バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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 どうも、村雪です。一週間ぶりの投稿となって、結局あんまり間を空けませんでした!

 自分のいい加減さがあかんですね・・・!

 今回は以前みたいに、勝負の合間という事で自宅でのお話となります。少しでも和んでいただければ・・・!

――ごゆっくりお読みください


ご近所――礼儀、は親しくても親しくなくても持ちなさーい!

「…で、吉井がずいぶんな態度だったから、きっちりしめておいたわ」

 

「そ、そうですか・・・誰に責任があるかと言えば、ぶっちゃけ秀吉君にあるんですけどねー」

 

「さすがに吉井もその醜くて下卑た心を入れ変えるでしょうね。ったく、あの変態、誰が真っ平らよ…!」

 

「よ、吉井君は何を言ったんですか・・・?」

 

 

 Bクラス戦も終わり、学校から帰る時から今。咲夜さんは一緒に帰る私に何度もなんども吉井君へ恨み節をはきます。咲夜さんがこんなにふてくされるのは珍しいんですけどねー。聞いたらとばっちりを受けそうなのでやめときましょう。

 

 

「咲夜!み、みにくいって、何が見にくいの?」

 

 

 すると、近くにちょこんと座っていたレミィがよくわからないと、顔をしかめながら咲夜さんに聞きました。

 

 

「レミィ、それは、その人の本質がってことよ」

 

「??ほ、本室?」

 

「そう、本質。偉いわレミィ。」

 

「ふ、ふん!分かって当然よっ!……つまり!そのよしいって奴の本の部屋が汚くて、本を読めないってことねっ!?」

 

「………ごめんなさい。小学生には難しかったわね。」

 

「あ、あれ?違うの?」

 

「た、たぶん漢字が違ってるわレミィ。残念!」

 

 

 小学生にはまだ難しい言葉か~。これから頑張って覚えていきましょう!

 

 

「そ、それで、秀吉君のお姉さんは?」

 

「わけが分からないって怒ってたわ。小山さんが濡れ衣を着せて来たって言ってたから、まだ弟さんが動いてるとは知らないんじゃないかしら。」

 

「そうですか・・・」

 

 

 果たしてそれが幸なのか不幸なのやら・・・秀吉君と違って意外と厳しい人なのだそうで、後になればなるほど怖い気もします・・・

 

 

「はあ~、どうすれば人を傷つけずに上手くいきますかねえ?ねーレミィ。」

 

「ウェ!?え、え~と・・・・・・…し、知らないわよバカ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 

 き、傷のつけ方は会得をしているんですねレミィ・・・!そんないじわるな子になったらダメですよ~っ!

(*彼女自身、雄二、根本等をトラウマになるレベルで物理的に傷つけています。)

 

 

「こらレミィ。美鈴はバカじゃなくて天然なだけなんだからそんなことを言っちゃダメよ?」

 

「て、天然?」

 

「そう、天然。」

 

「咲夜さん。それ褒め言葉ですよね?違ったら私だいぶへこみますよ?」

 

 

 心優しい咲夜さんを私は信用します!

 

 

「……あれ、そういえばフランはどこに?」

 

 

 畳の間には私、咲夜さん、レミィの3人。残るおてんばなフランが見当たりません。トイレでしょうか?

 

 

「あら、そういえば―」

 

「メーリン、さくやっ!」

 

 

 おおっと、噂をすればなんとやら。ふすまをがらがらと開けてフランが入ってきました。なにやら嬉しそうな顔をしてます。

 

 

「どうしたのフラン?」

 

 

 そう聞くと、フランは少し興奮気味に答えました。

 

 

 

 

「今、霊夢から電話があってね!今からそっちに行くってさ!」

 

「へ?霊夢が今から?」

 

「あら、そんな話してたかしら・・・」

 

「ほんとフランッ!?」

 

「うん、おねーさま!」

 

 

 レミィとフランが嬉しそうに笑い合います。

 

 

 霊夢とは私たちのご近所になる女の子で、私たちと同じ文月学園に通っており、しかも咲夜さんによると同じクラスだとか。

 

 そんな女の子が急にやってくるという事に普通は驚くところなのかもしれませんけど、すでに何度もあったことなので全く驚きません。凄いときは何の連絡も無しに訪問してきますからね~。

 

 

「じゃあ、とりあえず片づけを――」

 

 

ピンポーン

 

 

「――する暇がないのもいつも通りですねえ・・・」

 

 

 ちなみに霊夢の家はここから歩いて1分あるかどうか。電話が終わってすぐに来たみたいですが、出来るのなら準備する時間だけでも確保させてほしいところですよ!

