次回投稿まで1週間前後と書いていましたが、他の方の投稿速度が速くて、なにやら焦りを感じまして1日空けて投稿することにしました。いい加減な事を書いてしまって申し訳ありません!
ですのでこれからは、この作品の作者は投稿する時間がかなり不規則、と認識していただければ幸いです。
さて、これで3話目の投稿となります。クリスマスイブに投稿する形となってしまいましたが、そこを絡めての話はありませんのでご了承下さい。
――では、ごゆっくりとお読みください
「そういえば姫路さん。体調はもう大丈夫?」
魔理沙の後も自己紹介が続き、3分の2が終わったぐらいでしょうか。後ろから吉井君の声が聞こえてきました。どうやら瑞希(みずき)さんの体調の事が気になったみたいです。
「あっ、はっ、ひゃい!大丈夫でしゅ!」
それに対し、瑞希さんは盛大に噛んじゃいながら答えました。瑞希さんの癖なんでしょうか?可愛らしくて加点ですねっ!
「?なんだかどんどん顔が赤くなってるけど、ホントに大丈夫?」
「ホホ、ホントにだいじょぶですっ!これはあの――!」
「姫路、明久がブサイクですまんな。」
「え!?そういう意味で顔を赤くしてたの!?」
坂本君の心ないフォローに、吉井君は思い切りショックを受けたようでしたが、そこは瑞希さん自らが否定をしました。
「ち、違いますよ!?そ、それに!吉井君は目もパッチリしているし顔のラインも細くて綺麗だし、全然ブサイクなんかじゃないですよ!その、むしろ・・・」
「かっこいい、ですか?」
「メメ!美鈴(メイリン)さん!?」
思わず口を挟んでしまいました。瑞希さんは口をパクパクして私を見つめ、目で私にどうして言っちゃうのかと訴えてます。
ごめんなさいね!でも、私も魔理沙ほどではありませんけど恋の事には興味があるんですよ♪
にしても・・・そうなんですか~!瑞希さんは吉井君のことを……へえ~!
「なるほど。言われてみれば確かに見てくれは悪くない顔をしているかもしれないな。俺の知人にも明久に興味を持ってる奴がいたような気もするし。」
ほう、吉井君はモテる人だったんですね?
「え?それって「それって誰の事ですかっ!?」」
吉井君も気になったようですが、それ以上に瑞希さんのほうが声が大きくてそっちに気を取られました。まあライバルが現れるかもしれないので必死になる気持ちも分かります。
さて、一体誰なんでしょう?
「確か、久保――」
ふむ、久保さんですか。
「―――利光だったかな。」
「それ、間違いなく男の子ですよね?」
別の方向にモテるんですね、吉井君・・・
「まあな。おい明久。声を殺してさめざめと泣くな。」
「もう僕、お婿(むこ)に行けない……」
ま、まあ、瑞希さんのライバルにはならないことでしょう。そこは友達として安心しました。
「半分冗談だ。安心しろ。」
「え?残り半分は?」
「良かったですね。瑞希さん。」
「は、はい。安心しました!」
「ところで姫路、体は大丈夫なのか?」
「はい。もうすっかり平気です。」
「それはまた良かったですね!」
「はい!」
「ねえ3人とも!?そっちは良くても僕の貞操はまだ全然大丈夫じゃないよ!?」
大きな声で抗議する吉井君。ええ~、そう言われましても、私にできることは全くないですよー?
「はいはい。そこの人たち、静かにしてください。」
「あ、すいませ―――」
バキィッ バラバラバラ………
「・・・ええ~…?」
先生が机を叩いて注意をした瞬間、教卓がバラバラに砕け散ってしまいましたよ・・・・どれだけボロボロだったんですか?
