まさかのランキングに瞬間ですが載らせていただきました。
ありがたや・・・ありがたや・・・
精進していきますので今後ともよろしくお願いします。
「帽子が直ったーーっ!!!」
「穴を塞いだだけの応急処置よ。ちゃんとしたとこで修理しとかないと穴が開くわよ。でも帽子を強く突いたりしない限り大丈夫・・・話をちゃんときけぇぇえ!!」
「ぎゃあああああ!!??」
穴だらけだった麦わら帽子が直り喜ぶルフィはナミが建てたフラグを最速で回収した。あまりの回収の速さにナミがルフィに針を突き立てたほどだ。それでもまた直してくれる辺りがとても優しい。私だったら見捨てる。うん。
小さな船に詰め込んだ食料も大食漢が二人も入れば雀の涙程度だというもの。すぐに無くなってしまい、ナミに食べ物を恵んでもらう羽目になっている。
ナミには呆れられているが本当にこればかりは何も言えない。何も持たずに航海して食料は現地調達なんて頭がおかしいと言われても仕方がない。麦わら海賊団に属している三人が逸般人のためやりくり出来ているが、普通ならば餓死しに行くレベルの酷さだろう。
「おい!島だ!!」
そんな中でルフィは島を見つけた。ナミ曰く無人島だから行くだけ無駄だという。
「仲間になってくれる奴いるかなぁ?」
「食料でも積めりゃ上出来だな。俺達には明日の心配が足りねぇらしい」
「その達の中に私も入っているのかい?不名誉なことだねぇ」
そんなことをルフィが当然聞いているわけもなく、櫂を漕いで無人島へと向かっていた。
ナミも仕方なくついては来たが言った通りの無人島。人の気配などは何もなかった。
「ホントに何もねぇ島だなぁ!森だけしかねぇのか?」
「最初に無人島だって言ったでしょうに・・・仲間探すの無人島に来てどうすんのよ」
「確かに仲間探しで無人島に来るのはおかしな話だね。でも急いでるわけでもないし、いいんじゃないか」
「おいゾロ!下りて来いよ!」
「ゾロはさっきから寝てるよ。船番ってことで寝かしといてやりな」
「わかった!よし行こう!」
寝ているゾロを放置とも言うが寝かしておいて勇儀たちは森へと入る。
人の手が一切加えられていない森なのだが・・・
「コケコッコー。コッ、コケッ」
鶏のような鳴き声をする生き物やウサギの耳が生えた蛇がいたり、
「ガルルルル・・・」
立派な
こんな珍妙な生物を見るのは自分が暮らしていた孤島以来だ。
あの島にはクック先生のような生き物がいれば、ダーカー種のような不思議生命体もいた。容姿はこちらの方が圧倒的にかわいらしいが似たようなものだろう。
『 それ以上踏み込むな!! 』
「ん?」
「おっ?」
「えっ?」
森に入ってすぐにどこからともなく声が聞こえる。
声の方向は…後ろか?
