目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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初登場の人物

嵐山准
ナイスガイ。ボーダーでもトップクラスのいい人で多分この人も菩薩精神を持っている。迅さんの暗躍に付き合わされることもある。ついでにシルエットがやたら迅さんににてる。新3バカに陰で「マスコットチーム」とか言われてるけど嵐山隊がマスコットチームなら他のチームの立場は一体どうなるのだろうか。入隊当初の八幡に敬遠されていたが、シスコン(ただし、嵐山さんの場合ブラコンも含む)同士何か通じるものでもあったのか現在は良好な関係になった。

時枝充
デキるキノコ。ワールドトリガー三大キノコの奈良坂、菊地原に並ぶキノコ。常に無表情だがサポート力には定評があり、出水、辻に並ぶだけの実力がある。葦原先生曰く「眠そうな目のやつ=デキるやつ」という方程式が成り立つらしいので、「腐った目のやつ=超デキるやつ」という方程式も成り立つことになる。例外は認めるが異論は認めない。

木虎藍
ツン虎。基本誰にでもツンツンしてて出水にも「可愛げがない」とか言われてるけどカメラの前に立つと(多分)営業スマイル振りまいていそう。トリオン量が少ないというハンデを抱えながらも努力とセンスでA級にまで成り上がり、実は八幡は木虎のこと結構尊敬してる。修にはやたらツンツンしてるがなんだかんだ面倒見がいい。八幡にはライバル心を燃やしている。基本デレるのはとりまるだけ。

佐鳥賢
ツインスナイパー。多分作者のせいでこの作品の中で最も扱いの悪いワートリキャラ。扱いの悪さは材木座並みだが、作者は結構佐鳥好き。嵐山隊の中で唯一片付けが下手らしいが、他の人が片付け得意だからとりあえず不問に処されてる。だかA級部隊に入るだけあって狙撃手としての腕は確からしい。もともとはイケメンキャラだったらしいが、なぜか現在ではネタキャラ化してしまった。


16話 やはり、職場に職場見学するのは間違っている。

ボーダー本部大広間

 

ここは基本ボーダーの正式入隊日に集められるところだ。見た目はほとんど体育館だけどな。俺が初めてここに来た時もそうだったしな。

だが今は正式入隊日ではない。じゃあなんでここにいるかって?

 

職場見学だ。

 

かーえりたーい、かーえりたーい。暖かハイムが待っている〜、とどっかのCMが頭の中でリピートしてる。それくらい帰りたい。

いやどう考えてもおかしいでしょ。何が悲しくて職場に職場見学せにゃならんのだ。俺に至ってはA級だぜ?それこそ無意味の極みだろ。「不本意の極みだ!」とか言い始めちゃうレベル。絶対今の俺の目は普段の3倍腐ってる。いや本当に帰りたい。

 

ボーダー本部には半数以上の生徒が職場見学に来てる。普段お目にかかれないトリガーというテクノロジーに触れたいのか、はたまたボーダーに興味があるのか、それとも嵐山隊に会いたいのかは人それぞれだろうが、青春に飢えたリア充共にはもってこいの場所なのだろう。ぶっちゃけそんな甘ったれた考えで入隊したら痛い目にあうけど。

来てるメンバーには縦ロールやら葉山及びその取り巻き、川崎?もいるし雪ノ下も由比ヶ浜もいる。やだ、本当に帰りたい。

 

と、そんなこんなでげんなりしてると、嵐山隊が出てくる。その瞬間に一部女子が色めき立つ。さすがナイスガイ。

 

「総武高校のみんな、今日はよく来てくれた。君たちの職場見学を案内する嵐山隊隊長嵐山准だ!今日はよろしくな!」

 

さすが嵐山さん。葉山の3倍爽やかだ。入隊当初はあの爽やかさが苦手だったなぁ……。

 

「じゃあ早速初めていこう。まず、ボーダーという職種についてだが……

 

