バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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 こんにちは、村雪でございます!

 かなり短くなってしまったのですが、今回にてDクラス戦は終結です!まだまだ物足りないぞ!と言う方もお許しください!

 さて、無駄に引っ張った前回のあの〝先生〟とは?楽しんでいただければ…!


 ――ごゆっくりお読みください――



決着―結果、はともかく過程がぜんぜん納得いかないよっ!

 

 

「ほあたあっ!」

 

「ぐっ!霊烏路(れいうじ)さんっ!」

 

「うん!やあっ!」

 

「うわわわっ!!」

 

 

 美鈴(メイリン)さんがまた敵を倒したけど、またも霊烏路さんのレーザービームが炸裂した!

 

 

『Fクラス 紅美鈴  化学 56点 』

 

 

 なんとか避けてるみたいだけど、あの太さのレーザーだとやっぱりかすっちゃうみたいだ。敵の数は確かに減っていってるけど、美鈴さんの点数もだいぶ下がってる!このままだと補習室も時間の問題だ!

 

 

「太田の奴が戦死した!」

 

「じゃあ遠藤君!太田君の代わりを頼むよ!」

 

「田島のやつが三人に囲まれてる!援護をするか!?」

 

「田島君には悪いけど諦めてもらうんだ!こっちもこっちで精一杯なんだよ!」

 

「柴崎の野郎が大暴れしている霊烏路さんの特盛メロンに血まみれだ!どうする!?」

 

「さっさと引導を渡してやれ!何人割(さ)いても構わない!」

 

 

 全く、この深刻な状況にどこを見てるんだよ!あんなでかくてたわわなもの見てる暇があるならDクラスの人たちをあ、ちょっと鼻血出た。今度はすごい揺れだったから、ついハイになっちゃったよ。

 

 召喚獣を動かすのに体を動かす必要は無いんだけど、霊烏路さんってすっごい体を動かすから・・・・・・ねえ?そこに目を向けるのは青少年として全く間違ってない正しい行為だよねっ!(※人として間違ってる時点で、正も悪もあったもんじゃない)

 

 

「あにゃああああ!?」

 

 

 青少年としておかしくない行為を続けようとしたけど、そんな悲鳴にはっとする。今のは美鈴さんの声!もしかしてやられちゃった!?

 

 

 

『Fクラス 紅 美鈴  化学 11点』

 

 

 

「う~ん、やっぱり美鈴は上手だねっ!」

 

「お、お褒めにあずかり光栄ですよー!」

 

 

 ほっ、なんとかやられてはいないみたいだ。でも点数は本当に底を尽きかけている。これ以上戦っていると地獄の補習室はまぬがれられない!

 ど、どう見ても僕達まずいよね!このままだと全滅しちゃう!そうなったら僕たちも、あの鉄人の下で地獄の補習漬けを・・・・・・!そんなの死んでも嫌だあっ!僕と言う存在が僕じゃなくなってしまうよっ!ここはなんとか切り抜けないと―!

 

 

「くたばれ吉井ぃっ!」

 

「わ!誰がくらうもんか!」

 

 

 突然Dクラスの人の召喚獣が刀で切りかかってきたので、身体をしゃがませることで僕の召喚獣に回避させる。そんな攻撃、さっきまで闘っていたルーミアさんの人喰い召喚獣と比べたら全然可愛いよっ!

 

 

「そりゃあ!」

 

 

 その瞬間に、僕の召喚獣の相棒である木刀を相手の召喚獣の膝の裏にぶちかます。皆もよくやる《膝カックン》だ!

 

 

 ガクッ

 

 

「うおっ!?」

 

 

 見事カックンに成功。かなり隙(すき)が出来たので、召喚獣に木刀を両手で振り上げさせて――

 

 

 

「オラァー!」

 

 

 ガヅンッ!

 

 

「あ、ちくしょー!」

 

 

 思いっきり頭に振り下ろす。いくら点数が弱くてもこれは効いたよね!地面と顔がキスしてるもん!

