やはり俺の弟と妹は可愛すぎる。   作:りょうさん

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やはり俺の祝いの席は間違っている。

 十二月も半ば、もうすぐ年も明けるというこの時期、俺氏大学に合格いたしました。

 え?試験はいつ受けたのかって?ちょっと前ですよ、ちょっと前。

 指定校推薦とはいえ、合格したことで肩の荷がおりた気分だ。安心できているように思えても、内心では不安な気持ちもあったのだろう。

 とまあ、合格したからと言って生活サイクルが変わるわけではない。大学に行っても置いていかれないように勉強は少しでもやるし、遊ぶ時は遊ぶ。勿論、適度な運動も欠かさない。油断するとすぐに太っちゃうからね。

 「ねえ颯君!似合う?似合うかな!」

 「おう、めっちゃ似合ってるから落ち着きなさい」

 そんなことを考えていると、俺の横に立つめぐりが興奮気味に自分の服を見せてくる。

 今日のめぐりは少々おしゃれをしていて、白いドレスを身に纏い、頭には小さな花の髪飾りを付けている。ハッキリ言って超可愛い。

 かくいう俺もいつもの服装とは大きく異なり、以前陽乃さんに連れられバーに行った時と同じ格好をしている。

 なぜ、俺達がこんな格好をしているのかと聞かれれば、今から行く場所がとんでもなく高級なレストランだからだと答えるしかない。

 「それにしても、はるさんも太っ腹だよねー。私達をあんな高級レストランに誘ってくれるなんて」

 「陽乃さんからすれば大したことじゃないんだろうよ。まあ、お祝いだっていうんだから遠慮なく食わせてもらうけどね」

 「もー、颯君ったら」

 俺の遠慮を一切感じさせない言葉にめぐりは頬を膨らませる。

 そう、俺達を高級レストランに誘ったのは陽乃さんであり、陽乃さん曰く、俺とめぐりの合格祝いなのだという。

 「お、着いたぜ」

 「……ねえ颯君」

 めぐりは目の前にそびえ立つ高いビルを前にして、不安そうに俺の名前を呼ぶ。

 「なんだい、めぐりさんや」

 「私達、今からここに入るんだよね?」

 「そうだね」

 「ものすっごく場違いな気がするんだけど」

 「まあ、それは俺も思う」

 いやまあ、高級ホテル内にある高級レストランなんて、俺達みたいな一般高校生が入るような場所じゃないからな。場違い感を感じてもなんら不思議じゃない。

 「なんか、颯君は落ち着いてるね」

 「んー、いやぁ……。なんというか、慣れた」

 「慣れた!?」

 俺の言葉に嘘はない。

 確かにめぐりもこのような場所に呼び出されることは何度かあった、それ故、今めぐりが身に纏っているドレスを贈られたこともまた事実である。

 しかし、俺とめぐり、どちらが多く呼び出されたかと言われると、圧倒的な差で俺なのだ。今年に入っても呼び出されたし、奉仕部でも場違い感のあるバーに行った。こうも、頻繁に来ていると幾ら慣れないと言っても、最小限の免疫はついてしまうのだ。

 「めぐりもそのうち慣れるよ」

 「なんだろう、颯君の表情を見てると慣れたいという気持ちが一向に湧いてこないよ」

 おっと、無意識に遠い目をしていたらしい。いけない、いけない。

 「まあ、ここでだらだらしてても仕方ないし、行くぞ」

 「う、うん」

 めぐりは決心したように俺の左肘を掴み、俺と共に一歩を踏み出した。

 

 

 「二人ともー!こっちこっちー!」

 俺と緊張顔のめぐりを迎えてくれたのは、お洒落な場の雰囲気に似合わない明るく元気な声だった。

 「恥ずかしいので声抑えてください……」

 「えー?颯太ってばそういうの気にしないでしょ?」

 この人は俺をなんだと思ってんだ。最低限場の空気には合わせるぞ。あれー?なんでめぐりんってば頷いちゃってるの?不思議だなー。

 「平塚先生も止めてくださいよ」

 「私が止めてどうにかなるならとっくにしている」

 「ですよねぇ……」

 陽乃さんの隣に座っていた平塚先生の言葉に納得してしまう。

 「もー!そういうのはいいから、早く座りなよ!」

 「了解っす」

 「はーい」

 陽乃さんに促され、俺達は陽乃さん達の対面に座る。

 「ひとまず、二人とも合格おめでとー」

 「うむ、指定校推薦だったとはいえ、ようやく安心できたな。おめでとう」

 席に座ると同時に陽乃さんと平塚先生から祝福の言葉を掛けられる。

 「ありがとうございます、はるさん、平塚先生」

 「どうもっす。こちらからも、いろいろと世話になりました。ありがとうございました」

 受験に際し二人には世話になった。

 平塚先生には小論文の過去問を用意してもらったり、添削などをしてもらっていたし、陽乃さんに関しては、この人と話す事自体が面接練習だったからな。二人の力は非常に大きいと言える。

