吸血鬼始祖は真祖と踊る   作:後日

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第二話

 

 

「……えっ」

 

 アカツキは信じられないとばかりに目を見開く。

 

 あまりの不可解な現象に頭の思考回路が止まったようで、身動きすら取れぬほど身体が硬直してしまった。

 

「アカツキ様」

 

 シャルティアは形のよい柳眉を悲しげに寄せて、切なそうにアカツキの名前を呼ぶ。

 その声が硬直した身体に徐々に染み渡っていき、シャルティアの頬から流れ落ちる涙の雫を見て、ようやく頭が再起動をしていく。

 アカツキは目の前で涙を流すシャルティアの姿に戸惑いを隠せずにいる中で、混乱する頭を無理やりに働かせる。

 シャルティアはプログラムによって構成されたNPCである。

 そこに意思はなく、ある一定のルーチンワークを繰り返すだけのAIで動くただのマネキン人形である。

 それなのにどうして、悲しげに顔を曇らせて涙を流しているのだろうか。

 これではまるで本当に生きているようではないか。

 

「……どうしてそのようなことをおっしゃるのですか、アカツキ様」

 

 宝石を思わせる綺麗な紅い瞳からボロボロと涙を流すシャルティアの儚げな姿は、アカツキに何故か罪悪感にも似た気持ちを抱かせた。

 

 別にこれといってアカツキがシャルティアに対して何か悪いことをした訳ではないはずなのだが、こんなにも可憐で美しい少女が泣いているという状況は、勝手に自分が悪者だと思わせてくる。

 突然の異常な事態に思考が上手く纏まらないアカツキだが、とりあえずはシャルティアを泣き止ませようと優しく語り掛ける。

 

「落ち着け、シャルティア。俺はどこにも行かないし、これからもここにいるから安心しろ」

 

 アカツキは出来るだけ穏やか口調でシャルティアを宥める。

 

「本当でございますか、アカツキ様」

 

 豊満な胸元に両手を寄せて、心配げにこちらを見上げてくるシャルティアにアカツキは盛大な衝撃を受けた。

 ぷるんと揺れた胸にではない。

 今、シャルティアと確かに会話をしたという事実にだ。

 シャルティアは先ほど述べたようにただの生命なきプログラムである。

 それなのに何故こうも人間らしい自然な反応を返してくるのだろうか。

 アカツキは驚きに目を丸くしながらもシャルティアの瞳から溢れる涙を外套の袖で優しく拭う。

 

「あぁ、もちろんだシャルティア。お前を置いて俺はどこにもいかない」

 

 だからだろうか。

 あまりの不可思議な事態に頭の処理が追い付かずに、意図して言ったわけではない言葉が口からつい出てしまった。

 本当ならナザリック全てを差すために“お前たち”と言おうとしたにも関わらず、シャルティア個人を差すような言い方になってしまった。

 未だに混乱する頭ではその間違いに自分から気づくことが出来ない。

 

 シャルティアがアカツキの「お前を置いてどこにもいかない」というあからさまな言葉に、真っ白な肌を一瞬で赤らめて「ふわぁ!」と、驚きの声を上げて華奢な身体を震わした。

 しかし、そのおかげでシャルティアの瞳から涙は止まった。

 その事にアカツキはほっと胸を撫で下ろした後に、改めてシャルティアに向き直った。

 じっとアカツキに見つめられたシャルティアは恥ずかしげに視線を反らした。

 そのあまりにも人間らしい自然な仕草や反応に、アカツキはこれはゲームではないのかと疑問を抱き始める。

 

 ユグドラシルでは表情の変化はプログラムを組めば出来ないことではないが、涙も含めて会話に合わせて自然に顔の造形を変えるのは、圧倒的に自由度の高いユグドラシルの高度な技術やシステムを持ってしても不可能だ。

 それと先ほどからシャルティアの身体より立ち上る香水の良い香りが、アカツキの混乱する頭に拍子を掛けていた。

 

(顔の表情の変化といい、自然な仕草や反応といい、どれもデータ容量的にありえない。それにこの香りは何だ)

 

 人間の五感のひとつである嗅覚、それに加えて触覚はゲームの世界では完全に消去されている。

 しかしながら、触覚はともかく嗅覚は完璧に再現がされている。

 

(……何なんだこれは。それにサービス終了の時間はとっくに過ぎたのに、強制排出がない)

 

 サーバーダウンが延期になったのならGMが何かしらの発表をしているかもしれない。

 アカツキはすがるような気持ちでコンソールを開こうとして――手が止まる。

 普段なら即座に立ち上がるコンソールが全く開かないのだ。

 

(どうしてだ!)