 

 

『Dクラス 中野 健太 国語 16点

       VS

 Fクラス 吉井 明久 国語 79点 』

 

 

 む、確かに点数は減ってるけど、まだくたばってないみたいだ。ここはもう一発。

 

 

「フィニ―ッシュ!!」

 

「容赦ねえな!?」

 

 

 当然!敵にかける情けなどない卑怯も礼儀も存在しない!これが戦場だよ!これで中野君はリタイア確定だね!

 

 

「中野!」

 

「テメエ吉井、よくもやりやがったな!中野の敵はとらせてもらうぞ!先生!」

 

「げ!?ひ、卑怯な!」

 

 中野君に続いて二人のDクラス。ずるいぞ!こっちは1人なのに2人だなんて!君たちには正々堂々と言う言葉を知らないのか!

 

 

「おらくらえっ!」

 

「死なば諸共!中野につきあってやりな!」

 

「うおっと!?そんなの知ったこっちゃないよっ!」

 

 

 卑怯者二人の召喚獣がぶんぶんと武器を振り回してくるから、僕は必死に召喚獣にかわさせ続ける。ど、どうしよう!このままだと僕も時間の問題じゃないかな!?

 

 

 

 

 援軍が来てほしいところだけど、来たところで霊烏路さんの召喚獣の前には意味が無い。象とアリみたいな差があるんだからどうしようもないよね。

 でも、姫路さんなら…って、だめだ。姫路さんには最後に大きな仕事があるからまだ出ちゃダメなんだった!

 

 

 あ、後は雄二の悪知恵ぐらいしか…!須川君に作戦を立ててもらうよう行かせたけれど、まだ戻ってきていない! 急いで須川君!君が聞いた雄二からの作戦がカギを握って――!

 

 

 

 ピンポンパンポーン 《連絡いたします》

 

 

 

『ん?』

 

 

 突然、連絡事項がある時に流れる校内放送が流れ出した。

 

 

 

 こ、この声は須川君?・・・・・・そうかっ!今から雄二の作戦を僕たちに伝えるんだね!なんで放送なのかはわからないけど、それを待っていたんだ!

 

 さあ、この状況をひっくり返す作戦を頼むよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《八雲(やくも) 藍(らん)先生。八雲 藍先生。至急、体育館裏までお越しください。》

 

 

「ん、私か?」

 

 

 

 あ、あれ?作戦じゃないの?・・・・・・あ!そうじゃない!八雲 藍先生って、今そこにいる先生じゃんか!

 

 きりっとした綺麗な顔の女の先生で、学年主任の高橋先生と同じスーツ姿の彼女は化学を受け持つ先生。ここら辺の化学教科で勝負をしている人は皆あの人が立会人になってる!もちろん最強の霊烏路さんも例外じゃない!確か、お姉さんもこの学校で先生をしているとか。って、それは今は関係ないか。

 

 

 つまり須川君は、彼女を呼び出して化学フィールドを消してしまおうって考えなんだ!そうすれば最強の霊烏路さんの化学の点数も関係なくなるし、ピンチな美鈴さんも助かる!なんて良い作戦なんだ!最高だよ!

 

 

 八雲先生もきょとんとしてスピーカーを見上げている!よし、あと一押しだ須川君!あと少し言えば八雲先生はきっと放送を信じて体育館裏に行くはずだっ!それで僕たちのピンチは回避、回避できなくてもマシになるはず!

 

 ここは頼むぞ須川君!キミなら出来るさ!

 

 

 

 

 

 

 

《……吉井 明久君がお話があるそうです。》

 

 

 

 

・・・・・・・・・ん?須川君?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《な・・・な、なんでも、『あなたの娘、橙(チェン)ちゃんと結婚をしたい。お話がしたいので、橙ちゃんと体育館裏でお待ちしています。』とのことです。》

 

 

 

 

 

 

「ちぇええぇえええェえええんっっ!!?」

 

 

 

 

 ヒイイイッ!?なんてことを言うんだ須川君!!分かってるよね?声が震えていたから分かってるよね!?あの八雲 藍先生だよ?