ーーー

 

……といった感じだ。ボーダーの職種については以上だ。それでここからは入隊したばかりの訓練生がうけるオリエンテーションをしていく予定だ」

 

プレゼン的な何かが終わったようだ。俺にとっては聞く必要性皆無だけど。

隣、つっても少し離れてるけど隣にいる戸塚はキラキラした笑顔でそのプレゼンを見ていた。……なんで男なんだろう本当に。

そしてプレゼン聞いてる間にざっと全体を見てみたが、宇佐美、横山、三上、奈良坂等々のボーダーメンバーも来ていた。綾辻は嵐山隊だから不参加だとか。うらやまs(ry

 

「じゃあ次に、どうやったら訓練生が正隊員になれるかを説明して行こう」

 

嵐山さんが近くの生徒にトリガーを渡し、起動させる。

 

「この手の甲の数字が見えるかな?この数字を4000まで上げること。それがB級昇格の条件だ」

 

俺は仮入隊してないからポイント1000スタートだったなー。つっても一時期二宮さんの特訓ばかり受けてたからあっという間に訓練生レベル超えたけど。あ、ダメだ。修行時代思い出したら冷や汗が……。

 

「攻撃手と銃手の昇格条件はさっき言った通りだが、狙撃手は少し違う。それをこれから説明するから、みんなついてきてくれ」

 

そうして狙撃手訓練場へと向かった。

 

 

狙撃手のとこでは佐鳥がいろいろやってツインスナイプとかドヤ顔で見せびらかしてて、その顔がムカついたから割愛。

そして現在は仮装訓練場へと向かっている。俺は最後尾で目を腐らせながらダラダラ歩いていた。すると声をかけられる。

 

「大丈夫?比企谷くん」

 

我が隊の攻撃手、佐々木琲世さんだった。いつもの黒ワイシャツにジーンズといった姿だ。

 

「……大丈夫に見えます?佐々木さん」

「いや全然」

「ならそういうことです。というかなんでいるんすか?」

「大学が休講だったんだ。だからちょっと見に来ただけだよ」

「そすか……。あの、一応言っときますけど」

「大丈夫だよ、広めたりしないし。じゃああんまり近くにいるとバレちゃうから僕はいくね」

「うす」

 

そうして佐々木さんは去っていった。

そしてそんなこんなで訓練場到着。

 

「訓練生には、まず最初に大型ネイバーとの戦闘訓練を行ってもらう。仮想戦闘モードで、ボーダーの集積したデータから再現されたネイバーと戦う訓練だ。今日も何人か体験してもらうが、さすがに全員はできない。だからこれから体験してもらう人を決めよう。誰かやりたい人はいないか?」

 

すると予想通りほぼ全員が立候補するのだった。

 

ーーー

 

選ばれたのは、葉山、縦ロール、雪ノ下、その他モブ数名だった。戸塚の戦闘服見たかった。せめてそれくらい見せてもらえないと割りに合わない!(意味不明)

訓練が開始されるが訓練室もそんな多くあるわけではないので何回かに小分けにしてやるみたいだ。最初は葉山、縦ロール、モブ二人がやっている。葉山は、お、スコーピオンか。んで縦ロールが孤月。モブがアステロイドとレイガスト。チョイスが微妙だなおい。

 

「八幡、もっと近くでみない?」

「いや、俺はここでいい」

 

あんま近くいくと嵐山さんにバレるし。

 

「そう?じゃあ僕は見てくるね」

「おお」

 

そうして戸塚は訓練室の近くへ行った。ちなみに今俺がいるのは最前列の一番端っこ。下手に後ろいくと視界に入りやすいからここにいるのだ。と、そこで声をかけられる。

 

「比企谷先輩、きたんですね」

「よお、木虎か」

 

木虎藍。プライドが高いがその分実力もあるエリート。なぜか黒江に嫌われてる。別名ツン虎。烏丸にぞっこん。

 

