ぼっちじゃない。ただ皆が俺を畏怖しているだけなんだ。   作:すずきえすく

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寒中お見舞い申し上げます。
今年もよろしくお願いいたします。

更新が大幅に遅れてしまいました。
サボっていたわけでは・・・ないのですよ?

ただ、データーが・・・・・
(このあと2時間くらい大泣きする設定で。)


まぁ平たく言いますと、うっかり消してしまって
燃え尽き症候群みたいになってました。


さて、今回も最後までお付き合い頂けますと
嬉しく思います。




第8話 人工衛星なら、たまに落ちて来るけどな。

歳を重ねれば重ねる程、年月の経過が早く感じられるとはよく言ったもので、

先日、年が明けたばかりだと思っていた今年も、既に10月半ばに差し掛かっていた。

 

冬の足音が、ぼちぼち聞こえてきても良さそうなこの時期にしては、

今日の陽射しはとても暖かい。小春日和と言っても良いだろう。

 

それまでトボトボと歩いていた私は、道の隅っこでふと立ち止まり、

ぽかぽかと、穏やかに大地を見守るお日様を見上げ呟いた。

 

 

 

 

 

「あの太陽・・・落ちてこないかなぁ。」

 

 

 

 

 

恐らく、今この瞬間・・・私は、かつての教え子であった

あの少年よりも、腐った目をしていただろう。

 

まぁ・・・聞いてくれたまえ。

私にだって言い分はあるんだ。

 

 

今月は、連休が多いからかも知れないが、

友人や知人の結婚式が、やたらと多い。

 

聞いて驚くなよ?その数、なんと5回だ!

おかしいな・・・結婚なんて、都市伝説じゃなかったのか?

 

同窓会や、婚活パーティで知り合った戦友達との女子会では、

誰もがみんな”えー私なんて全然だよぉ”とか言ってたのに・・・

 

どうしてみんな・・・そんなに容易く伴侶を見つけられるんだ?

 

 

もちろん私だって、黙って手をこまねいていた訳ではない。

 

顔だってそんなに悪くないと思うし、スタイルだって同世代の中では

悪くない方だろう。安定した職業に就いているし、貯金だってある。

 

スペック的に・・・大きな穴は無かろう?

 

けれど、いざ婚活パーティへと繰り出してみても、大概の場合

”貴方は、ひとりでも生きてゆける”と言われて終わってしまうんだ。

 

 

 

なんだか・・・海が見たくなってきたな・・・。

 

 

 

 

コホン、話を戻そう。

 

友人の祝い事だから、ケチケチせずに・・・とは思うものの、

こうも重なってしまうと、ご祝儀だけでも手痛い出費だ。

 

でもまぁ・・・そのあたりの気持ちの整理は、付かなくもない。

 

 

何より辛いのは・・・花嫁たる友人達が皆、

気を利かせて、私に向かってブーケを投げてくる事だ。

 

そして、難なくブーケをキャッチした私に

 

「次は静の番だね(にっこり)」

 

と言いながら、例外なく屈託のない笑顔を向けてくるんだ。

他意が無いだけに、かえって心が痛い。

 

おかしいなぁ・・・。

 

ブーケを受け取ったら、次の花嫁になれる筈なのに、

もう何度目になるんだろう・・・こうしてブーケを受け取るのは。

 

 

ブーケを受け取った後、考えなければならないのはその処遇だ。

生花なのでやがて枯れてしまうのだが、縁起物なので捨てるのは躊躇われる。

 

そこで色々と考慮された結果、私の部屋の押し入れには、

加工を施され、ドライフラワーとなったブーケがやたらと増えていく事となった。

 

ブーケは沢山持ってるのに、なんで結婚出来ないんだろう・・・。

 

空を見上げた私は、再び呟いた。

 

 

 

 

 

 

「あの太陽・・・落ちてこないかなぁ。」

 

 

 

 

 

 

第8話

 

ら、たまに落ちて来るけどな。

 

 

 

 

 

「驚くほどに、有りのまま写るよー♪変に写ったって・・・それも自分さ♪」

 

目の前にあるプリントシール機から、抑揚はあるのに

感情はまるで感じられない声が発せられた。

 

こいつらは、なんの前触れも無くいきなり話し掛けてきて、生意気にも

人の不意をズバッと突いて来るので、俺はしばしば”ビクッ”ってなってしまう。

 

街を歩いていて、”えっ、誰だ?”と思って振り向いたら、

コイツが一人でしゃべってた・・・なんてオチだって、1度や2度ではない。

 

いないのは分かっているんだけど、”友達かな?”って思っちまうんだよ。

 

 

あれ・・・俺に話し掛けてくるのって、人間より機械の方が多くね?

