やっちゃおう、バーサーカー!!   作:ヘッラクレッス

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今回なんとバサクレス登場極少。
本格的に出るのは小山おじさんのあたりからの予定(仮)


神を目指した者たち
英雄は、日々を駆ける


 

 モノリス内、町の中心部から離れたモノリス近郊に『外周区』と呼ばれる場所がある。エリアの端ということもあり、人が住むことはなく、マンホールチルドレンとして『呪われた子供たち』が暮らしているくらいである。

 

―――そんな町を何者をも凌駕する速度で駆け抜ける男の姿があった。

   傍らには小さき少女を携えて。

 

 彼らが目指すのは彼らの遥か先を疾走する普通なら存在し得ないほど巨大な虫の形をした生物、『ガストレア』である。

 

 

 

 ガストレアは本来であればモノリス内に侵入することはない。ただそんなかにも例外(イレギュラー)は存在する。

 

 例えばモノリスの間に存在する磁場の影響が弱いところからの侵入であったり、また、磁場の届かない地下深くからの侵入であったり、上昇気流にうまく乗り上空からの侵入などである。

 

 今、彼らが追っているのはその例外によって齎された『感染者』の成れの果てである。

 

 ガストレアとは『ガストレアウイルス』によって遺伝子を書き換えられることによって誕生する生物である。このウイルスは空気感染こそしないものの血液感染によって感染することはあるのだ。

 つまり、ガストレアに襲われ体液を送り込まれればどうすることもできない。

 襲われる側の人間が民警のようにガストレアに対抗する手段を持っているものだとしたら、まだいいだろう。

 しかし、もし何の装備も力も持たぬ一般人が襲われたとする。そうすれば、いったいどうなるのか?

 考えるまでもないだろう。襲われた人々は『感染源』となり得るガストレアにウイルスを感染させられ―――

 

 ガストレアへと、その姿、形を変貌させてしまう。

 

 

 彼らが追跡しているガストレアもそのうちの1体、少し前まで普通の生活を営んでいたはずの人間だった生物である。

 

 その見た目からおそらくはモデルスパイダーの単因子だろうと思われるガストレアはその多数の足を巧みに使い、恐ろしいまでの速さで町を駆け抜けている。もう10分と掛からずに多くに人々が住む街の中へと侵入してしまうだろう。

 

 

――だが、それを追っている彼はその速度を歯牙にもかけないほどの速さで疾走し、対象との距離を詰めんとしていた。

 

 

 そして、追跡が始まってから30秒ほど経過したかというとき遂に彼らは追跡対象へとたどり着く。

 

「■■■■■■■■■ーーー!」

 

 そして、吼える。今まさに目の前の標的を討ち取らんと。

 

 その声を聞いてガストレアは一瞬ではあるが動きを緩めた。

 

 そう、()()()()()()()のである。

 

 それは、彼を前にしたときにしてはならないこと。

 彼はその一瞬の隙といえるかわからないほど小さな隙間に完全な攻撃を容易く加えることができる技術を持っているのだ。

 

 だが、そんなことまで理解できるほど、このガストレアは有能ではない。

 故に、この勝敗ともいえる事象は彼に追跡されたというだけですでに決まっていたのである。

 

 そして今、彼の持つ神聖さすら感じる無骨な黒い斧剣によってガストレアは真っ二つに叩き切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 彼、里見蓮太郎は勤めを果たした後、タイムセールで手に入れたもやしを手に自分が所属する会社へと訪れ、先ほど終わらせた仕事の顛末の報告をしていた。

 

 

――その頬に冷や汗を浮かべながら。

 

 

「死ぬ前に、何か、いいの残したことはある?里見君」

 

 

 と、物騒な声で機嫌を悪くしている少女は、天童木更(てんどうきさら)

 十年前、蓮太郎が引き取られた天童家の末の娘であり、彼の勤め先の天童民間警備会社の社長である。

 

 

「す、過ぎたことはしょうがねぇだろ」

 

 

「この、お馬鹿ッ!」

 

 

 狭い室内に怒声が響き渡るのと同時に蓮太郎に鋭いパンチが飛んでくる。すんでのところでかわすと少女は、少女は噛み付くかのような表情で蓮太郎を睨んだ。

 

 

「ちょっと、何でかわすのよ腹立たしいわねッ」

 

 

「無茶言うなッ!」

 

 

 そう言うが早いか蓮太郎が逃げようとすると少女も拳を高く振り上げながら追ってき、応接セットを中心にぐるぐると逃走劇が始まる。

 

 なぜ、このような事態に陥ったかというと、それは、里見蓮太郎の所為にあった。

 

 いつものように仕事をし、無事、ガストレアを倒すまではよかった。しかし、そのあとに迫るタイムセールに急ぐあまり、()()()()()のを忘れてしまったのである。

すこししてから気づいたものの、すでに手遅れであった。

 警察に連絡をとっても、気にするな、と哄笑とともに電話はすぐに切られてしまったのである。

 

 

「なあ、また新しい仕事を受けた時に頑張ろうぜ、木更さん」

 

 

「馬鹿なこと言わないで!これが最後のチャンスだったのよ!」

 

 

 そう、この会社はお世辞にも裕福、ましてやどうにか経営できている、と言うのもおこがましいほどに貧しかった。雇っている民警も蓮太郎ただ一人。さらに、まだ会社が小さく、蓮太郎の民警としてのランクが低いという理由で仕事が極端に少なく、収入が少なかった。

 

 

「ちょっと里見君、今週は収入ゼロよ。一体誰のせいだと思ってるのこの甲斐性なし、最弱、お馬鹿。それと君の中では社長への仕事の報告よりもスーパーのタイムセールのほうが優先されるの?」

 

 

