星熊童子とONE PIECE   作:〇坊主

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星熊童子と泥棒猫 2

 

 

「今のうちにとんずらするよ。ところでアンタはなんだい?」

 

「・・・あ、わ、私は泥棒よ」

 

「そいつは今からウチの航海士になる女だ!」

 

 

 撃ちだされたバギー玉によって巻き上がった煙を利用して逃げようとする勇儀はまず知らない人物に質問を投げる。自分を泥棒と言い切る女に対してルフィはいい笑顔で言い切った。

 

 

「っ・・・まだ言ってんの!?そんな余裕があるならあんたは檻から出る方法を考えたら!?」

 

「いや問題ない。ルフィ、てめぇは檻の中にいろ!!」

 

 

 明らかに重そうな鉄の檻を肩に抱えてゾロは歩き始める。

 先ほどルフィ(船長)に失態を見せてしまったせいかは知らないがその目には強い意志が宿っていた。

 

 

「ちょっ・・・あんた何でそこまで・・・!」

 

「おれはおれのやりてぇ様にやる。口出しすんじゃねぇっ!!」

 

「・・・!」(海賊のクセに・・・なんでそこまで・・・!)

 

「・・・そこまでの意志があるなら私からは何も言わないよ。行くよ、泥棒さん」

 

「待って。私は檻の鍵を盗んでから行くわ。・・・あのままじゃ何もできないでしょ」

 

「・・・そうだね、わかった。ゾロ、先に移動してな。私は航海士(・・・)さんと鍵探しに洒落込むよ」

 

「えっ、ちょ!」

 

「なにさ、アンタ見つかった時どうするつもりだい?心配なさんな。私は少なくともあの二人より探す能力があると自負しているよ」

 

 

 あの人数の中で鍵を盗むと豪語したナミを勇儀は見直していた。あのまま火をつけてルフィを大砲の的にすることが出来たのだ。反射的とは言えそれをせずに守ろうとしたこと、むしろ反射的に行ったことに好意を持った。根はやさしい人間なのだとわかっただけで十分だ。

 

 すぐにナミが鍵を盗んできたため、彼女を担いでそのまま跳ぶ。

 煙が晴れる頃には、ルフィ達は屋上から姿を消すことになったのである。

 

 

「~っっっ!ナメやがってあの4人組っ!!ジョーダンじゃねぇぞおいっ!!お前ら!俺様は誰だ!!」

 

 

『 我らの海賊“道化のバギー”船長です!! 』

 

 

「その通りだ!!」

 

 

 海図を奪われ、虚仮にされ、そして自慢のバギー玉でさえも利用されたバギーは本気でキレる。

 すでに彼にはルフィ達をただの泥棒とは見ておらず、己の一団と敵対(・・)する勢力だと認識していた。

 

 

「奴のようなぽっと出の奴らには海賊の一団(・・・・・)を敵に回す事の本当の恐ろしさを教えてやる必要がある。そこで“猛獣ショー”と洒落込もうじゃねぇか!!おい、モージを呼べ!」

 

「バギー船長、お呼びで?」

 

「さっきここを目茶苦茶にしやがった奴らを血祭りにあげて来い。方法はいつも通りお前に任せる」

 

「・・・それはつまり、“海賊狩り”ロロノア・ゾロの首は私がとってもよろしいので?」

 

「構わん」

 

「了解しました。お任せを」

 

 

 バギー一味の副船長“猛獣使いのモージ”

 ライオン(相棒)と共に麦わら達の首を取るべく駆けていく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・フゥ―・・・だいぶ酒場から離れた。ここならやつらもすぐに追いつきゃしねぇだろう・・・しかし一旦退いたはいいが、この檻は厄介だな・・・!」

 

「そうなんだ。これが開かねぇとあの赤鼻が来たとしてもおれは何も出来ねぇ・・・でも勇儀たちが鍵を探してくれるって言ってんだ。大丈夫だろ」

 

 

