最強の王様になった『 』   作:8周目

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はい、描けました。

今回はやっと二人がディスボードに入ります。

さあて、どんな無双ゲーにしてやろうか(ゲス顔)


ではどうぞ⇩


いざ異世界へ

 

 

 

 

 

 

 『Checkmate! You are winner!』

 

 

 「…………………………」

 

 

 「…………………………」

 

 

 

 長い沈黙が続く。

 結果は———兄妹の勝ちだった。

 今回行ったチェスは、持ち時間制ではない。

 ゆえに勝敗が決するまでに掛かった時間は、約六時間以上に及んだ。

 

 

 

 「「———————」」

 

 

 

 さらに続く沈黙の後。

 

 

 

 「「はああぁああぁあぁぁああ〜〜〜〜…………」」

 

 

 

 大きく息を吐く二人。

 それは呼吸さえ忘れるほどの勝負だったことを物語る。

 長い長い息を吐いたあと、二人は力なく笑い出す。

 

 

 

 「……すごい……こんな苦戦……ひさし、ぶり」

 

 

 「ははっ、兄ちゃんはおまえが苦戦するとこを見るのすら、初めてだぞ」

 

 

 「……すごい……にぃ、相手……ほんとに、人間…?」

 

 

 「ああ、間違いない。 こっちの誘いにノらなかった時の長考、仕掛けた罠の不発の時にも僅かに動揺が見えた。 間違いなく人間————そうじゃなきゃおまえ以上の天才(バケモン)か、暇を持て余した神様ってところじゃねぇの」

 

 

 「……にぃ…ちゅうに、くさい」

 

 

 「ちょっとぐらい巫山戯させてくんない? そうじゃねぇと兄ちゃん疲労でぶっ倒れそうなのよ」

 

 

 「……それに、しても……どんな、人だろ」

 

 

 「無視っすか。 ……だんだんと俺の扱い酷くなってきてねぇか?」

 

 

 

 グランドマスターを完封したプログラムを、完封した妹が、対戦相手に興味を抱く。

 

 

 

 「いや、案外グランドマスターかもよ? プログラムは正確で規則通りだが、人間は複雑だ」

 

 

 「……そ、か……じゃあ……今度、将棋でも……竜王と、対戦、したい……」

 

 

 「果たして竜王がネット将棋にノってくんのかねぇ……。 まぁ、考えてみようか♪」

 

 

 

 と、勝負後のエンドルフィンがもたらす幸福感に、ニヤけた顔で語る二人に、再び。

 

 ———テロンッ

 

 というメールの着信音が響く。

 

 

 

 「今の対戦相手じゃねぇの? ほら、開けてみろよ」

 

 

 「……うん、うん」

 

 

 

 と—————しかし、届いたメールには。

 ただ一言、こう書いてあった。

 

 

 【お見事。 それほどまでの腕前、さぞや世界が生き難くないかい?】

 

 

 そのたった一文で、二人の心境は————氷点下まで下がった。

 LEDディスプレイに向き合い、激闘を繰り広げた二人の、その背後。

 無機質な光。

 パソコン、ゲーム機器の数々が奏でるファンの音。

 無数の配線が床をのたうち、散らばったゴミと、脱ぎ散らかされた服。

 陽を遮断するカーテンが、時が止まったように、時間感覚を奪う空間。

 世界から隔離された————十六畳の、狭い部屋。

 そこが兄妹(ふたり)の世界———その、全て。

 

 ————苦々しい記憶が二人の脳裏を(はし)る。

 

 

 生まれつき出来が悪く、その為、人の言葉、真意を読むことに長けすぎた兄。

 例え人智を超えた能力を持っていたとしても、本人の能力はある程度生まれついた才能が影響する。

 

 生まれつき高すぎる知能と、真っ白な髪と赤い瞳(アルビノ)故に理解者のいなかった妹。

 兄と同じく他とは何かが隔絶している。

 そして、長い間テストと称した実験を毎日毎日行なわされていた。

 

 

 お世辞にも楽しい記憶とは呼べない過去———いや、現在に。

 黙って俯く妹。

 その最愛の妹を俯かせた相手に怒りを叩きつけるようにキーボードを打つ兄。

 

 

 『超絶大きなお世話様どうも。 なにもんだ、テメェ』

 

