Fate/kaleid and hero   作:MZMA

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お久しぶりです!

覚えてる人いるのかな…

今回は、イリヤ対ライダー姉さんが主体です。原作と大して変りは無いので面倒だったら後半部分まで飛ばしちゃって下さい

後半ぐだくだ注意報発令です(^○^)


鏡面界

 

「しーろーうー。ご飯はまだなのかー?」

 

時刻は午後6時。凡そのどの家でも主婦が夕飯を作るべく台所(せんじょう)包丁(エモノ)を握っている頃合いだろう。

そんな何気無い日常の1ページは衛宮邸でも同じだった。

 

「おい、ギル。早く食べたいなら少しは手伝えって。それに、サーヴァントは飯を食べなくても良いんじゃないのか?」

 

座布団の上で寛ぐギルを見て士郎は少し懐かしさを感じた。

 

ーーセイバーも似たような事を言ってたよな…

 

「……まあ、そうなのだがな。美味しいものは食べたいではないか」

 

迷惑だったか? と此方を潤んだ目で上目遣いに見てくるギルを見て士郎はこれ以上言及するのをやめる事にした。確かに誰だって美味しい物は食べたいのだ。

 

「迷惑じゃないよ。それでも、この日本には『働かざる者食うべからず』って諺があってだな」

 

「む? 我は王ゆえにその責務を存分にはたしているではないか?」

 

「いや…そういう意味では無くてだな…まあ、良いか」

 

火にかけたフライパンを小刻みに揺らしながらも士郎は今日の学校で感じた違和感の原因について考える。

 

「なあ、ギルーー」

 

「今夜行くのだろう?」

 

「……なんでわかった?」

 

「しろうの事だ。気づいた以上は放ってはおかないと思ってな」

 

「………仰るとおりで」

 

士郎は大皿に炒めた炒飯を盛り付けるとシンクの上に置いてあった他の料理と共にトレーに載せてテーブルの上に運ぶ。

 

「だが、魔術の訓練は良いのか? セラとやらにはここの掃除をする為に数日間滞在する事を許可されているのだろう?」

 

「まあ、そうなんだけどさ。それでも、何かあってからじゃあ遅いからな」

 

いただきます、と士郎が手を合わせるとギルもそれに習い手を合わせ食前の挨拶をした。

 

「流石は正義の味方といったところか?」

 

「よしてくれ。そんな大層なもんじゃない」

 

「では、少しばかり鍛錬をした後に穂群原学園こうとうぶの校庭に向かうとしようか! 我の宝具も牛の歩みではあるが徐々に取り戻しつつあるのでな!」

 

「そうなのか? よかったじゃないか」

 

「まぁ、それでも総数で言えば全体の4割程度と全く回収する出来ておらなんだがな…」

 

炒飯を食べた瞬間に顔を綻ばせたギルは、自身の宝具が未だに半数も戻らず、なまじ総数が多い為に回収できた数も割合を変動させるに至らないものであり、がっくりと肩を落とす。

それでも既に数百は回収しているというのだから驚きだ。星の数程の宝具というのは伊達ではないのだろう。ーーそれが果たして役に立つ宝具なのか否かは置いておくとしてだが。

 

「ま、まあ。今は食事中だし、そんな暗い話題は置いておいてさ。どうだった? オレが高等部で授業を受けている間はイリヤの教室に行ってきたんだろ?」

 

「なんだ? 我を通して幼女の生活状況を知りたいのか?」

 

「違うわ!」

 

イタズラっ娘の様に笑うギルの頭を軽く叩いた士郎は、改めて尋ねた。

 

「それで、実際の所どうなんだよ?」

 

「ふむ…。何といったら良いのだろうか……」

 

「なんだ、随分と焦らすじゃないか」

 

難しい表情で唸るギルに士郎は、面白いものを見たとばかりに茶々を入れた。

 

「なんと言うか……虎?」

 

暫しの熟考の末、捻り出した答えがこれである。

微妙な表情になる士郎と対象に、ギルは至極真っ当な表情でそう答えた。その瞳からは嘘偽りは感じ取れない。

 

「は?」

 

ーー虎。トラとな?