 檻を引きずるのを止めて近くにあった柱に座り込む。そして気づけば目の前に犬が一匹座っていた。

 全く動かない犬にルフィが目つぶしを仕掛け、それに当然怒った犬が噛みつき始める。噛まれたことにおこったルフィと目つぶしされたことに怒った犬が戦闘し始めた。海賊の一団から逃げているとは思えないほどの楽観ぶりだ。

 

 

「・・・なぁルフィ。勇儀とかいうあの女。一体なにもんなんだ?」

 

「ん?勇儀はおれの仲間だ」

 

「違ぇよ!おれが気づかなかった攻撃に気づいて未然に防いだり、斧を素手で壊したり砲塔を片手で持ち上げたり・・・おかしいだろ。前者はおれの修行不足だからいいとして、もう一つはなんだよ。あれ明らかに普通の女じゃないだろ。それに今まで言わなかったがあの角なんだよ。生えてるのかあれ?」

 

「そうだねぇ。これはれっきとした体の一部分さ。それに私を普通の人間と一緒にするのは可哀そうだよ」

 

「・・・勇儀って言ったかしら?あなた本当に何者なの?あのバギーのように悪魔の実シリーズでも食べたわけ?」

 

 

 ルフィの元に戻ってくればゾロが愚痴っぽいことを言っていた。聞かれなかったから何も言っていないこともあっていろいろと考えが頭の中にあるのだろう。担いで連れてきたナミもなにやら悟った様な表情で問いかけてくる。どうやら屋根を飛んだりして移動するのは刺激が強かったようだ。

 

 

「そうさ。私も詳しくは知らないが食べたのは動物(ゾオン)系ヒトヒトの実 モデル“鬼”ってところじゃないかねぇ。角あるし、これを食べてから力なんかも上がったからねぇ」

 

「へぇー勇儀、おめぇも能力者だったのか」

 

「「なんでお前(あんた)が知らないんだ(のよ)!!」」

 

 

 カッカッカと笑う勇儀にルフィが初めて知ったという反応をし、なんでだよと二人が返す。

 ルフィに聞かれたことなかったから話してもない事を忘れていた。隠すつもりはなく、ただ聞かれなかったから話さなかっただけである。

 

 

「なぁ勇儀ィー。お前この檻壊せねぇのか?」

 

「壊せるだろうけど破片とか刺さって絶対痛いだろうからやめときなルフィ。鍵もしっかり航海士さんが盗ってきたから」

 

「いやちょっと待って」

 

 

 何か気に障るようなことを聞いたのかナミが待ったをかける。視線はナミに移すが手は鍵を開けるために動かすことを忘れない。

 

 

「アンタこの檻壊せるの!?それなら私がわざわざ鍵を盗ってくる必要なかったじゃない!」

 

「いや、それだとこの檻は使い物にならなくなるじゃないか。鍵がちゃんとあるなら使わないと鍵の意味がないだろう。物は大切にの精神だよ」

 

「・・・…なんだかアンタらを相手にすると自分が馬鹿馬鹿しくなってくるわ…」

 

 

 なんで海賊に説かれなくちゃいけないのよ・・・と項垂れるナミを他所に檻の鍵を開けてルフィを解放する。

 ルフィが出れたと喜ぶのを見つつ勇儀が近くにいた犬の頭を撫でまわしていると胴と腕と足だけ鎧を身に着け、肝心の急所だけ隠れていない防御性能ガバガバな恰好をしたおじさんが近づいてきた。

 

 

「なんじゃ小童ども。シュシュが見知らぬ奴に吠えないのは珍しい…」

 

「シュシュ?」

 

「誰だおっさん」

 

「わしか?わしの名はプードル。ここの町長じゃ!!」

 

 

 オレンジ町の町長 名をプードルと名乗った彼が白い犬(シュシュ)の話をしてくれた。

 シュシュが番犬をしているこの店は町長の親友が開いた店であるということ。そしてその主人はすでに病でなくなっているということなどだ。

 

 

「シュシュは頭のいい犬たから、きっととうの昔に主人が亡くなったことも知っておるだろう。それでも一歩もここから動こうとはせん。餓死してでも動かんだろう。・・・シュシュにとってこの店はそれほどのかけがえのない宝なんじゃ」

 

「そうなんだ・・・」

 

 

グオオオォオオオオオ・・・!!!