 

 

 自分の給料を愛娘 橙ちゃん(9才)のお洋服やご飯代に全て費やして、自分は1日油揚げ一枚で一か月過ごしたり、愛娘 橙ちゃんに声をかけた男子(落し物を拾ってあげただけ)を一か月間の病院生活を余儀なくさせたり、橙ちゃんが転んだ道を跡形もなく消し飛ばすって言われてるほど橙ちゃんを愛してやまないモンスターペアレント、人呼んで【妖狐の藍】なんだよっ!?

 

 

 そんな人に『娘を下さい』だなんて、橙ちゃんをもらうどころか僕の命がもらわれちゃうよおお!!?

 

 

「すす、すすすまないが私は急用がででっ出来たっ!」

 

「ま、待ってください八雲先生!吉井明久はあそこに―!」

 

 

「おのれ橙をたぶらかす害虫がああああああああっっ!!」

 

「や、八雲先生ーー!」

 

 

 やっぱり効果は抜群すぎた!鉄人も逃げ出しそうな怒気と、この世の怒りが全て集まったと言わんばかりの顔で体育館の方へと跳んで行った!その速度は霊烏路さんのレーザーの百倍か!?

 

 

「うにゅ、あ、あれ?」

 

「あ、フィールドが・・・!」

 

 

 立会人がいなくなったことで、化学の教科で召喚されていた召喚獣達が一斉に消え去った。これはシステム上の理由による中断の為、敵前逃亡にはならない。上手いこといった…けど僕はそれどころじゃない!まさに命が懸ってるんだよ!

 

 

「霊烏路って、他の点数はあまり・・・!」

 

「ぐ・・・やむをえん!Dクラス!霊烏路を守りつつ教室に戻るぞ!!」

 

 

 霊烏路さんが化学で戦えなくなったのがかなり痛いみたいで、Dクラスは全員が撤退をし始めた。こちらでも効果は抜群だった。

 

 で、結局はDクラスの皆が撤退したことで渡り廊下での勝負はひとまず終了した。でも僕の場合は命を懸けたゲームが始まったばかりだ。もう八雲先生に会えないよね?

 

 

 そして、始まったことは他にも。

 

 

「で、でかしました吉井君・・・で、でもさっきのあれは犯罪だと思いますよ!どう考えても小学生はアウトでしょう!?」

 

 

 Dクラスと交戦していた美鈴さんがかなり引いた顔で肩を叩いてくる。

 

 

「吉井ぃ…テメエ小学生に手を出すとは良い度胸じゃねえか・・・!」

 

「人の嫁に手をだすとは、憎んでも憎み切れんなあ・・・・・・!」

 

「だが、堂々と八雲先生に宣言した男気も認めてやらねばな…!」

 

「ならここは…俺たちの熱い拳で祝福してやろうぜええええ!!」

 

『意義なあああしっ!!』

 

 

 袖をまくって拳を鳴らし始めるクラスメイト。八雲先生、殺るべき害虫はこの中にいますよ。

 

 

『ちぇえええぇええええん!どこへ隠した吉井明久あああああ!!』

 

 

 そして、どこからか聞こえてくる八雲先生のすさまじい怒声。僕の味方は誰もいない。

 

 

「・・・・・・すっ。」

 

 

 こんな素敵な状況をくれた人物に、僕は愛(いかり)を叫ばずにはいられなかった。

 

 

「須川ああああああ!!」

 

『うるせええええ!!』

 

「いやあああああ!!」

 

「あっ、て、手加減はしましょうね!?」

 

 

 いくら邪魔されようとこの衝動は止まらないっ!この恨み晴らさでか!

 

 

 結果はオーライだけど、全く納得がいかないと思う僕を誰も責めさせやしない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、ご苦労だったな。」

 

「ええ。まったくですよ。まさかお空の点数があんなに高かったとは…」

 

「…おくう?」

 

「お友達ですか?」

 

「はい。Dクラスの霊烏路 空(うつほ)って女の子で、あだ名が〝お空〟です。化学がとても高かったですよ。」

 

「ああ、そいつがレーザーを撃つ…」

 

「…あの胸が大きい…(ぼたぼた)」

 

「土屋君、なんて覚え方をしているんですか。」

 

 

 確かに服の上からでも分かりましたけど…完全にセクハラです。あの子はそんなこと気にしなさそうですが…

 

