最強の王様になった『 』   作:8周目

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いやぁ、久々にこっちを書きました。
なんか内容おかしくね?と思われる方も出てきそうで怖いです。実際書いてて『あれ?』となった所も幾つかありましたし。
まぁいいや(ぉぃ

ではどうぞ↓


A・U・O(偽)爆☆誕!

 「それでは、これより人類種(イマニティ)の最後の領地『エルキア』を治める国王の選定ゲームの最終戦を始めます」

 

 「字面にするとややこしいな」

 

 「ソラは少し空気を読んでくださいません?」

 

 「おかしなことを言う、俺が空気だ! だからお前らが俺に合わせるのが道理なんだよオーケー?」

 

 「ダメですわ……この人が勝てばとんでもない暴君が生まれることに……! 何としてでも食い止めなければなりませんわ。 頑張ってくださいクラミー」

 

 「……ステファニー・ドーラ、あなたどっちの味方なの?」

 

 

 エルキア大聖堂で行われるゲーム。 クラミーが用意したのは、巨大な盤面に片側十六個の駒を設置したチェス。

 人類種の未来を担う国王が決まる瞬間を一目見ようと野次馬たちが大聖堂に集まり、中はかなり混雑していた。

 

 

 「……さっきからギャーギャーうるせぇな。 ちっと黙らすか」

 

 「……にぃ、おねがい」

 

 「あいよ、実際こういうのじゃ俺は白には勝てねぇ。 任せっきりになる手前、こんぐらいは俺がやらねえとな」

 

 「何を————」

 

 

 

 ————や か ま し い。

 

 

 

 『……ッッ………!?』

 

 

 空が一言発した瞬間ステフをはじめ、周りでやかましく騒いでいたギャラリーやクラミーまでもが口を閉じた……いや、()()()()()()()

 まるで下から顎をかちあげられたように、あっかんべーをしていたら舌でも噛みそうだ。

 言葉の重み……なのだろうか、何にせよ空の発した三つの音声は確かな質量を持っていた。

 それによって起こされた強制的な沈黙。 これには魔法を使って遠くで見ていたフィール・ニルヴァレンも絶句した。

 

 

 「人の話は黙って聞く。 こんなことガキでも知ってるジョーシキだぜジョーシキ」

 

 「…にぃ、こんなこと、できるなんて……白も、しらな、かった……」

 

 「だって向こうじゃ使う機会無かったからな。 黙ってたことは謝る。 でもな————」

 

 

 白の身長を超えるほどに伸びた髪を優しく(くしけず)りながら、空は口角を吊り上げた凶悪な(かお)を浮かべた。

 

 

 「————これで対戦相手を含めた全員が俺に対して何らかの印象を抱いた。 それ自体は大小様々で恐怖、忌避感、畏敬、もしくは漠然とした興味や好奇心といった風に違いはある。 だが、ここではその焼き付けられた印象が大事なんだよ」

 

 「………?」

 

 「人間ってのはな、()()()()()()()に目が行きがちなんだ。 まあ同然だわな、俺だってそうだし」

 

 「…注目…させる、ため……?」

 

 「ああ。 そんで、その注目してる対象がとんでもない強さを持っていると理解したら、連中はかなりの贔屓目で判断してくれる。 セコいっちゃあセコいが……ま、これも勝負のうちだ。 あとは、相手がボロを出してくれりゃあラッキーなんだが」

 

 「…にぃ、これ終わったら……ごほーび、ぷりーず…」

 

 

 報酬次第でどこまでも頑張れるのが白だ。 傭兵のような行動原理だが、報酬の渡し手が誰でもいいという訳でもない。 (そら)だからこそなのだ。

 むんっ、とやる気を(みなぎ)らせた白に空は変わらぬ頼もしさを感じ、とびっきりのご褒美をあげようと決めた。

 

 

 「おう、何でも幾らでも全部叶えてやる。 頑張れよメイドさん」

 

 「…なん、でも……いくらでも………ぜん、ぶ…………ふふっ♪」

 

 (ソラ、ソラ! 口が開かないんですの! 何事ですのこれ!)

 

 

 やはり妹には甘々なお兄ちゃんの空であった。

 しかし、お忘れだろうか。 今ここにいる(空と白を除く)全員の口が開かない状況であることを。 しかも、その原因が無視するどころか、あまつさえ国王選定の場でいちゃついているのだ。

 ギャラリーの中には血の涙を流している男たちがちらほら見える。 何もわからないまま強制的な沈黙を強いられ、混乱している最中に見せられたのはバカップルのそれ。 軽い拷問であった。

 

 

 「……あ、黙らせたままなの忘れてたな。 悪い悪い、『口開いていいぞ』」

 

 「……ッ…ッ…ソ、ソラ! あなたいったい何しましたの!?」

 

 「うるせーから黙らせただけだよ。 そんな取り乱すことでもねぇだろ」

 

