今回も前回からと同様、さっくりと話が進んでいきまーす!なので、バトルにはあんまり期待をしないでくださいね!コメディssを目指してますから~!
――では、ごゆっくりお読みください。
「では、三戦目の代表は前に出てきてください。」
「はいはい!アタイが出るっ!」
「む、無理ですってチルノ!気を確かにしなさい!」
木下さんとの二回戦が終わり、高橋先生の三回戦の選手呼びかけに元気な声で手をあげるチルノ。私は全力で待ったをかけます。これが正気じゃない状態での発言ならまだしも、本気で言ってるのですからなお困るのですよ~!
「さかもと!アタイが出てもいいよね!?」
「ん~…しかしだなチルノ。自信があるのか?」
「ふふん!自信しかないのよさ!」
「そうか…」
それって負ける自信のことじゃないでしょうね!?
でも、私が思ってたより坂本君は反対するような素振りがありません。私たちの二連勝が効いているのでしょうか?
「よし、ならチルノ。お前の得意科目で勝負を挑め。そして勝ちに行け。いいな?」
「がってんだい!」
「――い、いいのですか坂本君?」
許可が出て嬉しそうに壇上に登っていくチルノを私は心配しながらも、坂本君に真意を尋ねます。
「ああ。別に一度くらいは負けても、他の試合で二戦取ればいい」
「ふむ、そんなものですか」
「それに残るうちの連中で、Aクラスと渡り合える戦力になる奴は、姫路とムッツリーニぐらいだからな」
「もの凄く納得しました」
誰が出ても結果が同じなら、自発的にやりたがる人をあてがうのは当たり前ですよね。手強いAクラス相手に名乗り出るチルノの怖いもの知らずなところは、純粋に最強
だと思えますよー。
「せんせー!アタイは英語で勝負するわ!」
「はい、分かりました」
チルノが教科を選んだことで、私たちの選択権はあと二つ。でも、最後に選ばないといけないので実質あと一回です。ここからはさらに慎重に行かないといけませんね…!
「とはいえ教科を決めれたんだから、チルノもそこまで弱いわけではない。少しは期待しても悪くあるまい」
「だ、だといいんですがね~」
かなり可能性は薄い気はしますが、ひょっとしたら、ひょっとするかもしれません!
しかしそうなると、後は相手のAクラスの代表ですね。その人次第ではなんとかなるかもしれませんが・・・はたして相手は――
「あ~、あんたが私の相手?」
「ああ、これで二勝一敗ですね」
「たまにお前はチルノにひどいな、紅」
いや、否定はできませんけど、今回に関してはチルノの相手を買ってのことです。
うわ~、あ、あなたが相手ですか~・・・霊夢!
「そうよ!覚悟することね!」
「しないっての。さっさと終わらせてもらうわよ」
「なんだとーっ!?」
霊夢のつっけんどんな言い方にチルノは腹を立てますが、別に挑発をしているわけではありません。あくまで霊夢の普通の話し方なのです。
「では、召喚を始めてください」
「人をなめてると痛い目にあうわよっ!試獣召喚(サモン)ッ!」
「かもね……あうのはあんただけども。試獣召喚」
現れた霊夢の召喚獣は、なぜか脇の部分だけがない赤と白を交えた巫女服姿。手にはお祓い棒を持っていて、誰から見ても完全に巫女スタイルです。
・・・・・・優しさと礼儀正しさが売りの巫女に霊夢がなるって、絶対あってはいけない組合わせですね。巫女さんの歴史が一瞬にして終わっちゃう気がします!
「んじゃ、さっさと終わらせるわよ」
「それもそうね!さっさと終わらせてやるわ!とりゃあああ!!
チルノの召喚獣がトライデントを構え、巫女服姿の霊夢の召喚獣へと駆け寄ります。その気迫は本当に凄い!気迫なら余裕に霊夢に勝ってますね!
「くたばるのよさーっ!」
気合いが十分なチルノは、勢いよく武器を突き出し、霊夢の召喚獣のお腹へとその先が突っ込――!
「はいよー」
ゴキィィィンッ!!
「げっ!?」
――む前に、霊夢のお祓い棒がチルノの召喚獣の顔面に叩きこまれました。もう木の棒から発せられた音じゃありませんね!恐るべし、木!