『後一歩でも森へ踏み込んでみろ!その瞬間に森の裁きを受け、その身を滅ぼすことになるのか・・・?』
「しるか。何でおれに聞くんだ」
「何なの一体・・・」
「どっかその辺にいるのか…」
『 踏み込むなと言った筈だ!! 』
声から判断して森の番人と名乗った男は忠告を無視したルフィに発砲した。
その銃弾を飛んできたボールを受け止めるように、反射で掴んでしまった。これには我ながら驚くほかない。
『 ・・・!!?・・・・・・ええ!!?? 』
「・・・おどろいたー。今の銃でしょ?よく掴めるわね」
「・・・なんか反応が小さくないかいナミ?私自身これでも驚いてるんだよ?」
「私はもう勇儀が行う行動に驚く行為が馬鹿馬鹿しくなっただけよ」
勇儀だから仕方ないで済ませるナミに若干のショックを受けつつも銃弾が飛んできた方向へ向かう。
そこには発砲に使ったであろう銃と黒いマリモが乗った宝箱が置いてあった。
「なんだこれ?」
「・・・さぁ?」
「目茶苦茶怪しいわね…!」
マリモを囲んで怪しむ三人に居ずらくなったのか足が生えてそのまま走って逃走。瞬時にこけて起き上がれなくなるコンボを繰り出した。こけた後に威張るおまけ付きである。
宝箱に詰まった男は ガイモン という男で、元海賊船の
その際の不祥事で体が壊れた宝箱に詰り、20年物間そのままで生活してきたらしい。
「20年ってのァ・・・長いもんだ。こんな格好だから髪の毛も髭も伸びっぱなしでボサボサ。眉毛なんて繋がっちまっている。・・・現にこうやってまともに人間と会話するのも20年ぶりよ」
「・・・・・・」
そんなガイモンの口を掴んで引っ張り始めるルフィ。
20年の間フィットしつづけたのは伊達ではなく、全く抜ける様子ではなかった。彼を宝箱から救出するには彼の体に衝撃が加わらないように宝箱を壊すしかない。当然その後には柔軟運動を行わせることが必須だ。
元海賊であったことで
「おれは海図の見かたなんてさっぱりわからん!」
「なんだそうかおれもだ!!」
ははははは!と笑いあう二人は海賊の会話では全くない。
少しした後に
未練
それがガイモンの
箱に詰まった日、大岩の上で見つけた総計5個の宝箱。
それも箱に詰まったことで岩を登れなくなり、ガイモンはその宝箱を守り続けることにしたのだ。
「わかったわガイモンさん!その宝あなたの代わりに取ってきてあげる!」
「本当か!?・・・お前らに話して本当に良かった!!」
「お前海賊専門の泥棒だったよな?」
「バカな事言わないで!私だって場くらい弁えるわ!!」
そうやってガイモンの話に出てきた大岩へと向かったのだが、勇儀はガイモンに提案・・・というよりも自分のわがままを持ちかけた。
「ガイモン。あんた、その箱から出たくないのかい?」
「・・・そりゃ宝箱に詰まったこの体は不便極まりないさ。さっきみてぇにこけたら誰かの手を借りねぇと起き上がれねぇ。だがさっき言ったろ?箱を壊そうとしたら運動不足の俺の体がイカレちまう」
「それはあくまで宝箱を壊すほどの衝撃が加わったらの話だろう?それがなければいいんじゃないかい?」
「そりゃそうかもしれないが・・・宝箱ってのは文字通り宝を入れるためのもんだ。そう簡単には壊せねぇぞ」
「その方法は問題ない。なんて言ったって私だからね。ただそれをやるにはあんたの合意がないとできないさ。そのままの姿で生きたいなら私は何も言わないし、その箱から解放されたいなら私はあんたに被害が出ないように箱を壊すだけだよ」
それを聞いてガイモンは少し黙った。
不慮の事故とはいえどもそれから20年の間ずっとその生活を続けてきたのだ。その生き方が変わることを良しとするか否とするかは本人次第だ。
少し考え、悩み、ガイモンは口を開いた。
「おれは・・・」
「おーい!あったぞ宝箱っ!5個ある!!」
「!!よっしゃでかした!ここへ落としてくれ!勿論おれに当たらんようにな!わっはっはっは!!」
「いやだ」
「んん?」
「なに!?」