「・・・え~替えを用意してきます。少し待っていてください。」
教卓の替えはあるんですね。1つあれば普通は大丈夫なはずなんですけど・・・ここは全く常識が通用しませんね。
「いや~、もうちょっとしっかりした物にしてほしいですよね?」
「あ、あはは・・・」
「――じゃなんだから、廊下で。」
「別に構わんが。」
「?」
私と瑞希さんが苦笑いを浮かべあっていると、何故か吉井君と坂本君が立ち上がって教室の外へと出ようとしていました。
「あれ、2人ともどうしたんですか?」
「ああ、何でも明久が話があるってんでな。」
「うん、ちょっとね。」
「ふうん?そうですか。」
特に止める理由もないので、私は何も言わずに見送ります。
・・・ここでしないということは、あまり聞かれたく内容みたいですね。また帰ってきたら聞いてみるとしましょう。
「話ってなんでしょうか・・・?」
瑞希さんは気になるようで、2人が出て行った方を心配そうに見つめています。でも、私たちが気にしても仕方ありません。
「さあ。分かりませんが、あの2人が帰ってきてから聞いてみましょうよ。果報は寝て待てと言うでしょう?」
「・・・それもそうですね。すいません美鈴さん。」
「いえいえ。………ん?」
ふと、後ろから視線を感じた気がしました。振り向くと………
「・・・こらこら。何を撮ろうとしているんですか?土屋君。」
「……っ!?(パッ!)」
土屋君が、私のスカートの中を撮影したかったのか、畳を這ってカメラを構えていました。
ここまで堂々とした盗撮は初めてです・・・というか、盗撮自体が初めてですね。まさかクラスメイトにされるとは夢にも思っていませんでした。
「別に私は構いませんが、他の子は嫌かもしれませんのでやってはいけませんよ?」
「……消しゴムを落としたから拾おうとしただけ(たらたら)。」
「あははっ、別に怒ったりはしませんから嘘なんかつかなくていいですよ?」
「……嘘なんか着いていない…っ!(ブンブン)」
鼻血を流したり首を思い切り左右に振ったりと、土屋君は意外と態度に感情を出す人だったんですね~?自己紹介の時には全然分かりませんでしたよ!
「ムッツリーニ。だからわしは止めておけと言ったのじゃ。」
溜息をついて、木下君が気になる単語を1つ発しながら土屋君に話しかけました。
んん?ムッツリーニ?
「それって確か、女の子をすごく撮ってる人の呼び方でしたっけ?」
「うむ。こやつがそのムッツリーニじゃ。」
「へえ・・・」
私の記憶が確かならばムッツリーニというのは、女の子の気付かぬうちに写真を撮ってそれを男子に売りつけ、男子からは畏怖と尊敬、逆に女子からは軽蔑の対象となっている売人の呼称。ちなみに私は、軽蔑とまではいってません。なぜかというと、彼の撮った写真を偶然目にしたことがあったのですが、それはカメラを気にせずに満面の笑みを浮かべた女の子の写真。そんな写真を撮るなら何も行動に移るほどでもないかと考えたからです。
とは言え、今のような撮影は黙認できませんがね!
「あの、美鈴さん。」
「はいはい?何でしょう?」
おっと、瑞希さんがクイクイと袖を引っ張ってきました。何か質問ですかね?
「む、ムッツリーニって何ですか?」
え?
「何、といいますと?」
「えっと、歴史の勉強でムッソリーニは知ってるんですけど・・・・彼と何か関係があるんでしょうか?」
「あ、いや。その人とは関係は全くないんですけど・・・まあ、その名前と単語をかけたのがムッツリーニなんですよ。」
「ムッソリーニと・・・・え、ええと…な、何をでしょうか?」
それを私に言わせますか………でも、これはこれで良いものが見れそうです♪
「それはですね……ムッツリなんですよ。」
さあ!純粋そうな瑞希さんの事です!きっと顔を赤くしてあわあわと微笑ましい様子になるに違いありません!期待しながら私は瑞希さんを見て・・・・・・ん?