『Aクラス 博麗 霊夢 英語 311点
VS
Fクラス チルノ・メディスン 英語 199点』
いくら気迫があっても、点数の壁は越えられなかったみたいです。やはり二勝一敗になるわけなのですね~・・・
「う、うそなのよさああああっ!!?」
「事実よ。私の勝ちね」
手をついて嘆くチルノにも、霊夢の掛ける言葉はクールなもの。そんな反応にチルノはさらに悔しがります。
「こんちくしょー!あんたみたいなへんてこな召喚獣に負けるなんて!クーポンのミスだわ!」
「誰がへんてこか。というかクーポンて何よ」
たぶん『痛恨のミス』ですよね。というかクーポンがあろうがミスってようが、霊夢は力加減をしてくれたとは思えませんけどねー。
「お、覚えときなさい!この恨みはいつか返してもらうからね!」
「あーはいはい。期待せずに気長に待ってるわ」
「むぐぐグ…!メ、メーリイイィンっ!」
「え?え、ちょ、まったがあっ!?」
全く静止を聞かず、チルノは壇上から一気に私の胸へアタック。お空よりはマシでしたけど、苦しいものはやっぱり苦しい・・・!!
「あ、あいつがアタイをバカにしてくるわ!ひどいわよね!?」
「あ、たた…バ、バカにしてるわけじゃないと思いますよ?霊夢はそういう言い方をする性格なだけで、人をバカにするようなことをする子ではないと――」
「メ、メーリンもアタイをバカにする気っ!?アタイを信用してくれないなんて…メーリンのバカァッ!みずきー!!」
「わ、わわっ。よしよしチルノちゃん、大丈夫ですよ~」
「……え~・・・」
・・・・・・・・・あまりにも理不尽すぎて、私涙腺が緩みかけです。むしろ私が胸を貸してほしいわっ!さくやさ~ん!!
「・・・ま、まあ紅の予想通りだな。・・・予想外のダメージを紅が負うという事以外は」
「あうう~・・・私間違ったこと言ってないのにい……」
「まあ元気だせ美鈴。そのうちいいことあるって!」
魔理沙の慰めも今は心地いいですよう。これが咲夜さんなら天に昇れるんですけどね。今度からチルノの事は、瑞希さんに任せた方がいい気がしてきます~・・・
「では、今回はAクラスの勝利という事で・・・1対2ですね。それでは、第四試合の代表は前に出てきてください」
これで二勝一敗です。まだまだ勝負は分かりません。
「……(スック)」
「お、ムッツリーニしっかりやれよ」
土屋君が立ちあがりました。今度は彼が行くみたいです。
「頑張れよ土屋!負けんじゃねえぜ!」
「ファイトです土屋君!」
「……心配無用」
彼の自信は相当なもののようです。土屋君の保健科目は他をずば抜けて秀でていて、保健体育だけにしぼればAクラスにも負けない点数。Bクラス戦の点数があれば、勝つこと間違いないでしょう!
「じゃ、僕が行こうかな?」
そんな保健体育オンリーの秀才土屋君を相手に出てきたのは、さきほど友達兼咲夜さんハグの強敵になった工藤愛子(くどうあいこ)さん。咲夜さんは渡しません!
「一年の終わりに転入してきた工藤愛子です。よろしくねー?」
おや、そうだったのですか。その割には皆さんとなじめていますし、全然気づきませんでした。コミュニケーション能力が凄いのですねー。
「教科は何にしますか?」
「……保健体育」
最期の教科選択権です。これはとても有意義な使い方と言えるでしょう!
「う~、アタイはバカじゃないのに~…」
「よ、よしよし、チルノちゃんはバカじゃありませんよ~」
「いや、ぶっちゃけバカではないと言えんだろ―」
「魔理沙!今瑞希があやしてあげてるのに、追い打ちなんかかけちゃダメでしょ!」
瑞希さんの胸で慰められてるどこかのおバカとは違います!わ、私だけ除け者にされて悔しくなんてありませんもんっ!
「土屋君だっけ?ずいぶんと保健体育が得意みたいだね?」
・・・それを知ってて、その余裕。もしや工藤さんも保健体育が得意なのでしょうか?
「でも、ボクだって得意なんだよ? ……キミとは違って、実技で、ね♪」
そんなことを言い出す工藤さん。こらこら、女の子がそんなことを公共の場で言ったらいけませんよ!