「綾辻先輩から話は聞いてましたが、本当に来るとは思ってませんでした」

「これでないとやらされるレポートが恐ろしく面倒なんだよ」

「なら佐々木さんに手伝ってもらえばいいじゃないですか?」

「んなことできるか。この前も太刀川さんのレポートやら開発室のレポートやらされてたんだぞ?これ以上ふやしたらあの人が死ぬ」

「ああ……」

 

佐々木さんもいい加減断れよな。本当にいつか死ぬぞ、過労で。というかお前近くにいるとバレそうだから来ないでお願い。

 

で、そんなこんなしてると葉山が終わる。記録は51秒。そこそこかな。

 

「51秒、まあまあですね」

「まぁ、9秒のお前から見りゃそうだろうな」

「それ、比企谷先輩が言っても皮肉にしか聞こえませんよ?」

 

ジト目で見るな。お前のジト目地味に怖いから。

他も終わり始めるが、記録はあまりよくない。縦ロールは2分半。レイガストモブは3分、アステロイドモブは4分かかってる。ぶっちゃけセンスない。

お、次雪ノ下か。さてどうなることやら。

 

「木虎、お前近くにいると俺のステルス(笑)が看破されちゃうからそろそろ戻ってくんね?」

「理由が最低ですね……。まぁ構いません。失礼します」

 

そうして木虎は定位置に戻った。

そこで雪ノ下が終わる。記録は、おお。21秒。こりゃ早い。他と比べたらとくに。

雪ノ下がでてくると、軽く歓声が上がる。あいつ本当はぼっちじゃないんじゃね?あ、でも歓声上がるだけで誰も近づいて来ない。やはりぼっちか。由比ヶ浜は縦ロールのとこいるし。

と、そこで雪ノ下と目が合う。するとこちらにドヤ顔で近づいてくる。えーそのドヤ顔なんだよ。軽くムカつく。俺の方が早いし。

 

「あら、まさかあなたがいるとは思わなかったわ」

「そーかよ」

「私の動きに見惚れてたの?嫌ね、視姦で訴えるわよ」

「お前のなんか見る価値ねーよ」

「あら?私が今の所トップよ?」

 

こいつなんでも一位じゃなきゃ気が済まんのか?木虎でもそんなこと言わないぞ、多分。

 

「少なくとも、あなたには到底無理でしょうね。制限時間まるまる使ってもできないでしょうし」

「へーへーそーですねー(棒)」

 

ドヤ顔がムカつく。

とそこで、ああああヤバいよ。嵐山さん近づいて来ちゃったよ嫌な予感しかしないよ!ここは下手に動くより空気になることが有効。ソースは俺。

 

「君、すごいじゃないか!21秒なんて訓練生はそうそうできるものじゃない」

「ありがとうございます。それで、参考までに聞きたいのですが」

「ん?なんだい?」

「ボーダーでの最高記録は何秒なのでしょうか」

 

これは、まさかフラグか?

 

「今の所ボーダートップは2秒が最高記録だ」

 

よかったー俺の名前でなかったー。とりあえずさっさとその会話終わらせてお願い。

 

「……2秒…」

 

何悔しがってるのさ。いいから早くその会話終わらせて。

 

「いやいや、21秒も早い方だ。でも最初の記録はあまりあてにならないよ。努力次第で実力はひっくりかえ……」

 

あれ?会話止まったよ?ナンデカナー。

(おそらく)嵐山さんからの視線が俺の背中に突き刺さる。カゲさんはこんな気持ちなのかなー…。

 

「比企谷?比企谷じゃないか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウボァー

 

 

「なんだ来てたなら教えてくれてもよかったじゃないか!」

 

バンバン背中叩きながら明るく接する嵐山さん。そして周囲から突き刺さる視線。こうなることが目に見えたからあなたには教えなかったんだよ!