 

「でもまあ何とかなりましたよ。ねえ吉井君?」

 

「ウン、ソウダネ。文字通りボロボロになったよ。」

 

「なぜお主の体が本当にボロボロなのじゃ・・・」

 

 

 それはさっきの道を正す(と思う)為の制裁のせいですね。

 

 

 今、私たちがいるのはFクラスの教室。この後に再戦するであろうと分かる今、少しだけの休憩タイムです。

 

 

「なんにしても、よくやった明久、紅。」

 

 

 坂本君の労いの言葉でしたが、吉井君はなにやらジトッとした目を坂本君に向けます。

 

 

「雄二、さては校内放送が聞こえてたね?」

 

「ああ、ばっちりな。」

 

「吉井のロリコン宣言、しかとこの胸に刻んたぜ?」

 

 

 この笑顔、完全に面白がっていますね二人とも。そこは怒ってあげたり悲しんであげてください。

 

 

「よっ、吉井君っ。人を好きになるのは悪くないんですけど、や、やっぱり小学生はダメだと…」

 

 

 さすが瑞希さん。好きな人を正しい道へと導いてあげますね!

 

 

「うん。分かってるよ姫路さん。僕はそんな犯罪者みたいなことは考えないさ。」

 

 

 おお、吉井君が爽やかな笑顔でロリコン疑惑を否定しました。瑞希さんの言葉のおかげですか?

 

 

「そ、そうですよね?良かった…。」

 

「うん、そうなんだ。……ところで雄二、須川君がどこにいるか知らないかい?」

 

「須川?もうすぐ戻ってくるんじゃないか?」

 

「・・・・・・やれる、僕なら殺れる……!」

 

「殺るなっての。」

 

「犯罪者みたいなことをする気満々じゃないですか・・・」

 

 

 バカには瑞希さんのありがたいお言葉は届かなかったみたいです。

 

 

「そんなお前に言っておくことがある。」

 

「雄二、悪いけど後に―」

 

 

「須川にあれを言うよう指示したのは俺だ。」

 

「シャァァァアッ!」

 

「ちょっ、吉井君!?」

 

 

 どっからその包丁を持ってきたんですか!?そしてその膨らんだ靴下はブラックジャック!?どれだけ須川君を亡き者にする気だったんですかー!?

 

 

「あ、八雲先生。」

 

 

 ガダドキャバンッ(ちゃぶ台を蹴散らして吉井君が掃除用具入れにこもった音)

 

 

「・・・身替わりが早いですね。」

 

「おいおい、私のちゃぶ台になんてことしやがるんだぜ。」

 

「まあ今は大目に見てやれ。あとでたっぷり支払わせればいいじゃないか。」

 

「仕方ないな。利子はたっぷりとつけてやるぜ。」

 

 

 何もなしでは許さないんですね…2人に情けは無いのですか。

 

 

「さて、まあ馬鹿の事は放っておいて、そろそろやるか。」

 

「そうじゃな。ちらほらと下校しておる生徒の姿も見え始めたしのう。」

 

「あ、もう時間稼ぎは十分ですか?」

 

「ああ、姫路が頑張ってくれたんでな。」

 

「お、遅くなってすみません!」

 

「いやいや、大切な準備ですから仕方ありませんよ!」

 

 

 作戦の重要人物、瑞希さんが頭を下げますが全く問題ナシです!最終的に勝てればそれでいいのですから!

 

 

「私の方も十分だったぜ!これでそのおくうって奴と勝負できるな!」

 

「へ?魔理沙、そんなに化学の点数良いんですか?」

 

 

 確かにイメージ的には理系ですけど、400点近くもとれるのですかね?

 

 

「見てみればすぐわかるさ。坂本!というわけで早く行こうぜ!」

 

「おっしゃ!お前ら!Dクラス代表の首を獲りに行くぞ!」

 

『おうっ!』

 

 

 ぞろぞろと皆が教室を出るのに続き私も出ます。さあ!あと少し頑張りましょう!