「?(きょとん)」
きょとんと、ホントにきょとんとした顔で私を見ているだけでした。え、私言い間違えましたかね?
戸惑っている私を見て、なぜか姫路さんは申し訳なさそうにし、その理由を明かしました。
「す、すいません。ムッツリって何でしょうか…?」
「・・・・・・お、おおお。」
瑞希さんメチャクチャ純粋ですねっ!?よもや言葉を知らないと!?なんだか知ってる私がすごく汚れてるみたいじゃないですか!?
「え、ええ~と。どう言えばいいですかね・・・」
予想外な事態です。このままストレートに言うと、純粋な瑞希さんを傷つけるみたいで嫌ですし、かといって遠回しに言おうにもすぐにその内容を思いつけません。ああ!今だけは彼女の純粋さが痛い!!
「わ、分からなかったらいいですよ?」
悩む姿を見てそう言ってくれた姫路さん。それに私の頭はひらめきました。
―言いづらいなら言わなければ良いじゃない!
そうです!そうすれば瑞希さんは今のままでいられるし、もしも彼女が気になって調べたとしてもそれは自己責任!誰かによって純粋さを傷付けられたわけではありません!
よし!方法を思いついたのなら言うのです紅美鈴!私は知りませんと瑞希さんに伝えるのよっ!
「すいません。実は私も――」
「ムッツリってのは、おおっぴらには何も言わないけど裏で色々エッチなことをしたり考えたりする奴のことだぜ。まあ確かに土屋にはぴったりのあだ名かもな。」
「………ぴきゃあっ!?」
「魔理沙あああっっ!!!」
「……俺には全く合わないぞ、霧雨…っ!!(ブンブンブンブン!!)」
あなたという人は!直球ど真ん中すぎるでしょうがーっ!!見なさい!瑞希さんが変な悲鳴をあげて顔を絵の具の赤色みたいに真っ赤に染めちゃったじゃないですかああ!!でも間違ってはいませんから土屋君の否定は無意味ですねっ!
「おいおいなんだよ美鈴?私は姫路の知りたいことを教えてあげただけだぜ?」
「た、確かにそうですけど、もう少し遠回しをしてから言うべきでしょうが!」
「はっ、勘弁してくれだぜ!言う事ははっきり言うのが私、恋に生きる乙女の霧雨魔理沙だぜ!」
「関係ない!今は恋が関係ありません!!恋に生きるなら恋の事だけに口を挟んでください!」
「土屋。ムッツリでいても良いことないぜ?もっと心をさらけ出すことをオススメするぜ!」
「・・・ポリシーは変えない。そして俺はムッツリスケベじゃない…っ!!(ぶんぶん)」
「聞きなさいこらああああああああ!!!」
「さて、それでは自己紹介の続きをお願いします。」
「ね、ねえ・・・どうして紅さんはげっそりしてて姫路さんは顔を真っ赤にしてるの?」
「・・・色々あったんですよ。」
しばらくして、福原先生がやはりぼろっちい教卓を手に入ってくると同時に吉井君と坂本君が戻ってきて自己紹介が再開されました。
そのあと、私と姫路さんはほとんど頭に内容が入ってなかったと思います。だって仕方ないじゃないですか!!きちんとした理由があるんですよう!ごめんなさいのこり3分の1の皆さん!
「・・・では、最後にクラス代表として坂本君。お願いします。」
「了解。」
そして、最後となった坂本君が代表だからか教卓の前へと歩み寄り、話し始めました。
「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きに呼んでくれ。」
「じゃあ、ゴリラっ!」
「でくの坊とかぴったりだぜ!!」
「・・・やはり坂本と呼ぶようにしてくれ。」
坂本君は額に青筋を立たせてチルノと魔理沙を作り笑いで見ました。あ、結構怒ってますねこれ。
「とにかく、俺は皆に1つ聞きたい。」
?何でしょう?