 

士郎の頭の中で様々な虎の姿が走馬灯の様に駆け巡る。

動物園にでもいる様な普通の虎、ホワイトタイガー、スマトラ虎。その際、竹刀を持った冬木の虎が頭を巡ったのは、人としての扱い的には如何なものなのだろうか。

その際に、猛獣関連で何故か腹ペコ騎士王(セイバーライオン)槍の兄貴(いぬ)が捕食される平行世界のサバンナの風景(カニバルファンタズム)的な何かが脳裏を過ぎったが、この際置いておこう。

 

「いや、しろうよ。今、しろうの脳裏を巡った虎に相違ないぞ。あの虎教師だ」

 

「イリヤの担任って藤ねぇだったのか…」

 

どうりで高等部で見かけない訳だ、と一人納得する士郎。

 

「それで、藤ねぇが印象的なのは分かったけど…」

 

「それ以外は何もないぞ。殆ど寝ていたしな」

 

「さいですか…」

 

ギルの発言に士郎はこれ以上の追撃を諦め、炒飯を掻き込む。

気がつけばギルは自分の皿を既に開けていた。

 

「そんなに急がなくとも我は逃げぬぞ?」

 

「そう言う問題じゃなくてだな…」

 

「まあ、良い。この場合は……ごちそうさまでした…だったか? 美味かったぞ、しろうよ」

 

「お粗末さまでした。ちゃんと『ごちそうさま』が言えたな。偉いじゃないか」

 

ギルの成長? に謎の感動を覚えた士郎はポンポンとギルの頭を撫でた。

 

「ふにぁ〜〜〜〜〜ーーはっ‼︎」

 

「いや、そんなに睨まなくても…」

 

「うっ、うるさい! 士郎の手は宝具か何かなのか⁉︎」

 

「なんだそれ?」

 

士郎を睨み、先程のだらしなく蕩けた顔を隠す様にそっぽを向いたギルの頭をもう一度撫で、士郎は食器を片付ける為に立ち上がる。

 

「それを止めろと言っているのだ!」

 

「うぉぅ⁉︎」

 

真っ赤な顔をして立ち上がったギルの気迫に士郎はいそいそと退散した。

 

 

その後、

 

ーー俺、何か悪いことでもしたのかなぁ…

 

そんな、場違いというか、的外れな感想を抱きながら皿を洗う正義の味方の姿があったとか無かったとか…。

 

 

 

 

非日常にちょっと憧れ、兄が大好きな普通の女の子である、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは今現在、非日常の真っ只中にあった。

具体的には、深夜の町を魔法少女服で徘徊するという知人に見られれば発狂しそうなシチュエーションだ。ーー非日常と言うよりも非常識と言うべきか?

イリヤが望んだ非日常は断じてこんな恥辱プレイみたいな状況では無い。そう、例えばーー兄との禁断の恋…みたいな…?

そこまで考えてイリヤは顔をトマトの様に赤くしながら、その妄想を振り払う。

 

「ル、ルビー。此処で良いんだよね?」

 

『ハイ! 凛さんから指示された場所は此処ですよ!』

 

イリヤの相棒(笑)である " バカステッキ " ことマジカルルビーは穂群原学園高等部の校門前に立ち尽くす少女の周りをふよふよと飛び回っていた。

 

そうして、一歩歩く度に重くなる錯覚を覚える足を引きずって校内へと歩を進めた。

 

「お、ちゃんと来たわね」

 

校内に入ってすぐ。校庭の端には一人の少女が立っていた。

遠坂 凛。

イリヤをこの非日常に巻き込んだ元凶であるルビーを制御しきれなかった、いわば元凶の更に元凶的な存在である。本人曰く、魔法使いと考えてくれーーだそうだ。詳しいことはイリヤには理解出来なかった。現在理解出来ているのは、面倒事に巻き込まれた上にこれから町を吹き飛ばせる程のナニカと戦うという事だけだ。

考えて、更に気が重くなった。

 

「そりゃあんな脅迫状だされたら…」

 