「な・・・なにバカな事言ってんのよ!冗談やめて早く落としなさいよそれ全部!!」
「そうさいルフィ。この状況でそれはないよ」
「いやだね。渡したくねぇ!」
大岩に腕を伸ばし、ガイモンが見つけたという宝箱を5つ見つけたルフィだが宝箱をこちらに落とそうともしない。先ほどの態度とは打って変わって独占しようとするルフィにナミは怒るがそれに反してガイモンは涙を流し始めた。
「麦わら!・・・お前ってやつは・・・・・・いい奴だなぁ・・・!!」
「・・・!!」
「なっ・・・どういうこと!?あの宝箱はあんたの宝なんでしょう!」
「この箱に詰まって20年。薄々な・・・思ってたんだ。・・・それでもなるべく考えないようにしていたんだが・・・ないんだろう?宝の中身が・・・」
「え」
「なっ・・・」
「・・・・・・うん。全部空っぽだった」
ガイモンが20年もの間守り続けてきた宝箱の中身。それは空っぽの空き箱だという事実だった。
勇儀やナミはその考えに至らず、その結果に唖然としている。
「宝の地図が存在する財宝に・・・よくある話だ・・・!地図を手に入れた時にはすでに奪われた後のスカを掴んじまうことがあるってな・・・」
「そんな・・・20年も守り続けた宝がただの箱だったなんて…」
「救われないねぇ・・・」
「・・・はっはっはっは!!まぁくよくよすんなよおっさん!20年で俺たちが来てよかったよ!あと30年遅かったら死んでたかもしれないんだ!!」
「麦わら・・・」
「これだけバカをみちまったらもう“
「・・・お前ッ!おれを・・・誘ってくれるのか・・・!!本当にありがてぇ・・・でもな・・・」
宝箱の真相を聞いて重くなっていた一同にルフィは笑い出す。明らかに無理やり笑っていることがわかるが今はその行動がありがたかった。
自分が目指す夢にガイモンを誘うルフィであるが、ガイモンが出した答えはNO。珍しい動物が多く存在するこの島で生き物を守る森の番人を続けるとのことだ。20年もの間暮らしてきた家族のような気持ちを持っているのだ。
「誘ってくれてうれしかったぜ。それに宝がなくなって気が楽になった。俺は改めてこの島でのんびりやるさ。・・・勇儀って言ったな。先ほどの提案、受けさせてもらっていいかい?」
「・・・!わかった・・・動くなよ?」
ルフィに遮られた答えだがガイモンはそれを受けた。
勇儀はそれを受け入れ、ガイモンに当たらないように側面の宝箱の両端に手刀を添え、瞬時に振り下ろした。
武装色ではなく、純粋な能力で強化された手刀で箱のつなぎ目を一気に叩き斬る。
本来なら飛び上がってから相手に叩きつける技なのだが宝箱ならそれは不要。ちなみにこの技は某隠しボスの拳を極めた人のパクリスペクトだ。これを使えば斧なしで薪を作ったりもできる便利な技である。
禊を喰らった宝箱は紙を裂くようにきれいな裂け目を見せてゴトリッと側面が落ちる。そのまま背中側の面を同じ要領ではがすとガイモンと宝箱が分けられ、本来のガイモンが生まれた。
「・・・ガイモンさん。よかったの?」
「ああ。岩の宝箱の真相がわかった。さっきも言ったが気が楽になってな。20年経ったが心機一転、一人間としてこの島で生きるよ」
「その前に軽く身体を解すよ。そのまま力を抜いてな」
もう驚かないナミがガイモンに問うが、当事者のガイモンはむしろ不便極まりなかった宝箱から解放されたことで笑顔を見せていた。今は勇儀の微細な力加減によって箱型になっていた体が解されている。
「・・・ふう。時間をかけてある程度は解したよ。だけど20年ぶりなんだ。いきなり動くようなことはやめなよ?ゆっくりでいいんだからね」
「ありがとう。今日は最高の日だ!宝箱から解放され、心の荷も下り、さらには仲間に誘ってくれる友まで出来た!最高だ!お前らには必ずいい仲間が集まる!“
「ああ!そうする。じゃあなおっさん!」
座ってこちらを見送るガイモンとその島の動物たち。ルフィ達は彼らを背に船を出航させる。
海へと出た彼らの心は今の天気を表すかのように晴れ渡っていた。