 

「あの、嵐山さん」

「ん?どうしたんだい?」

「嵐山さんはそこのそれと知り合いなのでしょうか?」

 

モノ扱いはかわらずかよ。

 

「ああ、結構長い付き合いになる。なんていったって比企谷は…」

 

やめて!それ以上言わないで!

 

「ボーダー隊員だからな!」

 

こうして、俺の平穏なぼっちライフは終わりを告げた。

 

ーーー

 

喧騒に包まれる訓練室、目が点になってる由比ヶ浜、素っ頓狂な顔した雪ノ下などなど完全にカオスな雰囲気になっている。一部モブに至っては「誰あいつ?」「あんなのいた?」「え、あんなのがボーダー隊員?」「嵐山×ヒキタニ!キマシタワー!」とか言ってるのもいる。同時になにか悪寒を感じたが全力で無視。

 

「ひ、比企谷くん。あなたボーダー隊員だったの?」

「ちなみにさっきの2秒の記録も比企谷がだしたものだ」

「………………」

 

あー世界って残酷だなー……。

 

「それに比企谷はA級部隊の隊長も勤めてる。A級8位比企谷隊の隊長だ!」

 

それ以上俺の個人情報広めないで!

 

「A級?こんなのが?」

「おい、そりゃどういう意味だ」

「言葉通りよ?あなたみたいなぬぼーっとした人でもA級になれるのね。何か卑怯なことでもしたのかしら?それ以前にそのチームメイトを一刻も早く解放することをお勧めするわ。一体どうやって騙したのかしら」

「おい、さすがにキレるぞ」

 

と、そこで訓練が全員終わる。やはりトップは雪ノ下だった。

 

「ん?終わったみたいだな。よし、じゃあこのフロアは結構いろいろあるからな。全員で回ることはせずに自由行動にしてみよう。所々に職員が立っているから何かわからないことがあったら聞いてみるといい。それから、ロープが張ってあるとこから先にはいかないようにしてくれ。じゃあ自由行動開始だ!時間は30分だけとる」

 

すると蜘蛛の子を散らすように生徒たちはバラバラに行動していった。嵐山さんは職員に呼ばれて一旦席を外した。

嵐山隊の他のメンバーは

時枝 無表情で合掌

木虎 哀れみの目で合掌。やめて!そんな目で俺を見ないで!

佐鳥 割愛

 

「八幡ってボーダー隊員だったんだね!」

「ああ…。黙っててすまん」

「ううん!八幡のことが知れて嬉しいよ!」

 

なん……だと……?これが天使たる所以か!戸塚、恐ろしい子!

 

「僕はこれからいろいろ見てくるけど、八幡はどうするの?」

「俺見るもんねーからここいるわ……」

「そっか。じゃあまた後でね!」

 

そうして戸塚は他のテニス部のメンバーのとこへいった。

 

「ハッハー、とうとうバレたねハッチ」

「ドンマイ比企谷くん」

「比企谷くん元気だして」

「御愁傷様」

 

上から横山、宇佐美、三上、奈良坂だ。

 

「というかさっきの子テニス部の子だよね?ハッチ女子友達なんていたんだ。まさかまたフラグ建てたの?」

 

女性陣からはジト目、奈良坂からは呆れ顔される。なんでだよ……。フラグなんて建築した記憶ねぇよ。

 

「さっきの子とは戸塚のことだろう。戸塚は男だ」

「……え、マジ?」

「マジ」

「あんな可愛い男の子いるんだね……」

「世の中、不思議なこともあるものだな」

 

本当に不思議。世界不思議発見に出れるレベル。一体神は何を間違えた。

と、そこで由比ヶ浜を含む葉山グループの喧騒が聞こえてくる。

 

「ねー隼人、あのヒキオでもA級になれるんだったらさぁ、あーしらだったら余裕でA級になれるじゃね?」

 

 

 

 

 

あ?なんつったあの野郎。

 

「い、いやー、どうだろうな……」

「だってヒキオでできんだよ?だったらあーしらでも余裕っしょ」

「でもA級って嵐山隊と同じだよ?なるのすごく難しいんじゃないの?」

「ならヒキオの隊がヒキオ含めてクズばっかで、卑怯なことでもしたんじゃないの?この前みたいに。どーせヒキオの隊だし?」

「ちょ、優美子……」

「いいじゃんどーせヒキオなんだし」

 

そうして笑うクズ共。由比ヶ浜は苦い顔で葉山は苦笑。宇佐美、三上、奈良坂の雰囲気はどんどん悪くなる。

……ん?一人足りない?

