バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

22 / 78
 どうも、村雪です!いよいよ四月!新しい環境に皆さまがなじんでいけることを言葉だけながらも祈ります!皆さん頑張ってください!

 さて、今回はAクラスとの交渉の回ですが、あんまりギャグパートはない回となっていますので、面白みは他回よりも少なめです!

 そこら辺を踏まえて読んでいただければ、あんまりがっかりしないと思いますので、心づもりはしといてください!


――では、ごゆっくりお読みください


条件―交渉、成立するには柔和な姿勢が重要ね

「――で、Fクラスの人たちが何の用?」

 

「ああ。Aクラス代表に一騎打ちを申し込みに来た」

 

「・・・・・・」

 

 

 坂本君の宣戦布告に、彼女、木下優子さんは訝しげに坂本君を見つめます。初めての対面となりますが、話通りというか予想通りというか・・・・・・本当に秀吉君そっくりですね!でも彼女の方が少し目つきがきつい、かもですね?

 

 

「つまり、召喚戦争はしないということかしら?」

 

「交渉次第だと、そういうことになるな」

 

「でも、どうしてそんな方法で?」

 

「色々とあってな」

 

「ふうん?」

 

 

 その両脇には咲夜さんと、魔理沙と同じく昔からの知り合い、アリスが並んでAクラスの使者として構えます。

 

 ……ついさっきまで和気あいあいと話していたとは思えない代わりぶりですねー。さっきまでアリスや咲夜さん達とおしゃべりしてたんですけど、それの楽しい事楽しい事!ちなみに霊夢は眠たかったらしく、システムデスクに突っ伏して眠っていました。机に見えた水滴はあくびの涙ですよっ!

 

 で、眠った霊夢はそっとしておき、私達で話を盛り上げていたら秀吉君のお姉さんがしびれをきらして止めに入ったというわけです。延々と話しそうな勢いでしたから使者としては助かりました。

 

 …親しい仲の談話を邪魔されたという観点で言わせてもらいますと、思わないこともないではないですけどね!

 

 

「・・・何が狙い?」

 

「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」

 

 

 坂本君の宣言に、木下君のお姉さん…あー、長いですから、木下さんと言わせてもらいましょうか。木下さんがさらにうかがわしい顔になりました。まあ仕方ない事です。一番最下位のクラスが、最上位の挑むと言われて何も思わないはずがありません。今も表情にありありと浮かんでますからねー。『何を無謀なことを…』って感情が。

 

 

「ずいぶん大きく出るじゃない。ウチの代表1人になら勝てるとでも?」

 

「どうだろうな。それはやってみてのお楽しみだ」

 

「楽しみにする必要もないわね。絶対こっちの代表が勝つわ」

 

「そうか。ならこの一騎打ちに乗っても問題はないんじゃないか?」

 

「……」

 

「……」

 

 

 一歩も譲らない交渉。木下さんと坂本君は無言で視線を交わします。

 

 

「坂本君」

 

「ん?」 

 

 

 その沈黙を終わらせたのは咲夜さんでした。

 

 

「せっかくのご提案なんだけど、それに私たちが乗る理由がないと思うわ」

 

「十六夜っ!」

 

 

 口を挟まれたのが気に食わなかったようで、木下さんが怒り気味で咲夜さんを睨みます。ま、まあまあそんなに怒らないであげてください!

 

 

「木下さん、だってそうでしょ?いくら勝負が見えてるからって、わざわざ相手の条件を呑む必要がないわ。普通に試召戦争を挑めばいいじゃない」

 

「う…そ、そうだけど」

 

 

 うっ。やっぱり今は咲夜さんはAクラスの一員ですね。私たちに非協力的です。寂しいですけど立派ですよ咲夜さん!

