頑張って金欠鬼なりの王様を書いてみました。
調子に乗った変態×機嫌の良い愉悦部部長=今話の空ガメッシュ
ギルガメッシュとは少ーし違いますがご了承をば。
ではどうぞ↓
「
今までとは全く違う雰囲気の空は、白を泣かされたことに憤っていた。
だが、その怒りをただ相手にぶつけるだけでは面白くないので、ジワジワと真綿で首を絞めるように追い詰めてやろうと考えたのだ。
空は自分が鬼畜であることを自覚している。 その上で相手の反応を愉しむようなロクデナシであることも理解している。
だが———
————愉悦に於いてオレに自重は無え。
ゆえに何処までもサディストで在ろう。 そして何処までも調教を愉しもう。 愛する者たちをオレなりのやり方で愛でるのだ。 たとえ肉親であろうと関係無い。
全て総て凡てオレのものだ。
強欲? 結構。 節操無し? 大いに結構。
「————クラミー・ツェル。 お前を愛でてやろう。
容赦無く、慈悲無く、加減無く。
お前を覆うヴェールを引き剥がし、新たな扉を開かせてやろう。 無論のことお前の主人も共に…な。
その奴隷めいた卑屈な……しかしどこかに野望を抱く憐れな姿。 一度バラバラに壊して再構築してやろう。
ツェル家の娘というお前を砕き、ただのクラミーとしてオレの横に侍らせる。
それが最初の調教だ。
「……さて、盤上に
視線を向けられただけで重圧が襲ってくる。
白は頬を朱に染めトロンとしている。 ステフはキャラがガラリと変わった空から感じる威圧に内股を擦り合わせ熱い息を吐く。 敵側であるクラミーは、空のあまりの存在感に息が詰まりかけて口をパクパクさせている。
離れたところで観戦しているフィール・ニルヴァレンは、原始的な恐怖により失禁しそうだった。
空ガメッシュ恐るべしである。
「貴様らも戦う者であれば勝利を掴もうと獅子奮迅するのが当然だろう。 身を粉にせずしていったい何が成せるという。
青年らしさを残しながらも王としての厳とした態度。
服装こそ従者だが、風格はこの場の誰よりも王だ。
何処までも傲慢で、それゆえに雄々しいその姿。
そして———
「恐れるな……とは言わん。 だが、貴様らは一人で戦うのではない。 背後には戦友が控え、さらに
————そして空は右手を前に出し、口角を吊り上げてこう言う。
「
これから首でも刎ねられるんじゃね?
そんな空気が一変し、勝てば何でも褒美を貰えるという男には堪らない状況。
白の陣地の駒たちがウズウズと身じろぎしだし、前方の兵士に関しては既に直立している。
チョロい。
「ふむ、では行くぞ。 女を泣かせた罪は勝利をもって償え
『オオオオオオオオオオオオォォォオッッ!!!』
凄まじい
そして空は、その浅ましくも人間らしい欲に忠実な行動に愉悦しながら的確に指示を飛ばす。
白はそんな空の腕に抱かれてウットリしており非常に危ない構図になっている。 しかもすぐ後ろには自分のご主人様の威圧で感じる
諸々が心配になる
「さて、どうするクラミー・ツェル。 お前は呑まれるだけの雑種か? 違うと言うのならば全力で抗え、そしてお前の覚悟を見せろ」
「……っ…好き勝手言ってくれるわね。 私たちがどんな思いでここまで来たのかも知らないくせに…ッ」
「ああ、知らんな。 ゆえに申してみよ、聞いてやる。 我に拝聴されるという身にあまる栄誉に打ち震えるがいい小娘」
「ほんっと……ムカつくわね」
「
「く…っ。 い、イマニティには、これしか道がないのよ。 あんたも知ってるでしょ、前国王の愚かな采配のせいでこの国はもう後が無い。
「続けよ」
「それだけは阻止しなきゃいけないの。 魔法に勝てない以上、魔法が優れている種族に助けを乞うしか生き残る道がないのよ……ッ」