 

 

こんな具合に、顔を合わせれば挨拶する程度の接点しか無いのだが、

まぁ色々あって、一色と共に1台のシールプリント機の前に立っていた。

 

「センパイ、ここまで来て往生際が悪いですよ?」

 

俺はその場で呆然と立ち尽くし、一色は俺の右腕に自分の両手を絡め、

逃がすまいと言わんばかりに、関節をガッチリ極めている。

 

「マジか・・・」

 

この俺が、こうも容易く関節をとられるなんて・・・お前は藤○喜明 か。

いや、それ以前にこの華奢な体のどこからこんなパワーが!

 

そういえばかつて、モン○ルマンは自らの技が1000万パワー相当だから、

パートナーのバッファ○ーマンと足して、2000万パワ〇ズだ・・・と言ってたな。

 

もしかしたら一色のパワーも、モン○ルマン的な何かなのかも知れないな。

 

 

でもさ、モン○ルマンさん・・・3万パワーほど、鯖読んでねぇか?

”私の超人パワーは100万”とか言ってたけど、中の人のは97万だったろ・・・確か。

 

いや・・・あの作品に、細かい事を突っ込むのはナンセンスだ。

何せ、天に召されたはずのキャラが、しれっと登場してきたりするのだから。

 

逆に、生きてそうだけど全然出てこない奴もいるけどな・・・カニ○ースとか。

チョキしか出せない奴にジャンケンさせるなんて、主催者は鬼だな。

 

 

こんな下らない事を考えている事など、知る由のない一色は、

”ワクワク感の抑えられない”といった笑顔を俺に向けると、

 

「じゃあセンパイ、早速撮っちゃいましょう♪」

 

そのまま俺を伴って、プリントシール機の中へと歩みを進めた。

 

戸塚とも撮った事あるけど、目が腐って写んなきゃ良いけどな・・・。

そこで、集合写真に俺が写ると、周りがどんな反応をするのか振り返ってみた。

 

 

千葉県にお住いの、”PN小町的に超ポイント高い”さん。

『お兄ちゃーん、小さい頃は濁ってなかったのにね・・・。』

 

続いて、同じく千葉県の”PNビッチって言うなし”さんから。

『目が腐ってても・・・ヒッキーはヒッキーじゃん!』

 

続いて”PN猫がねころんだら・・・カワイイ”さん

『口にするのは憚られるけれど、凄い目力だわ・・・。』

 

海浜高校の”PN葉山君、実際に会ったけど感じ悪かった”さんから。

『比企谷?誰それ。』

 

最後に、総武高校にお勤めの”PN結婚?何それ美味しいの?”さん。

『ったく・・・君の目は、魚の死んだ様な目だな。』

 

まぁお察しの通り、一部を除いて大概は否定的なものだ。

だから、写真を撮る事はちょっと苦手なんだよな。

 

 

一色に引きずられながら、俺は窓の向こうに見えるお天道様を、

焦点の定まらない目で眺めながら、心の中で呟いた。

 

 

 

「あの太陽・・・落ちてこないかなぁ。」

 

 

 

 

 

 

話は朝まで遡る。

 

 

「次にまた何かやらかしたら、八幡じゃなくてフェチ幡って呼びますね。」 

 

不名誉な事この上ない名を俺に押し付けた一色は、ようやく落ち着きを取り戻した。

 

次にまた何かやらかすも何も、夜這い云々は冤罪なのに・・・。

いや、ちょっぴり”いかがわしい事”になったのは、真に遺憾なんだけどさ。

 

 

無論、特殊な性癖など持ち合わせない俺にとって、理不尽極まりない話なのだが、

比企谷フェチ幡です・・・と名乗っても、大して違和感が無いのが悔しいところだ。

 

むしろ脳内で、戸塚が手を振りつつ”ふぇちまーん”と言いながら

駆け寄ってくるシーンが何度も再生され、俺は気付いてしまったんだ。

 

”これはこれでアリじゃね?”と。

 

そうか・・・”俺が戸塚のサンタ”じゃなくて”戸塚が俺のサンタ”だったんだ!