 

 アカツキはコンソール以外にもチャット機能やGMコールなどといった様々なシステムを使おうとしたが、結果は先ほどと同じで失敗に終わった。

 

(おかしい。新しく追加パッチを当てたのか、それとも新種のアップデートの途中なのか……全然分からないな)

 

「アカツキ様」

 

 アカツキがあれこれと頭を悩ませているところへ、シャルティアの心配するような声が響いた。

 

「どうかされましたか? 何かお困りなことでもあるのでしょうか?」

 

 上目遣いで気遣うように視線を向けてくるシャルティアの姿を見て、アカツキの脳裏にある妙案が浮かび上がった。

 それは確認であった。

 ここがゲームの世界なのか、あるいはもっと別の何かなのか。

 それを確かめる手っ取り早く確実な方法を思い付いたのだ。

 しかし、それを言ってしまってもいいのだろうか。

 アカツキの頭の中でそれに対する様々な意見が飛び交うが、今は緊急事態なのだから仕方ないと頭を振るう。

 アカツキは意を決してシャルティアに向けて口を開いた。

 

「シャルティア……む…、胸を触ってもいいか?」

 

 空気が凍ったようだ。

 シャルティアが表情を固まらせて呆然とアカツキを見つめてくる。

 アカツキは自身のセクハラ紛いの下衆な言動に吐き気を覚えて激しい嫌悪感に陥る。

 自分は一体何を言っているのか。

 ユグドラシルの禁則事項に触れる事柄を咄嗟に考え付いた案とはいえ、あまり深く考えようとはせずにそのまま口にしてしまった。

 いくら確認のためとはいえ、もう少し違うやり方があったはずである。

 そう……例えば、手の脈を見てみるとか……。

 

(あっ、それを言えばよかったんだ。何してんだ俺は……)

 

 改めて考えてみたら、最もまともでいい案が浮かび上がってきたことに、アカツキは唖然とする。

 

(……まあ、冷静に考えればそうだよな。むしろ、その答えにたどり着いて当然か。何だ、やればできるもんじゃないか)

 

 流石は俺だと、自画自賛にも等しい気持ちを抱いて何度も満足げに頷く。

 しかしそれにしても、いくら手っ取り早く確実な確認とはいえ、友人と二人で手塩に掛けて作り出した実の娘とも言えるシャルティアに向かって、己は何ていう発言をしてしまったのだろうか。

 アカツキは先ほどの発言を思い出して激しい後悔に襲われた。

 良い案も出たところなので今のはなかったことにしようと、アカツキが口を開こうとした矢先に、シャルティアの嬉しそうな声が遮った。

 

「はい! 喜んで!」

 

 えっと、驚くアカツキの眼前に豊満な双丘が突き出された。

 アカツキは知らぬ内に息を呑んだ。

 シャルティアを見れば喜色満面の笑みでさあどうぞと言わんばかりに豊かな胸を何度も差し出してくる。

 アカツキは怖じけついたように後ずさる。

 先ほどの発言を撤回しようにも、目の前に現れた豊かな胸を目にしたら、何故だか知らないが舌がもつれて上手く喋ることができない。

 自分はこれに触るのか。

 服の下から押し上げるようにして自己主張する豊満な双丘を前にしてアカツキは思った。

 シャルティアの顔をチラリと伺えば、頬を紅く染めながら潤んだ瞳でこちらを上目遣いで見つめていた。

 そこにいるのは可憐な少女ではなく、妖艶な雰囲気を醸し出す女のそれである。

 恥ずかしげに、されど期待した瞳でこちらを見上げてくるシャルティアに、アカツキはゴクリと喉を鳴らした。

 自分で言った手前、いまさらもう後には引けない。

 アカツキは一瞬だけ躊躇う素振りを見せた後に、漆黒の籠手を外しておそるおそるといった様子でシャルティアの豊満な胸に手を伸ばす。

 