 

 

「だからそういうわけなんだけど、坂本君。その提案は断らせてもらうわ」

 

「なるほど。賢明だな」

 

 

 咲夜さんの言葉に坂本君は鷹揚(おうよう)に頷きます。ここで話が終了、と咲夜さん達は思ったかもしれませんが、残念。ここからが彼の交渉です。

 

 

「…ところで、Cクラスの連中との試召戦争はどうなった?」

 

「…ああ、あれね (チラ)」

 

「……あ~、じゃ(スッ)」

 

 

 ちらりと秀吉君を一瞥。そっと目を逸らす秀吉君。咲夜さんには全てばれちゃってますから仕方ありませんよね。 

 

 

「…ふんっ。そんなの勝ったに決まってるわよ。何の問題もないわ」

 

 

 やっぱりそうなりますよね。さすがトップクラスです・・・が。あ、あの。木下さん?どうして霊夢の方を見て舌打ちを?寝てますけどあの子は今は何もしてませんでしたよ?

 

 

「その通りね。だから今、Cクラスの人たちはDクラスと同じ設備で授業をしていると思うわ。向こうから仕掛けてきたんだから同情はしないけどね」

 

「…あ~」 

 

 

 違うのですアリス。小山さん達が攻撃してきた理由は私たちにあるのです。だから私は同情どころか、罪悪感でいっぱいなのですよ~・・・!

 

 

「でも、それがどうかしたの?」

 

「その後に、Bクラスとやりあう気はあるか?」

 

「…Bクラスって……おととい来ていた、あの……」

 

「ああ。あれが代表をやっているクラスだ」

 

 

 あのあれと呼ばれる根本君。名前は大事なものなんですからしっかり呼んであげましょうね!

 

 

「?アリス。それって根本 恭二の事よね?彼がどうしたの?」

 

「・・・そういえばあなたはいなかったわね。まあ、変わった格好をしてきたのよ・・・変わった格好を、ね」

 

「?」

 

 

 その時に咲夜さんはFクラスに来てたんですよね。私がトイレで顔を洗ってた時にすれ違ったみたいです。 

 

 ・・・しっかし、皆さん根本君の女子制服姿を見ても、笑うどころか顔を逸らしたり苦い顔をしたりしてましたけど、なんででしょう?私は笑いをこらえてたんですけど・・・

 

 

「幸い、そのBクラスにはまだ宣戦布告をされていないようだが、さてさてどうなることやら」

 

「・・・でも、坂本代表?Bクラスはあなた達Fクラスと勝負をしたわよね?だったら三か月の準備期間を取らない限りは試召戦争を挑めないのでは?」

 

 

 アリスの言葉は、試召戦争の決まりの一つにあたります。

 

 ―負けてしまったのは運が悪かったから―

 ―もう一度挑めば勝てる―

 ―このまま負けっぱなしでいられるか―

 

 そんな考えを、きっと負けた側の人は思うでしょう。その考え通りに再度勝負を挑み、もしも勝ったとしてもまたまた負けたチームが挑んで、それに負けたら……そんな泥沼化を避けるためのルール。負けたクラスは三ヶ月間の準備期間を過ごさない限り、自分たちから勝負を挑むことが出来ないのです。

 

 そんなアリスの疑問にも坂本君は態度を変えません。

 

 

「知ってるだろ?アリス・マーガトロイド。実情はどうあれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』ってなっているってことを。規約には何の問題もない。……Bクラスだけじゃなくて、Dクラスもな」

 

 

 暗に、もしもこの案を乗らなければ、BクラスとDクラスをけしかけるぞ―と伝える坂本君はだいぶ悪役に見えますね!

 

 

「・・・なるほど。上手いわね」

 

「で、私たちが乗らなかったらその2クラスに攻撃させる、と?」

 

「人聞きの悪いことを言うなよ。ただのお願いじゃないか」

 

「ふん。よく言うわよ・・・」

 

 

 再び探り合いをしだす坂本君と木下さん。み、見ているこっちがハラハラです…!