 

快音が響く

 

横山の渾身の右ストレートが縦ロールの顔に突き刺さった。

 

吹き飛ぶ縦ロール、素っ頓狂な顔の取り巻き、無表情の横山。というかトリオン体の人間吹っ飛ばすとか軽く人間やめてね?

 

「ちょ、あんたなにすんのよ!」

「痛くないでしょう?トリオン体なんだし」

「そーゆー問題じゃないし!このあーしになにしてんのって話!」

 

すげぇあいつ、『この』つったぞ。どんだけ自己中なん?

 

「あたしはさっきあんたがバカにした比企谷隊のオペレーターなの。あたしらはちゃんと正攻法でA級になったの。それに、あたしはうちの隊が好きでね。自分の居場所をあんたのプライド保つためだけにバカにされたのが許せなかったから殴った」

 

さすが核兵器に例えられるだけのことはある。沸点低いし簡単に手が出る。

とはいっても俺も同じ気持ちだ。俺個人をバカにするならともかく、うちの隊をバカにするのは、許容範囲外だ。

 

「意味わかんない、どーせヒキオなんだしそんなことしてんでしょ?」

「うん、清々しいまでのクズでよかったよ。殴り甲斐があるもんね」

 

振り下ろされる拳が縦ロールの顔を再び

 

 

 

 

殴れなかった。

 

 

「やめろ横山」

「どけハッチ。こいつは許さん」

 

口調変わり始めてるよ?結構頭きてますね。

 

「こいつだけは許さん。この前のテニスコートといい今回といい」

「言い方が悪かったな。あとは隊長の俺の仕事だ。お前は下がれ」

「……」

 

隊長の権限を使えば例え横山といえども下がる。その辺りは一応弁えてるからな。

 

「ハッ、何が『隊長の仕事だ』だし。何かっこつけてんのキモいんですけ……」

 

 

 

 

「黙れ」

 

 

 

全力の殺気を込めて言う。すると訓練室に残ってた僅かな人間全員が一斉に黙る。まるで覇王色の覇気だ。

 

「おい縦ロール、お前、前のことといい今回といい、随分なめたマネしてくれてんな」

「ハァ⁈なめたマネしてんのはそっちじゃん!ぼっちの分際で何あーしに楯突いてんの⁈」

「別に俺はさ、俺自身がバカにされるのはいいんだよ。小中と同じ目にあってるし。だけど、うちの隊バカにすんのは許さん」

「ハッ、許さなかったらなんだし。キモいんですけど」

 

一度、心をへし折るか。トリガーを起動しながら俺は言う。

 

「時枝、訓練室を一つ貸せ。このバカに格の違いを教えてやる」

 

本来こんなことしてはいけない。だが今回のこれを黙って見てるのはさすがに許せない。とりあえず内部通信で時枝に謝っとこう。

 

『すまん時枝、これからのことは全て俺が責任取る。だから見逃してくれ。もし言及されたら俺の名前をまっさきに出していいから』

『先ほどの彼女の発言は目に余るものがあったのでもし言及されたら僕たちも責任取ります。木虎と佐鳥も同意してますし、多分嵐山さんと綾辻先輩も同意するでしょうし』

『……すまん。今度全員になんか奢る』

『え!比企谷先輩マジで⁈やっ……』

 

佐鳥がうざかったから通信を切る。

 

