最強の王様になった『 』   作:8周目

7 / 11
みなさん遅まきながら、あけましておめでとうございます。

課題テストを目の前にしている金欠鬼です。
年末忙しかったけど、楽しかったー!

今年もよろしくお願いします。

ではどうぞ⇩


お前人間じゃねえよ

 

 

 

 「……世界とは…理不尽なのですわ……」

 

 

 

 結果から言うと、ステフは負けた。

 駆け引きでもなんでもない、それでいいのか『 』(くうはく)と言いたくなるような方法で終わった。

 

 じゃんけん勝負は十回。

 一度でも勝ち以外の手を出したら空の負け。

 全てに完勝すれば空の勝ち。

 そんな無理ゲー極まるこのじゃんけんは、『スーパーミラクルイカサマ万歳超高速後出し作戦』略して『ゴリ押し』という最低最悪の手段で空が勝った。

 内容はカンタン。

 その名の通り目にも留まらぬ速さで相手の手を読み、ほとんど同時に後出しをするのだ。

 

 

 

 

 「白〜兄ちゃん勝ったぞ〜、いえーい♪」

 

 

 「い、え〜い…♪」

 

 

 

 世界に対して絶望しているステフをよそに、二人は軽〜くハイタッチを交わす。

 当たり前のことだが、勝者側と敗者側の空気の差が激しい。

 ステフの綺麗なサファイアのような目はハイライトが消えており、口からは魂が抜けているようにも見える。

 肌は少し青ざめており、体は小さく震えている。

 

 そして、空はひとしきり白と戯れた後、ステフに歩み寄り……こう言った。

 

 

 

 「んじゃ、盟約に誓った通り、今日からお前の全ては俺のモノってことで。 これからよろしくな、ステフ」

 

 

 「……………………………………」

 

 

 「…やっぱショックか?」

 

 

 「……………………………」

 

 

 「でもな、これお前にとってのデメリットってかなり少ないんだぜ。 何故なら『ステフという存在の全ては空の所有物である』。 これ以外お前に拘束は掛かっちゃいない。 俺の命令にこそ強制は働くかもしれんが、俺は別に奴隷みたいに扱うつもりも無い。 つまりお前は基本的には自由の身となんら変わらんぞ。 メリットも少ないが」

 

 

 「………本当に…本当に、奴隷として扱うつもりは無いんですの?」

 

 

 「おう」

 

 

 

 

 前王の孫と言っても、その前に一人のうら若き乙女である。

 自分の身が他人の好きにされるということに不安と恐怖を覚えないはずが無い。

 縋るような目でこちらを見るステフに、空は優しく微笑む。

 白もさすがにこの状況でステフのパンチラを撮影するような外道では無かった。

 

 

 

 「…信じて…良いんですのよね…?」

 

 

 「お前結構疑り深いのな…。 安心しろ。 そんな人権無視した所業なんざ趣味じゃねぇしな。 …………あーでも、今から一つだけ確認ついでに最初の命令をする。 これだけは勘弁しろよ」

 

 

 「…………ッッ」

 

 

 

 この身に何を命令されるのか。

 もしかしたら肉体(カラダ)を求められるかもしれない。

 怖い。 …だが、それも悪くないと思う自分がいる。

 いや、()()()()()()()()()()()()自分がいることに、ステフ自身混乱していた。

 

 そして空はゆっくりと顔を近づけてくる。

 体は硬直してしまって動かない。

 顔に血が上って熱い。

 脳内がスパークしている間に、空の口がステフの耳元に———————

 

 

 

 

 

 「俺の所有物(モノ)になれ。 ステファニー・ドーラ」

 

 

 

 

 ——————ドクン。

 

 

 その言葉が囁かれた瞬間、ステフは思考回路をショートさせ、気絶した。

 

 

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 

 その後、空と白は気絶したステフを叩き起こし、エルキアに存在する人類種の城へと案内させた。

 そして現在、エルキア城内の大浴場で白を洗うステフだが、空がすぐ横で服を脱いでいることに…………いや、()()()()()()()()()()()()()()驚きを隠せないでいた。

 

 

 