昨日から一色に振り回されっ放しの俺に、天使が幸せを運んで来たに違いない。

 

「神様・・・ありがとうございます。」

 

俺は早速、空(と言うか部屋の天井)に向かって感謝の祈りを捧げたのだが、

その幸せな時間は、そう長くは続かなかった・・・。

 

 

「センパイ、何を考えているんですか?ニヤニヤしててちょっとキモいです。」

 

 

一気に現実へと引き戻される、容赦の無い一言だ。

いや・・・実際その通りなんだろうけどさ。

 

続けて一色は、”それに目も腐って・・・・いるのはいつもの事か”と呟いた後、

 

「そんな事はどうでも良いですから、そろそろお出かけしましょうよ♪」

 

と提案してきた。まるで、それまでの辛口批評が無かったかの様な甘い声でな。

さっきまでの辛辣さはどこ行ったの?変わり身早ぇよ。

 

”ふぇち幡も目がヤバイのも構わないが、戸塚だけはどうでも良くない!”と、

声を大にしたかったが、話がいよいよ本格的に進まなくなりそうなので断念した。

 

 

「わかった。じゃあまずは腹ごしらえだな。」

 

大家のおばちゃんが作ってくれるのは晩飯だけなので、

必然的に朝・昼は自炊か外食になるのだが、俺はもっぱら外食派だ。

 

最初の頃は、ちょくちょくと作っていたのだが、

その、段々と面倒になってきてだな・・・って言わせんな、恥ずかしい。

 

専業主夫志望としてはどうかと思うが、仕方がない。

そもそも、今の俺は主夫ではなくて学生なのだから問題はないはずだ。

 

そんな、茶番たっぷりな事を考えていた俺に、

 

「そうですね♪それじゃあセンパイ・・・40秒で支度しなっ!」

 

という一言を残して、一色は洗面室へと消えていった。

 

 

 

・・・って、ドー○かよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で・・・あいつの支度は、かれこれ40分は掛かっている訳なんだが。

 

40秒とまではいかないものの、割と早めに支度を整えた俺は、

外を出た下宿の門の前で、一色を待っていた。

 

気だるさを身にまといつつ、待ち人を根気よく待つ俺は

あたかもご主人様を、駅前で健気に待ち続ける忠犬ハチ公の様だ。

 

まぁ、あっちは人々に愛され、リア充の地位に登り詰めたのに対し、

俺はぼっち・・・じゃなかった、皆が畏怖している孤高の存在なんだけどな。

 

そうそう、ハチ公の銅像に向かって”お手”っていう奴が稀にいるけど、

あれって一体、何が面白いんだろうな。

 

お寒い上に、リア王たるハチ公様に対して無礼千万じゃないか。

そこで俺は、そんな不届き者どもに声を大にして言いたい。

 

”むしろ貴様が、ハチ公様にお手して差し上げろ”と。

 

まぁ・・・ハチ公をはじめ、周りの人々は更に戸惑うだろうけどな。

そうだな、機会があれば材木座あたりにやらせてみるのも悪くない。

 

 

ハチ公の尊厳を(仮想敵から)守る戦いにピリオドが打たれてから、

更に15分程過ぎた頃に、ようやく一色がやって来た。

 

「遅くなって済みません。お待たせしました♪」

 

これって、お約束のお答えで良いのかな?

押すなよ押すなよーって言われた時は、押さなきゃダメみたいな。

 

だったら、答えはひとつしか無いだろう。

 

「すっごい待った。待ちくたびれて、ハチ公も心が折れるレベルだ。」

 

もし由比ヶ浜だったら、”そんなになんだ!?”と驚愕するところだろうが、

一色は場慣れしているからだろうか、冷静に返してきた。

 

「むぅ・・・そこは”全然待ってねぇよ”じゃないですかぁー。」

 

拗ねた様に、可愛らしく頬を膨らませてアピールしているが、

まだまだ甘いな一色。俺にその程度のあざとさなど、通用せんわ。

 

修行を極めた高僧の様に、微動だにしない俺を

面白くない・・・といった表情で眺めていた一色は、

 

「むぅぅーっ、こうなったら奥の手ですっ♪」

 

”えいっ”と声をあげると、俺の右腕に自分の両腕を絡めてきた。

そして、俺の耳元に自分の口元をぐっと近づけると、

 

「今日の私・・・どうですか?センパイの為に、ちょっと頑張ったんですよ?」

 

と、吐息交じりに囁いてきた。だから耳は止めてっ!そこは弱いの!