 

 

「もう少し都合を聞いてくれると嬉しいんですが・・・」

 

「魚に水なしで生きろと言うようなものよ。」

 

「理のレベルで無理と言いますかっ!?」

 

 

 た、確かにあの子のかたくなさはダイヤモンド並みですけども!もしかすればあの子だって私たちに気を遣って都合を合わせたり…………するところが想像できませんね~

 

 

「…よいしょ。」

 

 

 まあなんにせよ、今既に我が家の前にいるのはまごうことなき事実。ならば現状で迎えるしかありません。

 私は立ち上がってわがままご近所さんを迎えに動きます。

 

 木張りの廊下をぎしぎしと音立てながら歩いて玄関にたどり着き、ガチャリと鍵を外して

 

ガラララッ!

 

 

「お邪魔するわ、美鈴。」

 

「……まあ、今更過ぎることだから言っても無駄でしょうけど、せめて家の人が開けるまでは待ちなさい。霊夢。」

 

 

 我が家たる動作で入ってくる、おっきな赤いリボンをつけた長い黒髪の美少女、博霊(はくれい) 霊夢に私は何度目になるか分からない小言を言ってみました。

 

 

「いいじゃない、そのぶんあんたの労力を減らしてあげたでしょ?」

 

 

 もちろん霊夢はなんのその。逆に感謝しろと言ってくる始末です。

 

 

「これくらいは労力に入りません!」

 

「ほらほら、ムキにならなくてもいいわよ。私が勝手にやったことなんだから。」

 

「な、なぜ私が意地を張ってるみたいな言い方をしますかねえ?」

 

 

 私が意地を張ってて霊夢が気を遣ってくれたみたいじゃないですか。私は意地っ張りな子供じゃありません!世話を焼くお姉さんなはずですよっ!?

 

 

「もう、子どもの頃からの付き合いだからいいじゃない。今更のことじゃん。」

 

「むしろ大人になりつつある今だからこそ口を酸っぱくして言いますっ。霊夢はもう少し遠慮ということを「とりあえず上がるわね。」身に付けろと言ったそばからあなたはーっ!」

 

 

 靴を脱いでちゃっちゃと上がり込んで全くもーっ!レミィやフランの方がちゃんと行儀がいいですよ!?

 

 

「あによ。私が小学生より聞き分けが悪いですって?」

 

「!!い、いえいえそんなことは思ってませんよおっ!?」

 

 

 か、勘がめちゃくちゃ凄いのも霊夢の特徴でした!でもそれなら私の渇望も察してほしいっ!なんと都合のいい勘なんでしょう!

 

 

「私だって高校生並みには気を遣えるわよ。奢ってもらうことなんか一週間に一度にしてるもの。」

 

「週に一回奢ってもらうのを頭に入れてるずる賢さは確かに大人ですね!?」

 

 

 だめな方のですけど。それならやはり純粋な子供のままでいてほしいです・・・

 

 

「勇儀のおばさんは今日も遅いの?」

 

「あ、まあいつも通りだと思いますよ?今は咲夜さんとレミィとフランの3人です。」

 

「ふ~ん。じゃあ、またよろしくって言っといて」

 

「分かりました。」 

 

 

 そう言って霊夢は、私がいた畳の間へと入っていきます。

 

 

「よ、よく来たわね霊夢!今日は何の用かしらっ!?」

 

 

 それに真っ先に反応したのはレミィでした。

 あ~、とっても嬉しいけど恥ずかしいから我慢してます、って顔のレミィもまた可愛いですね~。

 

 そんなレミィを見て、霊夢も笑顔を

 

 

「こんな近くでよくもなにも無いわよ、レミリア。んで、別にあんたに用があるわけでもないし。」

 

 

――見せずに、けだるげな顔で言い捨てるのみ・・・自称高校生並みに気を遣える女子は、本当に自称のようでした。

 

 

「………う、う~っ!!」

 

「れ、レミィ!」

 

 

 ああ!ショックのせいで顔をテーブルに突っ伏せちゃいました!結構強くいきましたけど、鼻とか大丈夫っ!?