「ふわぁ」

 

 アカツキはこれで確信した。

 柔らかい!……ではなく、ここは間違いなくゲームの世界ではないと。

 ユグドラシルではこのように十八禁に触れる行為は御法度である。

 このルールを破れば運営側から厳しい処置を施されて、公式ホームページに名前が載せられた後にアカウントを抹消される。

 しかし、いくら時間が経っても、そのような気配が全くしない。

 これはつまり、ここがゲームの世界ではないということの何よりの証明だ。

 先ほどから右手より伝わる何とも柔らかく、そして大きいマシュマロのような感触がその現実をありありと物語っていた。

 

(……って、揉み過ぎだろ俺)

 

 アカツキは素早く手を引っ込める。

 その途中で心底残念そうな声を漏らしたシャルティアの姿をなるべく見ないようにして、アカツキは素直に頭を下げて「すまない」と謝罪した。

 

 アカツキにとってシャルティアは娘みたいな存在である。

 それをアカツキの身勝手な行動で汚してしまった。

 

……すみませんペロロンチーノさん。そして、ありがとうございますペロロンチーノさん。

 

 心の中で友人に謝罪をしているアカツキの耳にシャルティアの熱が籠った声が届いた。

 

「ここで私は初めてを迎えるのですね」

 

……えっ、初めてって何? ナニのこと?

 

「服はどういたしましょうか? やはり脱いだ方がよろしいでしょうか? 別に私はそのままでも……むしろアカツキさまに無理やり脱がされる方が興奮するというか。……いやでもアカツキ様が見ている前で自分で脱ぐのも捨てがたいような……きゃ!」

 

 可愛らしい悲鳴を上げて真っ赤に染まった頬に両手を当ててモジモジと身をくねらせるシャルティアに、アカツキは自身の顔が紅潮するのを感じた。

 アカツキはどこにでもいるような平凡で冴えたい普通のサラリーマンである。

 とある中小企業で家畜のごとくこき使われているアカツキは、過酷な労働に身を粉にして毎日汗水流して働き続けている。

 休みを取ることさえ一苦労する厳しい激務に明け暮れるアカツキに、女性との関わりは滅多になく当然ながら免疫も付いていない。

 今まで女性と付き合ったことすら一度もなかったアカツキがまだ子供とはいえ、まさに絶世と呼ぶに相応しい美貌を誇るシャルティアの可愛らしい仕草にどぎまぎするのは仕方のないことであった。

 恥ずかしげにモジモジとするシャルティアが「今こそが正念場ね」と、徐々に淫靡な雰囲気を纏い始めたことに頭のどこかで警鐘が鳴り響いたのを感じた。

 このままシャルティアを放っておいたら間違いなくとんでもないことに発展してしまいそうだ。

 男としてそれはむしろドンと来いと言いたくなるような状況だが、相手が相手である。

 逆に背徳感やら罪悪感の方が遥かに大きい。

 アカツキは混乱と困惑で今にも頭がパンクしそうだった。

 しかし、突然冷水を浴びたかのように急に頭が冴えてくるのを感じた。

 先ほど動揺していたのが嘘のよに、感情が抑圧されるように平坦なものになった。

 その急激な感情の変化に戸惑いながらも、目の前で淫靡な雰囲気を放ち出すシャルティアに声を掛ける。

 

「待て、シャルティア。今はそれよりも優先するべきことがある」

 

 アカツキの雰囲気が変わったことを感じ取ったのか、シャルティアは弾かれたように姿勢を正すと真剣な表情を作り出す。

 自身の感情が落ち着いたものになったことで、冷静に思考を巡らせるようになったアカツキは果たすべき優先事項に意識を向ける。

 

「シャルティア、何か身体に変化はないか? どんな些細なことでもいい。以前と比べてどこか違和感を感じないか?」

「……いえ、特にはありんせん」

 