「ん? なに?」

 

「いえ、なんでも…」

 

どうやら無自覚らしい。

脳裏に、放課後の下駄箱に入っていた脅迫状の文面が思い浮かぶ。

『今夜0時高等部の校庭まで来るべし。来なかったら■■。帰ります。』

ご丁寧に、殺すと書かれた部分だけ塗り潰されている。まあ、塗り潰しきれていないのだが。

 

「ってかなんでもう転身してるのよ?」

 

『さっきまでいろいろ練習してたんですよー。付け焼き刃でもないよりマシかと』

 

そう、飄々と告げるのはルビーだ。どうやらイリヤはイリヤ努力しようとしていた様だ。

 

『とりあえず基本的な魔力弾射出くらいは問題なくいけます。あとはまぁ…タイミングとハートとかでどーにかするしか』

 

「なんとも頼もしい言葉ね…」

 

続けられたルビーの言葉に凛は何とも言えない様な表情をする。

だが、そんな事は言ってられないのが現状だ。

 

「正直かなり不安ではあるけど…今はあんたに頼るしかないわ」

 

準備はいい? と尋ねる凛に対して、イリヤは何処か緊張した面持ちで、だがしかしハッキリと答えた。

 

「う…うん!」

 

そう、と呟き凛は校庭の中央へと歩き始めた。イリヤは慌ててその後を追う。

 

「カードの位置はすでに特定しているわ。校庭のほぼ中央…。歪みはそこを中心に観測されている」

 

「中心…ってなにもないんだけど?」

 

そう言うイリヤの視線の先には、成る程見事に何も無い。

 

ここにはないわ(・・・・・・・)。カードがあるのはこっちの世界しゃない。ルビー」

 

『はいはーい。それじゃあいきますよー』

 

「わっ⁉︎」

 

その言葉共にイリヤの持つステッキから膨大な魔力が溢れ出す。

 

『半径2メートルで反射路形成! 鏡界回廊一部反転します!』

 

「えっ…な…なにをするの?」

 

カードがある世界(・・・・・・・・)に飛ぶのよ」

 

そう説明する凛の表情はとても落ち着いたものだ。イリヤは未だ戸惑いを隠せないでいるが、凛を見てとりあえずは安全だと判断する。

 

「そうね…無限に連なる合わせ鏡。この世界を像のひとつとした場合ーーそれは鏡面そのものの(・・・・・・・)世界」

 

世界が反転し、自身が世界と乖離していくのをイリヤは感じた。気分が悪くなるその感覚に思わず目を閉じそうになりーーそして、驚愕に目を見開く。

 

「鏡面界。そう呼ばれるこの世界にカードはあるの」

 

「な、なに…この空…?」

 

マス目の様に垂直に交わる幾重にも線の入った、限りある空。さっきと風景はなに一つ変わらない筈なのに、明らかに別の場所だと断じれる雰囲気。目隠しをされたら、自分は同じ場所だと気づかないであろう。素人のイリヤでさえ感じ取れる程の異常な空間だった。

「詳しく説明している暇は無いわ! カードは校庭の中央!」

 

弾かれた様に視線を向けると、待っていたかの様に校庭中央の歪みから目隠しをした紫の長髪を振り乱す女性が現れた。

 

「な、なんか出てきたっ⁉︎」

 

キモッ! というイリヤの身も蓋も無い良い様にツッコむ事なく、凛は真剣な面持ちでその女性を睨む。

 

「報告通りね……実体化した! くるわよ!」

 

その言葉と同時にその女性ーー理性無き怪物(メドューサ)は一直線に突っ込んできた。

 

「わわっ⁉︎」

 

咄嗟に左右に開いて避ける二人。凛は魔術礼装(ルビー)が無くとも、イリヤよりも安全に、正確に攻撃を避けていた。常日頃からルヴィアと殴り合って鍛えられたのか、その動きは経験豊富な実力者を彷彿とさせるものだった。

 

Anfang(アンファン)ーー!」

 

素早くポケットから宝石を三つ取り出すと、躊躇無くメドューサに投げつけた。

 