 「…あなた本当に空ですの? 未だに信じ難いのですが…」

 

 

 「仕方ねぇだろ。 こうでもしないと白と一緒に風呂に入れねぇんだから」

 

 

 「そもそもどうすれば男性である空が『女性』になれるんですの?」

 

 

 「そんなもん『性転換薬』使ったからに決まってんだろ」

 

 

 「にぃ、は…基本…なんでも、あり」

 

 

 「…本当に便利ですわね。 その『げーとおぶばびろん』とやらは」

 

 

 「実際便利だぜコレ。 内容量無限とかいう意味わかんねぇ構造してるから何でも入れられるし。 重宝するよマジで」

 

 

 

 

 空はステフに『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』のことを話していた。 

 もちろん口外するなという命令をしてから。 

 そして空は女の体になったことで、白やステフという美女と一緒に風呂に入っても健全という状況を生み出した。

 

 そう、『性別』という名の最大の壁をやすやすと乗り越えたのだ。

 

 

 

 

 「それはそうとステフよ、風呂(これ)が終わったら調べ物したいんだけどさ、この城に図書室とかある?」

 

 

 「ええ、一応ありますが、何を調べるんですの?」

 

 

 「ステフたんはおバカなのかな? ()()()()のことを調べるに決まってございましてよ?」

 

 

 「…ステフの…バカ、は…デフォ…」

 

 

 「し、失礼ですわね! これでも国内最高アカデミーを首席で卒業してますわよッ!! というかそもそも()()()()()()()()ことに反応してバカと罵られるなんて、これただのイジメですわよね!?」

 

 

 「あれ、言ってなかったか? 俺たち二人はこことは違う別の世界……まぁ、要するにアレだ。 宇宙人みたいな感じで認識してりゃあいい」

 

 

 「言ってませんわよ! ………それにしても別世界からいらしていたなんて、道理で色々と人間離れした能力を持っているはずですわ」

 

 

 

 

 音がよく響く大浴場で、ステフの驚愕と苛立ちの混じったツッコミが炸裂した。

 それと同時にこの二人が異世界から来たということに対しては、結構アッサリ納得出来てしまっていた。

 

 それにしても横にいるこの男…今は女だが、空は今や自分の『ご主人様』である。

 ならばせめてそれらしく背中でも流そうかと思ったのだが、肝心の空は自分の妹と一緒に泡まみれになっている。

 ()()()()()()と命令された割には何をすれば良いのかなどの指示も出されていないので、いつも通り一人で体を洗っている。

 そして、いつの間にか『空に奉仕したい』と思ってしまっている自分に気づき、顔を真っ赤にして首をブンブン振る。

 

 奴隷扱いを怖がっていたくせに、いざモノにされると奴隷根性丸出しであった。

 

 

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 

 

 風呂から上がってサッパリした空と白は、どうせならこの世界の服を着てみようということで、ステフに何かそれらしいものを用意するよう言った。

 早速隷属させたステフを使い倒している空は誰がどう見てもただの鬼畜である。

 

 

 

 「おぉぉ……これが執事服…いや、燕尾服って言った方が良いか。 一回こういうコスプレみたいな格好してみたかったんだよなぁ。 ……自分で言うのも何だが、結構サマになってんな俺」

 

 

 「…ぅぅ…にぃ、いつもの…服…出し、て…っ」

 

 

 「やーだよー。 白のフリフリドレス姿とか滅多に見れるモンじゃねぇし、白だって満更でもないくせにムフフ」

 

 

 「にぃっ…いぢわる、しない、でぇ…。 この、服…胸のとこ…ぶかぶか、で……むか、つく、のぉッッ……!」

 

 

 「おぉう…マジでキレてらっしゃるようで……。 でもせっかくステフが好意で用意してくれたヤツだからなぁ。 ……まぁ、別にいっか」

 

 

 「コレ、が…好意とか…くそ、ふぁっきん…ッ!」

 

 

 「コラ白、あんまり汚ねぇ言葉使うなよ。 替えの服出してやるから落ち着けって」

 

 

 

 

