というわけで、気まぐれにこちらを更新。
修学旅行前に一話投稿しようと思っていたのですが、朝が早過ぎて無理でした(=ω=;)
今回はキリのいいところが無かったので、変な区切り方してます。
ではどうぞ⇩
——昔々の、更に大昔。
その争いは、それはそれは気の遠くなるほどの永きにわたって続けられた。
流れ出た血が染みていない大地は無く、絶え間ない悲鳴が響く空。
知性あるもの達は憎み合い、互いを滅ぼさんと凄惨な殺し合いを繰り返した。
荒野と化し黄昏に呑まれた大地は、さらに神々の戦乱によって尚深い闇に呑まれ、
そんな地獄のような世に、幾多の王家も、数多の美姫も、まして勇者など、いるはずもなかった。
吟遊詩人達が謡うべき英雄譚も未だ無い—————そんな、血で塗りたくられた時代。
しかし、そんな永久とも思われた戦乱は、唐突にその幕を閉じる。
空が、海が、大地が—————星そのものが。
憔悴し疲弊しきり、共倒れ同然に争いの継続を断念させられた。
かくして————その時点で、最も力を残していた一柱の神が、唯一神の座についた。
それは、
傍観を貫いた神だった。
唯一神の座についた神は、地上の有り様を見回し。
地上にうろつき回る総てのものたちに語りかけた。
————腕力と暴力と武力と死力の限りを尽くし、屍の塔を築く、
汝らと『知性無き獣の群れ』の差異や、
全ての種族が、口々に己の知性を証明せんとした。
だが、荒れ果てた世界を前にその言葉はあまりに虚しく響き。
すると、神はこう言った。
————この天地における一切の殺傷・略奪を禁ずる————
神の言葉は『盟約』となり、絶対不変の世界のルールとなった。
かくしてその日、世界から『戦い』は無くなった。
しかし知性ありしモノ達は、口々に神に訴えた。
『戦い』は無くなっても、『争い』は無くなりませぬ———と。
ならばと、神はさらに言った。
————知性ありしモノと主張する『
理力と知力と才力と資力の限りを尽くし、知恵の塔を築き上げ、汝ら自らの知性を証明せよ————
神は十六個のコマを取り出し、悪戯気に笑った。
かくして『十の盟約』が生まれ、世界から『戦争』は無くなり、あらゆる諍いは『ゲーム』によって解決するものとなった。
唯一神となった神の名は———テト。
嘗ては『遊戯の神』と呼ばれたものだった……。
◆*◇
「いや〜……しっかし、セグウェイ入れてて正解だったなぁ……。 そうは思わんか、妹よ」
「ん、同意。 ……移動、チョーらくちん…♪」
着陸時に見えた街を目指し、兄妹二人は
……というかこの兄妹、金にものをいわせて、ネットで色々な物を買っている。
ゆえにどのような環境下に放り出されようが、この二人は大抵生きていけるのだ。
例えそれが、異世界であろうとも。
「にぃ……街に、着いた、ら………『むげんそうこ』…どう、するの?」
「ん〜、暫くは封印だな。 いくら異世界つっても、こんな能力をヒトが持ってたらおかしいだろうからな。 だから妹よ、街の五百メートル前に着いたら歩くぞ」
「…むぅ、仕方なし」
「何処ぞの武士の真似か? 白は武士より無垢なお姫様って感じだと兄ちゃんは思うぞ」
「…………」
「あっれー? もしかしなくても照れていらっしゃいますか? ……………いや、ゴメン、頼むから前見て運転してくれ。 事故っても替えが無いからなコレ」
「にぃ、の……せっそーなし」
「安心しろ。 確かに兄ちゃんは女の子大好きだが、どんなことになろうと、兄ちゃんの一番は白だ」
「…白も、一番は…にぃ、だから」
「嬉しいねぇ。 なら、いっそのこと結婚するか? もちろん規定年齢に達してからだが」
「……どうせ、にぃ………ハーレム、作る」
「おう、そりゃ男の夢だからな。 でも、正妻は白がいい。 つーか、白をその辺の馬の骨とも知れん奴の嫁に出すなんて絶対させんからな。 他人にやるくらいなら兄ちゃんがもらう」
「〜〜〜〜〜……に、にぃ…五百メートル、前」
「ん、もう着いたのか。 案外速かったな」
顔を真っ赤っかにした白は、咄嗟に話を替えた。
そうでもしなければ、自分は気絶していただろう。
———
「ふむ、少し遠いが厄介ごと招くよりはマシか……。 うっしゃ、白、行くぞー」
「らじゃー…」
金色の波紋の中からローブを取り出し、空と白は手を繋いで街へと向かうのであった。
もちろん世間一般で言う『恋人繋ぎ』で。
◆*◇
ルーシア大陸、エルキア王国———首都エルキア。
赤道を南におき、北東へと広がる大陸、その最西端の小さな国のまた小さな都市。
神話の時代においては、大陸の半分をもその領土とした国も、今や見る影もなく。
現在、最後の都———その首都を残すのみとなっている小国であり、もっと正確に言えば。
そんな都市の、中央から少し外れた郊外。
酒場を兼ねている宿屋という、如何にもRPGにありそうな建物の一階。
多くの観衆に囲まれ、テーブルを挟みゲームをしている一組の少女達がいた。
一人は十代中頃と思しき赤い髪の毛の、仕草や服装に上品さを感じさせる少女。
そしてもう一人は———。
赤毛の少女と同い年ほどだろうか、その雰囲気と服装から随分年上に感じられた。
喪服のような黒いベールとケープに身を包んだ———黒髪の少女。
行われているゲームは……ポーカーらしい。