 

 

「あー、明久。八雲先生が来たっていうのは嘘だ。」

 

 

 ・・・あ、すっかり彼の事を忘れてました。私も案外ひどい奴かもしれませんね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がすか、雄二ぃっ!」

 

 

 なんて奴だ!僕が八雲先生と会ってはまずいということを知って、あんな心臓に悪い嘘をつくなんて!雄二には思いやりというものが無いのか!ここは僕が家庭科室からパクってきた包丁とお手製のブラックジャックでこってり教えてあげないといけないみたいだ!

 

 

 誰もいなくなった教室を飛び出てさっきの渡り廊下へと向かう。Dクラスの代表を仕留めるにはDクラスの方へと移動しないといけないから、間違いなく奴はこの先にいる!

 帰ろうとするほかの生徒達の間を通り抜けながら標的を探し出す。くそ、どこにいるんだ・・・?

 

 

「うにゅーっ!」

 

「あらよっとおおっ!!」

 

 

 前の方から、ばちばちと眩しい光と女の子の声が二人分届いてきた。あれは、霧雨さんと・・・霊烏路さんだ!ええ!霧雨さん!?あの400点近い霊烏路さんと勝負をしてるの!?頭は大丈夫なの!?まだ死のうと思うには早すぎないかい!?

 

 

「や、やべええ!巻き添えを食らうからあの二人には近づくなああ!!」

 

「なんであいつらAクラスじゃねえんだあああ!!」

 

 

 その2人から距離を取り出すFクラスとDクラスの生徒達。へ?一方的な虐殺じゃないの?ひょっとして張り合ってるの?

 

 え~と、霧雨さんの点数は・・・?

 

 

 

『Dクラス 霊烏路 空  化学 359点

       VS

 Fクラス 霧雨 魔理沙 化学 380点 』

 

 

 

・・・・・・えええっ!?れ、霊烏路さんより上だってえ!?し、しかも武器もあれ…レーザー撃ってるよね!?ほうきだけど!

 

 まさか霊烏路さんと同じタイプの武器を持つ召喚獣がFクラスにもいたなんて・・・!自分の頭にかけてるメガネを探してるの状態と同じだね!(△せっかくなので、『灯台下暗し』と言いましょう。)

 

 

「やるね!きりさめまりさ!」

 

「私も同感だ!もっと最初から戦り合っときたかったぜ!」

 

「うつほもだよ!!くらええええ!」

 

「打ち負かしてしてやるぜええ!」

 

 

 ま、まぶしいまぶしい!2人とも!熱くなるのはいいんだけれど周りにも気をかけようね!ほら誰かの召喚獣が巻き添えになって死んじゃったよ!?

 

 

「はいやあああ!」

 

「くっそおおおおお!」

 

「Dクラス塚本、討ち取ったりいいい!」

 

 

 はっ!?今の美鈴さんの後に聞こえた声は間違いなく雄二!バカめ!自分から居場所を教えてくれるなんてね!あの世で後悔するがいい!

 

 まずはこの包丁で―

 

 

「援護に来たぞ!もう大丈夫だ!皆、落ち着いて取り囲まれないように周囲を見て動け!」

 

 

!?こ、この声はDクラス代表の平賀君!彼がいるという事は本陣が動いたって事か!

 

 

「いいかい!あたいらの半分はFクラス代表さんを狙って、他のメンバーは囲まれて危ない仲間を助けるんだよっ!化学に自信があるって言う人はお空の援護を優先でっ!」

 

 

『了解!お燐さんっ!』

 

 

 火焔猫(かえんびょう)さんと平賀君の的確な指示のせいで、一気に雄二達本隊が囲まれた!くそお!雄二を殺れないじゃないか!

 

 

「ふふん!代表を獲りたくばまずは私の召喚獣から獲ってもらいましょうか!」

 

 

 おお、美鈴さんかっこいいよ!男なら一度は言ってみたい台詞だね!!

 

・・・て、吉井明久!女の子である美鈴さんが頑張ってるのに男の僕が頑張らなくてどうするのさ!ここは相手の代表をとって男を見せるところじゃないかい!?