その問いを言わずに、坂本君は教室内を歩き出しました。
カビだらけのかなり臭う教室。
古く汚れて綿もはみ出した座布団。
薄汚れてボロボロのちゃぶ台。
皆が坂本君が行く先の設備を無言で見つめました。
「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが―」
坂本君が天上世界だったAクラスを引き合いに出しながら・・・
「――不満はないか?」
問いかけました。
『大ありじゃあっ!』
クラスの皆の魂の叫び。その気持ち、凄く分かります・・・!せっかくの高校生活をこのような場所で過ごすのは誰でも嫌に決まっているじゃないですか!!
「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている。」
『そうだそうだ!』
『いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する!』
『さいきょーのあたいがいるのに、こんなのおかしいわ!』
口々と不満をさらけ出す皆。でもチルノ、あなたがいるところがFクラスなのは間違っていないと思います。
「みんなの意見はもっともだ。そこで――」
満足する意見を聞けた坂本君がにやりと笑みを浮かべ、
「代表としての提案だが・・・FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う。」
下剋上への火ぶたを切りました。
〝試験召喚戦争〟
それは、この文月(ふみづき)学園特有の言葉です。
ここの学園長さんが科学とオカルト、そして偶然によって完成させた『試験召喚システム』というものを利用して、自分の受けたテストの点数に応じた強さを持つ『召喚獣』を呼び出して他のクラスと行う戦争、もといバトル。それが〝試験召喚戦争〟なのです。
この戦争における報酬となるのが、それぞれのクラス設備です。もしも下位のクラスが上位のクラスに勝った場合、その負けたクラスが勝ったクラスに教室をあけ渡し、負けたクラスの教室で過ごすことになるのです。
つまり、坂本君はAクラスに勝利してAクラスの設備を手に入れようと言ったことになります。
『勝てるわけがない』
『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』
『姫路さんや紅さんがいたら何もいらない』
『チルノちゃんまじ天使』
当然と言いますか、誰もが否定の言葉を繰り出します。多少妙な言葉も聞こえましたがスルーです。
Aクラスは学年でも非常に優れた人たちが集まったクラス。そこに最底辺となるFクラスが挑むのは、いわばアリが象に挑むようなもの。確かに勝てる可能性は無いかもしれません。
「そんなことはない。必ず勝てる、いや、俺が勝たせてみせる。」
しかし、坂本君は自信満々に言い放ちます。
『何を馬鹿なことを』
『できるわけないだろう』
『何の根拠があってそんなことを』
むう、残念ですが私も同意見です。ただ言葉だけでは意味がありません。それを信じさせるだけの根拠がなければ皆を動かすのは難しいと―
「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている。」
「・・・ほほう?」
うう~ん、これは興味がわいてきました。坂本君はどう言うつもりなんでしょう?
「おい、康太(こうた)。畳に顔をつけて紅(ホン)のスカートを覗いていないで前に来い。」
「・・・・・・!!(ブンブン)」
「ありゃ、またですか?」
後ろを見れば、またも土屋君が私のスカートを覗こうと畳に顔を付けてカメラを構えていました。布きれ一枚に熱心すぎて私もビックリします。
でもそれなら、下着売り場に行けばいいんじゃないでしょうか?撮り放題間違いなしです!おそらく土屋君の自由もおまわりさんに取られると思いますけどね!
「土屋(つちや)康太(こうた)。こいつがあの有名な、寡黙なる性職者(ムッツリーニ)だ。」
「・・・・・・!!(ブンブン)」
『ムッツリーニだと・・・?』
『馬鹿な、奴がそうだというのか・・・?』
『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠をいまだに隠そうとしているぞ・・・』
『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ・・・』
畳の跡を隠そうとする土屋君。ホントにその異名は伊達じゃありませんね・・・。のぞきまでしてたんですからもうムッツリの域は超えてるんじゃないですかね?