二人の表情は対照的で、赤毛の少女は焦りからか、真剣そのもの。
一方、黒髪の少女は死人を思わせるほどの無表情の中にも、余裕が
理由は明白———黒髪の少女の前には大量の、赤毛の少女の前には僅かな、金貨。
つまり、赤毛の少女が完璧に負け込んでいるのだろう。
「……ねぇ、早くしてくれない?」
「や、やかましいですわね。 今考えてるんですのよっ」
————そこは酒場、昼間っから呑んだくれている観衆達が下品に
赤毛の少女の表情は更に苦悩の色に染まっていく。
だが、何はともあれ———随分盛り上がっている様子だった。
………———。
その勝負が行われている酒場の、外。
テラス席のテーブルに座り、窓から覗き込むフード姿の幼い少女が言う。
「……もり、あがってる………なに?」
「あら、知らないの? あんたたち異国人———って、人間の異国なんてもうないわね」
窓を覗き込む少女の隣の席には、同じくテーブルを挟んでゲームをしている一組がいた。
幼い少女と同じフードを被った青年と、露出度の高い服を着たグラマラスな少し化粧の濃い女性。
青年が答える。
「あー。 ちと田舎から出て来たとこでな、都会の事情に詳しくないんだわ」
奇しくもやっているゲームは、中と同じ………『ポーカー』。
青年の言葉に、訝しげに女性が答える。
「
「はは、まぁ、そうだな。 で、こりゃ何の騒ぎ?」
適当にはぐらかすように言う青年に、グラマラスな女性は言う。
「今、このエルキアでは『次期国王選出』の大ギャンブル大会が行われてるのよ」
酒場の中の様子を眺めながら、フードの少女が更に問う。
「……次期国王…選出?」
「ええそうよ。 前国王崩御の際の遺言でね」
『次期国王は余の血縁からでなく " 人類最強のギャンブラー " に戴冠させよ』
なおも女性、ビンのキャップを上乗せしながら言う。
「国盗りギャンブルで
「ふーん、『国盗りギャンブル』ねぇ………面白そうなことやってんな、こっち。 ……んじゃ、あの
「んー? 『候補』とは少し違うかもね、参加資格は
「…そっか。 さて、こっちもそろそろ決めようぜ」
「あら、結構余裕ね」
言って、さっと札をオープンする、女。
その表情には勝ちを確信し、相手に憐れみを抱くような落ち着きが浮かび上がる。
「悪いわね坊や、フルハウスよ」
「ん? あー、そうだな、確かに悪い」
だが、フードの青年は、本当に適当な動作で手に持っていた札を投げ出した。
そうやって投げ出され開かれた札を見て、女は目を見開く。
「ロ、ロイヤルゥゥゥウ、ストレェェトォォォォオ、フ、フ、フゥラッシュゥゥゥウ!!??」
最強の手札を、おくびにも出すこともなく揃えた青年に、さっきまでの余裕は何処へやら。 女はテーブルに手をつき吠えた。
「嘘! 嘘よ嘘よ嘘よ! 嘘でしょぉぉ!!」
「よく見ろ、事実だ」
「あり得ないわッ! 六十五万分の一の確率なのよ!?」
「その六十五万分の一が今だったんだろ」
「…でもッ!」
「盟約その六『賭けは絶対遵守される』———だったな」
そう、盟約による賭けは絶対。
この世界では、【生命】という概念そのものに、【盟約】と言う名の強制力が働いている。
「あ、あんた……一体、何者………?」
「別に……ただの、
そう言いながら、賭けられた財布を受け取って悠々と席を立つ青年と、その後を追う少女。
敗者である女は、ただただそれを目で追うことしかできなかった。
◆*◇
「…にぃ…ズルい」
「ん? イカサマなら別にズルくないぞ」
———そう、ロイヤルストレートフラッシュなどという手札がそうそう出るわけがない。
あんな手札を出すのは、イカサマを使ったと公言しているに等しい。
だが———
「『十の盟約』その八、ゲーム中の不正発覚は、敗北とみなす————ってことはつまり、バレなきゃいいってことだ。 このことを確認できたのはいいことだろ」
「…にぃ…こっちのお金、わかる?」
「さっぱりわからん。 でもまあ、任せとけ、こういうのは兄ちゃんの領分だ」
なおも勝負に盛り上がる中央のテーブルを余所目に、カウンターへ向かう二人。
カウンターに一枚硬貨を置いて、フードの青年がおもむろに問う。
「なあ。 二人一部屋、ベッドは一つでいい。 これで何泊出来るよ?」
マスターらしき人物がちらりと一瞥し、一瞬の逡巡のあと。
「一泊と食事付きだな」
だが、その言葉にヘラヘラと———目以外で笑って、フードの青年が答える。
「いやーはっはーあのさ〜、五徹した上に頭使いまくってるからクタクタなんだよねぇ〜。 『本当は何泊か』さっさと教えてくんないかな?」
「———なに?」
「言っとくぞ。 ————嘘を吐く相手は慎重に選べ………な?」
「…チッ。 二泊だよ」
「ほ〜らまた嘘吐く……。 あのな、相手をボッタクる時はもうちょい視線と声のトーンに気をつけろ。 と、アドバイスしとくよ♪」
「……ハァ、四泊食事付きだ」
「ほい、四泊ごっそさん」
終始ヘラヘラと笑いながら、交渉を済ませ、鍵を受け取った青年。
それを見て、不機嫌そうに宿帳を取り出すマスター。
「おい…あんた、名前は?」
「ん〜…………『
いや〜、シンガポール暑かった。
そして日本は寒すぎる。
マリーナベイサンズは見応えがありました。
USSも楽しかったです(^ω^)
感想待ってまする(ノ*´>ω<)ノ