「愛子さん。あんまりそういうことは大きな声で言っちゃあダメですよ?」
「あ、美鈴さん。ごめんごめん!」
う~む、ニコニコ笑って謝られても、本当に気を付けようとしてるのか分かりません。頼みますよ~愛子さん?
「美鈴さんは工藤さんを知ってるの?」
「あ、ええ。さっき話して知り合いました。・・・吉井君は顔が赤いですけど、どうしたんです?」
「・・・・・この教室はあっついね~。思わずほてってきたよ」
「いや、全然そうとは思いませんけど・・・」
工藤さんの言葉で何かスケベなこと考えたんでしょ。視線が工藤さんに向いていて丸分かりです。
「そこの美鈴さんと話しているキミ、吉井くんだっけ?勉強苦手そうだし、保健体育で良かったら僕がおしえてあげようか? もちろん、実技で♪」
いや、だからですね―
「フッ、望むところ――」
「結構っ!アキにはまだまだそんなことは早いわよ!」
「そ、そうです!いっそのこと永久に必要ありませんっ!」
「あ、あなた達が決めることではないのでは!?」
「島田に姫路、明久が死ぬほど悲しそうな顔をしているんだが」
「・・・僕にも、そんな日が来ると思うんだけどなあ……」
・・・さて、姫路さん達にも注意したいし、吉井君もフォローしたいですが、まずはこっちですよね?
「く・ど・う・さぁん?」
「ひえっ!?」
ニコリ笑いながらもにらみは止めません。これは愛子さんが悪いですよね~?
「私、言いましたよね~?あんまりそういうことは言うな、って。その結果人が傷ついてしまいましたよ?え~?」
「ごごっ、ごごめんなさいっ!」
「私に謝られても困りますよ~。しっかり傷ついた人に謝りましょうねー?」
「!よ、吉井君ごめんなさい!」
「あ、そ、そんな気にしないでよ。僕は大丈夫だからさ」
・・・うん。愛子さんも深く頭を下げてますし、吉井君もいいと言ってますから充分でしょう!
「愛子さん。あんまり人をバカにするのはいけませんよ?そりゃ誰だって嫌な物とかありますし、そこをからかうのはいけません」
「う…ご、ごめんなさい」
まあ、本人も傷つけるつもりで言ったんじゃないんでしょうけどね~
「そもそも、吉井君とゅは(噛んだようです。正しくは【吉井君は】、ではないでしょうか?)いずれ(誰かと)そういう経験をすると思いますからねー」
って、わ、私は何言ってるんですか!そういうことは言ったらダメって自分で思ってたところじゃないですか!つい口がすぎちゃいましたっ!ほら、皆さんも少し引いた顔になって私を見て
『――えええぇぇええええぇええっっ!!!?』
「ひいっ!?」
そ、そそそこまで仰天して大声を出されるとは思ってませんでしたよぉ!?
Aクラスにいる全ての生命が窓をぶち破らん限りの絶叫をあげ、その絶叫を聞いて窓の外にいた鳥類がギャアギャアと鳴きながら飛び去りました!よ、よく見ると窓にひびが・・・!?
「メメメメ、美鈴さあん!?それはどういうことですかああっ!!?」
「まま待ちなさい美鈴!友人として言わせて!あなた達知り合って間もないでしょう!?な、なのにそんな・・・・・・はは、早すぎます!!もっと互いのことを知り合ってから答えを出すべきよっ!」
姫路さんが涙目・・・というかもう滝を生み出しながら私に思いっきりしがみついてきて、アリスが全力で私の元へやって来て、かつて見たことがないほどに顔をゆでたこ状態にしながらよく分からない事を告げてきました。ど、どうしたんですか2人とも!?