「姫路のことは説明する必要もないだろう。皆だってその力は良く知っているはずだ。」
「えっ?わ、私ですかっ?」
「ああ。ウチの主戦力だ。期待している。」
なるほど。確かに姫路さんならAクラスにも匹敵する学力です。つまり彼女はこのクラスのキーパーソンと呼んでも過言ではないですね!可愛い上に秀才!なんという優良物件さんなのでしょう!男子から引く手あまたなのも女なのにわかっちゃいますよっ!
『そうだ。俺達には姫路さんがいるんだった。』
『彼女ならAクラスにも引けをとらない。』
『ああ、彼女さえいれば何もいらないな。』
最後の人、言うのならもっとはっきり言うべきだと思います。
「霧雨魔理沙(きりさめまりさ)もいる。」
「おっ?私を買ってくれてるのか?」
魔理沙は少し得意げに自分を指さす。魔理沙の成績は・・・どうでしたっけ?
「ああ、相手を挑発したり気を引いたりして頑張ってくれそうだからな。」
「へっ!そう言われたら頑張るしかないぜ!」
ん?それって点数というより魔理沙の性格を買ってますよね?
・・・でも確かに、魔理沙のそういうところは天下一。私は数秒持たないと思います。・・・た、短気だからじゃないですよ!?魔理沙の口のマジックのせいですからっ!
「加えて、木下秀吉だっている。」
『おお・・・!』
『そうか、あいつ確か、木下優子の・・・』
『演劇部の期待のホープか・・・!』
ほほう、秀吉君もですか。彼は演劇以外でも優秀なんですね?
・・・しかし、それだけいるのなら確かに可能性がゼロだとも言えません!
「それに、紅(ホン)美鈴(メイリン)もいる。」
『おおお!!』
はえっ?
「私もですか?坂本君?」
「ああ、お前がここにいる理由は知らないが、決して悪くは無い成績だったはずだ。。期待しているぞ。」
「い、いやあ照れますね~!」
そう言われたら頑張らざるを得ませんね!・・・あ~私ったら単純だ!何だか気分が高揚してきましたよ!?
「皆さんっ!」
あっ!お、思わず声が・・・・・・!
『?』
「なんだぜ?」
「なに!?メーリンっ!」
「美鈴さん?」
「どうしたの美鈴さん?」
あ、ああう!皆さんの視線が私に・・・!
……ええいっ!こうなったならこの変なテンションで、皆さんに檄(げき)を入れさせてもらいましょうかねっ!
立ち上がって私は言います!
「私達はFクラスです!Aクラスとは比べ物にならないのも事実ですっ!でも、私たちが勝とうと思わないと勝てないのも事実です!何事もやってみなければ事態が動くことはありません!ですから・・・ここは一つ!皆で力を合わせて頑張ってみませんかーっ!!?」
『『『・・・いよっしゃああああっっ!!!!』』』
おお!?同意と思われる力強い雄叫びがっ!
し、仕方なしにやったんですけど効果覿面(てきめん)です!気迫に関しては学年最強じゃないですかね!?
「紅の言う通りだっ!当然、この俺も全力を尽くす!」
坂本君も感化してくれたのか力強く宣言してくれました!
『確かにやってくれそうな奴だ!』
『坂本って小学生の頃は神童とか呼ばれていたらしいぞ?』
『じゃあ、振り分け試験の時は姫路さんと同じで体調不良か何かで受けていなかったってことか?』
『つまり、Aクラスに匹敵する学力の奴が3人もいるってことか!?』
『『おおおおっ!?』』
最初とは一転して、皆が顔を輝かせはじめました!こ、これは凄い!このままモチベーションを上げて行けば、夢の夢が夢にまで縮まるのでは・・・!?
「それに――」
そして、坂本君はさらに士気をあげるために、新たな戦力の名前を呼びます!
「――――吉井明久だっている。」
・・・・・・シーン・・・
・・・あ、れ?あれれ?さ、さっきまでの高まりはどこへ?一瞬で消え去りましたよ!?