 そう言いながら空が取り出した服は、メイド服であった。

 白は最初こそ『えー』みたいな顔をしていたが、胸元スカスカのドレスよりマシだと考えたのか、空のチョイスしたメイド服に着替え始めた。

 それにしても兄妹とはいえ男女が同じ場で着替えをして、互いに違和感など微塵も感じていないあたりこの二人は末期である。

 

 

 

 「失敗、しましたわ……」

 

 

 「あん? なにが失敗したんだ」

 

 

 「何でもありませんわよっ!」

 

 

 

 思わず口からこぼれた呟きに焦りつつ、首を振るステフ。

 空に用意してもらったワンピースの裾を軽く叩きながら、プイッと後ろを向くステフ。

 その顔は風呂上がりだからか、赤くなっていた。

 ちなみに空はもう一度『性転換薬』を飲んだので、きちんと男の体に戻っている。

 

 

 

 

 「ふぅ……そんじゃステフ。 図書室に案内してくれ」

 

 

 「ナビ、よろ…」

 

 

 「ええ、わかりましたわ」

 

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………オイ」

 

 

 「はい、何ですの?」

 

 

 「…これのどこが図書室なんだよ。 どう見てもその辺の書庫よりデカいっつーか、もうコレ()()()で良くね?」

 

 

 「そんなこと(わたくし)に言われましても……」

 

 

 

 

 暫く城内をクネクネと移動して辿り着いた図書室だったが、そこは図書室と言い張るには規模がおかしかった。

 しかもコレでステフの()()()()()()と言うのだから驚きだ。

 

 空はその辺にある本を一冊手に取り、ペラリと適当にページをめくってみた。

 

 

 

 「……予想はしていたが…マジで?」

 

 

 「どうかしたんですの?」

 

 

 「ステフ、これってさ……エルキア語?」

 

 

 「いいえ、『人類語』ですわよ」

 

 

 「うわあ……ド・シンプルな世界ですこと」

 

 

 

 会話は成り立つのに、本に記述された文字は全く読めなかった。

 つまりこの世界の公用語は日本語ではない。

 

 

 

 「……本当にあなた達は異世界から来たんですのね」

 

 

 「ああ。 ……まぁ、信じてくれるなんざ思っちゃいないがな」

 

 

 「あ、いえ。 別にそれに関しては、なんとも思いませんわ」

 

 

 

 本来ならこういうのは普通なかなか信じて貰えないのが定番なのだが。

 予想外にもさらっと答えたステフに、さすがの空も目が点になった。

 

 

 

 「は? いや…え? なんで」

 

 

 「なんで、と言われましても。 森精種(エルフ)達が使う高度な魔法には、異世界からの召喚魔法なども存在しますし、そんなに信じられない話でもないからですわ。 それにどう見てもあなたたち御二方は人類種(イマニティ)にしか見えませんもの」

 

 

 

 ————なんじゃそりゃ。

 

 そう思うと同時に。

 

 ————デスヨネー。

 

 が空の頭を埋め尽くしていた。

 

 

 

 「…ハァ……しゃーねぇ、覚えるか…白?」

 

 

 「……ん」

 

 

 「オーケー。 んじゃいっちょやりますか」

 

 

 「…おー」

 

 

 

 掛け声と同時に白は三冊くらいの本を並べて開き、空は王の財宝(むげんそうこ)の中から縁なしの眼鏡を取り出す。

 そして眼鏡を掛けたまま一冊の本をじっくりと読み始める空。

 白は何時からか横に出されていたコピー用紙にシャーペンで記号のような文字を書き出していく。

 

 一気に静かになった書斎で一人何をすれば良いのかわからず、取り残されるステフ。

 

 ステフは二人が何をしているのかイマイチわからなかった。

 だが、途轍もないことを行っているという事だけはわかった。

 そして何より縁なし眼鏡を掛けた空を見て鼻血を堪えるハメになり、しっかりするんですのよステフ! と両頬を軽く叩き、自分に喝を入れる。

 

 

 

 

 「…ステフ、飲み物と軽く摘めるもの持ってきてくれ」

 

 

 「アッハイ」

 

 

 

 従者姿の二人に仕える王族とはこれ如何に。

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 「…あの、その…先程から何を…」

 