「ア~キ~!?さすがにウチの怒りも限界よおぉっ!?」
「ま、まま待ってください美波サマ!ぼ僕だって初耳で何が何だか―!」
「――なら、そのバカで役に立たない鼓膜を引き裂いてやろうかしら?そうすればあなたのゲスでふしだらで助平な汚い脳も思い出すんじゃない?ええ?」
「待った!君の持つペーパーナイフはそんな猟奇的な目的のために使うものじゃないよ!?ってていうか実行されたら僕の記憶がどうのじゃなくて僕の生命がどうのこうのになるから!」
『テメエ吉井ぃぃ・・・!!橙(チェン)ちゃんだけじゃなく、美鈴さんとも仲を進めてやがったとは、覚悟出来てんだろうなあああ!?』
『幼い女の子を手籠めにした挙句浮気しやがるとは、キサマの血は何色だぁあっ!』
『二人の少女を陥れるこの悪魔を、断じて許すまじっ!』
「待った待った待った待ったぁ!?皆お願いだから少しで良いから僕の話を聞いて!いや、もうこの際聞かなくていいから、せめて皆が持ってる木材とか獲物は離して!せ、せめてもの慈悲を――!!」
「ウチは元から素手よ!」
「聞くわけないでしょうがこの下種がぁあ!!」
『悪魔が慈悲なんか求めんじゃねええ!』
「にぎゃあァああアぁアアぁあアあッ!!」
ひ、ひええっ!?今までにないほど咲夜さんが怒って、島田さんたちと吉井君を袋叩きにし始めましたあ!?普段の優しい咲夜さんはどこにー!?
「……優子。紅は大胆。私も見習いたい」
「だ、ダメだって代表!そ、そんなハレンチなこと…!」
「へ~、美鈴の奴がねえ。全然知らなかったわ」
「博麗!あんたもちょっとは止めなさい!というかなんでそんな冷静なのよ!?」
「どうせ遅かれ早かれのことじゃない。慌てる必要が無いわ。・・・それより木下。代表がどっか行こうとしてるけどいいの?」
「!だ、代表、どこ行くつもりよーっ!」
「優子、離して・・・!私も・・・!」
「ま、全く、これほど感情をあらわにする代表ははっ初めて見たよ(かたかたかたかた)」
「あんたも目に見えてすごい凄い震えてるけど、何があったのよ久保」
向こうでも霧島さん達が何やら慌ただしくなっていて、こちらの波紋が広がっている様子。
「あ、あわわわ…美鈴さん凄い・・・って土屋君!鼻血で顔が真っ赤になってるけど大丈夫っ!?」
「……殺したいほど、明久が妬ましい・・・(ボトボト)!」
「むしろ出血多量で殺されそうじゃん!?ほほ、ほらティッシュ!」
「……!!近づくな・・・!(ブシャアアア!)」
「ひゃあっ!?も、もっと血が出始めた!?」
壇上では土屋君が血に染まり、それを必死に愛子さんが止めようとしています。もはや勝負どころじゃありません。
「??まりさ、なんで皆慌ててんの?」
「そ、そうさな……大人の階段を上るって美鈴が言ったからじゃないか?」
「?階段に大人も子供もないわよ?それの何がおかしいのよさ」
「・・・あ~、チルノはチルノでいてくれて嬉しいぜ」
「ほんと!?アタイったら最強ね!」
魔理沙、チルノ!あなたたち二人は通常運転でいてくれてホントに感謝します!
「ホ、紅さん。生徒間でそういったことをするのは、その、よくないのではないかと・・・」
「は、はあ・・・?」
クールな高橋先生も少し顔を紅潮させる始末。分からない!わ、私の言葉の何が悪かったのか…!?
「・・・坂本君。私、さっきなんて言ってましたか?」
原因がどうしても分からなかった私は、ずうっと静かなままの坂本君に尋ねてみました。ひょっとすれば第三者の意見を聞くことで答えが出るのでは・・・そう考えての行動です。
「・・・確か、『そもそも、吉井くん〝とは〟いずれそういう経験をすると思いますからねー』・・・だったと思うぞ。・・・・・・紅?」
それは大正解だったようです。おそらく、私の体は目に見えるほど震えていたことでしょう。
・・・・・・・・・私はあほですかああああっ!!そんな言い方したら私が、吉井君とそんな関係みたいじゃないですかあ!
そんな関係になったことなんて吉井君を含め誰一人いませんよー!ま、まさか一文字かんじゃっただけでそれほどの誤解が生まれるとは・・・まさに水滴が石を穿つ!って微妙に違うしあんまり上手くねーよっ!
