・・・イジワル・・・・・あいつには・・・・・・近づきたくない・・・」

 

「一気に拒絶!?ちょ、そ、それは勘弁してあげてください妹紅さ~~~ん!?」

 

 

 

 どうやら咲夜さんだけ、最悪のスタートを切ってしまったようです。母さんにも連行されて、妹紅さんには拒絶の対象・・・・・・・!咲夜さん!あとで私の胸で泣いていいですよ!というか泣いてくださいね~!!

 

(※当然彼女は泣きませんでした。が・・・代わりに、そうとうへこんだようです)

 

 

 

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます!さてさて、皆さんのオッケーが出たのか・・・!

 今回新たに出演してもらったのは、『もこたん』の愛称で知られている、終わりなき永遠を過ごす少女、藤原妹紅さんです!終わることなくずっと続くというのは幸運なのか、不幸なのか?彼女を見ていると、そんな答えはすぐに出せる気がした村雪でした。

 そんな彼女を、村雪はかなりの人見知りという風に設定としましたが、果たしてどう受け止められるのか・・・!一応、実際の彼女も人見知りな場面があった気がするので、なんとか受け入れられれば幸いです。

 さて、次回もこの続きとさせてもらいます。舞台は文月学園の予定です!

 多分この回では色々と思うことができたと思いますので、質問でも感想でも気楽に送ってくださいね!できうる限り返信しますので!

 それではっ!

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