「そんなのあーしがやると思ってんの?」

「ハンデと報酬をやるよ」

「は?」

「まずルールから。五分一本の試合でどちらかが活動限界になったら終わり。そしてハンデ。時間切れなら俺の負けだ。そんで、制限時間5分の内、4分間俺は攻撃しない。そして、俺は『自分の』トリガーを使わない」

「ハァ?」

 

トリガーを使わない。実質相手を戦闘不能にする術がないということだ。つまり最初から俺が勝てる可能性を0にしてるに等しい。

 

「んで、報酬について。俺ができる範囲でなんでも一つ言うこと聞こう。例えば、2年生の間お前のパシリ兼財布として動くとかでもいいぞ」

「………言ったね」

「ああ。お前がボーダーに入ったら余裕でA級になれるんだろ?これだけハンデつければお前にだって勝ち目あるだろう?お前の頭が猿でなけりゃな」

 

お、なんかブチィって音がした気がする。

 

「いいじゃんやってやるし。あんたは今年はあーしのパシリだ」

「OK。じゃ、早速やろう」

 

この程度の挑発で乗るあたり、完全に脳みそ猿だな。

周囲が見守る中、公開処刑が始まった。

 

 

訓練室に入り、縦ロールは孤月を抜き、俺は二宮さんスタイル(ポケインスタイル)になると、カウントダウンが始まる。

 

「あーしに楯突いたこと、後悔しな」

「御託はいい、さっさとかかってこい」

 

カウントダウンが0になると、一気に視線をきつくし切りかかってくる。それを軽くかわす。これなら訓練生の頃の緑川の方が絶対強い。

 

「フッ!」

 

孤月を全力で振る縦ロール。うむ、鈍い。

 

「どうした?そんなもんか?」

「黙るし!」

 

おっせぇな。普段から風間さんやら佐々木さんやら緑川やら米屋やらとやりあってる俺から言わせりゃこんなの避けるなんて本読みながらでもできるぞ。それこそナルトのカカシ先生みたいにイチャイチャパラダイス読みながらでも。

 

 

あ、文庫本持ってくりゃよかった。

 

ーーー

 

「おいどうした?もうあと30秒しか残ってないぞ?」

「う、うるさい!(何こいつ!全然あたらない)」

 

ぶっちゃけ取るに足らない。最初の訓練からもこいつがセンスないことくらいわかってるし。ポケインスタイルは崩さずヒョイヒョイ簡単に避けながらそんなことをぼんやり考える。

 

(でも、あいつはあーしを攻撃する手段がない。もともとあーしが勝つ以外の選択肢がない。かっこつけてハンデなんて足したのがあんたの間違いだし!)

 

とか思ってるんだろうなぁ。

実にめでたいやつだ。

 

そして残り1分になる。

 

「よーし、こっから俺も攻撃すんぞ」

「ハッ!攻撃する手段なんて無いじゃん。トリガー使わなきゃあーしは戦闘不能になんないし」

「そう、その通りだ。俺は自分のトリガーは使えない。だから……」

 

レイジさんみたいにグーパンでトリオン体破壊できるほど筋肉ないしな、俺。

振り下ろされる孤月を躱し、孤月を握る縦ロールの手を思いっきり蹴り上げる。すると孤月は宙を舞い、最後は俺の手に収まる。

 

「お前のを使おう」

「なっ!ちょ、それ反則でしょ!あんたトリガー使えないんでしょ!」

「いや、これはお前のトリガーだ。だから反則ではない。そもそも相手のトリガーを使っちゃいけないなんてルールはない」

『トリガー臨時接続』

 

機械音と共に孤月が俺の武器になる。縦ロールは睨みつけてきてるが、二宮さんの方が怖い。

一気に近づき、右腕を切り裂く。俺は射手であるため攻撃手のトリガーは専門外だが、こいつよりは使える。

 

「なっ!」

 