 

 

「・・・よし、ここは雄二を後回しにしよう。」

 

 

 雄二の首ならいつでもとれるからね!ここは平賀君を狙うことだけ考えよう。感謝するんだね雄二。

 

 別のクラスの生徒達にまぎれながらDクラス代表を探していると、案外すぐに見つかった!しかも近くには護衛となる近衛(このえ)部隊もほとんどいない!

 

 立会人となる先生も現国の竹内先生と古典の向井先生の2人もいるから勝負をしかけられる!なんて幸運なんだ!やれるぞ僕!

 

 

「向井先生!Fクラス吉井が古典で―」

 

「Dクラス火焔猫 燐(りん)が受けるね!試獣召喚(サモン)だよ!」

 

「なっ!火焔猫さん!?」

 

 

 突然前平賀君の前に現れたのは、宣戦布告の時にあった女子の火焔猫さんだった!どうして!?姿は無かったはずなのに!

 

 

「火焔猫さん!どこから湧いて来たのさ!?」

 

「ひどい言い方だねえ。少し離れてただけなのに…Fクラスの人はどうも不意打ちが多いからね。あたいもちょいと同じことをしただけだよ♪」

 

 

 火焔猫さんがパチンとウインクを決め、僕の心は揺れ動いた!だから!しっかり働くんだ僕の心の壁!(強度:豆腐並)

 

 

「残念だったな、ロリコン犯罪者君?」

 

「待った!アレは僕が言ったんじゃなくて雄二が勝手に言ったんだよ!」

 

「そうかい。じゃあお燐さん。頼んだよ。」

 

「あいよっ。」

 

 

 火焔猫さんが召喚獣を構えだす。緑の長袖のワンピースが赤い髪にとても似合っているけれど、その手に持つ大きな三日月形の鎌(かま)のせいで可愛らしさは一気に台無しだ!

 

 

『Dクラス 火焔猫 燐  古典 150点

         VS

 Fクラス 吉井 明久  古典  78点 』

 

 

 や、やっぱり点数は負けてるよね。さっきまでのルーミアさんや霊烏路さんに比べると低いけど、Dクラス的に考えれば凄い点数だ!僕にとっては強敵だよ!

 

 

「ちくしょう!あと一歩でDクラスを僕の手で落とせるのに!」

 

「何を言うかと思えば、ロリコン。いくら周りに誰もいなくてもお前には無理だろうさ。」

 

 

 事実だけど鼻で笑われるのは何かむかつくね!

 

 

「平賀君。」

 

 

 すると、火焔猫さんが平賀君を脇目に話しかけた。

 あ、あれ、さっきより少し雰囲気が・・・

 

 

 

「悪いんだけど、あまり人を馬鹿にするようなことはあたいの前で言わないでくれるかねえ。あたいはあんまり好きじゃないんだ・・・人を馬鹿にする言葉を聞くのは。」

 

 

「!あ、わ、悪かった。謝るよ。」

 

 

 声の調子も落ちた火焔猫さんの言葉に、平賀君はすぐに頭を下げた。言った僕にではないけど、少しだけ気分が晴れた。

 

 

「・・・ん!いやごめんね平賀君!あたいもいじいじしたこと言っちまったね!」

 

 

 すぐに明るい態度に変わった火焔猫さんはぺこりと頭を下げる。でも平賀君は全然気にしていないようで手を振って留めた。

 

 

「い、いや。俺の方が悪いんだから謝らないでくれお燐さん。」

 

「そう、了解っ。じゃ、あたいはやってくるよ?」

 

「ああ、頼んだ。」

 

「はいな!・・・ん~吉井君。待たせたね。」

 

「あ、ううん。大丈夫だよ。」

 

 

 僕をかばってくれたんだから、むしろ僕がお礼をしたいよ。

 

 

「火焔猫さん。さっきは僕をかばってくれてありがとう。」

 

「ん?・・・・・・にゃっはははは!!そんなの気にしなくていいさ別に!あたいが勝手に言っちまっただけで、別に吉井君をかばおうとしたわけじゃないよ!」

 

 

 

 そう笑って、火焔猫さんは鎌を構える。勝負をする気満々だ。

 

 

「よ~し、んじゃ始めようか?あたいも頑張らなきゃね!」

 

「う~ん、僕としては苦戦しそうだから困ったよ。」

 

「ん~?あたいを買ってくれてるのかい?――そりゃ照れちまうねっ!」

 

 

 鎌をふりあげた召喚獣が迫る。ルーミアさんの召喚獣に比べたらまだゆっくりだね!――ルーミアさんの召喚獣には色々と感謝しなくちゃねならないかもしれない。恐怖の方が勝ってるからあんまりしたくないけども!