 

 ほぼ即座に返信が送られてくる。

 ————いや、果たしてそれは返信だったのだろうか。

 どう見ても先ほどの答えになっていない文面が届いた。

 

 

 【君たちは、その世界をどう思う? 楽しいかい? 生きやすいかい?】

 

 

 その文面に、怒りを忘れて妹と顔を見合わせる。

 そんなもの、改めて確認するまでもない。

 答えなど、とうの昔に決まっていた。

 

 ————「クソゲー」だと。

 

 

 

 

 ……ルールも目的も不明瞭な、くっだらないゲーム。

 七十億以上ものプレイヤーが、好き勝手に手番を動かし。

 勝ちすぎても、負けすぎてもペナルティ。

 パスする権利も無く。

 喋りすぎたら、踏み込み過ぎと疎まれる。

 パラメーターも無く、ジャンルすら不明。

 決められたルールに従っても罰せられ。

 ————何より

 

 ルールを無視した奴が(・・・・・・・・・・)我が物顔で上に立つ(・・・・・・・・・)

 

 こんな訳のわからない人生(クソゲー)に比べたら、どんなゲームも————簡単すぎる。

 

 

 

 「…チッ————胸糞悪ぃ」

 

 

 

 舌を打ち、なおも俯いたままの、愛しき幼い妹の頭を撫でる(あに)

 ————そこには、先ほどまで神の如き勝負を演じてみせた二人はいない。

 落ち込んだ——落ちぶれた——社会的に見ればあまりにも弱々しい。

 寄る辺の無い、世界から爪弾きにされた兄妹がいるだけだった。

 イラついたことで、一気に襲ってきた疲労。

 久しぶりにパソコンの電源を切ってやろうかとスタート画面にカーソルを向けた兄の耳に。

 

 ———テロンッ———

 

 と、再度メールが届く。

 それに構わずシャットダウンしようとした兄の手を————白が止めた。

 今さっきまで俯いていた妹が自分の手を止めたことに、空は何事かと画面を見直す。

 

 すると、そこにはこう書いてあった。

 

 

 

 【もし、 " 単純なゲームで総てが決まる世界 " があったら————】

 

 

 その文面に、訝しげに、しかし確かな憧れを感じるその世界を想像して、淡い望みを隠すことのできない二人。

 

 

 【目的も、ルールも明確な盤上の世界(・・・・・)があったら、どう思うかな?】

 

 

 

 再び二人は顔を見合わせて、自嘲気味に笑い、(うなず)いた。

 空はキーボードに手を置き。

 ……そういうことか、と。

 

 

 

 『ああ、そんな世界があるなら……成る程、確かに俺たち二人は生まれる世界を間違えたわけだ』

 

 

 

 ————と、最初に届いたメールの文面になぞらえて返信する。

 

 

 

 

 —————刹那。

 

 

 

 

 パソコンの画面に微かなノイズが走り。

 それと同時に、ブレーカーが落ちたような、バツンッと音を立てて部屋の全てが止まる。

 唯一……メールが表示されていた、その画面を除いて。

 

 そして————

 

 

 

 「ったく、今度は何だ? 鬼か蛇でも出てくんのか?」

 

 

 「…にぃ、意外と……余裕……?」

 

 

 「そりゃあね。 世界最古の英雄であり王である者のチカラが宿ってんだ。 多少のことじゃ狼狽えたりしねぇよ」

 

 何が起こっても白だけは絶対に(まも)る。

 

 

 

 部屋全体にノイズが広がり、走り始める。

 家そのものが軋んでいるのではないかと思えるほどの音、さらに放電しているようなバチバチと弾ける音。

 白を抱き寄せ、周囲に気を配る空。

 何が起こっているのかは分からないが、兄がいるから絶対大丈夫とおとなしくじっとしている白。

 そんな二人を他所に、ノイズはなおも激しくなり————

 

 ついにはテレビの砂嵐のように……否。

 間違いなく画面から。

 今度は文章ではない———『音声』が返ってきた。

 

 

 

 

 『僕もそう思う。 君達はまさしく、生まれる世界を間違えた!』

 

 

 

 最早画面以外の、部屋の全てが砂嵐に呑まれる中。

 唐突に画面から白く細い腕が生える。

 