そのまま勢いで残りの四肢も断ち切る。縦ロールはダルマになった。さぁ、ここからが本当の処刑タイムだ。

孤月の切っ先を縦ロールの眼前に突きつける。

 

「ひっ!」

 

いくら生身でないといっても眼前に刃物突きつけられたら誰でもビビるわな。

 

「これが格の差だ」

「ひっ、ひぃ」

 

ここまで怖がるとは少し意外だ。

 

「さっきも言ったが、俺をバカにするのは構わん。他の人がそのことをどう思うかは知らんがな。だが、もう二度と同じことを言わない事をお勧めする。次はねーぞ」

 

こんだけ脅せば十分だろ。涙目になってるし。

さて、時間は、おっとあと20秒か。

 

「俺の勝ち」

 

そう言って孤月を縦ロールの頭に突き刺した。

 

ーーー

 

訓練室を出ると、周囲からの視線がきつい。いや、なんか化け物見るみたいな目になってるような……。そこで葉山が近いてくる。

 

「ヒキタニくん……、その……」

「何も言わなくていい。だが忠告しておく。お前のとこの女王の手綱くらいしっかり握っとけ。これ以上俺に面倒かけんな」

「……すまない」

 

ふぅ、とりあえず一件落着だな。

よし、時枝に土下座しに行こう……。

 

時枝の方へ歩いて行こうとすると1人の人間が立ち塞がる。

 

「……なんの用だ雪ノ下」

 

いや本当に何?

 

「比企谷くん、私とも模擬戦しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

***

 

おまけ

 

八幡による公開処刑が行われている同時刻、訓練室の観客席に二人の男性が立っていた。

1人は、現在戦っている八幡の部隊の攻撃手、佐々木琲世。

もう1人は、現在はB級に降格させられた二宮隊隊長二宮匡貴。

 

「比企谷くん、珍しく怒りましたね」

「あれで怒らない隊長はいないだろう。俺でも同じことをした可能性がある。そういう当事者のお前はどうなんだ?」

「あはは、今の所すごいイラついてますよ」

 

珍しい、と二宮は思う。佐々木はあまり感情を表に出さず、口にも出さない。その佐々木が素直に口に出すということはかなり頭にキてるのだろう。

 

「行かなくていいのか?」

「僕が行ったら余計面倒なことになるでしょう。それに、比企谷くんに任せておけば問題ないでしょうし。あ、もしかして比企谷くんの心配してます?」

「その必要はないだろう。あの女、射手の俺から見てもセンスがない。比企谷は体術も嗜んでいるし、そんな奴が比企谷の相手をしたところでどうなるかなど火を見るより明らかだ」

「二宮さんの弟子ですからね〜」

 

二宮に弟子入りを志願した訓練生は過去にも何人かいる(らしい)が、弟子入りできたのは八幡ただ一人。二宮にとっても彼は特別なのだろう。少なからず、彼の声にも怒気が感じられる。

 

「俺の弟子は後にも先にもあいつ一人だ。あいつより才能があるやつが弟子入りを志願してきたら話は別だが、そんなやつなどそういないだろう」

「そうですよね〜」

「これ以上見る必要はないな。俺は戻る。佐々木はどうする」

「僕はもう少し見ていきます。嵐山隊の補佐もあるので」

「そうか。なら一つ伝言を頼む」

「はい?」

「近いうちに俺の元に来い。鳩原の事について少し調べる。お前のサイドエフェクトが必要になるかもしれん、と」

「わかりました」

「頼んだ」

 

そうして二宮さんは去っていった。

再び琲世が視線を訓練室に戻すと、ちょうど八幡が孤月を金髪の女子生徒に突き刺したところだった。

 

「さすが隊長、だね」

 

琲世は一人呟いた。

 

 

 




うまく書けたかちょっと不安です。八幡がHACHIMANしてる気がする……。
そしてお察しの通り次回も職場見学です。
早くファンブック出ないかな〜

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