 自分の身体を見回したシャルティアは特に何もないと首を横に振るう。

 アカツキは籠手を腕にはめ直した後に顎に手を当てると考え込むような仕草をする。

 今のところはまだ分からないが、別にシャルティアだけが変わってしまったという訳ではないのだろう。

 それに今気づいたことだが、自身の五感が以前にも増して鋭くなったことを含めれば自分にだって当てはめることができる。

 シャルティア以外の人物に会えば、もっと色んなことが見えてくるかもしれない。

 そういえばモモンガはどうしているのだろうか。

 やはり自分と同じような状況に陥っているのだろうか。

 それとも既にログアウトをしていて、このナザリックにはもういないのだろうか。

 

 アカツキが思考に耽っていると、シャルティアが突然顔を伏せて何やら呟いた。

 アカツキはシャルティアの奇抜な行動に怪訝そうに眉を寄せる。

 

「どうした、シャルティア?」

「はい、アカツキ様。アルベドから連絡がありんした。一時間後に六階層のアンフィテアトルムに来るようにと」

 

 第六階層は広大な面積をジャングルなどで覆われた光景が広がっている、シャルティアと同じくアウラとマーレという二人の階層守護者が守っている領域だ。

 

(……シャルティア以外にも意思を持つNPCがいる。これは急いで見に行った方がいいか)

 

「なら俺は先に行かせてもらおう。それとシャルティア、お前に渡すものがある」

 

 アカツキがアイテムボックスから取り出したのはひとつの指輪だった。

 ギルドサインが入ったそれはギルドメンバーなら誰もが持つリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンである。

 ナザリックの中を移動するならこの指輪を使った方がいいだろうと思って、アカツキはそれを取り出したのだが……。

 

「…! …い…いけません! アカツキ様! それは間違っています!」

 

 シャルティアに渡そうとして、ひどく慌てた様子でそれを拒否してきた。

 

「間違い?」

 

 普段の奇妙な言葉遣いが吹き飛ぶほどに驚愕したシャルティアが慌てたように声を荒らげる。

 

「それは至高の御方しか持つことが許されない、ナザリックの至宝です!」

「いやでも、どうせ移動するなら、こっちの方が手っ取り早いだろ?」

「しっ、しかし! 私ごとき僕風情が至高の御方だけに許される持ち物を所持するなど!」

「落ち着けシャルティア」

 

 何でそんなに驚くのか、アカツキは内心で首を傾げるが、あわてふためくシャルティアを宥めて指輪を渡そうと試みる。

 

「シャルティア、今ナザリックは未曾有の危機に晒されている……かもしれない」

「……はい」

「ならば直ぐにでも動かなければならない状況下で、移動に手間取るようなら手遅れになってしまう可能性だってある……はずだ」

「…そうかもしれませんが……」

「ならこれを使え。これは命令だ」

 

 シャルティアの白魚のような細い手を取って、指輪を無理やり握らせる。

 そこまでくればシャルティアも抵抗らしい抵抗を見せずに戸惑うような表情で、しかしどこか嬉しそうな様子で指輪を壊れ物でも扱うように受け取った。

 アカツキはそれに満足げに頷くと、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使って第六階層へと移動する。

 

 そして、視界に飛び込んできたのは暴れ狂う炎の巨人と、色とりどりの数多の魔法群が飛び交う光景であった。

 

「……へ?」

 

 思わず間の抜けた声を上げる。

 どうしてなのかは分からないが、視界一杯に広がるのは激しい攻防の嵐が繰り広げられている激闘の光景であった。

 身を焦がすようなとてつもない熱量を持った熱風が真紅の外套をパタパタとはためかせる。

 轟々と燃え上がる猛火で身体を構成した巨人がこちらに向かってやってくる。

 

「うっひゃあ!」

 

 我に返ったアカツキは慌てて炎の巨人とは逆の方向へと全力疾走する。

 何故だか分からないが遥か背後の上空から雨あられと降り注ぐ無数の魔法群の中をがむしゃらに掻い潜りながら、アカツキは分け目も降らず一心不乱に足を動かす。

 

「なんじゃこりゃ! ランボーか! 痛っ! どこの戦場だ! いたっ! スネェーク! 痛っ! いや待てよ……あの巨人は見たことがある。確か“根源の火精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)”だよな?」

 

 首だけを後ろに向けて背後を伺うアカツキは人の形を取る灼熱の巨人を観察する。

 スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの複雑に絡み合った蛇の口にくわえられた宝石のひとつに、最上位の精霊を呼び出す能力がある。