確かに、人類種は精霊回廊というこの世界特有の成分は持っているものの、魔法を使えないし
古の大戦を生き残ったとはいえ、他の種族からすれば力も弱く魔法も使えない完全な劣等種であった。
そして、クラミー自身も売られた身である。 奴隷として
幸いにもエルフの男たちは巨乳が好きなため、身体を求められることはなかったが、それでも何度部屋の隅で涙を流したかわからない。
そして何時しか絶望した。 人類種は所詮こんなもの……と。 フィールに出会ってなければ、生きる気力さえ無くしていただろう。
「私はもうあんな思いをするのは嫌なのよ! フィーがいなかったら私は生きられなかった。 それだけ人類種は弱いのよ! 力ある者の庇護が無いと、今度は人類種全員が私と同じ目に遭っちゃう……ッ」
「なるほど、お前はお前なりに人類の未来を考えていたということか。 しかし解せんな。 お前のような立場は傀儡にされやすい。 それを知らぬお前でもあるまい」
「傀儡になんてさせないわ。 それだと本末転倒じゃない」
「その通りだ。 だが、森精種との契約を如何にしてか反故せぬ限り、魔法を感知できんお前には無理………いや……ああ、成る程な。 お前の主人か」
「————ッ」
「ふむ、その反応を見るに主人と言うより親と言った方が適切か? しかし森精種の上層部を誤魔化すとは、お前の親はなかなかやり手のようだ。 このチェスにも何か仕込んでいるのだろう? 良い良い、構わぬ、遠慮するな。 存分に使うがいい」
「……私は、あなたに勝つッ!」
黒い陣営の王の駒が鈍く光り、一マス前に踏み出す。
すると、黒の駒たちも同じように光り始め、隊列を組みだした。
空はその現象を見てニヤリと嗤い、一体の兵士の駒に相手の兵士を斬り倒すように命じる。
しかし————
「ほう……」
「フッ……」
————
斬り結び、
なぜなら、染まった駒がこちらに敵対しているのだから。
「ふむ……さしずめ『洗脳魔法』か」
「…………」
「ああ、審判よ。 止めんで良いぞ。 この程度のイカサマを告発して得た勝利など旨味の欠片も無いからな」
「……どういうつもり」
「ッハ、言ったであろう、旨味が無いと。 それにこんなところで止めてしまっては調教にならんではないか」
あくまで調教のつもりらしいこの王様。
どれだけ王としての風格を持とうが根は空という変態なのだろうか。
それとも愉悦を求めるとてもイイ性格をした王様なのか。
だんだんイライラしてきたクラミー。 公衆の面前で自分が森精種と結託していたことも、過去に奴隷としての経歴があったことも、こうして魔法によるイカサマをしていることも、全て曝け出させられた。 もう丸裸もいいところである。
しかし、そこをさらに追い詰めるのがこのドS。
「貴様ら、よもや敵の洗脳になぞ屈するなどとは言わんだろうな。 貴様らの我欲とはその程度か? 己が渇き望むものは洗脳に膝を折るほどちゃちなものなのか?」
この王は動揺しない。
動じないし揺らがない。
何処までも
「違うだろう。 貴様らが手を伸ばすものは勝利の先にこそある。 言ったであろう、『座すな』と、『立って闘え』と。 洗脳ごとき己の欲望で塗り潰せ! 自らを律しきれぬなど、貴様らそれでも男かァ!!」
『オオオオオオオオオオオオォォォオッッ!!!』
「嘘っ! まさか、効いてないの!?」
怒涛の勢いで洗脳など効かぬわぁ! とばかりに攻め込んでくる白い軍勢。 驚いたことに、本当に効いていなかった。
あの森精種の魔法がである。
しかし理屈自体は簡単だ。 駒たち個々の意志力が、洗脳魔法を超えたというだけのこと。