ーーー爆炎弾三連‼︎

 

着弾と共に、爆発。一般人ならまず助からないだろうし、並の魔術師でも防ぐのに精一杯だろう。

だかしかし、相手は反英雄とは言え英霊だ。当然、強弱はあれど対魔力を有しておりーー無傷だ。

 

「やっぱ魔術は無効か……! 高い宝石だったのに!」

 

そう憎々しげに吐き捨てた後、

 

「じゃ、後は任せた! 私は建物の陰に隠れてるから!」

 

先程までの真剣味は何処えやら。恥も外聞もなく、イリヤに任せた。

所謂、丸投げである。

 

思わず、『ええっ⁉︎ 投げっぱなし⁉︎』と叫んだイリヤを責める事が出来る者など何処にも存在しないだろう。

 

『イリヤさん、二撃目きますよ!』

 

だが、それは敵には関係の無い話しだ。標的を凛からイリヤに変更すると、真っ直ぐに鎖付きの短剣を投擲する。

 

「おひゃあッ⁉︎」

 

咄嗟に避けるが、背中を掠る。

 

「かすった! 今かすったよ!」

 

『接近戦は危険です! まずは距離を取ってください!』

 

先程の攻撃が掠った事に余程動転したのだろう。ルビーの言葉を耳にするなり、

 

「キョリね! そうね、取りましょうキョリ!」

 

と、キョリを連呼し、

 

「キョリーーーーーー!」

 

敵に背中を見せながらのと逃走を敢行した。ルビーによって強化されているとは言え、ボルトも真っ青なスピードだ。

 

「……逃げ足だけは最強ね、アイツ」

 

敵前逃亡の前科を平然と踏み倒しながら、凛は呆れた様な眼を向ける。

 

「たっ、戦うってホントに戦う事だったんだね! ファンタジーすぎるよアハハハハ‼︎」

 

イリヤは、恐怖が一周回ってハイテンションだった。泣きながら高笑いし、猛スピードで駆ける少女。もしも他人に見つかれば確実に通報沙汰の絵面だった。鏡面界故にそんな愉快な出来事は起こりえないが。

 

『落ち着いていきしょうイリヤさん! とにかく距離を取って魔力弾を打ち込むのが基本戦術です! 魔力弾は先程練習した通り!』

 

ルビーが必死に宥めすかす。イリヤに先程の練習を思い出して貰うために。

 

『攻撃のイメージを込めてステッキ(わたし)を振ってください!』

 

「あーもー」

 

こうなればもうヤケクソだ。イリヤは額に青筋を浮かべながら、振り向きざまにルビーを一閃した。

 

「どーにでもなれ!」

 

「ッ‼︎」

 

その攻撃に初めて怪物か反応する。それは、動揺だった。だが遅い。

一閃の延長線上に存在するものが、残らず爆撃に巻き込まれた。

怪物を含めた辺り一帯を吹っ飛ばした自身の攻撃にイリヤの目が点になる。

 

「スッ…スゴッ⁉︎ なにコレ⁉︎」

 

『いきなり大斬撃とはやりますね!』

 

滅殺ビーム⁉︎ と興奮冷めやらぬ様に騒ぐイリヤに、苦しげな声が聞こえた。

 

「■■■■■■ーーッ‼︎」

 

明確な負傷。怪物の体には、確かな傷がついていた。

 

「効いてるわよ!」

 

ーーやはり魔術では無い純粋な魔力の塊なら通用する!