「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!?全くそんな必要は無いよね!?」
私がそれを思い切り知りたいですよっ!
ああ!何だか皆さんの雰囲気が水をかけられたように静まり返り始めましたよお!?
『誰だよ、吉井明久って。』
『いや知らん。』
「ほら!せっかく紅さんがあげてくれた士気に陰りが見えてるし!僕は雄二達と違って普通の人間なんだから普通の扱いをしてよっ・・・って紅さん!そんな悲しそうな目で僕を見ないで!全部あのゴリラがやったことなんだ!」
いや、まあ吉井君が悪くないのは分かるんですけど・・・やっぱり、ねえ?
……まあそれより、なぜ吉井君が呼ばれたのかが気になるところです。
「坂本君。本人はああ言っていますが、どうして名前を呼んだんですか?」
「そうか。紅達は知らないようだから教えてやる。こいつは《観察処分者》だ。」
坂本君もそこは分かっていたようで、きちんと説明をしてくれました。
「・・・坂本、それはバカの代名詞って話を聞いたことがあるぜ?」
魔理沙が率直に言います。
・・・私も聞いたことがありますね。これになる人というのは相当のバ…変わり者だとか。
「ち、違うよ霧雨さん!ちょっとお茶目な16歳に付けられる愛称で」
「そうだ。バカの代名詞だ。」
「肯定するんじゃないよバカ雄二!」
「へ~っ!よしーってバカなのね!」
「君にだけは絶対言われたくないっ!!」
チルノに指を指してこれでもかと強く吉井君がつっこんだ。
おバカにバカ扱いされる気持ち、身に染みて分かります…っ!
「あのっ、それってどういうものなんですか?」
瑞希さんには分からなかったみたいで、手をあげて坂本君に尋ねていました。
「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかそういった類(たぐい)の雑用を、特例として物に触れるようになった試験召喚獣でこなすといった具合だ。」
・・・・・・あれ?聞いた感じだと、意外とすごくありませんか?私たちが扱う試験召喚獣は、他の召喚獣に触ることは出来ても現実の物に触れることは出来ません。それが出来るという事は、むしろ得をしていませんかね?
「そうなんですか?それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんなことが出来るなら便利ですよね!」
瑞希さんも同意見だったようで、目をキラキラと輝かせて吉井君を見つめています。ちなみに召喚獣の力は軽く成人男性、それどころか人が出せ得る力よりも高いとの話です。そりゃ物に触れなくしますよね。学校が崩壊しかねませんし。
瑞希さんの言葉に、しかし吉井君は手を振って否定をしました。まあ、部外者よりも当事者が言う事の方が正しいに決まってますから、本当に良いものではないのでしょう。
『おいおい。《観察処分者》ってことは試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいって事だろ?』
『だよな。それならおいそれと召喚できない奴が1人いるってことだよな。』
そんなやりとりがタイミング良く聞こえました。
なるほど、召喚獣の感覚が自分に返ってくると・・・それは確かに辛いですね。
でも、そこを踏まえてなぜ坂本君は吉井君の名前を言ったのでしょう?まだ何か凄いところがあるんですかね?
「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚(ザコ)だ。」
「雄二、そこは僕をフォローする台詞(セリフ)を言うべきだよね?」
・・・・・・ただバカにしたかっただけみたいです。
「坂本君、あまり人のことを悪く言うものではありませんよ?それに、誰でもいるだけで意味があるんです。力になれど役立たずなんてことは絶対ありません。」
吉井君は先生の雑用をこなしてきた、それはつまり召喚獣の扱いに慣れていると考えられます。これはきっと彼だけの大きなアドバンテージとも言えるでしょう。それを雑魚と言うのは聞き捨てなりません。
「紅さんっ・・・!君って奴はなんて良い人なんだ!」
「え、ええ!?泣きながら言うほどですか!?」
私は一般論を言っただけなのに!普段吉井君はどんな風に褒められているのですか!?・・・さすがに褒められるぐらいありますよね!?