 「でもさー、なんで二人ともわたしと一緒の大学に来なかったのー?」

 そのことがよっぽど不満だったのだろう、そう切り出した陽乃さんの頬はこれでもかという位膨らんでいた。

 「いや、陽乃さんの大学って理系じゃないですか。俺達文系ですし」

 「なんで文系選んだのー!」

 あー、こりゃ面倒くさい奴だ。こうなると長いからなー……。

 「だって、一番家から近い学校が文系だったし……」

 「そんな理由でわたしとのキャンパスライフを棒に振ったっていうの!?わたしと家からの距離、どっちが大事なの!」

 「そんなの、八幡と小町に決まってるじゃないですか」

 「それは選択肢になかったでしょー!」

 選択肢になくても間接的には関係あるのですよ。八幡と小町に勝るものなし。

 「まあ落ち着け、陽乃。今日は祝いの席だろう。その追及はまた今度にしろ」

 追及されることには変わりないんですね。ええ、わかってましたよ。

 「ま、そうだねー。今度ゆっくりと聞かせてもらうよ」

 「うむ。それでは食べるとしよう」

 陽乃さんの怪しい言葉で追及が終わると、タイミングよく料理が運ばれてきた為、しっかり手を合わせゆっくりと食べ始めた。

 あ、これうめえ。

 

 

 「あ、そうだ。二人はクリスマスどうするの?」

 「あー……。そういえばもうすぐでしたね」

 もう二週間もすればクリスマスだ。街は徐々にクリスマスに向けて準備を始めている。クリスマスケーキの予約なども始まっているし、本格的にクリスマスモードだ。

 「特に予定はないですかねー。あ、そういえばかおりが総武高と合同で、地域の園児やお年寄り向けにクリスマス会開くって言ってたな。時間があれば来てとも言ってたし、もしかしたら行くかもしれないっす」

 「ふーん。かおりちゃんねー」

 あ、やべえ。なんで俺、自分から地雷踏み抜いちゃってんの?マジあり得ないんですけど。

 「かおりちゃん?ねえ颯君、その子誰?」

 おう、本当に純粋に疑問で問いかけてくるめぐりの目が痛い。セリフだけ聞けば若干ヤンデレっぽいセリフだけど、そんなの一切感じられない純粋な顔が胸に来る!

 「あー、えっと、元カノ」

 「……あの、颯君が自己犠牲で助けた元カノさん?」

 おぉう、そしてこの若干寂しそうな顔だ。俺っちどうしようもないっす。

 「まあその、最近偶然再会してな。ちょくちょくメールやら電話が来る」

 「あの子はまだ別れたつもりないんだってー」

 「え?」

 おぉい!陽乃さんの言葉でめぐりの顔に寂しさが増したぞ!どうするつもりだよ!

 「いや、あのな?それはあいつが勝手に言ってるだけだから!俺はちゃんと別れたつもりだし、あいつのことはどうも思ってない!」

 「そ、そっか!そうだよね!颯君がそんな中途半端なことするわけないもんね!」

 「当たり前だろ!」

 なんとか信じてくれたようだが、めぐりの挙動が明らかにおかしい。めぐり、ナイフとフォークが反対だ。

 「まったく。そんなことで騒ぐんじゃない。まったく……」

 ……えっと。

 「静ちゃん。手、震えてるよ?」

 「そんなことはない!」

 そんな微妙な空気の中、俺とめぐりの合格祝いの会は続いていった。

 

 

 あれから数時間後。ベッドの上にて。

 「あ、颯太先輩?用はないけど電話かけてみたー。そういえば今日さー、ひき……」

 「かおりのばかー!嫌いだー!」

 「うぇ?……あたしは好きだし!まじウケる!」

 うけねぇよ!マジでかおりのばかぁぁぁ!

 「逆切れとかまじウケる!」

 「うけねぇよぉぉぉぉ!」

 「颯お兄ちゃんうるさい!」

 「はぃぃ!」

 「ウケるー!」

 もう、いやっ!




どうもりょうさんでございます!更新遅れてすみません!
さて、最近暑いですね。梅雨も明けて、更に暑さが増した感じがします。そんな中、僕はお外で仕事です。皆さまも倒れないように水分補給はしっかりしてくださいね!室内でも要注意ですよ!


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