 

だが、そう叫び思考する凛はーー

 

「……遠いなぁ…………」

 

果てしなく遠かった。主に物理的な距離が。イリヤがボヤくのも無理は無いだろう。

 

『相手は人じゃありません! 遠慮は無用ですよー!』

 

「ちょっと殺伐としすぎな気もするけど……なんか魔法少女っぽくなってきたかも!」

 

だが、ルビーの声に気を取り直しもう一回。

 

「たーーーッ‼︎」

 

砲撃を放つ。が、二連、三連と続けても捉える事が出来ない。それはひとえに怪物の認識が変わったからだろう。自身が一方的に蹂躙する事が出来る生贄から、自身を傷つける事が可能である外敵へと。怪物はイリヤを明確な敵として認識したのだ。

故にーー

 

「うえっ、すばしっこい!」

 

本気となった彼女(メドューサ)を素人がピンポイントで捉える事など出来るはずも無いだろう。

 

『砲撃タイプでは追い切れませんね。散弾に切り替えましょう、イメージ出来ますか?』

 

「やってみる!」

 

そうして、両手でステッキを掲げーー

 

「特大のーーー散弾!」

 

振り下ろした。

絨毯爆撃の様に小規模な爆発がイリヤの視界の先にある空間全てを覆った。

 

「や…やった?」

 

『いいえ、おそらく今のではーー』

 

楽観的なイリヤの意見にルビーが警告を飛ばす。

 

「バカ! 範囲広げすぎよ! あれじゃ一発当たりの威力が落ちる! 反撃に気をつけーー」

 

それは、凛も同じ意見だったのだろう。イリヤに注意を払うように指示をする。ーー遠距離から。

そして、土煙が晴れた先にあったのはーー。

 

ダラリと脱力して立つ怪物と、その体から噴き出した血液によって構成された巨大な魔方陣だった。地面と垂直に、此方に面を向けて存在する魔方陣からは異常な程の魔力か迸っていた。

 

「 " 宝具 " を使う気よ! 逃げて!」

 

『イリヤさん退避です‼︎』

 

「え、ど、何処へ⁉︎」

 

『とにかく敵から離れてください!』

 

「なっなななななにが起きるのーー⁉︎」

 

騎英の(ベルレ)ーー」

 

もう、手遅れかと思われた時、不意にその声は響いた。イリヤにとっては聞き慣れた声。だが、此処にいるはずの無い人物の声。

 

「ギル」

 

そして、次の瞬間。

 

「■■■■■■ーーッ‼︎」

 

虚空から唐突に現れた黄金色の鎖に全身を絡め取られた怪物は、背後から物凄いスピードで飛来した一本の矢が着弾と同時に爆発した事により、一瞬で弾け飛んだ。

 

イリヤは咄嗟に自身の後方ーー矢の飛来した方向へと目を向ける。そこには、

 

「お兄ちゃん?」

 

 

 

 

士郎がギルの空間歪曲宝具を使って、鏡面界なる場所に辿り着いた時には既に戦闘は佳境へと移行していた。

今は何故こんな場所に魔法少女のコスプレをひたイリヤや、嘗ての戦友であった遠坂凛が居るのかは取り上げず置いておくとして、士郎はまず最初に今まさに宝具を発動しようとしている女性サーヴァントーーライダーを討つべく迅速に行動した。

 

自身は黒い大弓を投影、矢には完成には程遠い劣化品の偽・螺旋剣(カラドボルグ ll)をつがえる。今、求められているのはライダーの宝具発動を止める事であり、討伐する事では無い。

 

ーー我が骨子は、捻れ狂う(I am the born of my sword.)

 

心中で手早く詠唱を済ませると、自身の横で霊体化している少女(サーヴァント)に短く一言。

 

「ギル」

 

彼女はそれだけで察してくれた様で、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から天の鎖(エルキドゥ)を射出する。Eランクとは言え、神性を持つライダーにはうってつけの拘束具だ。

そして、士郎は螺旋剣を解き放った。一筋の赤い流星が真っ直ぐにライダーの額へと直進し、貫通。同時に爆発した。

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)と呼ばる宝具を自壊させ、爆発させる技術だ。宝具を投影できる士郎だからこその技である。

 

『我に友を使わせた対価…高くつくぞしろうよ?』

 

『わかってる。今度クリームパン買ってやるから』

 

念話てそう話をつけ、ライダーへと視線を向けた士郎は驚いた。ライダーが今の未熟な一撃で跡形もなく吹き飛んだのだ。

 

「あれ?」

 

士郎は呆然と呟いた。

 

『ふむ…どうやら理性の無い現象として現界したのだろうな。大分弱体化されている』

 