 

 

「―――向こうは美鈴か、姫路さんが――?」

 

「なら、――じゃなくて何人かで――」

 

 

 ん?咲夜さんとアリスが何やら話を・・・

 

 

「坂本君」

 

「なんだ?」

 

「こっちの条件も呑んでくれるなら、その話に乗ってあげてもいいわ。」

 

 

 え!?い、意外とあっさり!?

 

 

「ただし、それを呑まないのなら交渉は決裂よ」

 

「!?ちょっと!」

 

「・・・聞かせてもらおうか」

 

 

 ど、どんな条件を出すつもりでしょうか・・・? 

 

 

 木下さんをなだめながら咲夜さん達が、その条件を言います。

 

 

「その一騎打ちという事なんだけど・・・代表だけの一騎打ちじゃなくて、それとは別に一騎打ちをしてもらうわ。そうね・・・7人ぐらいかしら?」

 

「で、七回の一騎打ちの内、四回勝った方が勝者、って具合でどう?」

 

 

「・・・・・・・おお?」

 

 

 もしも私の予感が的中してたらの話ですがこ、これはひょっとして……不利どころか、好都合ではないでしょうか?

 

 

「なるほど。こっちから姫路や紅が出てくる可能性を警戒しての、七回勝負か?」

 

「そういうことね。まあ美鈴(メイリン)はそこまで警戒していなけど」

 

「ひどいです咲夜さんっ!」

 

 

 そこはウソでもいいからお姉ちゃんの顔を立てて!

 

 

「安心してくれ。うちからは俺が出る」

 

「たとえそれが事実にしても信じるのは難しいわ、坂本代表?」

 

 

 坂本君の一応ウソじゃあないんですけどねえ。でも信じてもらう保証がありませんし、アリスの慎重さも当然です。

 なので、坂本君としては向こうの提案に乗るしかありませんね!というかむしろ私は乗ってもらいたい!

 

 

「坂本君。ここは呑んだ方がいいのでは?」

 

 

 こそっと坂本君に耳打ち。それへの返事かどうかは不明ですが、坂本君は答えを出します。

 

 

「分かった。それなら、その条件を呑んでもいい」

 

「本当?言ってみるものね」

 

「ただし、勝負する内容はこちらで決めさせてもらう。そのぐらいのハンデはあってもいいはずだ」

 

「え?」

 

 

 坂本君はさらに一手。科目を選択する権利が無かったら、霧島さんに日本史で勝負を挑むこともできないからここも重要な条件です。咲夜さん達の条件も飲んでいますから、こちらもまた条件を出してもクリアーできる可能性はあります。

 

 

「・・・んん。それはちょっと厳しんじゃないかしら。別にFクラスにハンデをあげる理由もないでしょ?」

 

 

・・・アリス。またまたごもっともです。ク、クリアーならず…!?

 

 

「……受けてもいい」

 

「ぅわっ!」

 

「わわっ!?」

 

 

 よ吉井君!びっくりするからいきなり大声を出さないでくださいよっ!

 

 びっくりさせられたことに文句を言おうと振り向くと、そこには黒髪を肩までのばした日本人形のような美少女、Aクラスの代表、霧島 翔子さんがいました。なんとまあ綺麗な・・・!少し咲夜さんの雰囲気に似ていますね!

 

 

「……雄二の提案を受けてもいい」

 

 『雄二』、ですか。坂本君の言う通り、やっぱり2人は幼なじみなんですね。そのおかげか、霧島さんはあっさりと坂本君の追提案を受けました。

 

 

「代表、いいの?こっちがわざわざ応じる必要はないのよ?」

 

「……うん、アリス。その代わりに、条件がある」

 

「条件?何だ?」

 

「……(ジッ)」

 

「・・・あ、あはは・・・?」

 

「え、ええっと・・・?」

 

「?顔に何かついてるか??」

 

 

 霧島さんが私達女子三人の顔をじっくり見だしました。

 

・・・て、敵愾心丸出しな目ですね~。まるで自分の大事な人に手を出す敵を見るような・・・ん?あ、今一瞬、教室で思いだせなかった答えが出かけた気が・・・!

