第四次聖杯戦争にセイバーが召喚されました。   作:主(ぬし)

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次は2039年かな……


第三話(2031年)

 

 

 

 空間が(・・・)はち切れようとしていた(・・・・・・・・・・)

 

 

 

「私の宝具について、どんな予想をした?英雄王ギルガメッシュ」

 

 セイバーの声音は、星の玉座から語りかけるような神々しい威厳に満ち溢れていた。その問いかけに、彼女と相対するギルガメッシュは応えない。

 

「まさか、“円卓の騎士たち全員を召喚する”───たったそれだけ(・・・・・・・)などと軽んじてくれていたのではあるまいな?」

 

 やはりギルガメッシュは応えなかった。より正しく言えば、応えられる余裕がなかった。悲鳴じみた叫びが漏れ出ないよう、顎に全精力を注がなければならなかったからだ。

 

「おのれ……!」

 

 固く閉じた上下の歯の間から唸るような苦しげな声が漏れる。キツく皺の寄った眉間を幾筋もの汗が伝い落ち、高い鼻梁の先からポタポタと地面に落ちていく。まるで恐怖を必死に抑えつける子どものような、一見すると情けないその姿。しかし、これはギルガメッシュが現時点で実行できる精一杯の虚勢であり、彼の強大なプライドが為せる唯一無二の奇跡であった。彼は、少しでも気を抜けばたちどころに自らの喉からこの言葉が迸ることがわかっていた───「デタラメだ(・・・・・)」と。

 

 事情を知らぬ者たちは、ギルガメッシュの不自然な反応を見て「彼らしくない」と眉を顰めるだろう。神の血を引く英雄の中の英雄にして傲岸不遜な絶対者には似つかわしくない態度だと疑念を抱くだろう。だが、第四次聖杯戦争最終夜にして最終決戦たるこの日この瞬間、彼が対峙することになった相手は、あまりにも度を越し過ぎていた。

 

 3次元空間が定員オーバー(・・・・・・)ではち切れようとしていた。雲が散り散りになり、磁場がうねり、大気が帯電し、乱流する風が吹きすさぶ。いつ何時、空間が張り裂けて四次元空間との狭間が口を開けるかわからないほどだった。世界を構成する電子の内側で量子力学(まりょく)エネルギーが飽和し、上限値をぶち抜いて、ついに空間内に許容しきれなかった魔素が他次元へ逃げようと藻掻く。それらはバチバチとそこらかしこで紫電の大輪を咲かせ、この光景に壮絶な華を添える。この事象は、すなわち己の体内の存在許容限界点を遠慮なしに踏み超えた宇宙的エネルギー量に現3次元空間が苦しみ悶える結果であった。

 そしてそれは、現在進行系で加速度的に増大していた。

 

 また二騎(・・・・)召喚された(・・・・・)

 

 

「遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よ!我が名はフランス(・・・・)シャルルマーニュが十二勇士───」

「我こそはアイルランド(・・・・・・)フィオナ騎士団が一番槍───」

 

 

 次々と参集していく彼ら(・・)を目にしたギルガメッシュの口元で、わなわなと震える唇がついに決壊する。

 

「デタラメだ!!!!」 

 

 全サーヴァントにおいても十分にデタラメな性能のギルガメッシュをしてそう言わしめた相手───パーフェクト・セイバーが、声を震わせる彼を悠然と見下してふっと微笑を浮かべた。浮かべて、背後の赤みがかった髪の(・・・・・・・・)少年(・・)をイタズラっぽく振り返る。

 

「だ、そうですよ、士郎」

「なんだかスカッとするな、セイバー」

 

 彼女が誇る宝具の全容は、ギルガメッシュすら比肩し得るものでもなく、誰も彼もの想像を超えているものだった。

 即ち、パーフェクト・セイバーの最強宝具『騎士王の御下へ(キング・アーサー)』とは───

 

 




 短くて申し訳ない。
 さて、皆さんが「円卓の騎士全員召喚かな」と予想してくれるのを見てニヤニヤしてたら、「士郎も召喚されるのか」と想像を超える感想をくれる人がいて、「それめっちゃ胸アツ〜!」と感動しました。感想は全部しかと読ませてもらって糧にさせてもらってます。感謝。

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