「み、皆さん私の話を聞いてくださ~~~~~いっ!」
悪意が無くても人を傷つける。私は思いっきり学ぶことが出来ました。も、もう自分のやってきたことに顔向けできましぇん・・・
「皆さま、ほんとにすみませんでした」
私with土下座。悪いことをしたらやっぱりこれですよね。
私の全身全霊を賭した説明と謝罪に、皆さんはなんとか正常な状態に戻ってくれました。
「よ、良かったです。私、ホッとしました・・・・・・」
「そ、そうよねっ。ア、アキがそんなことするわけないわよねっ!」
「島田、その明久に率先的に手を出した1人はお前だぞ・・・」
「みなみ、なかなかやるわねっ!最強なアタイも思わずぶるぶるしたわ!」
「……ほ、本当にごめん。アキ、大丈夫・・・?」
「っていうか、生きてんのかこれ…お~い、吉井大丈夫か?」
「う、う、ううう、き、気にしないで、ぅうう…ありがとう魔理沙・・・」
ただし、吉井君の傷だらけの体はもとに戻りません・・・ま、まじですみませんっしたああ!!
「い、十六夜!ちょっとあなたやりすぎじゃない!?吉井君が凄いことになってるわよ!?」
「だ、だって、美鈴に変態な虫がついたと思ったら・・・!」
「・・・はあ~、あなたも本当に家族が好きというかなんというか・・・」
吉井君への攻撃を一番過激にした咲夜さんには注意するところなんでしょうけど、今の私にそんな権利などナシ!だからアリスに任せましょう!重ね重ねすいません吉井君―!あとで出来る限り言う事は聞きますよ!
「ムッツリーニ、もう大丈夫なのかのう?」
「……OK」
「よし、じゃあ頼むぞ」
「・・・了解。」
鼻血を出してダウンした土屋君もようやく興奮が冷めたみたいで、少しふらつきながらも再度壇上へ。しかしあれだけ鼻血を出す人もすごいですよね。どんな想像力を持っているのでしょうか?
「ごほん。では2人とも、召喚獣を召喚してください。」
いつも通りの表情に戻った高橋先生が咳払いをすることで、ざわついていたクラスが次第に静まり返り、壇上の2人へと目を向け始めました。も、もう穴を掘って埋まりたいぃぃぃいい・・・・・・!!
「あ、は~い。試獣召喚っと」
「……試獣召喚。」
2人が合言葉を言い、それぞれの召喚獣が出現します。
土屋君の召喚獣は、忍者の格好をしていて手には二本の小太刀。それに対して愛子さんのは―
「なんだあの巨大な斧は!?」
「しかも腕輪までつけてるぞ!?」
Fクラスからそんな驚きの声があがりました。言う通り、愛子さんの召喚獣は、両腕でもどうかと言わんばかりに大きな斧を構えていて、特殊効果を持つ腕輪もつけていました。それを装着しているという事はかなり点数が良いという証拠です!や、やはり言うだけあって保健体育が得意なんですね!
「じゃ、決めさせてもらうね?」
自信に満ちた笑みを浮かべた愛子さん。その召喚獣の腕輪が光り、バチバチと雷光が発生して斧に纏わり始めました。攻撃力がアップしたということ!?つ、土屋君大丈夫ですか!?かなり凄そうですよ!?
「じゃあね、ムッツリーニ君」
愛子さんの召喚獣が土屋君の召喚獣に詰め寄った!は、速い!
「ムッツリーニ!」
吉井君の悲鳴もむなしく、斧が横に振り払われ――
「……加速」
「…………え?」
「お、おおっ?」
――るも、そこに土屋君の召喚獣はおらず、いつの間にか愛子さんの召喚獣の背後に。
「……加速、終了」
その言葉の後、愛子さんの召喚獣は何かに攻撃されたような動作を見せてから、どさりと前に倒れました。
『Aクラス 工藤愛子 保健体育 446点
VS
Fクラス 土谷康太 保健体育 572点 』
うわ!す、すっごい高いですよっ!?私、そんな点数取ったことがありません!たぶんそれの半分くらいじゃないでしょうか!?土屋君のエロへの情熱に私はただただ驚愕するばかりです!