 

 

「よいしょ!」

 

「だよねえ!」

 

 

 頭に降ろされる鎌のさきっちょを、横に移動させることでクリアー。その隙に僕の召喚獣に木刀で叩かせようとする。

 

 

「よいさっ!」

 

 

 ガキン!

 

 

 でも、火焔猫さんは鎌をすぐに防御へと移すことでガード僕の攻撃をガードした。くっ、点数は火焔猫さんの方が上だから押し切られそうだ!いったん止め――

 

 

「ほい!」

 

「うおっと!?」

 

 

る前に先に鎌をさげられた!?やば!バランスが前に!

 

 

「―――シャアッ!!」

 

「――――っとおおっ!?」

 

 

 ガギィン!

 

 

 か、か、間一髪!なんとか召喚獣と鎌の間に木刀を挟めたぁ!

 

 

「にゃ、惜しかったねえ…!」

 

「ざ、残念だったね・・・!」

 

 

 そう言ってる割にはイイ笑顔だね!こんな防御すぐに突破してやるって言いたいのかなっうおおお!?か、鎌の先が少しづつ僕の召喚獣の目の前にぃ!?

 

 

「ぬうううう・・・っ!」

 

「う、うぎぎぎ・・・!!」

 

 

 や、やばい!木刀が当たってるのは鎌の真ん中ら辺だから、上のとがった部分ががら空きになってるじゃないか僕のまぬけ!しかもさっきの火焔猫さんみたいに鎌を流せる態勢じゃないしって近い近い近い!あ、あと数ミリで先がやばいやばいやばいやば――!

 

 

 プチ

 

 

「いたたたた!!」

 

「ニェッ!?」

 

 

 は、針がささったみたいな痛みが――!・・・って、もう痛くない?

 

 

「だ、大丈夫かい吉井君!?」

 

 

 見ると、火焔猫さんが慌てた様子で駆け寄ってきた。召喚獣の操作など全くしていないみたいで、彼女の召喚獣は鎌を降ろしていた。

 

 

「な、何か悪いことしちゃったかいあたい!?病気かい!?保健室に行くかい!?」

 

「・・・あ、え、えーと……」

 

 

 どうしよう。ものすっごく悪いことをしている気がする。観察処分者の宿命だから痛みがあるのは当たり前なのに、せっかくのチャンスを捨ててまで心配してくれてる火焔猫さんの優しさを利用したみたいで、罪悪感がはんぱない。

 

 

「だ、大丈夫だよ。ほら、僕って《観察処分者》だから召喚獣の感じる感覚が僕にも伝わるんだ。それのせいだよ。」

 

「あ、なるほどね。いやはやそれはよかったよ。」

 

 

 ほっと胸を撫で下ろす火焔猫さん。アカン。この後の作戦のことを考えるとあまりにも申し訳ない気がしてくる。この人にだけこっそり言おうかな…?

 

 いや、だめだ吉井明久!これは自分の為姫路さん為の勝負!そんな勝手な行為は許されないぞ!ここは心を鬼にするんだ!

 

 

「んじゃ、続きといくかい?」

 

 

 元の位置に戻った火焔猫さんだけど、勝負をすると僕がやられる可能性も出てきた。ここは勝負じゃなくて、会話で時間をつぶすとしよう。

 

 

「でも、火焔猫さんすごいね。召喚獣の操作に慣れてない?」

 

「ん?そうかい?まあやってできない事はないさね!そう言う吉井君も上手じゃないかい?観察処分者のおかげかね?」

 

「うん。そのかわり痛みも多く感じるけどね。」

 

「そりゃご愁傷様だ!同情するよ!」

 

「ありがとう。そんなことを言ってくれるのは君と美鈴さんだけだよ。」

 

「にゃっはは!なんだいなんだい!あたいと勝負しなくていいのかね?長引きすぎるとそっちが不利になるんじゃないのかい?」

 

 

 火焔猫さんはあろうことか、僕たちのことを気にしてそんなことを言い出してきた。む、胸が痛い・・・!