 

舌と唾液が絡み合い、”にちゃっ・・・”という微かな音が

昨日の光景を思い起こさせ、俺の心臓を再び大きく高鳴らせた。

 

「なっ・・・!」

 

多分その時の俺は、相当あたふたしていたんだろうな。

その様子を見た一色は、満足そうな弾んだ声で

 

「あれぇ?センパイ♪お顔が真っ赤ですよ?」

 

と言いながら、人差し指で俺の頬を突っついてきた。

あぁもうっ、あざとカワイイなこんちくしょう!

 

俺は、色々と複雑な心境を悟られたくなくて、一色の視線から顔を背けると

”ほら、そろそろ行くぞ。”と告げて、さっさと道を歩き出した。

 

「あーんもぅ、待ってくださいよぉー♪」

 

一瞬、鳩が豆鉄砲を喰らった様に、動きを止めた一色だったが、

すぐに追随してきて、再び俺の腕に自分の両腕を絡めた。

 

こいつは・・・また無造作に引っ付きやがって。

 

もはや俺は、諦めにも似た境地でされるがままになっていた。

 

 

 

 

 

「で、センパイ♪何食べます?」

 

一色は”どこに連れてってくれるのか、とっても楽しみです♪”という

声が聞こえてくる程の、期待に満ちた眼差しを向けて俺に問うた。

 

うわぁ、全然期待に応えられる自信が無ぇ。

・・・やっぱパスタとかが無難なのかね、朝だけど。

 

「うーん、まだ府内のサ〇ゼやジョ〇パは網羅してないんだよなぁ・・・。」

 

それを耳にした一色は、”心外です”といった様子で

”前にも言いましたけど、なんでパスタばっかりなんですか!?”と言った。

 

えっ、だってパスタとか好きそうじゃん?

それでもパスタなら・・・パスタなら何とかしてくれる!・・・んじゃねえの?

 

「今度こそ、”私が何を食べたいか当ててください♪”だと思ったんだけどな。」

 

前回のデートでは、俺の行きつけである”な〇たけ”へ行ったので、

てっきり”今回は空気読めや、ふぇち幡・・・。”って感じなのかと。

 

ところが、どうやらそうではないらしい。

一色は首を横に振ると、俺の目をジッと見ながら言った。

 

「もはやセンパイを試すまでも無いので、いつも行く所へ連れて行ってください。」

 

えっ・・・ホントに良いの?

 

「いいんですっ!」

川平〇英を彷彿とさせる、力強い返事だった。

よろしい・・・お前の覚悟はよく分かった。それなら選択肢は3つだ。

 

「じゃあ、吉〇家か、すき〇・・・あるいは、なか〇だな。」

 

俺は自信をもって提案した。何故なら、彼らもまた特別な存在だからです。

けれど、一色は即座に突っ込みを入れてきた。

 

「ちょっと、牛丼ばっかじゃないですか!?」

 

えーっ、あんなに力強く”いいんですっ!”って言ったじゃん・・・。

裏切りだ・・・。平塚先生!僕は一色さんから、手酷い裏切りを受けました!

 

「そうじゃなくて、毎朝牛丼だけだと、全然野菜が取れてないじゃないですか!」

 

あぁ、牛丼云々じゃなくて、俺の体を心配しているのか。

なんか前よりも、扱いが幾分マシになってるんだよな。

戸部以上葉山未満・・・みたいな。

 

まぁ、ここは素直に忠告を聞き入れる事にしようかね。

一応、サラダも毎朝食べてるのだが、ここは言わぬが花だな。

 

ところが一色は、俺が”一色ありが・・・”と言い終わらないうちに、

 

「・・・って、このお店素敵ですね!ここに入りましょう!」

 

5mくらい先にある小さなカフェを見つけると、

返事を待たずして、俺の手をぐいぐいと引っ張りだした。

 

ちょっ、おまっ!人が折角、感謝の意を表そうとしたのに!

たまには俺にも発言権をくれっ!