 

 

 番犬(シュシュ)の過去を聞いてしんみりしているところに獣の声が割り込んでくる。

 突然のことで身体を強張らせるナミと町長は近づいてきているのが“猛獣使いのモージ”だと気づいてすぐさま逃げ出した。

 

 

「見つけたぜぇ。俺はバギー一味猛獣使いのモージだ・・・ってあれ、お前なんで檻から抜け出してるんだ?」

 

「あぁ、鍵盗って使ったからねぇ。不安かい?」

 

「変な着ぐるみかぶってなにやってんだ?」

 

「っ!初対面でいきなり失礼だな貴様ァ!これは着ぐるみじゃねぇ!おれの髪の毛だ!!」

 

「じゃあ尚更変だな」

 

「やかましいわぁ!!」

 

 

 自分の見た目を指摘したルフィにやめろと叫ぶ。だがそんなことは無視してルフィは安定のマイペースだ。

 勇儀はシュシュを横に置いてライオンに近づく。

 

 

「言っとくが俺がこの世に操れない動物はいないんだぜ」

 

「ほーらいい子だ」

 

ガルルルルル…!!

 

「例えばそこにいる犬にしてもだ。見とけ、お手・・・あああっ!!」

 

 

 モージがシュシュに噛みつかれ、情けない声を上げる。

 勇儀は威圧するライオンに対して笑顔で接した。

 

 

「いい子だ・・・ な っ ? 」

 

ガrっ!?・・・・・・ク、クゥン

 

「お前は所詮名も売れないそこらにいるコソ泥だ・・・ってリッチー?」

 

 

 先ほどから情けない鳴き声を上げるライオン(リッチー)にモージは何事かと声を上げ、その光景に驚愕した。

 自分にしか懐かないと思っていたリッチー(相棒)が勇儀の前で服従のポーズを取っていたのだ。たった数秒の間に何が起こったのかモージ()には理解が出来なかっただろう。

 

 

 

 

 

 笑顔で接する。

 それだけでリッチー(猛獣)は目の前の存在に敵わないことを本能で理解した。

 しかし経歴が呼び覚ました。主人に従えと。

 

 威嚇した――効かない。

 爪を立てた――傷つかない。

 噛みついた――歯が通らない。

 

 普通に、ごく普通にわかった。

 自分では目の前の存在に絶対に敵わないと。

 

 そうして猛獣(リッチー)は勇儀にひれ伏したのである。

 

 

 

 

 

「お・・・お前・・・どうやってリッチーを・・・」

 

「モージと言ったかい?お利口で実にいい子じゃないか。何の敵意もなく(・・・・・・・)懐いてくれるなんて躾がしっかりされている証拠だね」

 

「んな・・・っ!?」

 

 

 あり得ない。

 

 勇儀の言葉をモージは否定する。

 彼とてリッチーを手懐けるための努力は惜しんでいないのだ。始めに出会った時も死ぬような思いをしたこともある。そんな経験をしているからこそ、今の現状はおかしいことだと言い切った。

 

 

「あり得ない・・・あり得んぞ!リッチーに何をした!?」

 

「そんなことはいいだろ?アンタは(やっこ)さんの一味、私たちの敵さ」

 

「だな」

 

「アンタらの船長に伝えておいてくれよ」

 

「・・・!~~ッ!?」

 

 

 そんなことは知らない勇儀にとってはモージの考えなど興味もない。

 困惑しているモージを掴んで、酒場がある方へとハンマー投げの要領で投げ飛ばす。

 

 

「かくれんぼは終わり。さっさとケリをつけようってね」

 