 「…にぃ……ふつう、けっこう…あせる、よ…?」

 

 「えぇー、ほんとにござるかー?」

 

 「ほんとでござります! ……って、変な喋り方しちゃったじゃないですの!」

 

 

 空の妙なボケと、焦りから来る変なテンションのせいで口調がめちゃくちゃになりかけるステフだったが、取り敢えず元凶の男に当たり散らすことで落ち着きを得た。 当たり散らすと言ってもぐるぐるパンチくらいだが。

 

 

 「えー、オッホン。 では、改めまして———これより国王選定ゲームの開始を宣言致します。 両者は壇上へとお上がりください」

 

 「このチェスは駒が意思を持っているわ。 通常と違う所はそれだけよ。 ま、せいぜい足掻きなさい」

 

 「成る程、確かに王を選定するに相応しいゲームだ。 てな訳で白、ガンバ」

 

 「…マジです(car)………うそ、がんばる…っ」

 

 

 白も冗談を言えるほどには余裕があるらしい。 何より見返りが本人にとって破格すぎるのだ。 白は今、何十億通りものパターンを全て脳内処理し終え、そのあとの兄に求める諸々の『お願い』を考えていた。

 ふんす、と自信満々な態度で盤面へと向かう。

 

 そんなのほほんとしたやり取りを気に入らないと思うのがクラミーである。 別に今でなければ気にもかけないが、このゲームは人類種にとっての生命線を決めるもの。 そして此処はクラミーが考えに考えた(すえ)に時間と労力をかけてやっと辿り着いた場所だ。

 こんな目の前にいる何も考えていない馬鹿どもに任せていいことじゃない!

 この一戦に人類種の未来がかかっているんだから、あんな巫山戯た連中になんて絶対敗けない!

 

 

 「————ッ」

 

 「……お、あっちもやる気充分みたいだぜ。 手ぇ抜くなよ白。 それは覚悟決めて此処に立ってるあいつにとっての最大の侮辱だ」

 

 「…ん、さいしょ、から……フル、スロットル…!」

 

 「さて、どうせならドンパチ派手に(はや)そうぜ。 その方が()()()だろ」

 

 「……勝つわ。 あなた達になんて絶対負けない!」

 

 

 

 火蓋が切って落とされた。

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 

 「B2ポーン、B4…」

 

 

 ズゴゴゴ…と、確かに口にした通りの場所に兵士(ポーン)が動いた。

 いつもならクリック一つで自在に駒を操れるが、本当に『意思を持つ』とはこれだけなのか?

 そんな空の予想は、次の瞬間見事に的中した。

 

 

 「ポーン7番、()()

 

 

 クラミーの声に反応したポーンが、()()()動いた。

 

 

 「…………」

 

 「へぇ……」

 

 「はぁ!?」

 

 

 三人の反応はそれぞれ違う。 白は完全無視、空はおもしれぇとばかりに口角を吊り上げ、ステフは「はぁ!?」である。

 それを見て、クラミーは嗜虐的な笑みを浮かべてこう言った。

 

 

 「言ったでしょう、この駒は『意思を持つ』って。 駒はプレイヤーのカリスマ、指揮力、指導力、そして王としての資質に反映して動くの。 つまり今のこの現状は、あなたより私の方が一マス分上ってことの証明なのよ」

 

 「良いですわクラミー、そのままこの二人を倒してください!」

 

 「ステフ、お前所有物(モノ)の分際でご主人様(オレ)(がわ)に付かねえとは……後でたっぷりお仕置きしてやる。 覚悟しとけよ、性格が変わるぐらいの」

 

 「それはお仕置きではなく拷問! それ拷問ですわ!」

 

 「大して変わりゃしねぇよ。 痛みと快楽とどっちがいい?」

 

 「……そう。 あくまで巫山戯るつもりなのね。 いいわよ、そっちがその気ならこっちだって好き勝手に動くわッ!!」

 

 

 クラミーが浮かべるのは怒りの形相。 それを見て、空は……。

 

 

 「眉間に皺寄せて……可愛い顔が台無しじゃねぇか。 それにせっかくのゲームなんだ、楽しんで何が悪い」

 

 「……ついに開き直ったわね。 今のでよく分かったわ。 あなたが人類のことなんか何一つ考えていないことをね!」

 

 「馬鹿抜かせ、人類種云々はこのゲームが終わった後の事だろうが。 勝った後の事ばっかり考えて目の前のゲームに手が着かないとか……間抜けにも程があるだろ? なあ、お前に言ってんだぜ、クラミー・ツェル。 白と戦ってる最中に俺と呑気に喋ってていいのかよ」

 

 

 そう、当然のことながら会話の最中でもゲームは続いている。 集中力を欠いた指揮がまともな結果などもたらすはずがない。

 ハッと盤面に意識を戻すクラミーだが、既にかなり追い詰められている。

 最初から前へ前へしか指示を出していなかったツケが回ってきたらしい。 白は一見不利に見えるこの状況で着実にクラミーをチェックへと追い込んでいた。

 そして、ついに———

 