 

 

「霊夢、あなたね・・・もう少し柔らかい言い方ってものがあるでしょう。子ども相手にひどすぎるわよ。」

 

「そんなところから心が鍛えられるのよ、多分。そのうち効果が出てくるわ。」

 

「きっとそれはトラウマとしてでしょうね。全く・・・そんな性格だから今日もAクラスで木下さんともめるのよ。」

 

「あれは知らないわ。あっちから突っかかって来たんだからこっちは口で言い返しただけよ。それをやいやいと・・・木下って短気よねー。」

 

「あなたがそれを言う?霊夢。」

 

 

 全くですよ咲夜さん。霊夢って凄い喧嘩っ早いですからねー。私、何度尻拭いをしたことやらや!

 

 

「ところで…今日はどうしたんです?まあ唐突に霊夢が来るなんて、日常茶判事なんですけど。」

 

 

 加えて、来た理由もなんとなく分かってますが、形だけでもきちんと聞いておきませんとね。

 

 そして案の定、 

 

 

「ご飯を食べに来たのよ。」

 

「でしょうねー」

 

 

 霊夢はすぱっと答えます。近所に住む親友同士で、私たちはよく一緒にご飯を食べたりしているのですが、中でも霊夢が結構頻繁に私たちの家にやって来て、一緒にご飯を食べるのです。無論母さんからは許されていますよ!

 

 

「構わないかしら?」

 

「ぜ、全然構わないわ!ねっ!?美鈴、咲夜!」

 

「わ-い!れーむとご飯だーっ!!」

 

 

 妹2人がおおはしゃぎして私を期待の眼差しで見てきます。うっ、わ、私も異論はないんですけども問題があるんですよ・・・!

 

 

「そ、そのですね。食事の量があんまりないんですが・・・」

 

 

 元々ウチは買いだめをしない上、明日に買い出しに行こうとしていたので冷蔵庫の中身は寒い状態です。まあ1人分ぐらいは余分に準備できると思いますけど、少し量が寂しくなる気がしてねえ…

 

 

「じゃあ、今から買い出しにいきましょ。私も払うわ。」

 

 

 霊夢はそう言って、ごそごそとシンプルな赤色のスカートのポケットを探り出しました。ちょっへそが隠れるように上にあげなさい!

 

 

「ほら、大奮発よ。偉いでしょ?」

 

「・・・」

 

 

 そう言って少し胸を張りながら、霊夢はポケットから手を出してきました。その手に握られるのは、日本でごく普通に流通するお金で一番目に価値が高い貨幣、五百円玉。

 

 

・・・・・・これ、ケチとかじゃないんです。むしろこういう時は霊夢・・・・・・気前が良いんです……!これ以上の説明はいりませんよね!?

 

 

「霊夢。確かにこの五百円、きちんと預かりました・・・!」

 

「なんでそんな眼元が潤んでんのよ。」

 

 

 私たち四人がどれだけ幸せなのかを、痛感させられるからです・・・! 

 

 

「んじゃまあ、ひとまず食材よ。それが無かったら私が餓死するわ。」

 

 

 霊夢が言うと、かなりシャレになりません。この子・・・・・・ほんっとうにあれなんです!!あれ!

 

 

「じゃ、じゃあ、私は急いで食料を買ってきます!霊夢はリクエストとかありますか?」

 

「あ~、そんなら私も行くわ。自分で選ぶ方が絶対だし。」

 

「そ、そうですか?じゃあ、咲夜さん達は家で待っていてください。ちょっくら2人でスーパーまで行ってきます!」

 

「「え~っ!?」」

 

「分かったわ。」

 

 

 過半数がブーイング!?

 

 

「私達も行きたい~っ!」

 

「ず、ずるいわよメーリンっ!私も行く!」

 

「え、え~?」

 

 

 必死に着いてくると言い張る2人、ですが、そんな2人の目的は姉である私には丸わかりです。

 

 

「一応言っとくけど、お菓子は買わないわよ?」

 

「「じゃあいいっ!」」

 

「・・・こいつら、私より現金ね・・・」

 

 

 自分に素直だと言ってあげなさい!

 

 

「じゃあ、2人も咲夜さんと待ってるのよ?すぐに戻ってくるからね。」

 

「は~い。」

 

「わ、わかったわよ!」

 

 

 よし、素直でよろしい!