「ああああああああっ!!」

 

 

 モージはそのまま空へと飛んで行った。着地のことは考えていないが向こうでなんとかしてくれるだろう。

 

 

「さて、行こうかね船長」

 

「おう!」

 

「だな」

 

「っ・・・お前らこの町へ来た目的は何じゃ。なぜあんな海賊と関わる!?」

 

「目的ならさっき決めた!偉大なる航路(グランドライン)の海図と航海士を得る事だ!」

 

 

 自分たちが手も足も出ない海賊をあしらうように追い払う三人を見て、町長が言葉をひねり出す。元々は事故でこの町に来たのだが、ルフィは今目的を据えたようだ。

 

 

「町長さんはみんなの元に帰りな。奴さんとの戦闘に巻き込まれるのは嫌だろう?」

 

「しかし・・・ぬぐぐぐぐぐ・・・・・・!!もう我慢できん!!酷さながら!さながら酷じゃ!!シュシュや小童小娘まで戦っているというのに、何故町長の儂が指をくわえて傍観せねばならんのじゃ!!」

 

「ちょっと町長さん落ち着きなさいよ!」

 

「男には!!たとえ無理でも退いてはならん戦いがある!!違うか(わっぱ)共っ!!」

 

「そうだ!おっさん!」

 

「その通りさ」

 

「のせるな!!」

 

 

 この町をつくる40年前にもこの町長を含めた市民は海賊に襲われて故郷を追われた。そこから今まで長い時間をかけてここまで立派な港町に成長させたのだ。町民たちで作り上げたこの町は町長の宝と言っても過言ではない。それをバギー一味に好き放題させるのに限界がきたのだろう。

 

 

「奴らは突然現れた馬の骨。そんな輩にこれまでの40年を消し飛ばす権利など存在せん!!町長は儂!!儂の許しなく奴らにこれ以上町で好き勝手な真似はもうさせん!!いざ勝負!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ町長さん!あいつらの所へ行って何ができるのよ!無謀すぎるわ!!」

 

「ッ~~無謀は承知!!だが、儂はやらねばならんのじゃ!!」

 

 

 町長(プードル)を止めようとしたナミだが男の覚悟を受けて止めた。

 立ち上がった男の瞳には涙が溜まっていたのである。死ぬとわかっていてもやらねばならないと覚悟の涙だった。

 

 

「町長さん・・・泣いてた・・・」

 

「そうかい?私は見えなかったけどね」

 

「おれもだ。・・・盛り上がってきたみてぇだな」

 

「しししし!」

 

「笑ってる場合か!あんたのその自信はどっから湧くのよ!」

 

「おれはあのおっさん好きだ!絶対死なせない!これはもう決定事項だ!それにおれ達が目指すのは偉大なる航路(グランドライン)。こんなところで躓いているわけにもいかねぇ。おれ達はこれからもう一度海図を奪いに行く!だから仲間になってくれナミ!海図も、宝もいるんだろ?」

 

「ッ!・・・…私は海賊にはならない!“手を組む”って言ってくれる?互いが為すべき目的のためにね!」

 

 

 手を差し出してきたナミはルフィに同意し、手を勢いよく合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モージの連絡はまだなのか?」

 

「はい!ですがモージ副船長にかかればもうすぐかと」

 

・・・………ぁぁ――

 

「・・・ん?なにかこっちに飛んでくるぞ!」

 

「なに?」

 

――ぁぁぁぁあああああああ!!