それはもう狂気とも言える
そして、この事態を生み出したのは目の前の青年。
「あ……あり得ない。 人類が、魔法に…勝てるわけ……ない」
「その固定観念は今砕かれた。 どうだ? お前の全てを曝け出し、全力の上でイカサマまで使って尚倒せぬ相手がいる気分は。 お前が絶望した人類の力の弱さ、同じく人類の力の強さによって未知へと変えられた。 ああ、それはもはや希望とも言えるな」
どさりと座り込み、呆然と焦点の合わないめで何処かを見つめるクラミー。 全てを丸裸にされて、その上で自分を粉々に壊された。
自分が今まで頑張ってきたことは、いったい何なのだ。
何のために……ここまで来たのだ。
そんな思いが自分を取り囲む。
盤の上の黒陣営の王の駒にヒビが入る。
ピキピキと全身にヒビが走り、遂にはバイザーに———
————パキンッ。
自壊した。 目的意識を
これ以上ないくらいの敗北の宣言であった。
クラミーは俯き、茫然自失。
審判は、高らかに宣言した。
「勝者、
◆*◇
「……ふぅ……あー、疲れた、マジ疲れた。 暫くは仕事したくねー」
元に戻ったのか、いつもの口調で働きたくないと言う空。 白は自分の兄に蕩けそうな熱い視線を向けて胸に頬ずりしている。 エロい。
ステフはイッたのかビクビク痙攣している。 エロい。
空は今すぐ二人をいじめ倒したいという衝動に駆られるが、その前にまずクラミーの調教がまだ済んでいないことを思い出し、白を抱え、ステフを引きずりながらクラミーの元まで歩いて行った。
「うむ、エロとはやはり偉大だな。 疲れが一気に吹っ飛んだぜ。 さあて、あとは陥落寸前のおにゃのこを攻め落とすとしましょうか」
鬼畜、変態、ロクデナシ。
勇者枠より悪役の方が映える主人公はこいつくらいではなかろうか。 しかも自分の性癖を自覚しているから世話ないのである。
ぐるーっと周って行き、見つけたのは未だペタンと座り込んでいるクラミー。
ギャラリーや審判もいなくなり、ガランとした大聖堂。
薄暗く寂しい雰囲気の中、空はクラミーに近づくと————
「俺らの勝ちだ」
————後ろからギュッと抱きしめて、よーく聞こえるように耳元でそう言った。
すると、クラミーは我慢していたものが溢れ出すようにポロポロと涙を零し始めた。 今まで頑張って堪えていた不安や重圧、その他諸々は綺麗な雫となり、目元から止めどなく流れていく。
嗚咽が漏れ、空の体を拳で叩くが、力が入らなかった。
空も泣かせてしまった以上、慰めるのは自分の責任と思い、好きなだけ胸を貸してやった。
背中を優しくさすってやり、今までよく頑張ったと言うと、クラミーは声を上げて涙が枯れるまで泣き続けた。
「……良かったのですよ、クラミー」
泉に魔法で遠視をしていたフィールは、クラミーを慰める特権を取られたことに嫉妬はしたものの、クラミーが辛い状況を脱することができたことに安堵を覚えていた。
やはり主人というよりは母親のようである。
「さて、私もクラミーを慰めに行くのですよー」
クラミーは渡しませんっとばかりにダッシュでエルキアに向かうフィールなのであった。
御歳五十二歳のエルフさん。
不老長寿とあってか、やはりパワフルだ。
「クラミー! 今撫で撫でしてあげるのですよー!」
・欣喜雀躍…嬉しくて小躍りすること。
さて、クラミーをマッパにひん剥いて墜とした訳ですが。
どう書いてもチョロインになっちゃうよなんでだろ?
まあクラミーだから仕方ないよね(暴論)
感想待ってまする(ノ*´>ω<)ノ
※サーセン、フィールは五十二歳でしたので修正しました。六十五とか盛りすぎたぜ殺される……っ!