 

 

「……負けた方は何でも一つ言う事を聞く」

 

「……(カチャカチャ)」

 

「ムッツリーニ!まだ撮影の準備は早いよ!というか、負ける気満々じゃないか!」

 

「そう言う吉井は、財布をあさり出して何をやってるんだぜ」

 

 

 その霧島さんの提案に、うちの2人も何やら誤解を。どうせエッチなことを妄想したんでしょこら!土屋君!吉井君!手のカメラと財布をしまいなさい!勝っても負けてもそんなことはありませんから!

 

 

「でも代表、やはりあっち(Fクラス)に科目選択権をやるのはまずいわ」

 

「そ、そうよ代表!こっちに不利になるじゃない!」

 

「……でも」

 

 

 その一方で、咲夜さん、霧島さん、3人が少しもめそうになっていましたが、アリスが3人の間に入って提案します。

 

 

「じゃあ、全部の選択権じゃなく四つだけを決めさせてあげるのならどう?そうすれば私達も3つは選べるし、さほど不平等でもないわ」

 

「・・・なるほど」

 

「まあ、確かにそれなら・・・」

 

「……ありがとう、アリス」

 

「お礼を言われるほどのことじゃないんだけどね。代表。」

 

 

 四つの選択権がFクラスでAクラスが三つ。過半数はこちらなので十分なハンデでしょう。

 

 

「それでどう?坂本代表」

 

「分かった。交渉成立だな」

 

「……勝負はいつ?」

 

「そうだな。十時からでいいか?」

 

「……分かった。雄二」

 

「ん?」

 

 

 そこで霧島さんは、

 

 

「・・・負けないから」

 

 

 熱い目で坂本君を見ながら、力強くそう宣言しました。

 

 

 

 

・・・・・・あ。あ~~っ!!お、思い出しましたっ!!確か霧島さんって・・・!?  

 

 

 

「ふん、抜かしやがれ」

 

 

 坂本君は特に反応することなく端的に答えただけでしたが、今の私にはほとんど頭に入ってきません!

 話し合いは終了しましたが、私には色々とやることが残ってますね!

 

 

「よし。じゃあお前ら、いったん教室に戻るぞ」

 

「そうだね。皆にも報告しなくちゃいけないからね」

 

「しかし坂本、七人って一体誰を出すつもりだ?」

 

「一応決めてはいる。お前もその一人だ、霧雨」

 

「おっ!そいつは頑張らないといけないぜ!・・・も、もしもアイツが出てきたらしっかり―」

 

「?アイツって、誰の事ですか魔理沙ちゃん?」

 

「ウエッ!?あ、や、なんでもないぜ瑞希!」

 

「……なかなか見ない霧雨の慌て顔。売れる・・・っ!!」

 

「や、やめろ土屋っ!絶対売んなよ!?」

 

 

 ぞろぞろと皆は扉へと向かって教室を出ていきますが、私はその場から移動することなくその背中を見届けます。Fクラスの人に聞かれると、面倒な事になりそうですからね!

 

 

「どうしたのよ美鈴?行かないの?」

 

「ええ。ちょっと誤解と疑問を晴らしておきたくてですね。ちょっと残らせてもらいました」

 

「?」

 

「ん?紅、どうしたのじゃ?」

 

 

 最後尾にいた秀吉君が廊下から声をかけてきます。ここは先に行っておいてもらいましょう。じゃないとまた皆さんが入ってきそうですからね!