 

 「女王(クイーン)、H5………チェック…」

 

 「チィ…ッ!」

 

 「言っただろ、『目が行きがち』だ……って。 お前は結局、最初から最後まで俺に釘付けだった訳だ。 いやぁ、男冥利に尽きるねぇ」

 

 「まさか……これを見越して…黙らせたんですの?」

 

 「さあ、どうだろうな」

 

 「くっ……!」

 

 

 白の技量に圧倒されつつあるクラミー。 しかし、実力でここまで押されたことは悔しいが、クラミーにはまだ余裕があった。

 なぜなら———

 

 

 「んじゃ、ここから一気にチェックメイトだ」

 

 「……ダメですわダメですわ、このままじゃこの二人の暴君治世ががががが……!」

 

 「D2ポーン、D4…」

 

 

 ———動かない。

 指示を出した駒が動かないのだ。 

 それはまるで白の命令を拒むような、明らかな拒絶の態度。

 これに対して空は驚きながらも納得していた。

 成る程、意思を持つ駒とはそういうことか……と。 それと同時に、白が()()()ことも悟った。

 

 

 「……………………」

 

 「フフッ、無様ね。 わざわざ死にに行く駒がいる訳ないでしょ」

 

 

 動かない、動かない、動かない。

 こうすれば勝てると導き出したパターン。 その全てに一回は含まれる手『犠牲(サクリファイス)』。 本来のチェスは犠牲を囮にして他の駒の(みち)を切り拓く。

 それゆえに打てる手の数、その総数は無量大数以上の膨大な量がある。 だからこそそれを全て読み切れる白は全世界のチェスプレイヤーの中で最強だった。

 だが犠牲が使えないとなると、打てる手はかなり絞られる。 初期状態ならばいくらでもやりようはあったが、ここまで動かした後だと打つ手は無いに等しい。

 

 

 「……ごめん、なさ…っ……にぃ、ごめん…なさい……」

 

 「おう、よく頑張ったな白。 あーあーもう泣くな泣くな、まだ『 』(くうはく)が負けた訳じゃねぇだろ。 白が行き詰まったなら俺が受け持つ、今までと一緒だ。 あぁ、それと————」

 

 「…っ……?」

 

 「————兄ちゃん今からちょっと雰囲気変わるけど、あんまり引かないでくれ。 ……ははっ、何心配そうな顔してんだよ。 安心しろ、白のおかげで勝ちは見えた」

 

 

 そう言う兄の眼は……真紅に染まり、瞳孔が縦に割れていた。 まるで爬虫類を思わせる目だった。

 自分の頭を優しく撫でてくれる兄の背中は、今までよりも更に大きく見え、そして何より頼もしかった。 

 いつもと同じの凶悪な笑みに、不覚にも見惚れたのは秘密だ。

 顔が真っ赤になっていたのを後でステフに指摘され、布団にくるまりゴロゴロするのは余談である。

 

 

 「あら、今度はあなたが相手? いいわよ、そこの妹みたいに泣かしてあげる」

 

 「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。 まあ尤も……『(オレ)』が相手をする以上、お前の敗北は確定事項だがな」

 

 

 そこに居たのは圧倒的な威圧と絶対に勝てないと確信させる程のカリスマ性。 着ている衣装は燕尾服という従者なのに纏うのは自分とは段違い……いや、比べるのも烏滸がましいほどの風格。

 思わず跪いてしまいそうな、完成された王の姿だった。

 

 

 「(オレ)が直々に相手をするのだ。 せいぜい愉しませろよ小娘。 その小賢しい小細工を含め、貴様の力を限界まで振り絞れば……或いは(オレ)に触れることが出来るやもしれんぞ」

 

 「…は、ははっ……なによ、それ。 冗談じゃないわよ……」

 

 「どうした、我の姿に見惚れて言葉も出ぬか? 良い良い、本来ならばその不敬により我が手ずから調教してやるところだが、特に赦そう。 遠慮せずに掛かって来るがいい。 愛でてやろう、森精種(エルフ)に組した道化よ」

 

 「これ誰ですの?」

 

 

 今日、ディスボードに正史世界の歴史の中で最古の王のチカラを持った青年が、その本性を現した。

 ちょうどその頃、遥か彼方に聳え立つ巨大なチェスの駒の上で、一人のショタ神が思いっきり吹き出したという。




さて、かなり無理がある爆☆誕でしたが……。
仕方ないよねーもともと結構無理のある組み合わせだったしーこうでもしないとAUO成分足りないしー。
はいごめんなさいm(_ _)m

ステフはどんな感じでお仕置きしてやろうか。
緊縛? 鞭? 三角木馬? 寸止め?

ダメだ、考え方がどんどんcv杉田さんのドSマスクになってきてる…。


感想待ってまする(ノ*´>ω<)ノ

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