 

 

 

 

 

 

 

”カランコロン”

 

入り口の戸を開けると同時に、今時懐かしい音色のドアチャイムと、

こぽこぽ・・・という音、そして珈琲の良い香りが俺達を出迎えた。

 

ワンテンポ遅れて、マスターの”いらっしゃい”という渋い声が発せられ、

それから更に遅れて、俺達と同世代の女性が”パタパタ”と駆けて来たかと思うと、

 

「いらっしゃ・・・って八ちゃん、今日はえらく早いなー!」

 

”ホンマにびっくりぽんやぁ”と、感嘆の声をあげた。

・・・びっくりぽんっていう人、朝ドラ以外で初めて見かけたわ。

 

「まぁ、色々あってな。朝飯をここで食べることになった。」

 

ホント、ここまで色々あったんだよ。

まぁ・・・聞いてくれるな。武士の情けだ。

 

「そっかー・・・ってあれ?今日はぼっちや無いんやね。」

 

いつもとは違い、今日は一色を連れているのだ。

”あれ・・・友達いたんだ?”みたいな表情は止めてね、地味に傷つくから。

 

「ぼっちじゃない。ただ皆が俺を畏怖・・・」

 

「はいはい、ちょっと黙っとき。あっ、初めまして!うち、円(まどか)いいます」

 

円は、一色の方へ顔を向けて自己紹介をすると、軽く会釈した。

一方、一色の方も”にこっ”と笑顔を浮かべると

 

「比企谷いろはです、兄がお世話になっています。」

 

と、大してあざとくもない無難な挨拶を返した。

って、ここでも妹設定なんだな。

 

円は、俺と一色の顔を交互に見比べ

”なんや、あんまり似てへんなぁ・・・特に目とか”と呟いた。

 

そりゃそうだろうな。なんてったって、兄妹じゃないんだからな。

って、判断基準が目の腐り様かよ!もっと他にも色々あるだろうが!

 

更に円は、何やら色々と思案する様な素振りを見せていたが、

やがて”納得した”という顔になり、

 

「一瞬、彼女か思ったけど・・・考えたら八ちゃん、ぼっちやもんな」

 

と、失礼極まりない一言を告げた後、ひとしきり”けたけた”と大笑いし

 

「んじゃ、ごゆっくりぃ~」

 

という一言を残して、カウンターの奥へと引っ込んで行った。

やれやれ・・・台風みたいなやつだ。

 

 

さぁ俺達も席に着こうぜ、と一色の方へ振り向くと・・・・

 

「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーっ」

 

一色は両頬を大きく膨らませて、思いっきりむくれていた。

えっ・・・台風一過かと思ったら、今度は一色が爆弾低気圧に!?

 

そんな様子におろおろしていると、一色の右手が”にゅっ”と伸びてきて

俺の左頬を摘んだかと思うと、”ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ”っと思いっきり引っ張り始めた。

 

「いふぁい、いふぁいれふ」

 

顔が伸びるって!そして痛いってば!

 

 

だが、そんな言葉など気にかけない・・・といった冷たい笑顔を浮かべた一色は、

自分の顔を俺の顔にぐっと近づけると、底冷えするほどの寒い声で言った。

 

 

 

 

 

「センパイ・・・随分と仲が お よ ろ し い ん で す ね ? 」

 

 

 

 

 

10月もまだ半ばだというのに、俺には早くも初霜が降りてきていた。

 

 

 

つづく

 

 

 

【おまけ】

静「スミマセーン、ハイボールおかわりくださーい。」

 

店主「スミマセンお客さん、そろそろ看板なんですよ。」

 

静「ん?産婆さん?妊婦どころか、まだ独身だっちゅーのっ。」

 

店主「産婆さんじゃなくて、看板ですってば。ささっ、水でも飲みましょう」

 

静「うぷっ…気持ち悪い…」

 

店主「ちょ、お客さん?!待ったっ!」

 

静「う、うまれる・・・(以下、自主規制)」

 

店主「ぎゃぁぁぁぁ・・・」

 

 

 

 




最後までお付き合い頂きまして
ありがとうございました。

皆様、初詣には行かれましたか?
私は近所の氏神様にお参りして来ました。

願い事も沢山して参りました。
少額すぎるのに、厚かましいとは思ったのですが。

さてそれでは、また次回もお付き合い頂ければ、
嬉しく思います。

今年一年も、どうぞご贔屓に。




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