 

 

「・・・ねえ。火焔猫さん…」

 

「何だい?」

 

 

 面白そうに見てくる火焔猫さんに僕の良心がグサグサと刃を突き立てられる。

 

 

―――あ、来た!あと少しだけ・・・・!

 

 

「・・・その。火焔猫さんは僕たちFクラスにもしも負けたら、やっぱり僕たちの事を恨んじゃう?」

 

「へぁ?」

 

 

 なんて質問するんだ僕のばかっ!絶対火焔猫さんに怪しまれるよ!ほらポカンとしてるし!作戦がパーになったらどうするのさ僕のバカヤロウ!

 

 

 ほら今にも火焔猫さんが変に思ってあっちをみ―!

 

 

「・・・ん~。負ける気はさらさらないけど、そうだねえ…」

 

 

 ――なかった。ほっ。ひとまず安心だ。

 

 

「…悔しいとは思うだろーけど、恨むことは無いと思うよ。だって、吉井君達も精一杯努力して勝つんだろうしねえ。」

 

 

・・・・何か違う意味で心が動揺してきたぞ。なんだろうこの全てを話したくなるような燃える衝動は。火焔猫さんの話を聞いてるともの凄く湧き上がってくるんだけど。あれかな?恋かな?

 

 

・・・あ。上手くいったみたいだ。

 

 

「さすがに綺麗ごとになると思うけど、もしかしたらおめでとうって言うかもしれないね!」

 

 

あ、もういいよね。ダメでも絶対言ってたけど。

 

 

 二ヒッと子どもみたいに笑う火焔猫さんのその言葉に、僕はかられる衝動に任せて召喚獣の事など無視して彼女の元へと近づく!

 

 

「へ?な、なにさ吉井く―」

 

「火焔猫 燐さんっ!」

 

「ほ、ほいっ!?」

 

 

 彼女の目の前に立ち、僕は、僕は――!!!

 

 

 

「まじすんませんっしたあああああ!!」

 

 

 土下座しました。何にかって?彼女の優しさを利用したことにだよっ!

 

 

「・・・え、えええ!?いいきなり土下座して謝ってなんだい!?」

 

 

 突然だからうろたえて当然の火焔猫さん。そんな彼女に僕ができるのは理由を言うだけ!

 

 

「卑怯なまねしてまじすみませんんっ!」

 

「・・・は、はあ?卑怯?いったい何のことさ?」

 

「・・・(すっ)」

 

「あん?後ろが何・・・・・・にゃあ?」

 

 

 火焔猫さんが僕の指さす方向を見て、ぽかんとしていたのが可愛かったなどとは土下座中の僕には分からない!

 

 

「・・・・・・吉井君?ありゃあ、どういうことだい?」

 

「・・・見たままの事です。」

 

 

 

 

 

「……姫路瑞希さんがいて、彼女の召喚獣が平賀君の召喚獣をぶった切ったね。」

 

 

「そう言う事です!」

 

「・・・・にゃ、にゃはははは……。美鈴さんだけじゃなくて、あんな子もいたのかい・・・」

 

 

 苦笑いを浮かべる火焔猫さん。その後平賀君が戦死したという報(しら)せが出回るまで、僕はただただ頭を下げ続けた。

 

 

 Dクラスへの勝利。僕が望んだ結果なのに全く嬉しくないよっ!

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます!少し、というかかなり短かったかもしれませんが、Dクラス戦は終結です!最後は原作通りの落ちでした!期待していた方はごめんなさい!

 こ、ここで色々と書きたかったんですけど、補足したり言いたいことがありすぎて何も書けない…!!聞きたいこととかあれば、何でも聞いてください!勿論感想だけでも結構です!出来る限り答えていきます!・・・・・で、出来る限り!

 さて、次回は戦後対談などです!また新たなキャラクターを出す予定です!!僅かに期待してお待ちください!

 それではっ!

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