「ま、それもそうだな。悪かったな明久。」
「今さら言われても嬉しくないよ!まあ受け取っとくけどさ!」
「あ、そこは受け取るんですね・・・」
文句を言いつつも謝罪を受け取るあたり、吉井君は人柄が良いんですね!何となく感動しました!
そして、吉井君に謝った坂本君は、クラスへと視線を巡らせて意思表示します。
「なんにせよ、俺達の力の証明としてまずはDクラスを征服してみようと思う。」
あれ、Dクラスですか?いきなりぶつかりに行くのかと思ってましたよ。何らかの意味があっての行為なんでしょうか?
・・・ま!代表が言ったことに従うのがチームメンバーの役割ですよね!
「了解!」
「ほほう、面白そうだぜ。」
「へんっ!最強のアタイには簡単ね!」
『そうだそうだ!』
『Aクラスならともかく、Dクラスなんて目なんかじゃねえ!』
『俺たちには4人の女神が着いているんだ!』
『やってやろうじゃねえか!!』
坂本君の言葉に魔理沙、チルノが声を出し、それに同意する男子達!気合いがだんだん復活してきたみたいです!
・・・あれ、4人の女神?瑞希さん、島田さん、魔理沙、チルノ……って私の枠は!?私は一般人扱いですかあっ!?(A.美鈴、瑞希、魔理沙、チルノ。 余談:これを言った男子は、後でポニーテルなあの子に涙目で殴られたそうな・・・合掌。「ウチが美人じゃないことくらい分かってるわよバカ―!!」)
「皆、この境遇には大いに不満だろう?」
『当然だ!』
ま、まあいいですよーだ!どうせ私は美人じゃありませんよー!今はこっちの方が大事ですから許してあげますよこの名も知らぬ男子さんがっ!
「ならば全員筆(ペン)を取れ!出陣の準備だ!」
この恨み!試召戦争できっちり八つ当たりさせてもらいますよおおお!!
『おおーーっ!!』
「俺達に必要なのはちゃぶ台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!』
『うおおーーっ!!』
「やってやりましょーーっ!!」
クラス全員が打倒Aクラスを胸に団結しました!じゃっかん私だけずれちゃった気もしますけどその内収まるでしょうしセーフですよね!?
「お、おーーっ!」
瑞希さん、小さく遠慮しながら拳を振り上げる姿も可愛いですね~!確かにこの子は女神です!
1人で勝手に納得する一般人の私。そんな私の耳に届いてきたのは代表坂本君の指令。
「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
……いきなり特攻命令をけしかける彼は、神じゃなくて悪魔と称するのがぴったりですよね。
悪魔は地獄へ帰りなさい!・・・ってここが地獄のFクラスでしたね!
お読みいただきありがとうございます!文量が短くなると言っていたのに、あまり変わらず、むしろ多くなって投稿した村雪であります。
自分で書いたことにはきちんと責任をとらなければ、とクリスマスイブに懺悔する作者なのですが、果たして後書きや前書きで、こういう行事に関することで話を盛り上げるべきなのか、関係ないとスルーしてしまうのとどちらが良いのかと、1人うんうんと悩んでました・・・。
で、悲しきかな、面白い話題がないということで最終的にはスルーする方で決定しました。
次の第4話。また新たな東方キャラを2人、台詞があるかどうかでは3人登場させていただきます!
キャストの方は決まっていますのでリクエストとかはないですけどお許しください!
投稿は、おそらく年末までには……と言いつつも、またもあせりにかられて2日3日空けて投稿するかもしれません!本当に不規則になって申し訳ないですが、楽しみに待っていただけたら作者冥利に尽きます!
それでは!皆さまが満足のいくクリスマスイブを過ごせるように願って、失礼させていただきます。