 

「んなにぃ!?」

 

 

 ゾロを仕留めに行ったモージの連絡を待っていたバギー一味は空から飛んできた物体に驚いた。その物体は先ほど揚々と出ていったモージだったのだ。投げられた勢いが強く、モージはそのまま半壊した屋上につっ込むことになったのだが、壊れた廃材がクッションの役目を果たしたのか致命傷にまでは至らなかった。

 だが衝撃が強かったのか当たり所が悪かったのか、モージはそのまま勇儀から言われた言葉を伝えることなく気を失うことになった。

 

 

「あ・・・あのモージ副船長が・・・」

 

「あの野郎共・・・!おれはもうキレた!!てめぇら町を消し飛ばす準備はまだか!!急げ!!」

 

 

「―――準備出来ました!!」

 

「よーし撃・・・」

 

 

「道化のバギーっ!!儂と勝負しろぉぉぉおお!!!」

 

 

「・・・?なんだあの男は・・・」

 

 

 バギーは部下の惨状を見て、バギー玉を町に乱射するように命じる。

 少しして砲弾の準備が整い、今にも発射しようとする瞬間に彼らの下から呼ぶ声が聞こえた。

 

 “町長”プードル。

 

 男を懸けてバギーに勝負を挑む。

 だが格下の男とまともにやりあうバギーではなく、

 

 

「・・・っが!?」

 

 

 “バラバラの実”を食べたことで発現した能力を使って首を握りしめ、町長の首を掴んだまま宙へと持ち上げて大砲を向ける。彼にとっては町長など周りを飛ぶハエ程度の認識でしかなかった。故に彼の言葉など意に返さない。

 撃てと命じはしたがすぐにバギーは自身の異常に気が付いた。逆に強い力で自分の手を握られていたのである。

 

 

「麦わらの男っ・・・!現れたな!!」

 

「ああ!約束通り、お前をぶっ飛ばしに来たぞ!!」

 

 

 プードルを助けたルフィの後ろには海図を盗んだ小娘と有名な海賊狩り、そしてバギーに屈辱を与えた女が立つ。ナミは戦うつもりがないようだがそこは適材適所。戦いは脳筋に任せるに限る。

 

 

「ゲホッ・・・!・・・小童(こわっぱ)共・・・何しに来た。余所者は引っ込んでおれ。これは儂の戦いじゃ!儂の町は儂が守る!この戦いに手出しは無用!」

 

「・・・アンタのソレは勇者じゃない、ただの自殺志願者さ。寝てな」

 

 

 ルフィに助けられながらもバギー一味に突っ込んで行く勢いだった町長を勇儀が後ろから気絶させる。流石に地面に寝転がすのは危険なので近くの壁に寝かせた。

 

 

「(スゥ~~)デカッ・・・(ばな)ァァァアア!!」

 

 

「「「「「「!!??」」」」」」

 

「ええ~~っ!??」

 

「ハッハッハ!!」

 

「・・・!??」

 

「てめぇよくも言ってくれやがったな麦わらァ!!ハデに撃て!バギー玉ァ!!!」

 

「そんな砲弾(もの)がおれに効くかっ!ゴムゴムの・・・“風船”っ!!」

 

 

 自慢の鼻(コンプレックス)を指摘され、有無を言わせずバギー玉を発射する。

 それがなんだというかのようにルフィは自分の体を膨らまして逆に砲弾を弾き返すという荒業をやってのけた。

 

 

「人間技じゃない・・・!何よ今の風船みたいに膨れたの!!」

 

「ゴムゴムの・・・“風船”だ!!」

 

「それが何かって聞いてんのよ!!」

 

「ハハッ。ルフィは私と同じように悪魔の実を食べたゴム人間だからね。あのぐらい造作もないのさ」

 

「・・・まったくだ。先に言えよ・・・」

 

 

 何度目かわからないが説明しろと叫ぶナミにルフィが能力者であることを告げる。ゾロはゴム人間であるとはわかっていたが砲弾まで跳ね返せることは知らなかったため、相当慌てていた。

 跳ね返されたバギー玉が直撃したことで酒場は見るも無残な見た目になってしまったが、仲間を盾に身を守ったバギーと参謀長のカバジが無傷で現れる。しかし二人は無傷でも他の船員(クルー)達はやられてしまった様子だ。

 

 

「ここまでの被害を受けてしまうとは・・・旗揚げ以来最大の屈辱ですね船長」

 

「ハァ・・・おれァアもう怒りでものも言えねぇよ・・・」

 