「うおっ。土屋のやつあんなに点数が良かったのか!」
「らしいな。Bクラス戦の時は出来がイマイチだったそうだ」
「ふ、ふふん!最強なアタイの前には勝てないけどね!」
「ほう。ではチルノは何点だったのじゃ?」
「71点!」
「・・・確かに、遠く及ばないな」
「ふ、やっぱり君はバカだねチルノ」
「なにい!?じゃあよしーはどうなのよさ!?」
「聞いて驚け!僕は83点だっ!」
「・・・いや、そんなに変わんないじゃない、ってチ、チルノ!?いきなり床に手を着いてどうしたのよ!?」
「ば、バカな・・・この、アタイが、あのよしーに・・・!」
「だ、大丈夫ですチルノちゃん!チルノちゃんはバカじゃありません!つ、土屋君の点数を見ても大丈夫だったのに、どうして吉井君の点数にだけ悲しむんですか!?」
「だってみずき!あのよしーよ!?あのよしーに負けるなんて・・・最強のアタイには耐えられないわ!」
「はっはっはー!ざまーみろだい!あと僕はバカじゃないからその言い方は止めて!僕がバカみたいでしょ!」
「いや、あってるぜ」
「だな」
「じゃな」
「3人は黙ろうね!今僕は小さな優越感に浸っている最中なんだから!」
「自分で小さいと言ってるあたり、お前は小さいな・・・」
隣でもわいわいと騒がしくなっています。まだぼろぼろのはずなのに、体を起こしてまでチルノにはりあう吉井君には呆れと尊敬を抱いてしまいます。
「そ、そんな・・・・・・!この、ボクが…!」
魔理沙たちの動揺は対戦相手の愛子さんにもあるわけで、よほど勝てると思っていたのか、床に膝をついてしまいました。おバカとエリートとはいえ、チルノと愛子さんのショックの度合いは同じなのですね。
「では、これで一対三ですね」
「よし、あと一勝ですね…!」
しばらくして、とぼとぼと壇を降りた愛子さんを見てから高橋先生は言います。
彼女の言葉通り、いよいよ王手です!私たちの時代が来るのも遠くないかもしれませんよー!
「では、次の方は?」
「坂本君。ここは決めたいところですよ!」
ここで勝てば勝利は確定!我々の切り札を出すときです!
「だな。――姫路!ここはお前の出番だ!」
「あっ、は、はいっ!」
不運にもFクラスに入ることになった、学校随一の秀才の1人!姫路瑞希さんの出番です!頑張ってくださいよおーっ!
「ご、ごめんなさい!まさか、あんなに凄い点数とは思わなくて・・・!」
まあ、こんなにしょぼんとした愛子は初めて見たわ。それだけ負けたのがショックだったのね。
「仕方ないわ、済んだことよ」
「あ、ありがとう咲夜っ!」
確かに、あんなに高い点数を持ってるだなんて誰も想像しないわ。土屋康太、大したものね。
「ちょ、ちょっとどうするの?もう後がないわよ!?」
「そうね・・・見て。向こうは瑞希だわ」
「うそ!?」
アリスの言う通り、ステージの上には姫路さんが。それには皆が動揺してしまってざわつき始める。彼女の学力は学年でもトップファイブには入るほど。誰も彼もがまずいとさわぎだすのも仕方ないこと。
「だ、代表!どうするの!?」
「……久保、どう?」
「……はっきり言えば、少し難しいかもしれないな。彼女の学力は本当にすごいそうだからね……」
学年主席の久保君がそう言って渋い顔をする。実際、姫路さんと久保君とでは姫路さんの方が成績はよかったと思うから、勝利を保証するには苦しいものがあるかもしれない・・・
「そ、そんな・・・!じゃあどうするの!?他に誰がいるってのよ!?」
木下さんが少し怒鳴り気味に言いながら皆を見渡すけれど、ほとんどの人がさっと目を逸らしたり、自分では無理だと申し訳なさそうな顔をするばかり。そのことが、Aクラスが敗北するのではないかという不安をより煽ろうとする。
でも、
「―――私が行ってもいいかしら?」
そんなしんみりとした雰囲気、私は嫌いよ。
私はそんな暗いムードを追い払うために、気合いを入れて聞いてみた。
お読みいただきありがとうございます!
次回はようやくというかなんというか、咲夜さんの出番です!とはいえ、やっぱり勝負はシンプルになると思いますが!
あと二回か三回となると思いますが、次回もAクラス戦、お楽しみに!
それではまた次回っ!