 

 

「ちょっと私用がありましてね。すみませんが先に行っておいてください」

 

「?分かったのじゃ」

 

 

 少し不思議そうでしたが、秀吉君すぐに行ってくれました。ふう、興味心の塊の魔理沙じゃなくて良かったです~。

 

 

「―-で、どうしたの美鈴?」

 

 

 廊下から足音が聞こえなくなって、アリスが話しかけてきます。でも、アリスの場合は、まずは〝久しぶり〟の挨拶です。

 

 

「アリス、久しぶりですね。挨拶が遅れました!」

 

「ああ、それもそうだったわね。久しぶり美鈴。春休み以来かしら?」

 

「そうですねー。試召戦争でバタバタしてましたから全然会えませんでした!」

 

「咲夜とはずっと会ってるからほんとに変な気分ね」

 

「私も同じクラスになりたかったんですけど、今はこれで良かったとも思いますよ!」

 

 

 瑞希さん達と面白おかしく過ごせてますしね!怪我の功名って奴です!

 

 

「それで、美鈴はどうしたの?」

 

「ああ咲夜さん。霧島さんにちょっと用があるんです」

 

「……私?」

 

「はい!」 

 

 

 きょとんとされるのも仕方ありませんけど理由はきちんとあるのです!一つは彼女が一番知ってそうだという事と、ついさっき分かった誤解を解く二つです!

 

 

「ちょ、ちょっと。今会談が終わったところでしょ?」

 

「いえ、これは別にこの試召戦争がどうこうの話じゃありません。ちょっとした質問ですよ!」

 

「・・・本当でしょうね?」

 

「木下さん。美鈴はこう見えて約束は守る方だから大丈夫よ。」

 

「咲夜、なにげに酷いことを言うわね・・・」

 

「ま、全くです!」

 

 

 私の顔が嘘つきというのですかっ!!全くいつ私がウソを着いたと・・・あ、クラス分け試験で良い点数を採るって言ったのに全然採れてませんでした……またもあれが尾をひいてるのかーっ!あれのせいで咲夜さんからの信用が・・・!

 

 

「え、ええっと、とにかく、私は霧島さんに言いたいことと聞きたいことがあるのですよ」

 

 

 あの失態を取り消す方法も考えないといけませんが、まずはこっちから。誤解は早く解いておくに決まってます!

 

 

「……何?」

 

「では、まずは言いたいことですが………私は別に、坂本君の事を意識していませんよ」

 

「っ!?」

 

 

 お、おおっと!?足元大丈夫ですか!?

 

 

「だ、大丈夫代表!?ちょっとあんた!何やったのよ!」

 

「い、言いたいことを言っただけです!?」

 

 

 そんなに反応するとは思ってなかったんですよ~!

 

 思い出したこと。それは、実は霧島さんが坂本君にホの字だということ。咲夜さんが

言っていたはずなんですけど、もしかしたらあまりのビックリに記憶が飛んでいたのかもしれません。でも今、彼女の様子を見てて思い出したわけです!

 

 学年主席の冷静さというものか、すぐに霧島さんは元の表情に戻りました。

 

 

「……本当?」

 

「あ、はい。ついでに言いますとウチのクラスにいる女子全員、だと思います」

 

 

 瑞希さんと島田さんはもちろん、魔理沙もFクラスにはいないって言ってましたし、チルノに関してはまずない、絶対ないですね!あたいはサイキョーなんだからパートナーなんていらないわ!って幻聴が聞こえてきますもん。

 

 

「……!そう、良かった…」

 

 

 霧島さんは私の言葉に安堵したみたいで、少しですが笑みを浮かべました。ふ~、なんとか誤解は解けましたね~。初対面の人に敵意を向けられるのは悲しいですから、良かったです!別に坂本君が嫌いってわけじゃないんですけど、いかんせん彼はワイルドなんですよねえ。もっとこう、穏やかな男子が私の好みですかね?はてさて誰がいるのやら・・・

 

 

「いないわよ」

 

「私声出してましたか!?」

 

 

 咲夜さんの言葉に、悲しみと衝撃のダブルパンチです!