「船長。その怒り、参謀長の私が請け負いましょう!」

 

 

 一輪車をフルスロットルで回し、その場から急速に接近して剣を片手にルフィに対して攻撃を仕掛ける。しかしその剣はゾロが間に入ったことによって阻まれた。

 

 

「剣相手ならおれがする!さっきの雪辱も晴らさなきゃ気がすまねぇ」

 

「光栄だねぇロロノア・ゾロ・・・一人の剣士として貴様を斬れるとはなァッ!!曲技っ!“カミカゼ百コマ劇場”!!!」

 

 

 剣士として斬れると言いながらも最初からコマを飛び道具として使うのはどうなのだろうかなどと考えてはいけない。

 一見ただの独楽にしか見えないがよく見ると一つ一つ刃がついている。下手に受けると予想外のダメージを負ってしまうだろう。勇儀はそのことに気づいたが何も言わない。ゾロならそれぐらい全て弾き返すことは容易であるとわかっていたし、何よりもこれは剣士としての一騎打ち。割り込むのはゾロを侮辱するに等しい行為だ。

 

 だからこそ、余計な手を加えてゾロを処理しようとしたバギーを許すつもりはなかった。

 飛ばした腕を叩き落とし、そのまま追撃を加える。

 

 

鬼気狂瀾(きききょうらん)

 

 

 拳より撃ちだされた衝撃によって瞬時に腕が地面へとめり込む。割と本気で打ち込んだのだが骨が折れていないのが不思議だ。

 

 

「~~ッ!?!てめぇ・・・っ!!?」

 

「バギーって言ったかい?真剣勝負(ガチもん)に水を差すような真似はするんじゃあないよ」

 

 

「フンッ!船長の手を借りずとも貴様くらい殺せるわ!!曲技“納涼打ち上げ花火・一輪刺し”!!」

 

「・・・おれはお前の下らねぇ曲技(・・)に付き合うつもりなんてねぇ。三刀流奥義・・・“龍巻き”!!」

 

 

 上空から剣で一刺しにしようとしたカバジを登り龍の如く旋風が襲い掛かる。

 突如生み出された暴風によりカバジは為すすべもなく打ち上げられ、そのまま高所から地面に打ち付けられることになった。

 

 

「がッ!?バギー一味が・・・こんなコソ泥(・・・)ごときに・・・!!」

 

「残念だがおれ達はコソ泥じゃねぇ。海賊だ!・・・雪辱は晴らしたぜ」

 

「おうしっかり見たよ。後はおれがやる。勇儀は下がってろ」

 

「・・・私的にあいつは一発殴りたかったが仕方ないね。なら私はちょっとナミの護衛に行くことにするよ」

 

 

 船長が決めたことなら何も言わない。ゾロはまだ戦える様子であるがバギー相手では相性が悪すぎるため、町長の傍で待機し、勇儀は先ほどルフィに一声かけてどこかに向かっていったナミの護衛をしにその場を離れた。

 

 

「てめぇらが海賊だと?」

 

「そうだ!偉大なる航路(グランドライン)の海図をよこせ!」

 

「それが狙いか・・・言っとくがあの場所は名もない海賊がやすやすと通れる航路じゃねぇ。無名のてめぇらなんが偉大なる航路(グランドライン)に何の用がある!観光旅行でもするつもりか!!?」

 

「海賊王になる」

 

「・・・!!!ふざけんなっ!ハデアホがァ!!てめぇが海賊王!?てめぇがそれならおれは神か!?世界の宝を手にするのはこの俺だ!どこぞの知らねぇ馬の骨が、夢見てんじゃねぇ!!」

 

 

 海賊王になると言い切ったルフィに対して笑い、怒りだすバギー。

 無名の海賊が名乗っていいようなことではないと切り捨ててナイフを飛ばす。

 

 

 麦わらの一味の船長 対 バギー一味の船長

 

 

 その開戦の合図が今鳴った。

 

 


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