 

 

・・・・・・ああ言いましたけど、ひ、一つ位はお菓子を買ってあげときましょうかね。

 

 

「じゃあお願いします、咲夜さん。」

 

「了解。」

 

 

 末の妹2人を咲夜さんに任せて、私と霊夢は近所のスーパーに向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢、さっき餓死するとか言ってましたけど・・・な、何も数日間食べてないとか言いませんよね?」

 

「はあ?んなわけないでしょ。きちんと食べてるわよ」

 

「あ、ああそうですか!それならいいんで―」

 

「――ヨモギとかオオバコとか、そこらへんに生えてる奴をね。結構いけるわよ」

 

「霊夢うぅぅーーーっ!!」

 

「うわっ!?いきなり泣きながら抱き着くんじゃないわよ!」

 

「きゃいん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと。これとこれとこれね・・・」

 

「・・・あの、霊夢。本当に全部食べれるんでしょうね?」

 

「当然よ。これぐらい、私の空腹を埋めるにはまだ足りないわ。」

 

「に、似たようなこと言って、結局残したって記憶が私にはあるんですがね~」

 

 

 近所のスーパーに私と霊夢は到着して買い物を始めたのですが、すでにカゴの中が満タン。私が持っているわけなんですけど、結構重たいわけなのですこれが。野菜に肉に飲み物に調理済みの一品まで。これはちょっとした宴会でもいけるんじゃないでしょうか?

 あ、このお菓子はレミィが好きでしたね、よいしょ。

 

 

 

 

 

 

「―――む?紅(ホン)ではないか」

 

 

 ん?

 

 

「あれ?秀吉君じゃないですか。」

 

 

 突然の声の主は、Fクラスのクラスメイト、見た目は少女、性別は男の木下秀吉君でした。

 

 何でここに―――とは聞くまではありませんね。手にカゴがあって、商品がいくつか入っていれば買い物としか言えません。意外とご近所だったのでしょうか?

 

 

「ん~・・・・・・・・・?あんた、木下優子って知ってる?」

 

 

 私が納得しているのに対し、霊夢は思いっきり観察するような目で秀吉君を見つめます。どうやら弟がいたことは知らなかったみたいです。

 

 

「うむ。知ってるも何も、ワシの姉上じゃ。」

 

「へ~……ってことは、あんた達双子なの?」

 

「そうなるのう。……う、むう。すまぬが、そんなにじろじろ見られるのは照れるのじゃが・・・」

 

「あ、悪かったわね。見た目がそっくりだったからついね。ちなみに、男、女?」

 

「男じゃっ!」 

 

「や、やっぱり最初はそう思いますよね~」

 

 

 それを見抜いた咲夜さんがやっぱり凄いんですよっ!私の目が節穴なわけじゃありません!

 

 

「ごほん、そういうお主は姉上の知り合いじゃろうか?」

 

「まあ、同じクラスではあるわね。博霊 霊夢っての。あんたは?」

 

「木下 秀吉じゃ。姉上と仲良くしていただけると嬉しいのじゃ。」

 

「…………」

 

「…ん?何じゃ、博霊。」

 

 

 おや、霊夢が目を丸くするなんて久しぶりですね。何に驚いたのでしょう?

 

 

「……あんた、本当にあの木下優子の弟なの?」

 

「?そうじゃが。」

 

「…もうあんたがお姉さんでいいんじゃない? 」

 

「なぜじゃ!?」

 

「あんたの方が礼儀正しいから。」

 

「買ってくれるのは嬉しいのじゃが、そこはせめて兄と言うてくれっ!い、いやしかし姉上も礼儀正しいはずじゃぞい!?」

 

「・・・・・・・・・はあ?あんた、姉だからって目に幕がかかってるんじゃないの?しっかり真実を見なさい。」

 

「お主と姉上に何があったんじゃ!?」

 

 

・・・・・・どうやら、木下優子さんとの性格の差に驚いたみたいです。

 

 そ、そういえば木下さんと揉めたとか言ってましたっけ。霊夢と揉めるなんて、本当に秀吉君の姉はどんな人なんでしょう。もう私の中では、いかつくて恐ろしいイメージが着きつつありますよ。

 

 

「ま、その話はもういいわ。《秀吉》は買い出しなの?」

 

「あ、うむ。今日の夕飯じゃ。紅達はどうしたのじゃ?」

 

「え~とですね。霊夢達と一緒にご夕飯を食べるからその買い出しですよ。おかげでこの通り。」

 