 

 

「出てないけど、表情で丸わかりなのよ。だてに美鈴の妹をやってないわよ?」

 

 

 普通、顔って感情だけを表しますよね?なのにそんなことが分かるって、どんな表情をしていたんですか私は。

 

 

「で、でもさすがにいないってことはないでしょ~。ほらっ、最悪知ってる人の誰かとか」

 

「その時は破局を願うわ」

 

「残酷です!?」

 

 

 咲夜さんは私に何か恨みがあるんでしょうか……私はしょげながら咲夜さんとの日々を思い出します。う~、そ、そんなにひどいことしたことありましたっけ~…?

 

 

「・・・咲夜、あなた、その言い方はあんまりじゃないの?」

 

「……だ、だって、適当に男の人と付き合ってほしくないもの。自分が好きになった人と交際をやっぱりしてほしいじゃない…」

 

「……まあわかるけど、付き合いだして生まれる恋というのもあるでしょ?だから―」

 

「美鈴が好んでじゃなくて、仕方ないと思いながら男といるのを見たら、私、そいつを屠る自信があるわ」

 

「……すごい愛情もあったものね」

 

 

 ひょっとしてこの前母さんのブラジャーを咲夜さんのと間違えたことでしょうか?はたまた遡って、うっかり間違えて咲夜さんが入浴中なのに入っちゃったこと?あ、もしかしてもっと前の――意外と心当たりがあってさらに悲しくなってきますね!

 

 

「へ~、咲夜にも意外と子どもっぽいところがあったんだ!僕安心したよ!」

 

「愛子、それは褒めてるのよね・・・?」

 

「勿論だよ。だっていっつも澄ましたところしか見ないからさ、なんだか新鮮に見えるもん!」

 

「あなたの反応は新鮮に感じないけどね・・・ほら早く離れなさい」

 

「愛子もハグが好きね…」

 

 

 むっ!?咲夜さんに抱き着く女子を感知!なんて羨ましいことをしているのですか!

 

 

「ちょっとそこのあなた!そこは私の癒しの場所ですよ!」

 

「へっ!?ご、ごめんなさい!?」

 

「あのね・・・いつから癒し場所になったのよ」

 

 

 咲夜さんが私にハグさせてくれた時からです!

 

 

「全く・・・というわけで咲夜さん。ハグさせてくださいだああっ!?」

 

「どういうわけでハグなのよ」

 

 

 そして咲夜さんがそれを防ぎだしたのは、文月学園に入学した時からでした。サヨナラ素晴らしきハグ!そしてコンニチハ痛い迎撃!

 

 

「え、え~と、こんにちは紅 美鈴さん!工藤(くどう) 愛子(あいこ)っていうんだ!」

 

「あ、ああ!初めまして工藤さん。紅 美鈴です!咲夜さんに抱き着いた恨みは忘れません」

 

「ええ!?は、ハグをして恨みを買うなんて初めてだよ!?」

 

 

 元気な女の子ですね~。でも、薄い草色の髪をショートカットにしてるから男子に見えるんですよねえ…最初、咲夜さんに男が抱き着いてるのかと思ってプッツンしそうでした。あはは♪笑えない!

 

 

「愛子、これはあなたが悪いわ」

 

「アリスまで!?ハ、ハグってそんなに悪い行為だったかなあ・・・?」

 

「行為じゃなくてタイミングよ。どこかの過保護なお姉さんがいるときはやめておきなさい。」

 

「お、お姉さん??」

 

 

 アリスーッ!?それって要は私がいない間は抱き着き放題って言ってるようなものじゃないですか!?そこは私の代わりに咲夜さんを守ってあげてくださいよ、この裏切り者ー!