 そして一旦言葉を切り、拳を握ったまま震える。かと思うや、机に両手を突いて立ち上がった。

 

 

「――なにより、どうして私にもタイムセールのこと教えてくれなかったのよッ!」

 

 

 言い切ったと同時に、タイミングよく木更のお腹がぎゅるぎゅるとなり、彼女はお腹を抱えたまま力なく椅子に座った。目に光はなく虚ろだった。

 

 

「会社経営って思ったより大変なのね」

 

 

「・・・・楽だと思ってたのか?」

 

 

 そこからは会社の立地が悪い、や宣伝すればいいなどまた大していい案も出ないような会話に花が咲いた。

 蓮太郎が爆発して人を呼び寄せる話まで言ったところで蓮太郎は呆れ半分に部屋を見回す。

 

 

「なぁ社長。まじめな話、俺以外にも人雇おうぜ」

 

 

「使えそうな人がいたらね」

 

 

 せっかくワンフロアを貸しきって事務所を構えているのに、使用するのは二人の社員しかいないのではもったいなさ過ぎる。そう思って、割と真剣な意見を言ったつもりだったが、そっけなく返されてしまった。そして、この話題を打ち切ると指をぱちんと鳴らした。

 

 

「報酬を貰い忘れたお馬鹿さん、お茶をいれて」

 

 

「チッ、はいはい、ただいまお持ちしますよ、お嬢様」

 

 

 貧乏な生活を送っているのに気位は高い社長に疑問を持ちながら、急須に湯を注ぎ机の上に差し出す。

 

 

「ん、ご苦労」

 

 

それからしばらくの間、ノートパソコンを操作していた木更が顔を上げ尋ねる。

 

 

「ねぇ、君が倒したガストレアって感染者だったのよね?」

 

 

「あぁ、そうだ。感染源のほうは見つけられなかったけど、おそらく同じモデルスパイダーの単因子だ。でも、飛べるわけでもないし、もう他社が見つけて始末してるだろ。危険なやつなら応援が掛かるはずだし、警報も発令されてない。」

 

 

 相手はただの単因子だ。それに、もしあいつがステージⅢ以降の危険なものなら応援要請が来るはずである。それがないのならば、すでにあっさりと駆逐できたのではないか、そう考えたのだがそれを木更の声が一蹴する。

 

 

「そんな情報はないし、それどころかもうひとつ感染者が出てたみたいね。まあ、こっちはすでにどこかの誰かが対応してくれたようだけど」

 

 

 そう言って木更は蓮太郎にもノートパソコンを見せてくれる。そこに写っていたのは、ガストレアの目撃情報があった場所を見ることができる民間機関のウェブサイトだ。

 

 

「ないわよね?」

 

 

「ああ・・・・・でも目撃情報が一つもないなんてことあり得ねぇだろ。新しい感染者も出てたって言うのに」

 

 

「でもここにあるじゃない」

 

 

「どうして政府は周囲一帯に警告を出さないんだ?これは一大事だッ!」

 

 

「里見君政府は無能じゃないけど警報とかの強制手段はほとんどとらないから、期待しても無駄よ。まあ、だからこそ民警(わたしたち)の仕事があるんだけど」

 

 

 いやな仕事だな、と自分たちがしている仕事認識を改め、舌打ちしたところで緩く頭を振って思考を切り替える。そして、これからの指針を宣言しようとしたときにもう一度木更が話し始める。

 

 

「あともう一つ気になることがあるの」

 

 

 思いもよらない発言に思わず、何?と蓮太郎はつい声をだ出してしまう。

 

 

「外周区に現れたもう一つの感染者だけど倒され方が異常なのよ。」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「ガストレアが一発で真っ二つに切られているの。いや的確な表現をするなら、ものすごく強い力で叩き切られている(・・・・・・・・)。これが相当高レベルの序列の民警の所為ならまだわかるわ。でも、この街の高序列の民警は誰一人そんなところにいった様子はなかったらしいの。これっておかしなことじゃない?」

 

 

 話を聞いていると確かに変な話だ。民警が手を出していないガストレアが高位の民警でしかできない倒され方をしている。一般人が倒したのか?いや、あり得ない。一般人がそれほどの力を持っているわけがない。だとするとそれをやったのは誰なのか。確かに気になる話だ。

 

 だが一旦思考を切り替える。自分まずできることからこなしていこう。

 

 

「その話もかなり気なる内容だが、まずは感染源のことだ。これから『先生』のところに話を聞いてくる」

 

 

「ええ、時間をとらせたわね。私も同業者にそれとなく探りを入れてみるわ。里見君、残る感染源も私たちで狩るわよ、可及的速やかに」

 

 

「わかった」

 

 

 そこからまた少し話し会話が続き、雰囲気を悪くして会話は終了し、蓮太郎は予定通り『先生』の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そこで彼、里見連太郎は『先生』―室戸菫といた。多少地獄を味わうも当初の予定どうり、今現在発見されていないガストレアの相談でだいぶ思考もまとめることができた。

 

 じゃ、とそう言い帰ろうとしたとき、

 

 

「ところで、君が倒したガストレアを調べた後もう一体ガストレアの死体が来たんだがこれをやった奴に心当たりでもないかな?」

 

 

 と急に声をかけられる。

 

 

「いや、民警じゃない奴かもってくらいしか・・・」

 

 

「そうかそうか、いや、いいんだ、気にしないでくれ」

 

 

「はぁ・・・」

 

 

 少し気になるが別にいいか、と気にせず蓮太郎は帰路に着く。その後ろでは、霊安室で一人唸る研究者が居た。

 

 

 




少女の名前何にしよう?
イリヤでいいのかな?

次回は2週間後くらになっちゃうかもです
忙しくてのぅ・・・・・


至らない点、違和感部分どしどしください即刻直しますので!

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