 

 「ステフって普段からお菓子作りとかすんの? 資源不足で砂糖もバターも碌に無ぇだろうに、よくここまで旨味引き出せるもんだ。 素直に感心するぜ」

 

 

 「あ、ありがとうございますわ。 ……それで、先程から何をお調べになって——————」

 

 

 

 

 

 「…にぃ————おぼえた」

 

 

 

 

 

 「——————へ?」

 

 

 「お、さっすが白」

 

 

 「……もっと、ほめる……」

 

 

 「ああ、当然だとも。 さすが兄ちゃんの自慢の妹、(のち)の嫁さん。 天才少女めっ! このこのっ」

 

 

 

 白の後ろから『あすなろ抱き』し、優しくクシャリと頭を撫でる空に、気持ち良さそうに目を細める白。

 ———それを呆然としたまま眺めるステフが呟く。

 

 

 

 

 「……え? あの、何を、おぼえたんですの?」

 

 

 「何って、んなもん()()()に決まってんだろ」

 

 

 

 さも当然のようにさらっととんでもないことを言ってのける空に、ステフはこの日何度目かわからない驚愕に目を見開く。

 

 

 

 「にしても、相変わらずさすがだなオイ。 兄ちゃんはもうちょいかかりそうだ」

 

 

 「……にぃ、遅い」

 

 

 「フッフッフ、男は早いより遅い方が良いんだぞ?」

 

 

 「………にぃ、ポークピッツ」

 

 

 「だぁれがポークピッツじゃいッ!! 兄ちゃんのはビッグマグナム通り越してジャッカルなんだよ!! 馬とタメ張れんだぞ!!」

 

 

 

 唖然と、二人の(恐らく)下品なやり取りを眺めていたステフ。

 驚きのあまり声を掠れさせて、言う。

 

 

 

 「あの……聞き間違いですの? ()()()()()()()()()————って言ったんですの?」

 

 

 「『パーフェクトだウォル—————え? ああ、うん、そうだけど?」

 

 

 「『感謝の極み』————こくっ」

 

 

 「————こんな短時間で? じ、冗談ですわよね?」

 

 

 「別にそんな難しくねぇだろ。 音声言語は一致してんだからあとは文字をおぼえりゃ終わりじゃねぇか」

 

 

 「……それを……まだおぼえられない、にぃ」

 

 

 「十八ヶ国語の古文まで出来る白が特別なんです〜ぅ。 ()()()()()()な兄ちゃんはゲームするのに必要最低限な六ヶ国語を出来れば困らないんですぅ」

 

 

 

 

 —————凄い。

 ソレが今ステフを埋め尽くしていた。

 

 この二人は簡単そうに言うが、"誰にも教わらず" 文字を覚えるのは、『学習』ではなく『解読』である。

 それをこんな短時間でやってのけて誇りもしない。

 もはや自分の中の常識や理解を完全に逸している目の前の二人。

 その凄まじさに背中に寒気が走った。

 しかし、同時に自分はとんでもない出会いをしてしまったのではないだろうか。

 そんな思いが己の内に渦巻く。

 

 

 それこそこの国を—————この世界すらも変えてしまいかねない人達と。

 

 

 




>>『性転換薬』
別名『TS薬』。
ギルガメッシュにはこれを飲んで是非とも『姫ギル』になって実装されて欲しい。


>>『ジャッカル』
純銀マケドニウム加工水銀弾頭弾殻、マーベルス化学薬筒NNA9、全長39cm、重量16kg、13mm炸裂鉄鋼弾、対化物戦闘用拳銃。
別名『百万発入りのコスモガン』
わかる人にはわかる。
超デカい。


>>逸般ピーポー
誤字ではない。


今更ですが、空は身体能力がおかしいです。
と言っても体力とかは常人並みですがね。


みなさんお久しぶりです(^o^)/
最近6日と7日のガチャに賭けている金欠鬼です。
頼むから槍鯖の星5来てくれ。
金欠鬼のパーティーにはランサー枠が欠けてんのよ。
信じてるぜおっぱいタイツ師匠、施しの英雄。



誤字などあれば報告お願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。