 

 両方のかごをあげて秀吉君に見せると、その量に秀吉君はおお、と声をあげました。あはは、やっぱり多いですよね~。

 

 

「これはまた大量じゃな。大人数で食べるのかの?」

 

「全員で6人です。うち2人はお子様ですので、ちょっと多いですかねー。」

 

 私もそこまで食べるわけでもないし、咲夜さんはそんな私より小食。母さんはいっぱい食べれるでしょうけど、ご飯より酒で腹を膨らませるタイプですしねえ。霊夢が食べられるかどうか次第です。

 

 

「…何よ美鈴。責任もってちゃんと食べるわよ。」

 

「霊夢、私は口より目で話してほしいです。だからこっち向きなさいコラ。」

 

 

 こりゃダメかもしれませんね。口は大きいけど胃袋が小さいのは変わりありませんでした。

 

 

「全く、じゃあ少し量を減らしましょうか。」

 

「ダメよそんなの!私たちが買わなかったら、この料理にささげられた命が無駄になるじゃない!美鈴には血も涙も無いの!?」

 

「別に他の人が買ってくれます。やっぱり多すぎる気もしますので、少し返してきますね。」

 

「いや~っ!全部食べたいのよおおっ!!」

 

「い、いきなりだだをこねないでください!食べ切れなくて残す方が罰当たりでしょうが!」

 

 

 余計な物は買わない!これお買い物の常識ですよ!

 

 

「―――あっ!じゃあ!」

 

 

 なんですか!?買いだめとかはしたくないですからね!

 

 

 

 

 

「秀吉、あんたも食べに来なさい!」

 

「は?わ、わしか?」

 

「…あ~、それなら確かに。」

 

 

 突然の提案ですけど、男子である秀吉君も加われば消費できる量も増えるでしょうし、丁度いいかもしれませんね。

 

 ただ、問題は秀吉君がそんな急な勧誘に乗ってくれるかです。

 

 

「秀吉君。霊夢もこう言ってますし、よろしければどうでしょうか?」

 

「しかし・・・姉上が家で待っておるし、わしだけ行くというわけにも・・・」

 

 

 おおっと、案の定悩んでますね。

 

 

「それだったら木下も呼べばいいじゃない。1人も2人もそんなに変わんないわ。」

 

 

 そんな霊夢の援護射撃。

 

・・・秀吉君は秀吉君なのに、お姉さんは木下って、本当に仲が良くないんですね霊夢。同じクラスメイトなんだから仲良くしましょうよ!坂本君と吉井君みたいな殴り殴られみたいなのでもいいですから!

 

 

「よいのか?ならば問題はないのじゃ。姉上に連絡をしてみるので、少し待ってもらえるかのう?」

 

「あ、どうぞどうぞごゆっくり。」

 

「出来るだけ早くねー。」

 

「そこは待ちなさいっ!」

 

 

 本当にあなたは妥協しませんね!?反抗期が長引いてでもいるのですかっ!

 

 

「で、では……」

 

 

 秀吉君が慌てて携帯のボタンを押しだします。あ、多分押し間違えました。見事な本末転倒をさせた霊夢には呆れの視線をプレゼントしましょう。

 

 

 

 

 

「――あ、もしもし。姉上かの?…ああ、今丁度買い物を済ませようとしておるところじゃ。………うむ。それなんじゃが、実は偶然紅、ああ、Fクラスの友人なんじゃが、そやつと博麗 霊夢に会ってのおっ!!?あ、姉上!いきなり大声を出さんでくれ、え?あ、ああ。偶然じゃ。別に知り合いだったわけじゃないぞい?……………ま、まあ待ってくれ姉上。その博霊が一緒に夕飯をどうか誘ってくれてるのじゃ。姉上もどうか…………いやしかし、それだと姉上の夕食が…………い、いいのか?なら、わしは1人で行くぞい?………いや姉上、そんなことは無いと思う…………わ、分かったのじゃ。では―」

 

ピッ

 

 

「無理だったみたいね。」

 

「……博麗。お主、どんだけ姉上と仲が悪いんじゃ。」

 

「私、秀吉君の言葉だけでお姉さんの感情が分かりましたよ・・・?」

 

 

 というか声がじゃっかん私にも聞こえたぐらいです…夕飯をいらないって、もはや食事より霊夢と会わない方が優先事項になるほどですか。まだ知り合って間もないはずなのに、何がどうあればここまで険悪になれるのでしょう?