 

 

 「あ?」

 

 

 「……貞子?」

 

 

 

 画面から伸びた腕には、キラキラと輝く星のような物が存在し、それがさらに強く輝くと————

 

 

 

 『ならば僕が生まれ直させてあげよう———君達が、生まれるべきだった世界にっ!』

 

 

 

 ———部屋の枠が弾けた。

 

 

 

 

 

 「えぇー……」

 

 

 「…にぃ、へるぷみー……」

 

 

 「了解しました。 お姫様」

 

 

 

 

 何が起こるのか警戒していたら、成層圏辺りに放り出されたでござる。

 

 『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から【天翔ける王の御座(ヴィマーナ)】を取り出し、乗り込む二人。

 同じく空を舞っていたパソコンなども、全て『王の財宝(むげんそうこ)』に回収する。

 さて、こんなタチの悪いスタートを強いたバカはどこだと周りを見渡すと、すぐ隣から高らかに叫ぶ声が聞こえた。

 

 

 

 

 「ようこそ、僕の世界へッ!!」

 

 

 

 壮大で、とても綺麗で異常な景色を背後に、浮遊しながら『少年』は腕を開いて笑う。

 

 

 

 「なあ、お前誰?」

 

 

 「ここは君達が夢見る理想郷【盤上の世界・ディスボード】ッ! この世総てが単純なゲームで決まる世界ッ! そう————人の命も、国境線さえもッ!!」

 

 

 「おーい、もしもーし」

 

 

 「この世界は、『十の盟約』によって成り立っているッ!」

 

 

 「聞けよ」

 

 

 【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる。

 【二つ】争いは全てゲームによる勝敗で解決するものとする。

 【三つ】ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる。

 【四つ】 " 三 " に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切を問わない。

 【五つ】ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する。

 【六つ】 " 盟約に誓って " 行われた賭けは、絶対遵守される。

 【七つ】集団における争いは、全権代理者をたてるものとする。

 【八つ】ゲーム中の不正発覚は敗北とみなす。

 【九つ】以上をもって神の名のもと絶対不変のルールとする。

 

 

 「そして【十】———『みんな仲良くプレイしましょう』」

 

 

 「うん、面白いルールだね。 ところでお前誰?」

 

 

 「僕? 僕はテト。 あそこに住んでる…神様?」

 

 

 

 言って、遠く———空も見た、地平線の彼方に巨大なチェスの駒を指差す少年。

 自分の存在が疑問系なのは如何なものかと思うが、今はいい。

 

 

 

 「そうか。 じゃあテト、取り敢えず下に降りていいか?」

 

 

 「…うん……そろそろ、寒い」

 

 

 「そうだね。 じゃあ、僕はここまでだけど、君達が楽しんでくれることを期待しているよ」

 

 

 「俺らが楽しむことを期待すんのかよ。 変わってんのな、アンタ」

 

 

 「ふふっ、君も大概だと思うけどね。 それじゃ、そう遠くないうちにまた会おう」

 

 

 

 

 そう言い残して、傍迷惑な神様は帰って行った。

 そして空と白も、いい加減超高度空域に漂ってるのも飽きたので、光学迷彩を発動させて地面へと降りて行った。

 ひとまず着陸したのは、少し広めの崖のような場所。

 土の感触、草の香り————どう考えても外の世界だ。

 

 すると、突然目の前から巨大なドラゴンが空へと飛んで行った。

 衝撃波に近い空気の波をその身に受けながら、空は妹にこう言った。

 

 

 

 「なあ、妹よ」

 

 

 「……ん」

 

 

 「人生なんて無理ゲーだ、マゾゲーだと、何度となく思ったが」

 

 

 「……うん……」

 

 

 

 二人、声をハモらせて言う。

 

 

 

 

 

 「「ついに " バグった " ……もう、何これ、超クソゲェ……」」

 

 

 

 





最近テスト勉強に追い回される毎日ですよ、ええ。

期末テストがね、十二月の初っ端にあって、その二日後くらいに修学旅行て……ウチの高校、どんだけハードスケジュールなの?

てなわけで、ノゲノラは今話。 
エミヤはあと一話更新したら、暫く止まります。

感想待ってまする(ノ*´>ω<)ノ

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