「なんだかな…。すごく拍子抜けなんだが…」

 

士郎はライダーと命懸けの戦闘をする覚悟をしていた。それなのに、贋作とも呼べない様な出来損ないの矢を爆発させただけで終了。戦闘狂で無くとも不完全燃焼気味に感じてしまうのは仕方の無いことだろう。

 

「お兄ちゃん?」

 

「ちょ、ちょっと! 衛宮くん⁉︎」

 

イリヤの驚愕の声が聞こえる。凛の困惑した叫びもだ。

 

『取り敢えずは、クラスカードを回収しちゃいましょう! 鏡面界が崩れてしまいます!』

 

「そ、そうね‼︎ どうして衛宮くんが居るのかはじっくり現実界(向こう)で聞かせてもらうとして……イリヤ! 取り敢えずは鏡面界から出ましょう! ふふふ、ルヴィアの悔しがる顔が目に浮かぶわ…!」

 

「う、うん!」

 

凛は素早く士郎が仕留めたライダーがいた場所へと向かい、『Rider』と書かれたクラスカードを拾い上げる。

 

「お兄ちゃん。こっち!」

 

「え?」

 

「良いから早くしなさい、衛宮くん!」

 

「わ、わかったよ」

 

よくわからないままに、士郎はイリヤが作り出したと思わしき魔方陣の上へと足を乗せた。

 

接世(ジャンプ)!」

 

そうして、士郎はよくわらないままに鏡面界から離脱したのだった。

 

 

 




今回は、文の量が多い割に大して進んで無いですね…

ロリギル成分も薄めですし…楽しみにしてくださった皆さん、申し訳ございません!

誤字脱字があれば是非ご報告を…(^◇^)

あ、完全に余談というか、蛇足なんですけどこんなのも作ってみたので書こうか迷ってます。↓








書き割りの様な月が浮かぶ闇夜。
長髪の陣羽織を羽織った和装の男性は、山門の上から長大な階段の途中途中に設けられている踊り場を見下ろす様に佇んでいた。
それに対峙するのは二つの人影。

「此処にたった二人だけで乗り込んでくるとは、まあ見上げた根性よな」

長髪の男性は、背負から外した長刀の柄を弄びながら面白そうに告げる。

「そりゃあどうも。こちとら剣術バカ主従でな。侍の英霊が現界したとなっちゃあ斬り合わずにはいられないだろ」

飄々とそう述べるのは、人影の一人。長髪の男性と同じく和装ーーだが、羽織の代わりに皮のジャケットを着ている青年。その身に纏う全ての衣装は黒一色である。

「ちょ、ちょっとマスター! 私までそんな括りに入れないでくださいよ!

慌てたように黒ずくめの青年に掴みかかるのは、白いノースリーブの着物に、黒いマフラーが特徴的な白髪の少女だ。

「面白い。ならば、このサーヴァント■■■■、佐々木小次郎を打ち倒し進むが良い。最も、簡単には通さんがな」

「ハッ! かの有名な剣豪、佐々木小次郎と打ち合えるなんざ滅多にある機会じゃねえ。胸を借りるぜ先輩」

「マスター…。いつもの様に一人で突っ込まないで下さいね。マスターはあくまでも人間なんですから」

「わかってるって。そういうオマエも気をつけろよ? 病弱スキルなんざ発動した時には…」

「ありがとうござます。スキルに関しては…まあ、運で?」

「…不安だ」

「準備は良いか? ならば、参るぞ侍達」

佐々木 小次郎は、長刀を抜き放ち、

「来いや! 現代の侍ーー常過 盈虧、いざ参る!」

常過 盈虧は無造作に引き抜いた刀を肩に乗せ、

「新撰組一番隊隊長ーー沖田総司、行きます!」

沖田 総司は凛とした雰囲気のまま、刀を構える。


此処に、侍達の戦闘の幕が切って落とされた。







って感じなんですけど…。
まあ、詳細とか細かいところは違いますけどだいたいこんな感じです。二話くらいは書けてるんですけど、連載載せたら皆さん見ます?


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