 

 

「代表、大丈夫?」

 

「……うん。ありがとう優子。……紅、聞きたいことって・・・?」

 

「うう、どうすれば咲夜さんを貞操の危機から守れるでしょうか…」

 

「………………それが、聞きたいこと?」

 

「はっ!間違えました!」

 

 

 だから霧島さん、そんな変な物を見る目で私を見ないでください!(※そもそもハグに貞操の危機はあるのだろうか…)

 

 

「ち、違いますよ!?私の聞きたいことは、坂本君の事ですっ!!」

 

「……雄二の?」

 

「はいっ!・・・て今度は険しい目!?」

 

 

 ひいいい!?こ、心の底から震えが!!別に彼をどうこうするじゃありませんよお!?さっきの言葉は届いてましたかー!?

 

 

「……言葉次第では、ちょっとだけ覚悟してもらう。」

 

 

 その顔、絶対ちょっとぐらいでは済ましそうにありませんね!

 

 

「さ、坂本君の学力の事ですよー!」 

 

「……学力?」

 

 

 はあ…やっと無表情に戻ってくれました。まさか無表情で嬉しく思う日が来るとは思いもしませんでしたよ。

 

 

 

 その後、私は聞きたいことを聞けたので、Aクラスの皆に見送られながらFクラスへと戻りました。あ~・・・・・・勝負の行方はどうなりますかね~・・・? 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「代表、なんだか紅に色々と普通にしゃべってたけど、大丈夫なの?このあとの勝負で不利にならない?」

 

「……うん、優子。・・・たぶん」

 

「たぶんってねえ・・・」

 

「大丈夫よ木下さん。だってそんな大したことは聞いていなかったでしょ?気をもむ必要なんかないわ」

 

「十六夜・・・でも、もしかしたらあの紅美鈴が何かを企んでて、それを実行しにきたかもしれないじゃない!一回代表がふらついたのもそれのせいじゃないの!?」

 

「あ。それって美鈴さんと代表が話してた時だよね、優子?」

 

「そうよ愛子。意味は分からなかったけど、きっとあれは代表を揺さぶるための作戦に違いないわ!」

 

「……優子、あれは―」

 

「違うわ。美鈴はそんな小賢しいことはしないもの。だから愛子も木下さんも気になるかもしれないけど、多分杞憂に終わるわよ?」

 

「さ、咲夜がそこまで言うのなら、そんな気もするね?じゃあ大丈夫だよ優子!」

 

「……ふんっ。やけに紅 美鈴の肩を持つじゃない。あんた実は、Fクラスのスパイなんじゃないの?」

 

「ちょ、優子っ!そんな言い方はひどいよっ!」

 

 

「まさか。ただ、姉の性格を良く知ってるだけよ」

 

 

「へ?」

 

「……え?」

 

「……姉?」

 

「……え、あら?」

 

「・・・咲夜、あなた自己紹介の時にも言ってなかったわよ。だからじゃないの?」

 

「アリス。そうだったかしら・・・じゃあまあ、今さらだけど、紅 美鈴は私の姉よ。」

 

 

 

 

「「………えええええええええっ!!?」」

 

「・・・・・・十六夜。四月一日はもう過ぎた。」

 

「・・・この反応、何度目かしら・・・代表、ウソじゃないわよ。全く似たような事を坂本君に聞かれたわ。」

 

「……そう。照れる」

 

「そこでその顔をするあたり、代表って意外と熱いのね・・・」

 

「見てくれだけに騙されてはダメなのよ、アリス」

 

「なんだかしたり顔してるみたいだけど、見てくれが違ったら誰も姉妹とは思わないのが普通だと私は思うわよ」

 

「~~~るっさいわよあんたらぁっ!休み時間ぐらい静かにしなさいっ!」

 

「ひぇっ!?ご、ごめん霊夢!」

 

「いや、休み時間だから騒ぐんでしょう。霊夢」

 

「咲夜の言う通りよ霊夢。それにあなた、授業中もずっと寝てたじゃない・・・」

 

「・・・・・・霊夢。ヨダレが・・・」

 