 

 しかし、さすがにこれほど嫌われては霊夢も悲しくなるんじゃあ…

 

 

「んじゃ、ちゃっちゃとレジ行って帰りましょ。ちゃんと木下の分も食べるのよ、秀吉。」

 

「う、うむ。頂くとするのじゃ。」

 

 

 無変化。さっとレジに歩き出す霊夢に応えた様子は見当たりませんでした。

嫌悪に対して無感情。なんと恐ろしいクラスメイト同士なことか。一緒にいるAクラスの人たちは、さぞ気まずすぎる空間を過ごしているでしょう。咲夜さん、頑張ってくださいね!

 

 

「…ま、まあ秀吉君。ごちそうになっていってください!」

 

「わ、わかったのじゃ。」

 

 

 そういうことですので、秀吉君だけでも満足してもらうとしましょう!

そして秀吉君!その対価にあなたのお姉さんが来なくて良かったと思う私を許して!

来てたら家が大荒れしてたもしれませんから! 

 

 勝手に心で司法取引をかわしながら、私と秀吉君はレジで買い物を済ませて家へと向かいました。

 

 

 

 

「紅よ。」

 

「はい?」

 

「…………姉上の言で、食事に毒が入っているかもしれないから気を付けろ、ということなのじゃが・・・博麗はそんなことを思わせるような事を普段しておるのか?」

 

「どこのヒットマンですか霊夢はっ!そりゃまあ、だいぶ言葉の毒をはいたりしますけど、そんなことはしませんよ。」

 

「じゃろうな。姉上は心配性じゃからいかんのう。」

 

「秀吉君、心配性で毒が入ってるかどうかを気にしてたら、心配性の人々は餓死します。私も耐え切れませんよ。」

 

「お主、心配性じゃったのか・・・?」

 

「そ、そのUMAを目撃したかのような目の意味を教えてもらいましょうかねえ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいまー」」

 

「お、お邪魔するのじゃ。」

 

 

 そう!秀吉君みたいな緊張した態度になるのが、人の家に上がる時は正しいんです!霊夢はこの家に良くも悪くも慣れすぎなんですよー!

 

 

「おかえ、りっ・・・・・・・・・ああ、弟さんね。木下さんかと思ったわ。」

 

「何よ今の間は。」

 

「ここがケンカの現場になるのかと思ったからよ。」

 

「私と木下は何だと思われてんのよ。ただちょっと意見が合わなかっただけよ。」

 

「いや、姉上の言い方じゃと、そんな可愛らしい表現では覆えないと思うぞい・・・?」

 

 

 思いっきり嫌い!オーラが電話越しにも伝わってきましたしねー。そんな2人が直接会ったら・・・ううっ!寒気がしてきましたよ!家ががれきの山にならなくてよかったです。

 

 

「で、どうして弟さんがここに?」

 

 

 あ、咲夜さんの疑問もごもっとも。

 

 

「偶然そこで会いましてね。一緒に食べようという事になったんですよ。」

 

「あら、そうなの?」

 

「うむ。すまんのじゃ十六夜。」

 

「気にしなくていいわよ。ほら、さっさとあがりましょ。」

 

「霊夢、あなたは気にしなさい。なぜ我が家のような対応を人様の家でやってんのよ。」

 

「断るわ。」

 

「・・・はあ~。木下さんが怒るのも無理ないわ。」

 

「な、なんとなく姉上と気が合わん理由が分かったのじゃ。姉上も負けん気が強いからのう・・・」

 

「な、なるほど。」 

 

 

 どっちも引かないから行くところまで行くって感じですね。秀吉君と違って、お姉さんは霊夢タイプなのですか・・・遺伝って不思議ですねー?

 

 

「――ま、一応霊夢の言う通りね。上がって弟さん。」

 

「あ、では失礼するのじゃ。」

 

「はい、あがってください!」

 

 

 霊夢が先頭、私が最後尾と誰が住人なのかわからない順番で家へと入ります。

 その先では、レミィとフランが私たちの帰宅を待っていました。

 

 

「おかえりー!……あれ?だあれ?」

 

「おかえりっ!……え…だ、誰?」

 

「ちょっと、あんまりくっつかないで。」

 

 

 秀吉君を見た2人は、フランがきょとんとしつつも興味ありありと秀吉君に近寄り、レミィは霊夢の影に隠れて顔だけ秀吉君に見せるといった、とても対照的な反応で、きょとんとしている秀吉君に向き合いました。

 

 レミィ!私!私の後ろに隠れなさい!そんな怖いお姉さんの後ろに隠れちゃダメっ!