 もしかしたらその能力によって召喚されたモンスターなのではないだろうか。

 アカツキは無数の魔法群の嵐の中で時おり被弾しながら、あっちへこちっへと逃げ回って思考を巡らす。

 

 やがて、炎の巨人が空中に溶けるようにして消えていくのと同時に、空から降り注ぐ数多の魔法群の豪雨も自然と止んでいく。

 アカツキがほっと胸を撫で下ろそうとした矢先。

 軌道を逸れた魔法群の塊がアカツキ目掛けて飛来してきた。

 

「……えっ?」

 

 目を見開いて足を止めてしまったアカツキは直撃こそしなかったものの、すぐ手前で落ちた魔法の余波によって簡単に吹き飛ばされてしまった。

 

「……ぎゃふん!」

 

 土煙を巻き上げながら、顔面で大地を削るようにして急停止したアカツキは、砂利で擦った顔を痛そうに押さえる。

 

「……死ぬかと思った」

 

 アカツキは立ち上がって、口に入った砂利を吐き出しながら、土埃が付着して汚れた外套を手で払い落とす。

 そして背後を振り返れば、そこには二人の幼い子供が目をこぼれ落ちんばかりに見開いてこちらを凝視していた。

 

「アカツキ様!」

「アカツキ様!」

 

 見事にハモった子供は二人ともが薄黒い肌の色をした十歳くらいの幼子であった。

 上下共にピッチリとした皮鎧を纏い、その上から胸の部分にギルドサインが入った白地のベストを羽織っている。長ズボンもベストにあわせた白地で、首には黄金色のドングリの形をしたネックレス。腰、右肩に鞭を束ね、背中には異様な装飾の巨大な弓を背負っていた。

 

 アウラ・ベラ・フィオーラ。

 

 幻獣や魔獣などを使役するビーストテイマー兼レンジャーの第六階層守護者の一人である。

 

 そして、もう一人の方はねじくれた黒い木の杖を持つアウラの双子の“妹”であるマーレ・ベロ・フィオーレだ。

 アウラと同様の白色の服装ではあるが、マーレの場合は長ズボンの代わりにやや短めのスカートを身に付けている。さらにその上から藍色の銅鎧を着込み、短めのマントを羽織って、首には銀色のドングリのネックレスを掛けている。

 マーレもアウラと同じこの第六階層の階層守護者の一人である。

 

 アウラとマーレはダークエルフというエルフの近親種で、絹糸のような黄金の髪の間からは長く尖った耳が伸びている。

 

「どうしてアカツキ様がここに!」

「はわわわわ!!」

 

 グリーンとブルーの左右違った色の瞳をアカツキに向けながら、アウラとマーレは驚きに身を固くしている。

 アカツキはそんな二人の姿に苦笑いを浮かべる。

 アウラとマーレはペロロンチーノの姉であるぶくぶく茶釜が作り上げたNPCである。

 天真爛漫で元気溌剌なアウラと、その逆でいつも何かに怯えるようにビクビクとしている臆病なマーレ。

 性格が真逆な双子の“姉妹”は、実を言うと元々は姉と弟という関係の設定であった。

 何故、姉弟から姉妹へと設定を変更したのかというと、それはペロロンチーノの時と同様にアカツキのある発言が原因であった。

 

『姉妹丼っていいよね』

 

 その言葉がぶくぶく茶釜の何かに触れたのか、この発言を切っ掛けにマーレは男から女へと性別を変更して、二人ははれて姉妹へとなったのだ。

 

 アカツキは未だに驚きを隠せない二人に歩み寄ろうと足を踏み出した。

 その時に聞き慣れた声がアカツキの元まで響いた。

「アカツキさん!!!」

 

 アウラとマーレの後方から驚いたように声を張り上げる人物に、アカツキははっと顔を上げる。

 視線を向けたそこには骸骨の外見をした最愛の親友にして、アインズウールゴウンのまとめ役であるモモンガの姿があった。

 

 

 




諸事情により更新と感想が遅れました。
申し訳ありません。
次回はアカツキの戦闘描写が入る予定です。

ちなみにモモンガさんもアルベドの胸を堪能してます。

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