「博麗ぃ!あんたはどれだけ寝るつもりよ!何回起こしても起きないし!あんたは学校を何だと思ってんの!?」

 

「あ?勉強をするところに決まってるじゃない。私を馬鹿にしてんの?」

 

「その言葉っ!そ・っ・く・り返してやるわよ!くうう・・!な、なんでずっとさぼって寝っぱなしのアンタの方が!Cクラス戦で活躍してんのよ!頑張ったのに!アンタにだけは負けないように頑張ったのにぃ!!」

 

「はあ?知らないわよそんなの。私にちょっかいかけてきたりして、日ごろの行いが悪いせいじゃない?」

 

「・・・・・・あ、あんただけにぃ・・・!あんただけには言われたくないわあああああああっ!!」

 

「あ~うっさいわね。はいはい悪かったわ。木下は私より偉かったわね、わー、木下は私よりも賢くてスゴイワー。ソンケイしちゃうわー・・・はい。これで満足でしょ?」

 

「このアマ、ぶっ殺すわよ!?」

 

「あ?褒めてやってんのに殺すなんて、あの世に召されたいの?ああ?」

 

「決めたっ!!Fクラスとの一騎打ち勝負の前にこのバカと一騎打ちしてやるわっ!私の拳でこいつを始末してやろうじゃない!」

 

「はっ。ついに頭も逝ったのねあんた。上等じゃない。叩き潰してやるわ・・・!」

 

「ちょ、ゆゆ、優子に霊夢!?ブレザーを脱いでカッターの袖をまくらないで!?ほ、本気の喧嘩の準備だよそれぇ!?」

 

「や、やめなさい優子に霊夢!時間に関係なく、それはシャレにならなー!」

 

「!だ、代表そっちを頼むわ!」

 

「・・・・・・う、うん!」

 

「「―――――!!」」

 

 

 

 

 

 カラカラ!

 

 

「こらAクラス!さわいで一体何を」

 

 

『『!!!先生ぃぃぃぃっ!!』』

 

「む!?な、なぜ皆涙ながらに私に詰め寄ってくるんだ!?」

 

『『あ、あの2人を止めてくださいお願いしますっ!!』』

 

「あ、あの2人??一体何のこと―――」

 

 

 

 

「や、やめなさい霊夢!アリス!もっとしっかり掴んで!」

 

「や、やってるわよ咲夜!!」

 

「離しなさい咲夜、アリス!売られたケンカは買うのが私の家訓よ!」

 

「「ウソおっしゃいなさいっ!」」

 

「ゆ、優子落ち着いて!優子は十分賢い!賢いのは僕が保証するからさっ!」

 

「・・・ケンカはダメ・・・!!」

 

「代表、愛子離して!このバカを一発殴らないと気が済まないのよぉ!」

 

「人をバカ呼ばわりすんじゃないわよ、この大バカが!」

 

「殺すっ!」

 

「ああ!?」

 

「お、落ち着いてよ2人共ぉぉっ!!」

 

「「やめなさい2人共ぉぉ!!」」

 

「・・・・・・ダ、ダメ!2人共ダメ・・・!」

 

 

 

「・・・・・・・・・お、お前達2人は、何をやっているんだあああああっ!!」

 

 

 ゴズンッ!×2

 

 

「「ぐえっ!?」」

 

 

 

 

 

「・・・さ、さすが〝先生〟の頭突きだわ、アリス」

 

「え、ええ・・・あの暴れる2人を黙らせるとは、絶対受けたくないわね・・・」

 

 




 お読みいただきありがとうございます!

 霊夢さんと優子さんの仲の悪さがすさまじく露になった最後でした!勿論ギャグパートですよー!

 さて人数の関係上、七回勝負とさせてもらったこの一騎打ち。どんな組み合わせで、誰が勝利するのかを期待して待ってもらえたらもらえたら幸いです!

それではっ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。