 

 

「・・・あ、え、ええとじゃな、こんにちはなのじゃ。」

 

 

 そんなレミィ達を見た秀吉君は、初対面時には欠かせないあいさつから。フラン!レミィ!しっかり挨拶するのよ!

 

 

「うん!こんにちは!」

 

「……こ、こんにちは。」

 

 

 フラン、元気で偉いわよ!そしてレミィ、顔を埋めるのなら私の服に埋めて!霊夢にばかり近寄っててお姉ちゃんの立場が無くて私さびしいのよー!

 

 

「わしは木下 秀吉という名前じゃ。……お主らも紅達の妹なのかの?」

 

「そうだよ!フランドール・スカーレットっていうの!初めまして、ひでよし!」

 

「フランドール・スカーレット、じゃな。よろしくなのじゃ、フランドール。」

 

「うん!よろしく!」

 

 

 少しかがんだ秀吉君とフランが握手しました!よくできましたフラン!後で好物の『まつたけの里』をあげましょう!

 

 次はレミィの番ですね!

 

 

「う、う~・・・フラ―――ねのレミ―――――レットよ。よろし―」

 

 

 ち、ちっちゃい!声が小っちゃいですよレミィイ!縮こまって小動物みたいに見えるのは可愛いからいいんですけど、声だけはしっかり出してーっ!

 た、多分秀吉君には届いてないのでは…!?

 

 

「すまんのじゃが、もう一度言ってもらえんかな?どうも耳が遠くなっていかんのう。」

 

 

 や、やっぱりでしたか!でもそれを自分の耳が悪いと言う秀吉君、なんて親切なのでしょう!ただ、言葉だけ聞くともう完璧に老人ですね!

 

 

「……レ、レミリア・スカーレット!フランの姉よっ!」

 

 

 おお!良く言えましたレミィ!後で大好物の『ラッコのマーチ』です!

 

 

「うむ、レミリア・スカーレットじゃな。よろしくなのじゃ、レミリア。」

 

「ふん!よ、よろしくっ!」

 

 

 フランに続いてレミィも挨拶が終了!ちょっとレミィがまだ慣れてないみたいですけど、その内近づけますよね!

 

 

 

「―――ひ、秀吉って、女の子なのに男みたいな名前ね?」

 

「わしは男じゃ!!」

 

「ぴいっ!?」

 

「わわっ!?」

 

「こら、痛いわよレミリア、もう少し離れなさいっての。」

 

「んっ、フラン。あまり強くしないで、ちょっと苦しいわ。」

 

 

 ・・・そんなことも、ないかもしれません。

正当な理由。そして2人のびっくり顔を見れたことから、秀吉君は無罪ということにしましょう。運が良かったですね秀吉君!

 

 むしろ私は、とっさの抱き着く対象が私を除いた咲夜さん、霊夢の2人であったことに異議を申し立てなければならないところです。

 神よ!私では2人を安心させることができないと申すしますか!!喜んでもらおうと思って買ったこの『まつたけの里』と『ラッコのマーチ』が目に入らないのですかああああ!! 

 

(A. 自分たちのために買い物を行ってくれた美鈴は、両手に大きな荷物を持っていたため、抱き着いたり、しがみついたりするのは負担をかけてしまうとレミリアとフランが気を遣ったから。 『親の心子知らず』ならぬ、『妹の気配り姉知らず』である)

 

 

 

「ほら、さっさとご飯を作るわよ。手伝いなさい美鈴、咲夜」

 

「は~い・・・」

 

「だから、なんであなたが仕切るのよ・・・」

 

 

 その言葉に微妙な顔をしながら、私たちは料理の準備を始めました。

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます!

さて、改めましてになりますが、楽園の巫女、博麗 霊夢の登場です!心は豊かですが経済面は・・!ああ、もの凄く不憫に思えてきます・・・

 でもやっぱり、霊夢が裕福って言うのは少し変だなと思いますので、この設定にさせてもらいました!

 次回もこの続きとなりますので、Aクラス戦はその後になります!そこまでお待ちくださいませ!

 それではっ!

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